Cauchyネット

同義語:コーシーネットCauchy net

概要

Cauchyネット(Cauchy net)とは、一様空間のネット $(x_d)_{d\in D}$ で、任意の近縁 $V$ に対しある $d_0$ があって $d,d'\ge d_0$ なら $(x_d,x_{d'})\in V$ となるものであり、Cauchy 列の添字を一般の有向集合に広げたものである。一様空間が完備であることは任意の Cauchy ネットが収束することと同値であり、集積点をもつ Cauchy ネットはその点に収束する。距離空間では Cauchy 列がすべて収束すれば Cauchy ネットもすべて収束するが、Cauchy 列はすべて収束するのに完備でない一様空間もある。Banach 空間では、非可算個の元の和の収束を Cauchy の判定法で扱える。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: Cauchy列, ネット, 一様空間, 有向集合

Cauchyネット(Cauchy net)は、Cauchy列 の添字集合 $\mathbb N$ を一般の有向集合に取り替えたものである。距離空間の Cauchy 列は「十分先の項どうしが近い」列だったが、一様空間では「近い」を近縁で、ネットでは「十分先」を有向集合の順序で言い表せるので、同じ条件がそのまま意味をもつ。
Cauchy 列だけでは一般の一様空間の完備性を捉えきれない。一様空間 では完備性を Cauchy フィルターで定義するが、Cauchy ネットはそれと同じ働きをする(thm-cnet-complete)。距離空間ではネットに広げても何も変わらず、Cauchy 列が収束すれば Cauchy ネットも収束する(thm-cnet-metric)。しかし、Cauchy 列はすべて収束するのに完備でない一様空間がある(ex-cnet-countable-sets)。解析学での典型的な使い所は、Banach 空間の無限個の元の和 $\sum_{i\in I}x_i$(添字集合 $I$ が非可算でもよい)の収束の判定である(thm-cnet-summable)。

定義

以下、一様空間 $(X,\mathcal U)$ の記法は 一様空間 に従う。近縁 $V,W$ について $V^{-1}=\{(y,x)\mid(x,y)\in V\}$、$W\circ V=\{(x,z)\mid\text{ある }y\text{ について }(x,y)\in V,\ (y,z)\in W\}$、$V[x]=\{y\mid(x,y)\in V\}$ である。一様空間に関する位相の言葉(近傍、収束、集積点)は一様位相に関するものとする。ネットの収束・部分ネット・集積点は ネット の定義による。

Cauchyネット

$(X,\mathcal U)$ を一様空間とする。$X$ のネット $(x_d)_{d\in D}$ が Cauchyネット(Cauchy net)であるとは、任意の近縁 $V\in\mathcal U$ に対し、ある $d_0\in D$ が存在して
$$ d,d'\ge d_0\ \Longrightarrow\ (x_d,x_{d'})\in V $$
となることをいう。

$D=\mathbb N$ のときは 一様空間 の定義「Cauchyフィルター・完備性・全有界性」の Cauchy 列にほかならない。具体的な場合を挙げる。

  • 距離空間 $(X,\rho)$ では、$(x_d)$ が Cauchy ネットであることは、任意の $\varepsilon>0$ に対しある $d_0$ があって $d,d'\ge d_0$ なら $\rho(x_d,x_{d'})< \varepsilon$ となることと同値である。
  • ノルム空間 $E$ では、$\|x_d-x_{d'}\|< \varepsilon$ という条件になる。より一般に位相ベクトル空間 $E$ では、加法群としての一様構造(一様空間 の例「位相群の一様構造」)について、条件は「$0$ の任意の近傍 $N$ に対し、$d,d'\ge d_0$ なら $x_{d'}-x_d\in N$」となる。
    完備性の定義は 一様空間 に従う:$X$ 上の任意の Cauchy フィルターが収束するとき、$X$ は完備であるという。フィルター $\mathcal F$ が Cauchy フィルターであるとは、任意の $V\in\mathcal U$ に対し $F\times F\subset V$ となる $F\in\mathcal F$ があることをいう。

