Paleyグラフ

同義語:ペイリーグラフPaley graph

概要

Paleyグラフ(Paley graph)とは、$q\equiv1\pmod4$ を満たす素数冪 $q$ について、有限体 $\mathbb{F}_q$ の元を頂点とし、差が $0$ でない平方元になる 2 元を辺で結んだグラフである。$\frac{q-1}{2}$-正則な自己補グラフで、隣接行列の固有値は $\frac{q-1}{2}$ と $\frac{-1\pm\sqrt{q}}{2}$(重複度はどちらも $\frac{q-1}{2}$)だけなので、パラメータ $(q,\frac{q-1}{2},\frac{q-5}{4},\frac{q-1}{4})$ の強正則グラフである。クリークと独立集合の大きさは $\sqrt{q}$ 以下で、大きな頂点集合の間では辺が無作為なグラフのように分布する。$17$ 頂点の Paley グラフから $R(4,4)>17$ が分かる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 有限体, 隣接行列, 正則グラフ, 補グラフ

Paley グラフ(Paley graph)は、$q\equiv1\pmod4$ を満たす素数冪 $q$ について、有限体 $\mathbb F_q$ の元を頂点とし、差が $0$ でない平方元になる 2 元を辺で結んだグラフである。規則的な代数的構成でありながら、辺の配置は確率 $\frac12$ で辺を引いた無作為なグラフによく似ている。たとえば、どの頂点も頂点のちょうど半分弱と隣接し、補グラフと同型であり、大きなクリークも大きな独立集合ももたない。
この記事では、Paley グラフの隣接行列の固有値を、有限体の加法についての指標と Gauss 和で計算する。固有値は次数 $\frac{q-1}2$ のほかに $\frac{-1\pm\sqrt q}2$ の 2 つしかなく、ここから Paley グラフが強正則グラフであることが従う。応用として、クリークと独立集合の大きさが $\sqrt q$ 以下であることを示し、$17$ 頂点の Paley グラフを使って Ramsey 数 $R(4,4)=18$ を確かめる。最後に、$q\equiv3\pmod4$ の場合の Paley トーナメントと、条件を外したときの反例を述べる。

平方元と平方指標

この記事では $q$ を奇数の素数冪とし、$\mathbb F_q^\times:=\mathbb F_q\setminus\{0\}$ と書く。$a\in\mathbb F_q^\times$ が、ある $y\in\mathbb F_q^\times$ により $a=y^2$ と書けるとき 平方元、そうでないとき 非平方元 という。平方元の全体を $Q$、非平方元の全体を $N$ とする。

平方元の個数と積

$q$ を奇数の素数冪とする。

  1. $\lvert Q\rvert=\lvert N\rvert=\frac{q-1}2$ である。各 $a\in Q$ は、$\mathbb F_q^\times$ のちょうど 2 つの元 $\pm y$ の平方である。
  2. $Q$ は $\mathbb F_q^\times$ の部分群であり、$n\in N$ なら $nQ=N$、$nN=Q$ である。
  3. $-1\in Q$ であることと $q\equiv1\pmod4$ は同値である。

有限体 の定理「有限体の乗法群の構造」により $\mathbb F_q^\times$ は位数 $q-1$ の巡回群なので、生成元 $\gamma$ をとる。$q-1$ は偶数なので、$\gamma^j$ が平方元であることと $j$ が偶数であることは同値である($\gamma^j=\gamma^{2i}$ なら $j\equiv2i\pmod{q-1}$ で $j$ は偶数)。
1:$j=0,1,\dots,q-2$ のうち偶数と奇数は $\frac{q-1}2$ 個ずつである。$y^2=a$ の解は $y$ と $-y$ で、$q$ が奇数なので $y\neq-y$ であり、2 次方程式の解は高々 2 個なので、これで全部である。
2:$Q=\{\gamma^{2i}\}$ は部分群で、指数は $2$ である。$n=\gamma^{j}$($j$ は奇数)をかけると指数の偶奇が入れ替わるので、$nQ=N$、$nN=Q$ である。
3:$-1$ は $\mathbb F_q^\times$ のただ 1 つの位数 $2$ の元なので $-1=\gamma^{(q-1)/2}$ であり、$-1\in Q$ は $\frac{q-1}2$ が偶数、すなわち $q\equiv1\pmod4$ と同値である。$\square$

