単調関数(monotone function)とは、実数の部分集合上の実数値関数 $f$ で、$x< y$ ならつねに $f(x)\le f(y)$ となるもの(単調増加)か、つねに $f(x)\ge f(y)$ となるもの(単調減少)のことである。連続性を仮定しなくても、単調関数はどの点でも左右の極限をもち、不連続点は跳びだけで高々可算個であり、逆にどんな可算集合もある単調関数の不連続点の集合になる。区間上の単調関数が連続であることは、値の集合が区間であることと同値で、ここから狭義単調関数の逆関数の連続性が従う。閉区間上の有界変動関数は 2 つの単調増加関数の差としてちょうど書ける関数であり(Jordan 分解)、単調関数はほとんどすべての点で微分可能である(Lebesgue)。
入力を大きくすると出力が減らない関数を 単調増加関数 といい、増えない関数を 単調減少関数 という。両者をまとめて 単調関数 と呼ぶ。条件は「大小の順序を保つ」という 1 つの不等式だけで、連続性も微分可能性も仮定しない。それにもかかわらず、単調関数は驚くほど行儀がよい。どの点でも左右の極限をもち(thm-mon-one-sided)、不連続点は跳びだけで、その個数は高々可算である(thm-mon-discontinuities)。逆に、どんな可算集合も、ちょうどそこで不連続になる単調関数の不連続点の集合として現れる(thm-mon-prescribed)。区間の上では、単調関数が連続であることと値の集合が区間であることは同値である(thm-mon-image-interval)。さらに、有界変動関数は 2 つの単調増加関数の差としてちょうど書ける関数である(thm-mon-jordan)。
以下、$S$ は $\mathbb{R}$ の空でない部分集合、$f\colon S\to\mathbb{R}$ は関数とする。
「狭義」を強調して 1 の前者を 広義単調増加、あるいは 非減少(nondecreasing)と呼ぶ流儀もある。逆に、単に「単調増加」と書いて狭義単調増加を表す本もあるので、文献を読むときは定義を確かめる必要がある。定数関数は単調増加かつ単調減少である。$f$ が単調増加であることと $-f$ が単調減少であることは同値なので、以下の定理の多くは単調増加の場合だけを示せば十分である。狭義単調な関数は単射である($x\ne y$ なら $x< y$ または $y< x$ で、値が異なる)。
数列 $(a_n)$ は $\mathbb{N}$ 上の関数なので、単調な数列は単調関数の特別な場合である(単調収束定理)。より一般に、半順序集合 の間の順序を保つ写像も単調写像という。この記事では実数の部分集合上の実数値関数を扱う。
単調増加関数 $f$ と点 $c$ について、$c$ より左の点での値の上限と右の点での値の下限
$$
f(c-):=\sup\{f(x)\mid x\in S,\ x< c\},\qquad f(c+):=\inf\{f(x)\mid x\in S,\ x>c\}
$$
を考える。$c\in S$ の左右に $S$ の点があれば、$f(x)\le f(c)\le f(y)$($x< c< y$)なので、これらは有限で $f(c-)\le f(c)\le f(c+)$ を満たす。差 $f(c+)-f(c-)$ を $c$ での 跳び(jump)という。
単調増加関数のグラフは、左から右へたどると下がることがない。連続でなくなるとすれば、グラフが途中で「上へ跳ぶ」場合しかない。上下に振動したり、近づいた先で値が定まらなかったりする不連続は、単調性が許さない。跳びの大きさの和は全体の増加量 $f(b)-f(a)$ を超えられないので、大きい跳びは有限個しかなく、跳びの個数は高々可算になる。グラフの縦の幅を跳びで「使い切る」ことはできても、非可算個の跳びを並べることはできない。
有理数を $q_1,q_2,q_3,\dots$ と重複なく並べ、
$$
f(x):=\sum_{n\colon q_n\le x}2^{-n}\qquad(x\in\mathbb{R})
$$
とおく。$x< y$ なら $f(y)-f(x)=\sum_{n\colon x< q_n\le y}2^{-n}>0$(区間 $(x,y]$ は有理数を含む)なので、$f$ は狭義単調増加で、値は $[0,1]$ にある。thm-mon-prescribed により、$f$ はすべての有理数で不連続、すべての無理数で連続である。不連続点が稠密であっても、可算であることは変わらない。