直感

Cauchy 列の条件は「極限が何であるかを知らずに、項どうしの距離だけで収束しそうかを判定する」ためのものだった。Cauchy ネットも同じで、極限の候補を挙げずに「十分先では、どの二つの項も近い」ことを求める。違いは「十分先」の意味である。たとえば実数の族 $(a_i)_{i\in I}$ の和を考えるとき、有限部分集合 $F\subset I$ ごとの部分和 $s_F=\sum_{i\in F}a_i$ を、$F$ が大きくなるほど先と考える。$I$ を一列に並べる必要はないので、和の順番に依存しない収束を自然に扱える。
Cauchy 列で足りない理由は、列が「可算回の手順で極限に近づく」ことしかできない点にある。各段で可算個の条件しか課せない空間(距離空間)では十分だが、近縁の基本系が非可算個必要な一様空間では、どんな列も届かない「穴」が残りうる(ex-cnet-countable-sets)。

基本的な性質

Cauchyネットの基本性質

$(X,\mathcal U)$ を一様空間、$(x_d)_{d\in D}$ を $X$ のネットとする。

  1. $(x_d)$ がある点に収束すれば、$(x_d)$ は Cauchy ネットである。
  2. $(x_d)$ が Cauchy ネットで、点 $x$ が $(x_d)$ の集積点なら、$(x_d)$ は $x$ に収束する。
  3. Cauchy ネットの部分ネットは Cauchy ネットである。
  4. $f\colon X\to Y$ が一様連続写像で $(x_d)$ が Cauchy ネットなら、$(f(x_d))$ は $Y$ の Cauchy ネットである。

$V\in\mathcal U$ に対し、$W'\circ W'\subset V$ となる $W'\in\mathcal U$ をとり $W=W'\cap W'^{-1}$ とおくと、$W$ は対称な近縁で $W\circ W\subset W'\circ W'\subset V$ を満たす。これを繰り返し使う。
1:$x_d\to x$ とする。$W[x]$ は $x$ の近傍なので、ある $d_0$ があって $d\ge d_0$ なら $(x,x_d)\in W$ である。$d,d'\ge d_0$ なら $(x_d,x)\in W^{-1}=W$ と $(x,x_{d'})\in W$ から $(x_d,x_{d'})\in W\circ W\subset V$ である。
2:$x$ の近傍 $N$ に対し、$V[x]\subset N$ となる $V$ をとり、上の $W$ を作る。Cauchy の条件から、$d,d'\ge d_0$ なら $(x_{d'},x_d)\in W$ となる $d_0$ がある。$x$ は集積点なので、$d'\ge d_0$ かつ $x_{d'}\in W[x]$、すなわち $(x,x_{d'})\in W$ となる $d'$ がある。よって $d\ge d_0$ なら $(x,x_d)\in W\circ W\subset V$、すなわち $x_d\in V[x]\subset N$ である。

3・4 の証明を開く

3:部分ネット $(x_{\varphi(e)})_{e\in E}$ について、$V$ に対する $d_0$ をとると、共終性から $e\ge e_0\Rightarrow\varphi(e)\ge d_0$ となる $e_0$ があり、$e,e'\ge e_0$ なら $(x_{\varphi(e)},x_{\varphi(e')})\in V$ である。4:$Y$ の近縁 $W$ に対し、一様連続性から $(f\times f)(V)\subset W$ となる $V$ をとり、$V$ に対する $d_0$ を使えばよい。$\square$

2 は、Cauchy ネットにとって「収束する部分ネットをもつ」ことと「収束する」ことが同じであることを述べている(集積点と収束する部分ネットの関係は ネット の命題「集積点と収束する部分ネット」)。とくに、コンパクトな一様空間では任意のネットが集積点をもつ(ネット の定理「コンパクト性のネットによる特徴づけ」)ので、Cauchy ネットはすべて収束する。

完備性の特徴づけ

ネットとフィルターは互いに翻訳できる(ネット の命題「ネットとフィルターの対応」)。ネット $(x_d)_{d\in D}$ にはその末尾フィルター(末尾集合 $T_d=\{x_{d'}\mid d'\ge d\}$ が生成するフィルター)が対応し、フィルター $\mathcal F$ には、有向集合 $D_{\mathcal F}=\{(a,A)\mid A\in\mathcal F,\ a\in A\}$($(a,A)\le(b,B)\iff B\subset A$)上のネット $x_{(a,A)}=a$ が対応する。収束はこの対応で保たれ、$\mathcal F$ に対応するネットの末尾フィルターは $\mathcal F$ 自身である。