$q=p$ が素数のとき、平方元は法 $p$ の 平方剰余 であり、lem-paley-squares の 3 は 平方剰余の相互法則 の定理「補充法則」の第 1 補充法則にあたる。

定義と基本性質

Paley グラフの定義

$q\equiv1\pmod4$ を満たす素数冪 $q$ について、$\mathbb F_q$ の元を頂点とし、相異なる $x,y$ を $x-y\in Q$ のときに辺で結んだ単純グラフを、位数 $q$ の Paley グラフ といい、$P_q$ と書く。

$q\equiv1\pmod4$ なら lem-paley-squares の 3 により $-1\in Q$ なので、$x-y\in Q$ と $y-x=(-1)(x-y)\in Q$ は同値であり、隣接は対称である。言いかえると、$P_q$ は加法群 $\mathbb F_q$ の、生成系 $Q$ についての Cayleyグラフ である。

Paley グラフの対称性

$q\equiv1\pmod4$ とする。

  1. $P_q$ は $\frac{q-1}2$-正則である。
  2. $a\in Q$、$b\in\mathbb F_q$ について、$x\mapsto ax+b$ は $P_q$ の自己同型である。
  3. $n\in N$ について、$x\mapsto nx$ は $P_q$ からその補グラフへの同型である。とくに $P_q$ は自己補グラフである。
  4. 隣接する頂点の順序対 $(x,y)$ と $(x',y')$ について、$(x,y)$ を $(x',y')$ に写す自己同型がある。隣接しない相異なる頂点の順序対どうしについても同様である。

1:$x$ に隣接する頂点は $x+s$($s\in Q$)なので、$\lvert Q\rvert=\frac{q-1}2$ 個である。
2:$(ax+b)-(ay+b)=a(x-y)$ であり、lem-paley-squares の 2 から、$a\in Q$ なら $a(x-y)\in Q$ と $x-y\in Q$ は同値である。$x\mapsto ax+b$ は全単射なので自己同型である。
3:同じく 2 から、$n\in N$ なら $n(x-y)\in Q$ と $x-y\in N$ は同値であり、$x\neq y$ のとき $x-y\in N$ は「$P_q$ で隣接しない」ことと同値である。
4:$a:=(y'-x')(y-x)^{-1}$、$b:=x'-ax$ とおくと、$x\mapsto ax+b$ は $x$ を $x'$ に、$y$ を $y'$ に写す。$(x,y)$ と $(x',y')$ がともに隣接する対なら $y-x,y'-x'\in Q$ なので、ともに隣接しない対なら $y-x,y'-x'\in N$ なので、どちらの場合も 2 から $a\in Q$ である($Q$ は部分群なので、$N$ の元の逆元は $N$ に属する)。2 によりこれは自己同型である。$\square$

小さい Paley グラフ
  • $P_5$:$Q=\{1,4\}=\{\pm1\}$ なので、$x$ と $x\pm1$ を結んだ五角形 $C_5$ である。
  • $P_9$:$\mathbb F_9=\mathbb F_3[i]$($i^2=-1$)で $Q=\{\pm1,\pm i\}$ である。$x=a+bi$ と $y=c+di$ が隣接するのは、$a=c$ と $b=d$ のちょうど一方が成り立つときで、$3\times3$ の盤上で同じ行か同じ列にある 2 マスを結んだグラフである(Conwayの99グラフ問題 の例「9 頂点の例」)。
  • $P_{13}$:$Q=\{1,3,4,9,10,12\}$ で、6-正則である。
  • $P_{17}$:$Q=\{1,2,4,8,9,13,15,16\}$ で、8-正則である。この例は下で Ramsey 数の計算に使う。