$f\colon S\to\mathbb{R}$ を単調増加とし、$c\in\mathbb{R}$ を $S\cap(-\infty,c)$ の集積点とする。このとき左極限 $\lim_{x\to c-}f(x)$ は $(-\infty,\infty]$ の中に存在し、$f(c-)=\sup\{f(x)\mid x\in S,\ x< c\}$ に等しい。同様に、$c$ が $S\cap(c,\infty)$ の集積点なら、右極限 $\lim_{x\to c+}f(x)$ は $[-\infty,\infty)$ の中に存在し、$f(c+)=\inf\{f(x)\mid x\in S,\ x>c\}$ に等しい。単調減少の場合は上限と下限を入れ替えて同じことが成り立つ。
要点:上限 $a$ に $\varepsilon$ だけ近い値 $f(x_\varepsilon)$ を 1 つとれば、単調性により $x_\varepsilon$ と $c$ の間のすべての $x$ で $a-\varepsilon< f(x)\le a$ となる。
左極限を示す。$a:=\sup\{f(x)\mid x\in S,\ x< c\}$ とおく。
$a<\infty$ の場合。$\varepsilon>0$ をとる。上限の定義から $f(x_\varepsilon)>a-\varepsilon$ となる $x_\varepsilon\in S$、$x_\varepsilon< c$ がある。$\delta:=c-x_\varepsilon>0$ とおく。$x\in S$、$c-\delta< x< c$ なら $x_\varepsilon< x$ なので、単調性から $a-\varepsilon< f(x_\varepsilon)\le f(x)\le a$ であり、$|f(x)-a|<\varepsilon$ である。よって $\lim_{x\to c-}f(x)=a$ である。
$a=\infty$ の場合。$M\in\mathbb{R}$ をとると、$f(x_M)>M$ となる $x_M\in S$、$x_M< c$ があり、$x_M< x< c$ を満たす $x\in S$ では $f(x)\ge f(x_M)>M$ である。よって左極限は $+\infty$ である。
右極限は、$g(x):=-f(-x)$($-S$ 上で単調増加)に左極限の結果を当てはめればよい。単調減少の場合は $-f$ に当てはめる。
$c\in S$ で $c$ の左右に $S$ の点が集積していれば、定義の節で見たとおり $f(c-)\le f(c)\le f(c+)$ であり、左右の極限は有限である。$c$ が $S$ の外の点(たとえば開区間の端点)なら極限は $\pm\infty$ になりうる。たとえば $\tan$ を $(-\frac\pi2,\frac\pi2)$ 上で考えると $\lim_{x\to\pi/2-}\tan x=+\infty$ である。$c=+\infty$ についても同じ議論で $\lim_{x\to\infty}f(x)=\sup f(S)$ が成り立つ($S$ が上に有界でないとき)。この定理は Leb Proposition 3.6.2(p. 149)にある。
$I$ を区間、$f\colon I\to\mathbb{R}$ を単調増加とする。
1:内点 $c$ では左右に $I$ の点があるので、thm-mon-one-sided により $\lim_{x\to c-}f(x)=f(c-)$、$\lim_{x\to c+}f(x)=f(c+)$ であり、$f(c-)\le f(c)\le f(c+)$ である。$f$ が $c$ で連続であることは、左右の極限がともに $f(c)$ に等しいことと同値である。$f(c-)=f(c+)$ なら両者は挟まれた $f(c)$ に等しいので連続であり、逆に連続なら $f(c-)=f(c)=f(c+)$ である。
2:$a=t_0< c_1< t_1< c_2< t_2<\dots< c_n< t_n=b$ となる点 $t_k$ を選ぶ($t_k$ は $c_k$ と $c_{k+1}$ の間の任意の点)。$t_{k-1}< c_k< t_k$ なので、$f(c_k-)$ と $f(c_k+)$ の定義から $f(t_{k-1})\le f(c_k-)$、$f(c_k+)\le f(t_k)$ であり、
