Borsuk–Ulamの定理(Borsuk–Ulam theorem)とは、$n$ 次元球面から $\mathbb{R}^n$ への任意の連続写像 $f$ について、$f(x)=f(-x)$ となる対蹠点の組 $x,-x$ が存在するという定理である。連続な奇写像 $S^n\to S^{n-1}$ が存在しないことと同値であり、$n=2$ では円周の奇写像の巻き数が奇数であることから示される。帰結として、$S^n$ は $\mathbb{R}^n$ に埋め込めないこと、$\mathbb{R}^n$ の $n$ 個の有界可測集合を 1 つの超平面で同時に二等分できること(ハムサンドイッチの定理)、Brouwer の不動点定理などが得られる。
Borsuk–Ulam の定理(Borsuk–Ulam theorem)は、$n$ 次元球面 $S^n$ から $\mathbb{R}^n$ への連続写像 $f$ には、必ず $f(x)=f(-x)$ となる点 $x$ がある、という定理である。$x$ と $-x$ は球面の正反対の 2 点(対蹠点)なので、たとえば $n=2$ で $f(x)$ を地球上の点 $x$ の(気温, 気圧)とすれば、「気温も気圧もまったく同じ対蹠点の組がいつも存在する」ことになる。次元が 1 つ下の空間へ連続に写すと、どこかで対蹠点が同じ点に重なってしまう、というのが定理の内容であり、「$S^n$ は $\mathbb{R}^n$ の中に埋め込めない」こと、平面の 2 つの図形を 1 本の直線で同時に二等分できること(ハムサンドイッチの定理)、Brouwerの不動点定理などがここから導かれる。この記事では、定理の同値な言い換えを示し、$n=1$ と $n=2$ の場合を完全に証明して、主な帰結を導く。一般の $n$ の証明には写像度やホモロジーが要るので、所在を示して引用する。
$S^n:=\{x\in\mathbb{R}^{n+1}\mid\lvert x\rvert=1\}$ とする(n次元球面)。点 $x\in S^n$ に対し $-x$ を $x$ の対蹠点(antipode)という。
$A\subset\mathbb{R}^{k}$、$B\subset\mathbb{R}^{l}$ をそれぞれ $-A=A$、$-B=B$ をみたす部分集合とする。写像 $g\colon A\to B$ が奇写像(odd map)または対蹠点を保つ写像(antipode-preserving map)であるとは、すべての $x\in A$ について $g(-x)=-g(x)$ となることをいう。
対蹠写像 $x\mapsto-x$ 自身や、$\mathbb{R}^{k}$ の線形写像の制限は奇写像である。$S^1\subset\mathbb{C}$ とみなすと、奇数 $k$ について $z\mapsto z^k$ は $S^1$ から $S^1$ への奇写像である($(-z)^k=-z^k$)。
$n\geq1$ とする。任意の連続写像 $f\colon S^n\to\mathbb{R}^n$ に対して、$f(x)=f(-x)$ となる点 $x\in S^n$ が存在する。
一般の $n$ の証明は Hat02 Corollary 2B.7(p. 176)にある。そこでは、奇写像 $S^n\to S^n$ の写像度が奇数であること(同書 Proposition 2B.6、p. 174)をホモロジーで示し、それを使っている(写像度)。この記事では一般の $n$ は証明しない。$n=1$ は prop-bu-dim-one、$n=2$ は thm-bu-dim-two で証明する。$n=2$ の場合は Mun00 Theorem 57.3(p. 358)、Hat02 Theorem 1.10(p. 32)にもある。
まず、定理をいくつかの同値な形に言い換える。これは $n$ ごとに初等的に示せる。
$n\geq1$ を固定する。次の 3 条件は同値である。
(1)⇒(2):$f$ が奇写像なら、(1) の $x$ について $f(x)=f(-x)=-f(x)$ なので $f(x)=0$ である。
(2)⇒(3):連続な奇写像 $g\colon S^n\to S^{n-1}$ があれば、$S^{n-1}\subset\mathbb{R}^n$ とみなして $g$ は $\mathbb{R}^n$ への連続な奇写像であり、$\lvert g(x)\rvert=1$ なので零点をもたず、(2) に反する。
(3)⇒(1):(1) が成り立たない連続写像 $f$ があるとする。すべての $x$ で $f(x)-f(-x)\neq0$ なので
$$