主定理:固有値

$P_q$ の隣接行列 $A$ を、$\mathbb F_q$ の元で添字づけた $q$ 次の実対称行列とし、関数 $v\colon\mathbb F_q\to\mathbb C$ に $(Av)(x)=\sum_{y\sim x}v(y)$(和は $x$ に隣接する $y$ にわたる)として作用させる。固有ベクトルは、加法についての指標から作る。
有限体 の系「有限体の加法群」により、$q=p^r$($p$ は素数)なら $(\mathbb F_q,+)$ は $(\mathbb Z/p\mathbb Z)^r$ と同型である。この同型で $x$ が $(c_1,\dots,c_r)$ に対応するとき $\psi(x):=e^{2\pi ic_1/p}$ と定めると、$\psi\colon\mathbb F_q\to\mathbb C^\times$ は $\psi(x+y)=\psi(x)\psi(y)$ を満たし、$\psi\not\equiv1$ である。以下この $\psi$ を固定し、$a\in\mathbb F_q$ について
$$ v_a(x):=\psi(ax),\qquad g(a):=\sum_{x\in\mathbb F_q}\psi(ax^2) $$
とおく。$g(a)$ は 2 次の Gauss 和 である(素数 $p$ の場合の Gauss 和は Gauss和)。

加法的な指標の直交性

$c\in\mathbb F_q$ について、$c=0$ なら $\sum_{x\in\mathbb F_q}\psi(cx)=q$、$c\neq0$ なら $0$ である。したがって $a\neq b$ なら $\sum_xv_a(x)\overline{v_b(x)}=0$ であり、$v_a$($a\in\mathbb F_q$)は $\mathbb C^{\mathbb F_q}$ の基底である。

$c=0$ なら各項が $1$ である。$c\neq0$ なら $x\mapsto cx$ は全単射なので、和は $s:=\sum_y\psi(y)$ に等しい。$\psi(y_0)\neq1$ となる $y_0$ をとると、$y\mapsto y+y_0$ も全単射なので $s=\sum_y\psi(y+y_0)=\psi(y_0)s$ であり、$s=0$ である。$\lvert\psi(x)\rvert=1$ から $\overline{\psi(x)}=\psi(-x)$ なので、$\sum_xv_a(x)\overline{v_b(x)}=\sum_x\psi((a-b)x)=0$ である。0 でない直交するベクトルが $q$ 個あるので、基底である。$\square$

Paley グラフの固有値

$q\equiv1\pmod4$ とする。

  1. $Av_0=\frac{q-1}2v_0$ であり、$a\neq0$ なら $Av_a=\frac{g(a)-1}2\,v_a$ である。
  2. $a\neq0$ なら $g(a)$ は実数で $g(a)^2=q$、すなわち $g(a)=\pm\sqrt q$ である。
  3. $g(a)=\sqrt q$ となる $a\in\mathbb F_q^\times$ と $g(a)=-\sqrt q$ となる $a$ は、$\frac{q-1}2$ 個ずつある。
    したがって $A$ の固有値は $\frac{q-1}2$(重複度 $1$)と $\frac{-1+\sqrt q}2$、$\frac{-1-\sqrt q}2$(重複度はどちらも $\frac{q-1}2$)である。
Gauss 和の計算