Cauchyネットと Cauchy フィルターの対応

$(X,\mathcal U)$ を一様空間とする。

  1. Cauchy ネットの末尾フィルターは Cauchy フィルターである。
  2. Cauchy フィルター $\mathcal F$ に対応するネット $(x_{(a,A)})_{(a,A)\in D_{\mathcal F}}$ は Cauchy ネットである。

1:$V\in\mathcal U$ に対する $d_0$ をとると、$T_{d_0}\times T_{d_0}\subset V$ であり、$T_{d_0}$ は末尾フィルターに属する。
2:$V\in\mathcal U$ に対し $F\times F\subset V$ となる $F\in\mathcal F$ をとり、$a_0\in F$ として $d_0=(a_0,F)$ とおく。$(a,A),(b,B)\ge d_0$ なら $A,B\subset F$ なので $a,b\in F$ であり、$(a,b)\in F\times F\subset V$ である。$\square$

完備性の Cauchy ネットによる特徴づけ

一様空間 $(X,\mathcal U)$ について、次は同値である。

  1. $X$ は完備である(任意の Cauchy フィルターが収束する)。
  2. $X$ の任意の Cauchy ネットが収束する。

(1 ⇒ 2) $(x_d)$ を Cauchy ネットとする。prop-cnet-filter の 1 により末尾フィルターは Cauchy フィルターなので、1 によりある点 $x$ に収束する。ネットの収束は末尾フィルターの収束と同値なので、$x_d\to x$ である。
(2 ⇒ 1) $\mathcal F$ を Cauchy フィルターとする。prop-cnet-filter の 2 により対応するネットは Cauchy ネットなので、2 によりある点 $x$ に収束する。このネットの末尾フィルターは $\mathcal F$ なので、$\mathcal F$ は $x$ に収束する。$\square$

この定理は Eng89 Theorem 8.3.20・8.3.21(p. 450)に当たる。Engelking は Cauchy ネットを「任意の $V$ に対し、ある $d_0$ があって $d\ge d_0$ なら $(x_d,x_{d_0})\in V$」と定義している(p. 449)。$(x_d,x_{d_0})\in W$ と $(x_{d_0},x_{d'})\in W$ から $(x_d,x_{d'})\in W\circ W$ が出るので、対称な $W$ で $W\circ W\subset V$ となるものを使えば、この定義は def-cnet と同値である。
距離空間では、Cauchy 列に限っても同じ結論になる。

距離空間では Cauchy 列で十分である

$(X,\rho)$ を距離空間とする。$X$ の Cauchy 列がすべて収束するなら、$X$ の Cauchy ネットもすべて収束する。

$(x_d)_{d\in D}$ を Cauchy ネットとする。各 $n\ge1$ について、$d,d'\ge e_n$ なら $\rho(x_d,x_{d'})< 2^{-n}$ となる $e_n\in D$ がある。有向性を使って $e_n$ を取り替え、$e_1\le e_2\le\cdots$ としてよい($e_{n+1}$ を $e_n$ と元の $e_{n+1}$ の共通の上界に替えても、条件は保たれる)。この選択は可算回の選択である(従属選択公理)。点列 $y_n=x_{e_n}$ は、$m\ge n$ なら $e_m,e_n\ge e_n$ なので $\rho(y_m,y_n)< 2^{-n}$ を満たし、Cauchy 列である。仮定によりある $x$ に収束する。
$x_d\to x$ を示す。$\varepsilon>0$ に対し $2^{-n}< \varepsilon/2$ となる $n$ をとる。$d\ge e_n$ なら、任意の $m\ge n$ について $d,e_m\ge e_n$ なので $\rho(x_d,y_m)< 2^{-n}$ であり、
$$ \rho(x_d,x)\le\rho(x_d,y_m)+\rho(y_m,x)< 2^{-n}+\rho(y_m,x). $$
$m\to\infty$ とすると $\rho(x_d,x)\le2^{-n}< \varepsilon$ である。$\square$