g(x):=\frac{f(x)-f(-x)}{\lvert f(x)-f(-x)\rvert}
$$
は $S^n$ から $S^{n-1}$ への連続写像であり、$g(-x)=\dfrac{f(-x)-f(x)}{\lvert f(-x)-f(x)\rvert}=-g(x)$ なので奇写像である。これは (3) に反する。$\square$
任意の連続関数 $f\colon S^1\to\mathbb{R}$ に対して、$f(x)=f(-x)$ となる $x\in S^1$ がある。
$\varphi(\theta):=f(\cos\theta,\sin\theta)-f(-\cos\theta,-\sin\theta)$ とおくと、$\varphi$ は $[0,\pi]$ 上の連続関数で、$(-\cos\theta,-\sin\theta)=(\cos(\theta+\pi),\sin(\theta+\pi))$ から $\varphi(\pi)=f(-1,0)-f(1,0)=-\varphi(0)$ である。$\varphi(0)=0$ なら $x=(1,0)$ が求める点である。そうでなければ $\varphi(0)$ と $\varphi(\pi)$ は符号が違うので、中間値の定理の記事の定理「中間値の定理」により $\varphi(\theta_0)=0$ となる $\theta_0\in(0,\pi)$ があり、$x=(\cos\theta_0,\sin\theta_0)$ が求める点である。$\square$
これは 中間値の定理の記事の例「赤道上の正反対の 2 点」と同じ議論である。$n=2$ では中間値の定理のような 1 次元の道具は使えず、円周の「巻き数」を使う。
円周 $S^1$ を被覆する写像 $p\colon\mathbb{R}\to S^1$、$p(s):=(\cos2\pi s,\sin2\pi s)$ を使う(被覆空間の記事の例「円周を実数直線で覆う」)。閉じた道 $H\colon[0,1]\to S^1$($H(0)=H(1)$)に対し、$p\circ\tilde H=H$ をみたす持ち上げ $\tilde H\colon[0,1]\to\mathbb{R}$ がある(同じ記事の定理「道の持ち上げ」)。$p(\tilde H(1))=p(\tilde H(0))$ なので差 $\tilde H(1)-\tilde H(0)$ は整数であり、持ち上げは始点を除いて一意だから、この整数は $H$ だけで決まる。これを $H$ の巻き数という。
$h\colon S^1\to S^1$ を連続な奇写像とし、$H(t):=h(\cos2\pi t,\sin2\pi t)$($t\in[0,1]$)とおく。$H$ の巻き数は奇数である。とくに $h$ は閉円板 $D^2:=\{u\in\mathbb{R}^2\mid\lvert u\rvert\leq1\}$ 上の連続写像 $G\colon D^2\to S^1$ に延長できない。
$\tilde H$ を $H$ の持ち上げとする。$t\in[0,\frac12]$ について、点 $(\cos2\pi(t+\frac12),\sin2\pi(t+\frac12))$ は $(\cos2\pi t,\sin2\pi t)$ の対蹠点なので、奇写像の性質から $H(t+\frac12)=-H(t)$ である。$-p(s)=p(s+\frac12)$ なので
$$
p\Bigl(\tilde H\bigl(t+\tfrac12\bigr)\Bigr)=-p\bigl(\tilde H(t)\bigr)=p\Bigl(\tilde H(t)+\tfrac12\Bigr)
$$
であり、$k(t):=\tilde H(t+\frac12)-\tilde H(t)-\frac12$ は整数値の連続関数である。$[0,\frac12]$ は連結なので $k$ は定数 $k$ である(整数値の連続関数は、中間値の定理により、中間の整数でない値をとれない)。よって
$$
\tilde H(1)-\tilde H(0)=\Bigl(\tilde H(1)-\tilde H\bigl(\tfrac12\bigr)\Bigr)+\Bigl(\tilde H\bigl(\tfrac12\bigr)-\tilde H(0)\Bigr)=\Bigl(k+\frac12\Bigr)+\Bigl(k+\frac12\Bigr)=2k+1
$$
は奇数である。