1(固有ベクトル)。 $x$ に隣接する頂点は $x+s$($s\in Q$)なので
$$ (Av_a)(x)=\sum_{s\in Q}\psi(a(x+s))=\psi(ax)\sum_{s\in Q}\psi(as)=\theta_a\,v_a(x),\qquad\theta_a:=\sum_{s\in Q}\psi(as) $$
である。$\theta_0=\lvert Q\rvert=\frac{q-1}2$ である。lem-paley-squares の 1 により各 $s\in Q$ は $\mathbb F_q^\times$ のちょうど 2 元の平方なので、$\sum_{x\neq0}\psi(ax^2)=2\theta_a$ であり、$x=0$ の項 $1$ を加えて $g(a)=1+2\theta_a$ である。
2(絶対値と実数性)。 $a\neq0$ とする。$\overline{\psi(ay^2)}=\psi(-ay^2)$ なので
$$ \lvert g(a)\rvert^2=\sum_{x,y\in\mathbb F_q}\psi\bigl(a(x^2-y^2)\bigr)=\sum_{x,y}\psi\bigl(a(x-y)(x+y)\bigr) $$
である。$q$ は奇数なので $2$ は $\mathbb F_q$ で可逆であり、$(x,y)\mapsto(u,w):=(x-y,x+y)$ は $\mathbb F_q^2$ の全単射である。よって lem-paley-orthogonal により
$$ \lvert g(a)\rvert^2=\sum_{u}\sum_{w}\psi(auw)=\sum_u\begin{cases}q&(au=0)\\0&(au\neq0)\end{cases}=q $$
である。次に、$-1\in Q$ なので $-1=\iota^2$ となる $\iota\in\mathbb F_q$ がある。$x\mapsto\iota x$ は全単射なので
$$ \overline{g(a)}=\sum_x\psi(-ax^2)=\sum_x\psi\bigl(a(\iota x)^2\bigr)=g(a) $$
であり、$g(a)$ は実数である。$g(a)^2=\lvert g(a)\rvert^2=q$ を得る。
3(符号の個数)。 $c=z^2\in Q$ なら、$x\mapsto zx$ が全単射なので $g(ac)=g(a)$ である。$n\in N$ をとる。1 の計算と lem-paley-squares の 2($nQ=N$)から
$$ g(a)+g(an)=2+2\sum_{s\in Q}\psi(as)+2\sum_{t\in N}\psi(at)=2+2\sum_{x\neq0}\psi(ax)=2+2(0-1)=0 $$
である(lem-paley-orthogonal)。よって $g$ は $Q$ の上で一定の値 $g(1)$ をとり、$N$ の上で $-g(1)$ をとる。$\lvert Q\rvert=\lvert N\rvert=\frac{q-1}2$ から 3 が従う。
最後に、lem-paley-orthogonal により $v_a$ は基底なので、1〜3 から固有値とその重複度が上のとおりに定まる。$\square$

この計算は Zha23 Theorem 3.3.12(p. 110)の素数 $p$ の場合の計算を、素数冪 $q$ に広げたものである。固有値の主張そのものは BH11 Proposition 9.1.1(p. 114)にある。$g(1)$ が $\sqrt q$ と $-\sqrt q$ のどちらになるかは、上の議論では決まらず、以下でも使わない。

強正則であること

頂点が $M$ 個の $k$-正則な単純グラフが、完全グラフでも辺のないグラフでもなく、隣接する 2 頂点の共通の隣接頂点がつねに $\lambda$ 個、隣接しない相異なる 2 頂点の共通の隣接頂点がつねに $\mu$ 個であるとき、パラメータ $(M,k,\lambda,\mu)$ の強正則グラフ という(強正則グラフ の定義「強正則グラフ」)。

Paley グラフは強正則グラフ

$q=4t+1$ を素数冪とすると、$P_q$ はパラメータ $(4t+1,\ 2t,\ t-1,\ t)$ の強正則グラフである。とくに $P_q$ は連結で、直径は $2$ である。

