解の配置

同義語:location of roots

概要

解の配置(location of roots)とは、実数係数の 2 次方程式 $f(x)=x^2+bx+c=0$ の実数の解が、与えられた数 $p$ や区間 $(p,q)$ に対してどこにあるかを係数の条件で判定する技法である。平方完成により、判別式 $D\ge0$ のとき解 $\alpha\le\beta$ について $f(p)=(p-\alpha)(p-\beta)$ となるので、$f(p)<0$ は $\alpha<p<\beta$ と同値であり、2 つの解がともに $p$ より大きいことは $D\ge0$、軸 $-\frac b2>p$、$f(p)>0$ の 3 条件と同値である。端点が解でないとき、$(p,q)$ にちょうど 1 つの解があること(重解は 2 つと数える)は $f(p)f(q)<0$ と同値である。一般の連続関数では、中間値の定理が解の存在だけを保証する。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 2次関数, 2次方程式, 判別式(高校数学), 連続関数

高校での出発点:3 つの条件で解の位置を決める

高校では、係数に文字を含む 2 次方程式について「2 つの解がともに正」「1 つの解が $1$ より大きく、もう 1 つが $1$ より小さい」のような条件を満たす文字の範囲を求める。これを 解の配置 の問題という。答え方は、グラフ $y=f(x)$ を描いて、判別式・軸の位置・区間の端での値の符号の 3 つを調べるのが定石である。まず例を見る。

異なる 2 つの正の解

$x^2-2mx+m+2=0$ が異なる 2 つの正の解をもつような $m$ の範囲を求める。$f(x)=x^2-2mx+m+2$ とおくと、グラフは下に凸の放物線で、軸は $x=m$ である。次の 3 つを調べる。
$$ \begin{aligned} &\text{判別式}:\ \frac D4=m^2-(m+2)=(m-2)(m+1)>0\ \text{より}\ m<-1\ \text{または}\ m>2,\\ &\text{軸}:\ m>0,\\ &\text{端の値}:\ f(0)=m+2>0\ \text{より}\ m>-2. \end{aligned} $$
3 つを同時に満たすのは $m>2$ である。たとえば $m=3$ なら $x^2-6x+5=(x-1)(x-5)$ で、解は $1$ と $5$ である。

2 つの区間に 1 つずつ

$x^2-mx+1=0$ の解の 1 つが $0$ と $1$ の間、もう 1 つが $1$ と $2$ の間にあるような $m$ の範囲を求める。$f(x)=x^2-mx+1$ のグラフが $x=0$ で $x$ 軸の上、$x=1$ で下、$x=2$ で上にあればよいので
$$ f(0)=1>0,\qquad f(1)=2-m<0,\qquad f(2)=5-2m>0 $$
から $2< m<\frac52$ である。たとえば $m=\frac94$ なら $4x^2-9x+4=0$ で、解は $x=\frac{9\pm\sqrt{17}}8$、すなわち約 $0.610$ と約 $1.640$ である。

これらの計算は、次の疑問を残す。

  1. ex-lr-start1 で 3 つの条件がそろえば十分なのはなぜか。どれか 1 つを省くとどうなるか。→ thm-lr-right、ex-lr-drop
  2. ex-lr-start2 では判別式も軸も調べていない。それで済むのはなぜか。→ thm-lr-sep、cor-lr-one
  3. 2 次でない方程式や、多項式でない関数ではどう考えるか。→ thm-lr-ivt
    本記事では、次の対応を示す。
    高校の計算大学の見方
    判別式 $D\ge0$平方完成で実数の解が現れる条件
    端での値 $f(p)$ の符号$f(p)=(p-\alpha)(p-\beta)$:解との距離の積の符号
    軸の位置2 つの解の平均 $\frac{\alpha+\beta}2$
    $f(p)f(q)<0$ なら間に解中間値の定理
    文字定数を分離してグラフと直線の交点を見る関数の値の分布(増減)を調べる