点列 $(y_n)$ の添字 $e_n$ は $D$ で共終とは限らない(ex-cnet-countable-sets の有向集合では、可算個の元 $e_n$ に対し、$\bigcup_ne_n$ に新しい点を一つ加えた元はどの $e_n$ にも含まれない)。それでも証明が通るのは、$d\ge e_n$ である $d$ の項がすべて $y_n$ から $2^{-n}$ 以内にあり、極限 $x$ へ距離で押さえられるからである。この距離による押さえ込みが、一般の一様空間では使えない。

反例:Cauchy 列はすべて収束するが完備でない一様空間

$X$ を実数の可算部分集合(有限集合を含む)全体の集合とする。$A\in X$ に対し
$$ V_A=\Delta_X\cup\{(B,C)\in X\times X\mid A\subset B,\ A\subset C\} $$
とおく。$\mathcal B=\{V_A\mid A\in X\}$ は 一様空間 の命題「基本近縁系の判定」の条件を満たす:$\Delta_X\subset V_A$、$V_{A\cup A'}\subset V_A\cap V_{A'}$、$V_A^{-1}=V_A$、$V_A\circ V_A\subset V_A$($(B,C),(C,E)\in V_A$ がどちらも対角線上になければ $A\subset B,E$)。$\mathcal B$ が生成する一様構造を $\mathcal U$ とする。

  • 位相は離散。 $B\in X$ に対し、$B$ は可算なので $r\in\mathbb R\setminus B$ がとれる。$A=\{r\}$ とすると $A\not\subset B$ なので $V_A[B]=\{B\}$ であり、$\{B\}$ は開集合である。
  • Cauchy 列は収束する。 $(B_n)_{n\in\mathbb N}$ を Cauchy 列とする。$S=\bigcup_nB_n$ は可算集合の可算和なので可算である(可算選択公理)。$r\in\mathbb R\setminus S$ をとり $A=S\cup\{r\}$ とおく。Cauchy の条件から、ある $N$ があって $m,n\ge N$ なら $(B_m,B_n)\in V_A$ である。$r\notin B_m$ より $A\not\subset B_m$ なので、$(B_m,B_n)$ は対角線上にあり $B_m=B_n$ である。よって $(B_n)$ は最終的に定数で、収束する。
  • 収束しない Cauchy ネットがある。 $X$ を包含で順序づけると有向集合である($A\cup A'$ が共通の上界)。ネット $(x_A)_{A\in X}$、$x_A=A$ を考える。$V_{A_0}$ に対し、$A,A'\supset A_0$ なら $(A,A')\in V_{A_0}$ なので、これは Cauchy ネットである。位相が離散なので、ある点 $B$ に収束するなら、ある $A_0$ があって $A\supset A_0$ のとき $A=B$ となるはずだが、$A_0$ と $A_0\cup\{r\}$($r\notin A_0$)はどちらも $A_0$ を含み、異なる。
    thm-cnet-complete により、$(X,\mathcal U)$ は完備でない。$\mathcal U$ は分離的でもある($B\ne C$ なら、たとえば $r\in C\setminus B$ について $(B,C)\notin V_{\{r\}}$)。

Banach 空間の族の和

Banach 空間 $E$ の元の族 $(x_i)_{i\in I}$ を考える。$I$ の有限部分集合全体 $\mathcal P_{\mathrm{fin}}(I)$ を包含で順序づけた有向集合上で、部分和のネット $s_F=\sum_{i\in F}x_i$ を作る。このネットが $s\in E$ に収束するとき、族は総和可能(summable)であるといい、$s=\sum_{i\in I}x_i$ と書く。$I=\mathbb N$、$E=\mathbb R$ のときは、級数の無条件収束(ネット の例「級数の無条件収束」)である。

総和可能性の Cauchy の判定法

$E$ を Banach 空間、$(x_i)_{i\in I}$ を $E$ の元の族とする。

  1. 族が総和可能であることと、次の条件は同値である:任意の $\varepsilon>0$ に対し有限集合 $F_0\subset I$ があって、$F_0$ と交わらない任意の有限集合 $G\subset I$ について $\bigl\|\sum_{i\in G}x_i\bigr\|< \varepsilon$。
  2. 総和可能なら、$x_i\ne0$ となる $i$ は高々可算個である。
  3. $\sup_F\sum_{i\in F}\|x_i\|< \infty$(上限は有限集合 $F\subset I$ にわたる)なら、族は総和可能である。