後半:延長 $G$ があるとする。$F(t,s):=G\bigl((1-s)(\cos2\pi t,\sin2\pi t)+s(1,0)\bigr)$ とおく。$D^2$ は凸なので括弧の中は $D^2$ に入り、$F$ は連続で、$F(t,0)=H(t)$、$F(t,1)=G(1,0)$(定数)、$F(0,s)=F(1,s)=G(1,0)$ である。つまり $F$ は閉じた道 $H$ と定値の道を、端点を止めたまま結ぶホモトピーである。被覆空間の記事の系「道のホモトピー類と持ち上げの終点」により、同じ始点からの持ち上げの終点は一致する。定値の道の持ち上げは定値なので $\tilde H(1)=\tilde H(0)$、すなわち巻き数は $0$ である。これは巻き数が奇数であることに反する。$\square$
任意の連続写像 $f\colon S^2\to\mathbb{R}^2$ に対して、$f(x)=f(-x)$ となる点 $x\in S^2$ が存在する。同じことだが、連続な奇写像 $S^2\to S^1$ は存在しない。
prop-bu-equivalent により、連続な奇写像 $g\colon S^2\to S^1$ が存在しないことを示せばよい。$g$ があるとする。赤道 $\{(u,0)\mid u\in S^1\}$ への制限 $h(u):=g(u,0)$ は $S^1$ から $S^1$ への連続な奇写像である。一方、北半球を $D^2$ でパラメータ表示して
$$
G(u):=g\Bigl(u,\sqrt{1-\lvert u\rvert^2}\Bigr)\qquad(u\in D^2)
$$
とおくと、$G\colon D^2\to S^1$ は連続で、$\lvert u\rvert=1$ なら $G(u)=g(u,0)=h(u)$ である。つまり $h$ は $D^2$ 上に延長でき、lem-bu-odd-winding に反する。$\square$
証明の筋は「奇写像は赤道を奇数回巻くが、北半球というふたがあると $0$ 回しか巻けない」である。一般の $n$ でも同じ筋で、「巻き数」を写像度に替えて、奇写像 $S^{n-1}\to S^{n-1}$ の写像度が奇数であることを示せばよい(rem-bu-source)。
以下の帰結は、$n=2$ の場合は thm-bu-dim-two から完全に従う。一般の $n$ の形は、thm-bu-main を認めれば同じ議論で従う。
連続な単射 $S^2\to\mathbb{R}^2$ は存在しない。とくに $S^2$ は $\mathbb{R}^2$ のどの部分集合とも同相でない。一般に、thm-bu-main により、連続な単射 $S^n\to\mathbb{R}^n$ は存在しない。
連続写像 $f\colon S^2\to\mathbb{R}^2$ には thm-bu-dim-two により $f(x)=f(-x)$ となる $x$ があり、$x\neq-x$ なので $f$ は単射でない。$S^2$ が $A\subset\mathbb{R}^2$ と同相なら、同相写像と包含の合成が連続な単射 $S^2\to\mathbb{R}^2$ になる。$\square$
$S^2=A_1\cup A_2\cup A_3$ と 3 つの閉集合の和に表すと、どれかの $A_i$ は対蹠点の組 $\{x,-x\}$ を含む。
空でない $A_i$ について $d_i(x):=\inf_{y\in A_i}\lvert x-y\rvert$ とおくと、$d_i$ は連続で($\lvert d_i(x)-d_i(x')\rvert\leq\lvert x-x'\rvert$)、$A_i$ は閉集合なので $d_i(x)=0\iff x\in A_i$ である。$A_1$ か $A_2$ が空なら、残りの 2 つについての議論は下と同じで易しい(空な $A_i$ の $d_i$ を定数 $1$ に替えればよい)。$f:=(d_1,d_2)\colon S^2\to\mathbb{R}^2$ に thm-bu-dim-two を当てると、$d_1(x)=d_1(-x)$、$d_2(x)=d_2(-x)$ となる $x$ がある。$d_1(x)=0$ なら $x,-x\in A_1$、$d_2(x)=0$ なら $x,-x\in A_2$ である。どちらでもなければ $x,-x$ はともに $A_1\cup A_2$ に入らないので、$A_3$ に入る。$\square$