$$
\sum_{k=1}^n\bigl(f(c_k+)-f(c_k-)\bigr)\le\sum_{k=1}^n\bigl(f(t_k)-f(t_{k-1})\bigr)=f(b)-f(a)
$$
である。
3:$I$ が 1 点なら主張は明らかなので、$I$ は 1 点でないとする。$I$ の端点は高々 2 個なので、内点の不連続点の集合 $D$ が高々可算であることを示せばよい。$I$ の内部は、閉区間の増大列 $[a_1,b_1]\subset[a_2,b_2]\subset\cdots$($a_m< b_m$ は $I$ の内点)の和集合として書ける。正の整数 $m,j$ について
$$
D_{m,j}:=\Bigl\{c\in D\cap(a_m,b_m)\Bigm| f(c+)-f(c-)>\tfrac1j\Bigr\}
$$
とおくと、2 により $D_{m,j}$ の任意の $n$ 個の点について $\frac nj< f(b_m)-f(a_m)$ なので、$D_{m,j}$ は有限集合で、元の個数は $j\bigl(f(b_m)-f(a_m)\bigr)$ 未満である。1 により $D$ の各点の跳びは正なので、$D=\bigcup_{m,j}D_{m,j}$ であり、可算個の有限集合の和集合として高々可算である(可算集合)。
1 から、単調関数の不連続点は「跳び」だけである。「左右の極限が等しいが値が違う」不連続(除去可能な不連続点)は、$f(c-)\le f(c)\le f(c+)$ のために起こらない。3 は Leb Corollary 3.6.4(p. 150)にあり、同書は各跳びの区間 $(f(c-),f(c+))$ から有理数を 1 つ選ぶ単射で証明している。跳びの区間は互いに交わらないからである。
thm-mon-discontinuities の 3 の逆が成り立つ。可算性のほかには、不連続点の集合に制約はない。
$D=\{d_1,d_2,\dots\}$ を $\mathbb{R}$ の高々可算な部分集合とし(有限なら番号は途中で終わる。$d_n$ は互いに異なる)、
$$
f(x):=\sum_{n\colon d_n\le x}2^{-n}\qquad(x\in\mathbb{R})
$$
とおく。このとき $f$ は単調増加で値は $[0,1]$ にあり、$f$ の不連続点の集合はちょうど $D$ である。
$\sum_n2^{-n}\le1$ なので和は収束し、$0\le f(x)\le1$ である。$x< y$ なら
$$
f(y)-f(x)=\sum_{n\colon x< d_n\le y}2^{-n}\ge0
$$
なので $f$ は単調増加である。
$D$ の点で不連続であること:$c=d_m$ とする。$x< c$ なら上の式で $n=m$ の項が現れるので $f(c)-f(x)\ge2^{-m}$ である。$x\to c-$ とすると $f(c-)\le f(c)-2^{-m}< f(c)$ であり、$f$ は $c$ で連続でない。
$D$ の外の点で連続であること:$c\notin D$、$\varepsilon>0$ とする。$\sum_{n>N}2^{-n}=2^{-N}<\varepsilon$ となる $N$ をとる。$c$ は $d_1,\dots,d_N$ のどれとも異なるので、$\delta:=\min\{|c-d_n|\mid n\le N,\ d_n\text{ が定義されている}\}>0$ とおける($D$ が空、または該当する $d_n$ がなければ $\delta:=1$)。$c< x< c+\delta$ なら、$f(x)-f(c)$ は $c< d_n\le x$ を満たす $n$ にわたる和であり、そのような $d_n$ は $c$ からの距離が $\delta$ 未満なので $n>N$ である。したがって $0\le f(x)-f(c)\le\sum_{n>N}2^{-n}<\varepsilon$ である。$c-\delta< x< c$ なら、$f(c)-f(x)$ は $x< d_n\le c$ を満たす $n$ にわたる和で、$c\notin D$ より $d_n\ne c$、したがって $|d_n-c|<\delta$ となり $n>N$ である。よって $0\le f(c)-f(x)<\varepsilon$ である。以上で $f$ は $c$ で連続である。