$J$ をすべての成分が $1$ の行列、$I$ を単位行列とする。$\theta=\frac{-1\pm\sqrt q}2$ は $\theta^2+\theta-t=0$ を満たす($\theta^2+\theta=\frac{q-1}4=t$)。$B:=A^2+A-tI-tJ$ とおく。$a\neq0$ なら $v_a$ は $\mathbf 1=v_0$ と直交するので $Jv_a=0$ であり、thm-paley-spectrum により $Av_a=\theta v_a$($\theta$ は $\frac{-1\pm\sqrt q}2$ のどちらか)なので $Bv_a=(\theta^2+\theta-t)v_a=0$ である。$v_0=\mathbf 1$ については $Jv_0=qv_0$ から
$$ Bv_0=\bigl((2t)^2+2t-t-tq\bigr)v_0=\bigl(4t^2+t-t(4t+1)\bigr)v_0=0 $$
である。基底を $0$ に写すので $B=0$、すなわち
$$ A^2=tI-A+tJ=2t\,I+(t-1)A+t\,(J-I-A) $$
である。$A^2$ の $(x,y)$ 成分は $x,y$ の共通の隣接頂点の個数なので、対角成分から $k=2t$、隣接する対で $t-1$、隣接しない相異なる対で $t$ を得る。$P_q$ は $Q$ と $N$ がともに空でないので完全グラフでも辺のないグラフでもない。$\mu=t\ge1$ なので、隣接しない 2 頂点には共通の隣接頂点があり、連結で直径は $2$ である。$\square$

ある整数 $t$ についてパラメータが $(4t+1,2t,t-1,t)$ の強正則グラフを 会議グラフ(conference graph)とよび、Paley グラフはその代表例である(BH11 §9.1.6、p. 116)。

クリークと独立集合

クリーク はどの 2 頂点も隣接する頂点の集合、独立集合 はどの 2 頂点も隣接しない頂点の集合である。Paley グラフについては、次の上界が初等的に示せる。

クリークと独立集合の大きさの上界

$q\equiv1\pmod4$ とする。$P_q$ のクリークと独立集合は、どれも頂点が $\sqrt q$ 個以下である。

$K$ をクリークとし、$n\in N$ をとる。写像 $K\times K\to\mathbb F_q$、$(x,y)\mapsto x+ny$ が単射であることを示す。$x+ny=x'+ny'$ とすると $x-x'=n(y'-y)$ である。$y\neq y'$ なら、$K$ がクリークなので $y'-y\in Q$ であり、右辺は $nQ=N$ に属する(lem-paley-squares の 2)。左辺は $x=x'$ なら $0$、$x\neq x'$ なら $Q$ に属するので、どちらにしても右辺と等しくない。よって $y=y'$ であり、$x=x'$ である。したがって $\lvert K\rvert^2\le q$ である。独立集合 $L$ については、prop-paley-basic の 3 により $x\mapsto nx$ が $L$ をクリークに写すので、同じ評価が成り立つ。$\square$

上界に等号が成り立つ場合

$q=p^2$($p$ は奇素数)とする。$\mathbb F_q^\times$ は位数 $p^2-1$ の巡回群で、$\mathbb F_p^\times$ はその位数 $p-1$ の部分群、$Q$ は位数 $\frac{p^2-1}2$ の部分群である。巡回群では位数 $m$ の部分群はただ 1 つで、位数 $m'$ の部分群が位数 $m$ の部分群を含むことは $m\mid m'$ と同値である。$p-1$ は $\frac{p^2-1}2=(p-1)\frac{p+1}2$ を割り切るので $\mathbb F_p^\times\subset Q$ である。よって部分体 $\mathbb F_p$ の 2 元の差は平方元であり、$\mathbb F_p$ は $p=\sqrt q$ 個の頂点のクリークである。$P_9$ では $\mathbb F_3=\{0,1,2\}$、$P_{25}$ では $\mathbb F_5$ がそれにあたる。

$q$ が素数のときは等号が成り立つとは限らない。たとえば $P_{17}$ のクリークの最大の大きさは $3$ であり、$\sqrt{17}$ より小さい(下の定理の証明で確かめる)。

Ramsey 数 $R(4,4)$

Ramseyの定理 の定義「Ramsey 数」の $R(s,t)$ は、$K_r$ の辺をどう赤青に塗っても赤い $K_s$ か青い $K_t$ が現れる最小の $r$ である。$K_r$ の辺の塗り分けと $r$ 頂点のグラフは、赤い辺の全体をとることで対応し、赤い $K_s$ はクリーク、青い $K_t$ は独立集合にあたる。

