集合

同義語:set

概要

集合(set)とは、対象を元として集めた数学的対象である。集合は元の所属によって特徴づけられ、相等・包含・集合族・直積などを通じて数学的対象を記述する共通言語になる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 論理記号, 数学的対象

概要

集合(set)とは、対象を元として集めた数学的対象である。集合は元の所属によって特徴づけられ、相等・包含・集合族・直積などを通じて数学的対象を記述する共通言語になる。
本記事は集合そのもの、元、相等、包含、集合族、直積と関係を扱う。個々の集合演算は 和集合、共通部分、差集合、冪集合 に分け、写像に固有の構成は 写像 に譲る。

定義

集合の相等と記法

集合はその元によって定まる。すなわち、集合 $X,Y$ について、任意の $x$ に対して「$x\in X$ と $x\in Y$ が同値」であるとき、かつそのときに限り $X=Y$ である(外延性)。元を並べて $\{1,2,3\}$ のように書く記法を外延記法、条件 $P(x)$ を満たす $X$ の元の全体を $\{x\in X\mid P(x)\}$ と書く記法を内包記法という。外延記法では、並べる順序と重複は問わない($\{1,2,3\}=\{3,1,2\}=\{1,1,2,3\}$)。元を一つも持たない集合を空集合(empty set)といい $\emptyset$ と書く。外延性により、空集合はただ一つである。

集合の包含

集合 $A,B$ について、任意の $x$ に対して「$x\in A$ ならば $x\in B$」が成り立つとき、$A$ は $B$ の部分集合(subset)である、または $A$ は $B$ に含まれるといい、$A\subset B$ と書く。Mathpedia では $\subset$ は $A=B$ の場合を許す($\subseteq$ と同じ意味である)。$A\subset B$ かつ $A\neq B$ のとき、$A$ を $B$ の真部分集合(proper subset)といい $A\subsetneq B$ と書く。任意の集合 $A$ について $\emptyset\subset A$ である($x\in\emptyset$ となる $x$ がないので、条件「$x\in\emptyset$ ならば $x\in A$」は空虚に成り立つ)。

一点集合と有限集合

元 $a$ だけをもつ集合を $\{a\}$ と書き、$a$ の一点集合(singleton)という。より一般に $a_1,\ldots,a_n$ だけを元にもつ集合を $\{a_1,\ldots,a_n\}$ と書く。並べた元に重複があっても集合としては一度だけ数える。ある $n\in\mathbb N$ に対して集合 $X$ と $\{1,\ldots,n\}$ のあいだに全単射があるとき $X$ を有限集合(finite set)といい、そのような $n$ を $X$ の元数として $|X|=n$ と書く。有限でない集合を無限集合(infinite set)という。

集合族と添字集合

集合 $I$ の各元 $i$ に集合 $A_i$ を対応させたものを、$I$ で添字づけられた集合族(family of sets)といい $(A_i)_{i\in I}$ と書く。$I$ を添字集合(index set)という。集合族の和集合と共通部分は
$$ \bigcup_{i\in I}A_i=\{x\mid \text{ある }i\in I\text{ に対して }x\in A_i\}, \qquad \bigcap_{i\in I}A_i=\{x\mid \text{すべての }i\in I\text{ に対して }x\in A_i\} $$
である。ただし空族の共通部分は、元を探す範囲となる全体集合を指定しない限り集合として定めない。和集合と共通部分の詳しい性質はそれぞれ 和集合 と 共通部分 が扱う。

直積と順序対

集合 $X,Y$ の直積(Cartesian product)とは、$x\in X$ と $y\in Y$ からなる順序対 $(x,y)$ 全体の集合
$$ X\times Y=\{(x,y)\mid x\in X,\ y\in Y\} $$
である。順序対は $(x,y)=(x',y')$ であることと $x=x'$ かつ $y=y'$ であることが同値になるように定める。順序対を集合だけから構成する一例は Kuratowski の定義 $(x,y)=\{\{x\},\{x,y\}\}$ である。三つ以上の集合の直積では括弧を省略することがあるが、集合としての $(X\times Y)\times Z$ と $X\times(Y\times Z)$ は一般に同一ではなく、標準的な全単射で同一視している。

二項関係

集合 $X,Y$ のあいだの二項関係(binary relation)とは、直積 $X\times Y$ の部分集合 $R$ である。$(x,y)\in R$ を $xRy$ とも書く。$X=Y$ の場合には $X$ 上の関係という。写像 $f\colon X\to Y$ のグラフは、「各 $x\in X$ に対して $(x,y)\in R$ となる $y\in Y$ がただ一つ存在する」という条件を満たす関係である。

数の集合の標準記号

よく使う数の集合には、次の標準的な記号がある。

  1. $\mathbb{N}$:自然数全体の集合。Mathpedia では $0$ を自然数に含め、$\mathbb{N}=\{0,1,2,3,\ldots\}$ とする($0$ を含めない流儀の文献も多いので、参照する文献ごとに確認する)。
  2. $\mathbb{Z}$:整数全体の集合 $\{0,\pm1,\pm2,\pm3,\ldots\}$。
  3. $\mathbb{Q}$:有理数全体の集合。$a,b\in\mathbb{Z}$ と $b\neq0$ による分数 $a/b$ として表される数全体である。
  4. $\mathbb{R}$:実数全体の集合。
  5. $\mathbb{C}$:複素数全体の集合 $\{a+bi\mid a,b\in\mathbb{R}\}$。ここで $i$ は $i^{2}=-1$ を満たす虚数単位である。

性質と証明

集合の相等を示す二重包含法

集合 $A,B$ が等しいことを示すには、$A\subset B$ と $B\subset A$ をそれぞれ示せば十分である。したがって集合の等式は、任意の元 $x$ について二方向の含意を示す問題へ帰着できる。