$D=\mathbb{Q}$ とすると ex-mon-rationals の関数になる。Leb Exercise 3.6.11(p. 154)は、$[0,1]$ 上で有理数ごとに不連続な単調増加関数を作る問題である。
区間上の単調関数については、連続性を値の集合だけで判定できる。
1:$f$ は単調増加としてよい(減少なら $-f$ を考える。$-f(S)$ も区間である)。$f$ がある $c\in S$ で連続でないとする。すると $\varepsilon>0$ と、$c$ に収束する $S$ の点列 $s_n$ で $|f(s_n)-f(c)|\ge\varepsilon$ を満たすものがある。$s_n\ne c$ であり、無限個の $n$ について $s_n< c$ であるか、無限個の $n$ について $s_n>c$ である。前者の場合を考える(後者も同様)。その $n$ では単調性から $f(s_n)\le f(c)$ なので、$f(s_n)\le f(c)-\varepsilon$ である。$y\in S$、$y< c$ とすると、$s_n\to c$ なので $y< s_n< c$ となる $n$ があり、$f(y)\le f(s_n)\le f(c)-\varepsilon$ である。$y\ge c$ なら $f(y)\ge f(c)$ である。したがって開区間 $(f(c)-\varepsilon,f(c))$ は $f(S)$ と交わらない。一方 $f(s_n)\le f(c)-\varepsilon$ と $f(c)$ はどちらも $f(S)$ に属する。これは $f(S)$ が区間であることに反する。
2:$f$ が連続なら、中間値の定理 の記事の定理「中間値の定理」により、$f(I)$ の 2 点の間の値はすべて $f(I)$ に属するので、$f(I)$ は区間である。逆は 1 の $S=I$ の場合である。
1 では定義域 $S$ が区間である必要はない。2 の「$\Rightarrow$」には定義域が区間であることが要る。$[0,1]\cup[2,3]$ 上の恒等写像は連続な単調関数だが、値の集合は区間でない。2 は Leb Corollary 3.6.3(p. 150)にある。
$I$ を区間、$f\colon I\to\mathbb{R}$ を狭義単調とする。このとき $f$ は $I$ から $f(I)$ への全単射であり、逆関数 $f^{-1}\colon f(I)\to I$ は連続である。$f$ 自身が連続でなくてもよい。
狭義単調な関数は単射なので、$f\colon I\to f(I)$ は全単射である。$f$ が狭義単調増加なら、$u,v\in f(I)$、$u< v$ について $f^{-1}(u)\ge f^{-1}(v)$ とすると $u=f(f^{-1}(u))\ge f(f^{-1}(v))=v$ となり矛盾するので、$f^{-1}$ は狭義単調増加である。減少の場合も同様である。$f^{-1}$ の値の集合は区間 $I$ なので、thm-mon-image-interval の 1 を $S=f(I)$ に当てはめると $f^{-1}$ は連続である。
これは Leb Proposition 3.6.6(p. 152)にあり、同書は片側極限を使って示している。たとえば $f(x)=x$($x< 0$)、$f(x)=x+1$($x\ge0$)は $0$ で不連続だが、逆関数は $(-\infty,0)\cup[1,\infty)$ 上で連続である(同書 Example 3.6.7)。この系は、逆三角関数や対数関数のような逆関数の連続性を、もとの関数の狭義単調性だけから導く。逆に、区間上の連続な単射は狭義単調である(中間値の定理 の記事の命題「区間上の連続単射は狭義単調」)。
区間 $I$ 上で微分可能な $f$ については、$f$ が単調増加であることと $I$ 上で $f'\ge0$ であることが同値であり、$I$ 上で $f'>0$ なら狭義単調増加である(平均値の定理 の記事の系「導関数の符号と増減」)。後者の逆は成り立たない。$x^3$ は狭義単調増加だが $0$ での微分係数は $0$ である。1 点での導関数の符号だけでは、その点の近くでの単調性さえ決まらない(ex-mon-local)。