取り出す構造:端での値は解との距離の積

最高次の係数が $a\ne0$ の 2 次式 $F(x)=ax^2+bx+c$ は、全体を $a$ で割ると $f(x)=\frac{F(x)}a=x^2+\frac bax+\frac ca$ になる。$F(x)=0$ と $f(x)=0$ の解は同じである。$F$ の軸は $x=-\frac b{2a}$ で、$f$ の軸と同じ位置にある。$F$ の判別式は $b^2-4ac$ で、$f$ の判別式と同じ符号である(→ rem-lr-divide)。ただし $a<0$ で割ると値の符号が逆になる。$F$ のまま条件を書くときは、$f(p)>0$ であることを $aF(p)>0$ と、$f(p)<0$ であることを $aF(p)<0$ と読みかえる($\frac{F(p)}a$ と $aF(p)=a^2\cdot\frac{F(p)}a$ は同じ符号である。→ ex-lr-negative)。

最高次の係数で割っても変わらないもの

$f(x)=x^2+\frac bax+\frac ca$ の軸と判別式を、$F(x)=ax^2+bx+c$ の係数で書くと
$$ \begin{aligned} &\text{軸}:\ -\frac12\cdot\frac ba=-\frac b{2a},\\ &\text{判別式}:\ \Bigl(\frac ba\Bigr)^2-4\cdot\frac ca=\frac{b^2}{a^2}-\frac{4ac}{a^2}=\frac{b^2-4ac}{a^2} \end{aligned} $$
である。$a^2>0$ なので、$f$ の判別式と $F$ の判別式 $b^2-4ac$ は同じ符号である。
例:$F(x)=-x^2+4x-3$($a=-1$、$b=4$、$c=-3$)を $-1$ で割ると $f(x)=x^2-4x+3$ で、$f$ の 1 次の係数は $\frac ba=-4$ である。軸は $-\frac{4}{2\cdot(-1)}=2$ で、$f$ で計算した $-\frac{-4}2=2$ と一致する。$F$ の係数 $4$ に $-\frac b2$ をそのまま当てはめると $-2$ になり、軸の符号を取り違える。

以下では割ったあとの式だけを扱うので、その係数を改めて $b,c$ と書き、$f(x)=x^2+bx+c$($b,c$ は実数)とする。この $b,c$ は $F$ の係数 $b,c$ そのものではなく、$\frac ba,\ \frac ca$ にあたる数である。

軸・判別式・解の数え方

$f(x)=x^2+bx+c$ に対し、$s:=-\frac b2$ を 軸(グラフの対称軸 $x=s$ の位置)、$D:=b^2-4c$ を 判別式 という。$D\ge0$ のとき、実数の解を小さい順に $\alpha\le\beta$ と書く。$D=0$(重解)のときは $\alpha=\beta$ であり、解を「2 つ」と数える。「2 つの解がともに $p$ より大きい」とは、$D\ge0$ かつ $p<\alpha\le\beta$ であることをいう。

平方完成と解の形

すべての実数 $x$ について $f(x)=(x-s)^2-\frac D4$ である。
(1) $D<0$ なら、すべての $x$ で $f(x)>0$ であり、実数の解はない。
(2) $D\ge0$ なら、$\alpha=s-\frac{\sqrt D}2$、$\beta=s+\frac{\sqrt D}2$ であり、
$$ f(x)=(x-\alpha)(x-\beta),\qquad s=\frac{\alpha+\beta}2 . $$

展開して比べる

$(x-s)^2-\frac D4=x^2-2sx+s^2-\frac{b^2-4c}4=x^2+bx+\frac{b^2}4-\frac{b^2}4+c=x^2+bx+c$ である($-2s=b$、$s^2=\frac{b^2}4$ を使った)。
(1) $D<0$ なら $-\frac D4>0$ であり、$(x-s)^2\ge0$ なので $f(x)\ge-\frac D4>0$ である。
(2) $D\ge0$ なら $\frac D4=\bigl(\frac{\sqrt D}2\bigr)^2$ なので、2 乗の差の因数分解により
$$ f(x)=\Bigl(x-s-\frac{\sqrt D}2\Bigr)\Bigl(x-s+\frac{\sqrt D}2\Bigr)=(x-\beta)(x-\alpha) $$
である。$\alpha+\beta=2s$ なので $s=\frac{\alpha+\beta}2$ である。$\square$