この系は Hat02 Corollary 1.11(p. 33)にある。3 つを 4 つにすると成り立たない。原点を中心とする正四面体の 4 つの面を球面に放射状に射影すると、$S^2$ を覆う 4 つの閉集合が得られる。頂点の方向 $v_1,\dots,v_4$($\lvert v_i\rvert=1$、$\sum v_i=0$、$i\neq j$ なら $v_i\cdot v_j=-\frac13$)について、$v_4$ の向かいの面の像は $-v_4$ を中心とする角度の半径 $\arccos\frac13$ の球帽に入る($-v_4\cdot v_i=\frac13$($i\neq4$)であり、半径が $\frac{\pi}{2}$ より小さい球帽は測地的に凸である)。この球帽の 2 点の角度の距離は $2\arccos\frac13< \pi$ 以下なので、像は対蹠点の組を含まない(Hat02 p. 33 の注意)。
$A_1,A_2\subset\mathbb{R}^2$ を有界な Lebesgue 可測集合とする。このとき、ある直線 $L$ があって、$L$ が定める 2 つの閉半平面のそれぞれが、$A_1$ と $A_2$ の面積(Lebesgue測度)のちょうど半分ずつを含む。
$\lambda$ を $\mathbb{R}^2$ の Lebesgue 測度とする。$u=(u_0,u_1,u_2)\in S^2$ に対し閉集合
$$
H(u):=\{x\in\mathbb{R}^2\mid u_1x_1+u_2x_2\leq u_0\}
$$
を対応させ、$f_i(u):=\lambda(A_i\cap H(u))$($i=1,2$)とおく。$(u_1,u_2)\neq(0,0)$ なら $H(u)$ は直線 $L(u):=\{u_1x_1+u_2x_2=u_0\}$ を境界とする閉半平面であり、$u=(1,0,0)$ なら $H(u)=\mathbb{R}^2$、$u=(-1,0,0)$ なら $H(u)=\emptyset$ である。
段 1($f_i(u)+f_i(-u)=\lambda(A_i)$).$H(-u)=\{u_1x_1+u_2x_2\geq u_0\}$ なので、$H(u)\cup H(-u)=\mathbb{R}^2$、$H(u)\cap H(-u)$ は $(u_1,u_2)\neq0$ なら直線 $L(u)$、そうでなければ空集合である。直線の面積は $0$ なので、どちらの場合も $f_i(u)+f_i(-u)=\lambda(A_i)$ である。
段 2(連続性).$u^{(k)}\to u$ とする。$(u_1,u_2)\neq0$ のとき、$x\notin L(u)$ なら、$k$ が大きいと $x\in H(u^{(k)})\iff x\in H(u)$ となる($u_1x_1+u_2x_2-u_0$ の符号は $u$ について連続に変わる)。よって特性関数 $\mathbf{1}_{A_i\cap H(u^{(k)})}$ は面積 $0$ の $L(u)$ の外で $\mathbf{1}_{A_i\cap H(u)}$ に各点収束し、可積分な $\mathbf{1}_{A_i}$ で抑えられるので、優収束定理により $f_i(u^{(k)})\to f_i(u)$ である。$u=(1,0,0)$ のとき、$A_i\subset\{\lvert x\rvert\leq R\}$ とすると、$x\in A_i$ について $\lvert u^{(k)}_1x_1+u^{(k)}_2x_2\rvert\leq\lvert(u^{(k)}_1,u^{(k)}_2)\rvert R$ は $k$ が大きいと $u^{(k)}_0$ より小さいので、$A_i\subset H(u^{(k)})$、$f_i(u^{(k)})=\lambda(A_i)=f_i(u)$ である。$u=(-1,0,0)$ のときも同様に、$k$ が大きいと $A_i\cap H(u^{(k)})=\emptyset$ である。
段 3(結論).$f:=(f_1,f_2)\colon S^2\to\mathbb{R}^2$ は連続なので、thm-bu-dim-two により $f(u)=f(-u)$ となる $u$ があり、段 1 から $f_i(u)=\frac12\lambda(A_i)$($i=1,2$)である。$\lambda(A_1)=\lambda(A_2)=0$ ならどの直線でもよい。そうでなければ、$u=\pm(1,0,0)$ では $f_i(u)\in\{0,\lambda(A_i)\}$ なので $u\neq\pm(1,0,0)$ であり、直線 $L(u)$ が求めるものである($H(-u)$ 側も段 1 により半分を含む)。$\square$
この証明は、$\mathbb{R}^2$ を $\mathbb{R}^3$ の平面 $\{x_0=1\}$ に置き、原点を通る平面でそれを切ると考えると見通しがよい(Mun00 Theorem 57.4、p. 358 の証明の形)。$\mathbb{R}^n$ の $n$ 個の有界可測集合を 1 つの超平面で同時に二等分できることも、一般の $n$ の thm-bu-main から同じ議論で従う(Mun00 §57 の演習 4、p. 359。$n=3$ の場合が、パン 2 枚とハムを 1 太刀で二等分する「ハムサンドイッチ」の名の由来である)。