積分については、閉区間上の単調関数は、不連続点が無限個あっても Riemann 積分可能である(Riemann積分 の記事の命題「単調関数の可積分性」)。
微分可能性について、単調性は次の強い結論を与える。
区間 $I$ 上の単調関数 $f\colon I\to\mathbb{R}$ は、$I$ のほとんどすべての点で微分可能である。すなわち、$f$ が微分可能でない点の集合は Lebesgue 測度 $0$ である(Lebesgue測度)。
Tao11 Theorem 1.6.25(p. 156)は $\mathbb{R}$ 上の単調関数について述べ、Dini 微分と rising sun lemma を使って証明している。区間 $I$ 上の $f$ には、$I$ に含まれる閉区間 $[a,b]$ ごとに、$f$ を $(-\infty,a)$ で $f(a)$、$(b,\infty)$ で $f(b)$ に延ばした単調関数に当てはめればよい。$I$ は可算個のこうした閉区間で覆え、測度 $0$ の集合の可算和は測度 $0$ だからである。微分係数が存在する点がほとんどすべてであっても、それで $f$ が決まるとは限らない。Cantor 関数はほとんどすべての点で微分係数 $0$ をもつが定数でない(Cantor集合 の記事の注意「反例:微積分の基本定理が成り立たない単調連続関数」)。
単調関数の差で書ける関数の範囲は、変動の総量で特徴づけられる。
$f\colon[a,b]\to\mathbb{R}$ と $[a,b]$ の分割 $P\colon a=x_0< x_1<\dots< x_n=b$ について $V(f,P):=\sum_{k=1}^n|f(x_k)-f(x_{k-1})|$ とおき、
$$
V_a^b(f):=\sup_PV(f,P)\in[0,\infty]
$$
を $f$ の $[a,b]$ 上の 全変動(total variation)という。$V_a^b(f)<\infty$ のとき、$f$ は $[a,b]$ 上で 有界変動(bounded variation)であるという。$V_a^a(f):=0$ とする。
$f$ が $[a,b]$ 上で単調なら、どの分割でも和が打ち消し合って $V(f,P)=|f(b)-f(a)|$ なので、$V_a^b(f)=|f(b)-f(a)|$ であり、$f$ は有界変動である。
$f\colon[a,b]\to\mathbb{R}$ について、次は同値である。
2 ⇒ 1:分割 $P$ について、三角不等式と $g,h$ の単調性から
$$
|f(x_k)-f(x_{k-1})|\le\bigl(g(x_k)-g(x_{k-1})\bigr)+\bigl(h(x_k)-h(x_{k-1})\bigr)
$$
であり、$k$ について足すと $V(f,P)\le g(b)-g(a)+h(b)-h(a)$ である。右辺は $P$ によらないので $V_a^b(f)<\infty$ である。
1 ⇒ 2:まず、$a\le s\le t\le u\le b$ について加法性 $V_s^u(f)=V_s^t(f)+V_t^u(f)$ を示す($s=t$ や $t=u$ のときは $V_t^t=0$ により明らか)。$s< t< u$ とする。$[s,t]$ の分割 $P_1$ と $[t,u]$ の分割 $P_2$ をつなぐと $[s,u]$ の分割になり、$V(f,P_1)+V(f,P_2)\le V_s^u(f)$ である。$P_1,P_2$ について上限をとると $V_s^t+V_t^u\le V_s^u$ を得る。逆に $[s,u]$ の分割 $P$ に点 $t$ を加えた分割を $P'$ とすると、加えた点をまたぐ 1 項 $|f(x_k)-f(x_{k-1})|$ が三角不等式により $|f(t)-f(x_{k-1})|+|f(x_k)-f(t)|$ 以下なので、$V(f,P)\le V(f,P')$ である。$P'$ は $t$ で $[s,t]$ の分割と $[t,u]$ の分割に分かれるので $V(f,P')\le V_s^t+V_t^u$ であり、上限をとって $V_s^u\le V_s^t+V_t^u$ を得る。