この補題の要点は、端での値が
$$ f(p)=(p-\alpha)(p-\beta) $$
と、「$p$ から 2 つの解までの差の積」になることである。積の符号は、$p$ が 2 つの解の外にあるか間にあるかで決まる。

端での値を解から計算する
  1. $f(x)=x^2-6x+7$ では $s=3$、$D=36-28=8$ で、$\alpha=3-\sqrt2$、$\beta=3+\sqrt2$ である。$p=1$ で
    $$ (1-\alpha)(1-\beta)=(\sqrt2-2)(-2-\sqrt2)=-(\sqrt2-2)(\sqrt2+2)=-(2-4)=2 $$
    であり、直接計算した $f(1)=1-6+7=2$ と一致する。$1$ は 2 つの解の左の外にあり、$1-\alpha<0$、$1-\beta<0$ で積は正である。
  2. $f(x)=x^2-2x-3=(x+1)(x-3)$ では、$p=1$ は 2 つの解 $-1,3$ の間にあり、$f(1)=(1+1)(1-3)=-4<0$ である。

解が $s\pm\frac{\sqrt D}2$ で、判別式が解の差の 2 乗になることは 2次方程式の判別式の正体 で扱う。

主定理:2 次方程式の解の配置

まず、端での値が負になる場合を扱う。

端での値が負なら解ではさまれる

実数 $p$ について、$f(p)<0$ であることと、「$D>0$ かつ $\alpha< p<\beta$」であることは同値である。

積の符号を見る

$f(p)<0$ とする。lem-lr-square (1) により $D<0$ なら $f(p)>0$ なので、$D\ge0$ である。すると $f(p)=(p-\alpha)(p-\beta)<0$ なので、$p-\alpha$ と $p-\beta$ は符号が逆である。$\alpha\le\beta$ より $p-\alpha\ge p-\beta$ なので、$p-\alpha>0>p-\beta$、つまり $\alpha< p<\beta$ である。特に $\alpha\ne\beta$ なので $D>0$ である。
逆に $D>0$ かつ $\alpha< p<\beta$ なら、$p-\alpha>0$、$p-\beta<0$ なので $f(p)=(p-\alpha)(p-\beta)<0$ である。$\square$

次が、高校の 3 条件の根拠である。

2 つの解がともに $p$ より大きい条件

実数 $p$ について、「2 つの解がともに $p$ より大きい」ことは、次の 3 つがすべて成り立つことと同値である。
$$ D\ge0,\qquad s>p,\qquad f(p)>0 . $$

外側のどちらにいるかを軸で決める

方針:$f(p)>0$ は「$p$ が 2 つの解の外側にある」ことだけを言い、左右どちらの外側かは言わない。それを決めるのが軸の条件である。
段 1(3 条件が必要なこと):$D\ge0$ かつ $p<\alpha\le\beta$ とする。$D\ge0$ は仮定そのものである。lem-lr-square (2) により $s=\frac{\alpha+\beta}2>\frac{p+p}2=p$ である。また $p-\alpha<0$、$p-\beta<0$ なので $f(p)=(p-\alpha)(p-\beta)>0$ である。
段 2(3 条件で十分なこと):3 条件を仮定する。$D\ge0$ なので $f(p)=(p-\alpha)(p-\beta)$ と書け、これが正なので、$p-\alpha$ と $p-\beta$ は同じ符号をもち、どちらも $0$ でない。

  • 両方が負なら $p<\alpha\le\beta$ であり、結論が成り立つ。
  • 両方が正なら $\alpha\le\beta< p$ である。このとき $s=\frac{\alpha+\beta}2\le\beta< p$ となり、$s>p$ に反する。
    よって前者であり、2 つの解はともに $p$ より大きい。$\square$