閉円板 $D^2$ から境界の円周 $S^1$ への連続写像 $r$ で、$S^1$ の各点を動かさないもの(レトラクション)は存在しない。一般に、thm-bu-main により、$D^n$ から $S^{n-1}$ へのレトラクションは存在しない。
一般の $n$ で、$S^n$ から $S^{n-1}$ への奇写像を作る。レトラクション $r\colon D^n\to S^{n-1}$ があるとし、$x=(x',x_{n+1})\in S^n$($x'\in D^n$)に対して
$$
g(x):=\begin{cases}r(x')&(x_{n+1}\geq0)\\-r(-x')&(x_{n+1}\leq0)\end{cases}
$$
とおく。赤道 $x_{n+1}=0$ では $\lvert x'\rvert=1$ なので $r(x')=x'$、$-r(-x')=-(-x')=x'$ であり、2 つの式は一致する。上下の閉半球はそれぞれ閉集合で、$g$ はそれぞれの上で連続なので、$g$ は $S^n$ 上で連続である(連続写像の記事の命題「有限閉被覆の貼り合わせ補題」)。$x_{n+1}>0$ なら $-x$ は下半球にあり $g(-x)=-r(x')=-g(x)$、赤道では $g(-x)=-x'=-g(x)$ なので、$g$ は奇写像 $S^n\to S^{n-1}$ である。$n=2$ ではこれは thm-bu-dim-two に反する。$\square$
$D^n$ から $S^{n-1}$ へのレトラクションがないことは Brouwerの不動点定理と同値である(レトラクトの記事の命題「Brouwerの不動点定理との同値性」)。したがって Borsuk–Ulam の定理は Brouwer の不動点定理を含む。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 行き先の次元($\mathbb{R}^n$ を $\mathbb{R}^{n+1}$ にする) | 包含写像 $S^2\to\mathbb{R}^3$ | 対蹠点で値が一致する点の存在 |
| $f$ の連続性 | $S^1$ 上の関数 $f(x,y)=1$($y>0$ または $(x,y)=(1,0)$)、それ以外で $0$ | 対蹠点で値が一致する点の存在 |
| 定義域が球面で対合が対蹠写像であること | トーラス $S^1\times S^1$ と対合 $(z,w)\mapsto(-z,w)$、$f(z,w)=z\in\mathbb{R}^2$ | 対合で移り合う 2 点で値が一致する点の存在 |
1 行目:包含 $\iota(x)=x$ は連続であり(満たす性質)、行き先の次元が $n+1=3$ で定理の仮定(行き先 $\mathbb{R}^n$)をみたさない(満たさない性質)。$\iota(-x)=-x\neq x=\iota(x)$ なので一致する点はない。次元を 1 つ下げることが本質的である。
2 行目:$y>0$ の点の対蹠点は $y<0$ なので値は $1$ と $0$、$(1,0)$ と $(-1,0)$ の値も $1$ と $0$ で、すべての対蹠点の組で値が違う(成り立たない)。$f$ は $(\pm1,0)$ で連続でない(満たさない性質)。prop-bu-dim-one の証明の中間値の定理が使えない。
3 行目:トーラス $T:=S^1\times S^1$($S^1\subset\mathbb{C}$)の写像 $\tau(z,w):=(-z,w)$ は $\tau\circ\tau=\mathrm{id}$ で固定点をもたない($-z\neq z$)。この点で $\tau$ は $S^2$ の対蹠写像と同じ性質をもち、$T$ も $S^2$ と同じく 2 次元の閉曲面である(満たす性質)。しかし $f(z,w):=z\in S^1\subset\mathbb{R}^2$ は連続で $f(\tau(z,w))=-z\neq z=f(z,w)$ なので、「$f(p)=f(\tau(p))$ となる点がある」という類似は成り立たない。定理は対蹠写像をもつ球面に固有の性質であり、lem-bu-odd-winding の「北半球というふた」に相当するものが $T$ にはない。
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