$17$ 頂点の Paley グラフと $R(4,4)$

$P_{17}$ は $4$ 頂点のクリークも $4$ 頂点の独立集合ももたない。したがって $R(4,4)=18$ である。

$Q=\{1,2,4,8,9,13,15,16\}$ である。$4$ 頂点のクリーク $K$ があるとし、その 2 頂点 $x,y$ をとる。prop-paley-basic の 4 により、$(x,y)$ を $(0,1)$ に写す自己同型があるので、$0,1\in K$ としてよい。$K$ の残りの 2 頂点は $0$ と $1$ の両方に隣接する。$z$ が $0$ と $1$ の両方に隣接するのは $z\in Q$ かつ $z-1\in Q$ のときで、$Q$ の元を順に調べると $z=2,9,16$ だけである($z-1=1,8,15$)。ところが $9-2=7$、$16-2=14$、$16-9=7$ はどれも $Q$ に属さないので、この 3 頂点のどの 2 つも隣接しない。これは $K$ がクリークであることに反する。一方 $\{0,1,2\}$ は差が $1,2,1\in Q$ なので 3 頂点のクリークであり、クリークの最大の大きさは $3$ である。独立集合は、$3\in N$ による $x\mapsto3x$ でクリークに写る(prop-paley-basic の 3)ので、$4$ 頂点の独立集合もない。
よって $K_{17}$ の辺を、$P_{17}$ の辺を赤、それ以外を青に塗ると、単色の $K_4$ がなく、$R(4,4)>17$ である。一方、Ramseyの定理 の命題「3 と 4 の Ramsey 数」により $R(3,4)=9$、命題「Ramsey 数の基本性質」により $R(4,3)=9$ であり、補題「Ramsey 数の漸化不等式」から $R(4,4)\le R(3,4)+R(4,3)=18$ である。$\square$

辺の分布

頂点が $M\ge2$ 個の $d$-正則グラフ $G$ の隣接行列の固有値を $d=\lambda_1\ge\lambda_2\ge\dots\ge\lambda_M$ と並べ、$\lambda(G):=\max_{2\le i\le M}\lvert\lambda_i\rvert$ とおく。$\lambda(G)$ が小さいほど、辺は頂点の集合の間に一様に分布する(エクスパンダーグラフ の定理「エクスパンダー混合補題」)。頂点の集合 $S,T$ について、$e(S,T)$ を $s\in S$、$t\in T$ が隣接する順序対 $(s,t)$ の個数とする。

Paley グラフの辺の分布

$q\equiv1\pmod4$ とする。$P_q$ の頂点の集合 $S,T$ について
$$ \Bigl\lvert e(S,T)-\frac{q-1}{2q}\lvert S\rvert\lvert T\rvert\Bigr\rvert\le\frac{\sqrt q+1}2\sqrt{\lvert S\rvert\lvert T\rvert} $$
である。

thm-paley-spectrum により、$P_q$ は $d=\frac{q-1}2$ 正則で、$d$ の重複度は $1$、$\lambda(P_q)=\frac{\sqrt q+1}2$ である。エクスパンダーグラフ の定理「エクスパンダー混合補題」の右側の不等式 $\bigl\lvert e(S,T)-\frac{d\lvert S\rvert\lvert T\rvert}{q}\bigr\rvert\le\lambda(P_q)\sqrt{\lvert S\rvert\lvert T\rvert}$ に代入すればよい。$\square$

確率 $\frac12$ の無作為なグラフでは $e(S,T)$ の期待値はおよそ $\frac12\lvert S\rvert\lvert T\rvert$ である。cor-paley-mixing は、$\lvert S\rvert\lvert T\rvert$ が $q$ に比べて大きい集合について、Paley グラフの辺の本数がこの値に近いことを示す。この意味で Paley グラフは 擬ランダム(準ランダム)なグラフの代表例である(Zha23 Definition 3.3.5(p. 108)と Theorem 3.3.12(p. 110)は、素数 $p$ の場合をこの観点で扱う)。