1:部分和のネットが Cauchy ネットであることと 1 の条件が同値であることを示せば、thm-cnet-metric(Banach 空間は完備距離空間)と prop-cnet-basic の 1 から従う。ネットが Cauchy なら、$\varepsilon$ に対し $F,F'\supset F_0$ のとき $\|s_F-s_{F'}\|< \varepsilon$ となる $F_0$ をとる。$G$ が $F_0$ と交わらなければ、$F=F_0\cup G$、$F'=F_0$ として $s_F-s_{F'}=\sum_{i\in G}x_i$ である。逆に 1 の条件が成り立てば、$\varepsilon/2$ に対する $F_0$ をとる。$F,F'\supset F_0$ なら
$$ s_F-s_{F'}=\sum_{i\in F\setminus F'}x_i-\sum_{i\in F'\setminus F}x_i $$
で、$F\setminus F'$ と $F'\setminus F$ は $F_0$ と交わらないので $\|s_F-s_{F'}\|< \varepsilon$ である。
2:1 の条件を $\varepsilon=1/n$ に当てた有限集合を $F_n$ とする。$i\notin F_n$ なら $G=\{i\}$ として $\|x_i\|< 1/n$ である。よって $x_i\ne0$ なら、$\|x_i\|\ge1/n$ となる $n$ について $i\in F_n$ であり、$\{i\mid x_i\ne0\}\subset\bigcup_nF_n$ は可算である。
3:$M=\sup_F\sum_{i\in F}\|x_i\|$ とする。$\varepsilon>0$ に対し $\sum_{i\in F_0}\|x_i\|>M-\varepsilon$ となる有限集合 $F_0$ をとる。$G$ が $F_0$ と交わらなければ、$\sum_{i\in F_0\cup G}\|x_i\|\le M$ から $\sum_{i\in G}\|x_i\|< \varepsilon$ であり、三角不等式から $\bigl\|\sum_{i\in G}x_i\bigr\|< \varepsilon$ となる。1 により総和可能である。$\square$

1 で極限 $s$ の候補を挙げる必要がないことが Cauchy ネットの利点である。たとえば Hilbert空間 の正規直交系 $(e_i)_{i\in I}$ と係数 $c_i$ について、$\sum_i|c_i|^2< \infty$ なら、Pythagoras の定理 $\bigl\|\sum_{i\in G}c_ie_i\bigr\|^2=\sum_{i\in G}|c_i|^2$ と 1 から $\sum_{i\in I}c_ie_i$ が収束する。$I$ が非可算でも、項を一列に並べずにこの議論ができる。

反例の表

外す条件反例成り立たなくなること
距離空間であること(thm-cnet-metric)ex-cnet-countable-sets の一様空間Cauchy 列はすべて収束するが、収束しない Cauchy ネットがある
Cauchy ネットであること(prop-cnet-basic の 2)$\mathbb R$ の点列 $x_n=(-1)^n$$1$ は集積点だが、点列は $1$ に収束しない
$E$ の完備性(thm-cnet-summable の 1)有限個を除いて $0$ の実数列の空間 $c_{00}$ に上限ノルムを入れ、$x_n=2^{-n}e_n$($e_n$ は第 $n$ 成分だけ $1$ の列)とする1 の条件は成り立つが、総和可能でない
3 行目の理由を開く

$G$ が $\{0,\dots,N\}$ と交わらなければ、$\sum_{n\in G}x_n$ の各成分は $0$ か $2^{-n}$($n> N$)なので上限ノルムは $2^{-N-1}$ 以下であり、1 の条件が成り立つ。部分和のネットが $s\in c_{00}$ に収束したとすると、第 $n$ 成分をとる写像は連続なので、$s$ の第 $n$ 成分は $2^{-n}$ でなければならない($n$ を含む有限集合 $F$ ではつねに $s_F$ の第 $n$ 成分は $2^{-n}$)。これはすべての $n$ で $0$ でないので、$s\notin c_{00}$ となり矛盾する。

関連項目

参考文献

[1]
Ryszard Engelking, General Topology, Sigma Series in Pure Mathematics 6, Heldermann Verlag, 1989, §8.3 の Cauchy ネットと Cauchy フィルターの定義(p. 449)、Theorem 8.3.20・8.3.21(p. 450、完備性の Cauchy ネット・Cauchy フィルターによる特徴づけ)

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