$f$ が有界変動なら、$a\le x\le b$ について、加法性から $V_a^x(f)\le V_a^b(f)<\infty$ なので $g(x):=V_a^x(f)$ は有限である。$a\le x< y\le b$ とすると、加法性により
$$
g(y)-g(x)=V_x^y(f)\ge|f(y)-f(x)|\ge f(y)-f(x)
$$
である($V_x^y(f)$ は 1 区間だけの分割 $x< y$ の和以上)。最初の不等式から $g(y)\ge g(x)$、全体から $(g-f)(y)\ge(g-f)(x)$ なので、$g$ と $h:=g-f$ は単調増加であり、$f=g-h$ である。
Tao11 Proposition 1.6.34(p. 165)は $\mathbb{R}$ 上の関数について同じ主張を述べ、正の変動を使って証明している。Jordan 分解により、単調関数について示した性質が有界変動関数に移る。有界変動関数は各点で左右の極限をもち、不連続点は高々可算であり(thm-mon-one-sided、thm-mon-discontinuities を $g,h$ に当てはめ、$f$ の不連続点は $g$ か $h$ の不連続点)、閉区間上で Riemann 積分可能であり、ほとんどすべての点で微分可能である(thm-mon-lebesgue。Tao11 Corollary 1.6.35、p. 166)。
単調性に関わる条件を 1 つ外すと、上の結論は成り立たなくなる。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 単調性(thm-mon-discontinuities) | Dirichlet 関数 $1_{\mathbb{Q}}$ | 不連続点は高々可算 |
| 定義域が区間(thm-mon-image-interval の 2) | $[0,1]\cup[2,3]$ 上の恒等写像 | 連続なら値の集合は区間 |
| 導関数の正値を区間全体でなく 1 点だけにする | $x+2x^2\sin\frac1x$($f(0)=0$) | $f'(c)>0$ なら $c$ の近くで単調増加 |
| 定義域が区間(中間値の定理 の記事の命題「区間上の連続単射は狭義単調」) | $1/x$($\mathbb{R}\setminus\{0\}$ 上) | 連続な単射は狭義単調 |
| 至るところ微分可能(ほとんどすべての点に弱める) | Cantor 関数 | 導関数が $0$ なら定数(平均値の定理 の記事の系「導関数が0なら定数」) |
| 有界変動(thm-mon-jordan) | $x\sin\frac1x$($f(0)=0$、$[0,1]$ 上) | 単調増加関数の差で書ける |
半順序集合 $P,Q$ の間の写像 $f\colon P\to Q$ が $x\le y\Rightarrow f(x)\le f(y)$ を満たすとき、$f$ を単調写像(順序を保つ写像)という(半順序集合)。実数の場合の片側極限や可算性の議論は、$\mathbb{R}$ の順序の完備性(上限の存在)と $\mathbb{Q}$ の稠密性を使っており、一般の半順序集合ではそのままは成り立たない。単調写像の不動点については Knaster–Tarskiの定理 がある。
単調増加関数 $F\colon\mathbb{R}\to\mathbb{R}$ に対し、$a< b$ について $\mu_F((a,b])=F(b+)-F(a+)$、各点 $a$ について $\mu_F(\{a\})=F(a+)-F(a-)$ を満たす Borel 測度 $\mu_F$ がただ 1 つ存在する(Lebesgue–Stieltjes 測度。この記事では証明しない。Tao11 Theorem 1.7.9、pp. 188–189)。$F$ が右連続なら $\mu_F((a,b])=F(b)-F(a)$ であり、跳びはちょうど 1 点の測度になる。不連続点が高々可算であること(thm-mon-discontinuities)は、測度が正の 1 点集合が高々可算であることに対応する。
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