Paley トーナメント

$q\equiv3\pmod4$ のときは $-1\in N$ なので、$x-y$ と $y-x$ のちょうど一方が平方元になり、隣接は対称にならない。そこで向きを付ける。

Paley トーナメントの構成

$q\equiv3\pmod4$ を素数冪とする。$\mathbb F_q$ の元を頂点とし、相異なる $x,y$ について $y-x\in Q$ のとき $x\to y$ と向きを付けると、トーナメント が得られる。各頂点から出る辺は $\frac{q-1}2$ 本で、正則トーナメントである。

$x\neq y$ なら $y-x\in\mathbb F_q^\times$ で、lem-paley-squares の 3 により $-1\in N$ なので、2 から $y-x\in Q$ と $x-y=(-1)(y-x)\in Q$ のちょうど一方が成り立つ。よって相異なる 2 頂点の間には、ちょうど 1 本の向きの付いた辺がある。$x$ から出る辺の行き先は $x+s$($s\in Q$)で、$\frac{q-1}2$ 個である。$\square$

たとえば $q=7$ では $Q=\{1,2,4\}$ で、$x\to x+1,x+2,x+4$ である。$q\equiv3\pmod4$、$q\ge7$ のとき、$Q$ は加法群 $\mathbb F_q$ の $\bigl(q,\frac{q-1}2,\frac{q-3}4\bigr)$ 差集合でもある(組合せデザイン の命題「平方元の差集合」)。同じ平方指標から $q+1$ 次の Hadamard 行列が作られる(Hadamard行列 の定理「Paley の第 1 構成」)。

反例:条件を外すと崩れること

外す条件反例成り立たなくなること
$q\equiv1\pmod4$$q=7$:$1\in Q$ だが $-1=6\notin Q=\{1,2,4\}$「$x-y\in Q$」が $x,y$ について対称であること(無向グラフを定めること)
lem-paley-squares の「$q$ が奇数」$q=4$:$\mathbb F_4$ の $0$ でない元はすべて平方元$\lvert Q\rvert=\lvert N\rvert=\frac{q-1}2$(差が平方元の 2 元を結ぶと完全グラフになる)
反例の確かめ

1 行目。 $\mathbb F_7$ で $1^2=1$、$2^2=4$、$3^2=2$ なので $Q=\{1,2,4\}$ である。$0-6=1\in Q$ だが $6-0=6\notin Q$ なので、「$x-y\in Q$ のとき結ぶ」という規則は $(x,y)=(0,6)$ と $(6,0)$ で食い違う。これは lem-paley-squares の 3 のとおりである。
2 行目。 $\mathbb F_4$ は標数 $2$ で、$y\mapsto y^2$ は $\mathbb F_4^\times$ の単射($y^2=z^2$ なら $(y-z)^2=y^2-z^2=0$)なので全単射であり、$0$ でない 3 元はすべて平方元である。よって $\lvert Q\rvert=3$、$N=\emptyset$ である。差が平方元の 2 元を結ぶと、相異なる 2 元はすべて結ばれ、完全グラフ $K_4$ になる。完全グラフは強正則グラフの定義から除かれており、補グラフ(辺のないグラフ)と同型でもない。lem-paley-squares の証明では、$q-1$ が偶数であること($y\neq-y$)を使っている。

補足

Paley グラフの位置づけ
  • Paley グラフは $\mathbb F_q$ の加法群の Cayley グラフであり、可換群の Cayley グラフの固有値が指標の和で与えられることの代表例である(Cayleyグラフ の命題「巡回群の Cayley グラフの固有値」は $q$ が素数の場合にあたる)。
  • 自己補グラフの頂点数は $4$ で割って $0$ か $1$ 余る(自己補グラフ の系「自己補グラフの頂点数」)。Paley グラフの頂点数 $q\equiv1\pmod4$ はこれと合っている。
  • 強正則グラフ の記事は、強正則グラフの固有値と重複度の公式などの一般論を扱い、Paley グラフをその例として挙げている。

関連項目

参考文献

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