$A\subset B$ と $B\subset A$ を仮定する。任意の $x$ に対して、$x\in A$ ならば $x\in B$ であり、逆に $x\in B$ ならば $x\in A$ である。従って $x\in A$ と $x\in B$ は同値である。外延性により $A=B$ である。$\square$

包含関係の基本性質
  1. 反射律:$A\subset A$。
  2. 推移律:$A\subset B$ かつ $B\subset C$ ならば $A\subset C$。
  3. 反対称律:$A\subset B$ かつ $B\subset A$ ならば $A=B$。逆に $A=B$ ならば $A\subset B$ かつ $B\subset A$ である。
  1. 任意の $x$ について「$x\in A$ ならば $x\in A$」は明らかに成り立つ。
  2. $x\in A$ とする。$A\subset B$ より $x\in B$、$B\subset C$ より $x\in C$ である。
  3. $A\subset B$ かつ $B\subset A$ とする。任意の $x$ について、$x\in A$ ならば $x\in B$、$x\in B$ ならば $x\in A$ であるから、$x\in A$ と $x\in B$ は同値である。外延性(def-set-basics-and-operations-set)により $A=B$ である。逆は、$A=B$ のとき条件「$x\in A$ ならば $x\in B$」と「$x\in B$ ならば $x\in A$」がいずれも同じ集合についての条件になることから明らかである。$\square$
一点集合の相等

任意の対象 $a,b$ について、$\{a\}=\{b\}$ であることと $a=b$ であることは同値である。

$a=b$ ならば同じ元を波括弧で囲んでいるので $\{a\}=\{b\}$ である。逆に $\{a\}=\{b\}$ とする。$a\in\{a\}$ であるから、集合の相等により $a\in\{b\}$ である。一点集合 $\{b\}$ の元は $b$ だけなので $a=b$ を得る。$\square$

直積の空性

集合 $X,Y$ について、$X\times Y=\emptyset$ であることと、$X=\emptyset$ または $Y=\emptyset$ であることは同値である。

$X=\emptyset$ なら、$x\in X$ を満たす $x$ がないので $X\times Y$ に順序対は存在しない。$Y=\emptyset$ の場合も同様である。逆に $X\times Y=\emptyset$ であり、しかも $X\neq\emptyset$ かつ $Y\neq\emptyset$ と仮定する。すると $x\in X$ と $y\in Y$ を選べて、定義から $(x,y)\in X\times Y$ となる。これは $X\times Y=\emptyset$ に反する。従って $X=\emptyset$ または $Y=\emptyset$ である。$\square$

直積の包含

$A\subset X$ かつ $B\subset Y$ ならば $A\times B\subset X\times Y$ である。

$(a,b)\in A\times B$ とする。直積の定義から $a\in A$ かつ $b\in B$ である。仮定により $a\in X$ かつ $b\in Y$ だから、再び直積の定義により $(a,b)\in X\times Y$ である。従って $A\times B\subset X\times Y$ である。$\square$

数の集合の包含の列

各段の標準の埋め込みによる同一視のもとで
$$ \mathbb{N}\subset\mathbb{Z}\subset\mathbb{Q}\subset\mathbb{R}\subset\mathbb{C} $$
が成り立ち、四つの包含はいずれも真の包含である。すなわち、どの段でも右辺に属して左辺に属さない元が存在する。

包含については、自然数をそのまま整数とみなす、整数 $a$ を分数 $a/1$ とみなす、有理数をそれが定める実数とみなす、実数 $x$ を $x+0i$ とみなす、という四つの標準の単射によって左辺を右辺の部分集合と同一視する(rem-set-basics-and-operations-identification)。
真の包含であることを、各段で右辺に属して左辺に属さない元を挙げて示す。

  1. $-1\in\mathbb{Z}$ であり、自然数は $0$ 以上なので $-1\notin\mathbb{N}$ である。
  2. $1/2\in\mathbb{Q}$ である。$1/2=a$ を満たす整数 $a$ があるとすると $2a=1$ であり、$a\leq0$ なら $2a\leq0$、$a\geq1$ なら $2a\geq2$ なので、いずれの場合も $2a=1$ は成り立たない。よって $1/2\notin\mathbb{Z}$ である。
  3. $\mathbb{R}$ には $x>0$ かつ $x^{2}=2$ を満たす元 $\sqrt2$ が存在し、$\sqrt2$ は有理数でない。これらの事実は実数の記事(実数の連続性・順序体の性質)に譲る。よって $\sqrt2\in\mathbb{R}$ かつ $\sqrt2\notin\mathbb{Q}$ である。
  4. $i\in\mathbb{C}$ である。実数 $x$ は $x^{2}\geq0$ を満たす。これらの事実は実数の記事(実数の連続性・順序体の性質)に譲る。$i^{2}=-1<0$ なので $i\notin\mathbb{R}$ である。$\square$
包含の列が成り立つ水準

$\mathbb{N}\subset\mathbb{Z}\subset\mathbb{Q}\subset\mathbb{R}\subset\mathbb{C}$ を集合そのものの包含として読むかどうかは、数の集合をどう構成したかによる。たとえば整数を自然数の対の同値類として、有理数を整数の対の同値類として構成すると、自然数 $2$ と整数 $2$ と有理数 $2$ は集合としては異なる対象になり、包含はそのままでは成り立たない。それでも各段には標準の単射があり、演算と順序を保つので、その像と元の集合を同一視して包含として扱うのが慣例である。以後この同一視を断りなく用いる。

集合、包含、集合族、直積、関係の標準的な定義と性質については Hara20、Matsusaka68 を参照した。

関連項目

参考文献

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