解の配置の 3 つの型(端での値の符号と軸の位置) 解の配置の 3 つの型(端での値の符号と軸の位置)
図1 は定理の状況を放物線で描いたものである。(a) $x^2-6x+7$、$p=1$:$f(1)=2>0$ で、軸 $x=3$ は $p$ の右にあり、2 つの解 $3\pm\sqrt2$ はどちらも $1$ より大きい。(b) $x^2-2x-3$、$p=1$:$f(1)=-4<0$ で、$p$ は 2 つの解 $-1,3$ の間にある(thm-lr-sep)。(c) $x^2-4x+3$、$p=0$、$q=4$:両端の値が正で軸が区間の中にあり、2 つの解 $1,3$ はどちらも区間の中にある(次の cor-lr-between)。
thm-lr-right を左右反転すると、「$q$ より小さい」側の条件が得られる。

2 つの解がともに $q$ より小さい条件

実数 $q$ について、「$D\ge0$ かつ $\alpha\le\beta< q$」であることは、$D\ge0$、$s< q$、$f(q)>0$ がすべて成り立つことと同値である。

$x$ を $-x$ に取り替える

$g(x):=f(-x)=x^2-bx+c$ とおく。$g$ の判別式は $(-b)^2-4c=D$ で $f$ と同じ、軸は $\frac b2=-s$ である。$D\ge0$ のとき、$g(x)=0$ の解は $-\beta\le-\alpha$ である($g(-\alpha)=f(\alpha)=0$ などから)。「$\beta< q$」は「$-q<-\beta$」、つまり「$g$ の 2 つの解がともに $-q$ より大きい」と同じである。thm-lr-right を $g$ と $-q$ に使うと、これは $D\ge0$、$-s>-q$、$g(-q)>0$ と同値であり、$-s>-q$ は $s< q$、$g(-q)=f(q)$ なので主張を得る。$\square$

2 つの解がともに区間 $(p,q)$ の中にある条件

$p< q$ とする。「$D\ge0$ かつ $p<\alpha\le\beta< q$」であることは、次の 4 つがすべて成り立つことと同値である。
$$ D\ge0,\qquad p< s< q,\qquad f(p)>0,\qquad f(q)>0 . $$

2 つの定理を合わせる

「$p<\alpha\le\beta< q$」は「2 つの解がともに $p$ より大きい」かつ「ともに $q$ より小さい」ことである。前者は thm-lr-right により $D\ge0$、$s>p$、$f(p)>0$ と同値、後者は cor-lr-left により $D\ge0$、$s< q$、$f(q)>0$ と同値である。両方を合わせたものが 4 つの条件である。$\square$

区間の中にちょうど 1 つの解

$p< q$ とし、$p,q$ はどちらも解でない($f(p)\ne0$、$f(q)\ne0$)とする。区間 $(p,q)$ の中にちょうど 1 つの解がある(重解は 2 つと数える)ことは、$f(p)f(q)<0$ と同値である。

場合に分ける

方針:$f(p)f(q)<0$ は「一方が負、他方が正」ということなので、負の側に thm-lr-sep を使う。
段 1($f(p)f(q)<0$ ならちょうど 1 つ):$f(p)<0< f(q)$ の場合、thm-lr-sep により $\alpha< p<\beta$ である。$f(q)>0$ なので $q$ は解の間 $[\alpha,\beta]$ にない(間の $x$ では $(x-\alpha)(x-\beta)\le0$)。$q>p>\alpha$ なので $q>\beta$ である。よって $\alpha< p<\beta< q$ で、$(p,q)$ の中の解は $\beta$ だけである。$f(q)<0< f(p)$ の場合も同様に $\alpha< q<\beta$ で、$p< q<\beta$ かつ $p\notin[\alpha,\beta]$ から $p<\alpha$ となり、$p<\alpha< q<\beta$ で中の解は $\alpha$ だけである。
段 2(ちょうど 1 つなら $f(p)f(q)<0$):区間の中に解があるので $D\ge0$ である。重解は 2 つと数えるので $\alpha<\beta$ であり、どちらか一方だけが $(p,q)$ の中にある。$\alpha$ が中にあるなら、$\beta>\alpha>p$ で $\beta$ は中にも端にもないので $\beta>q$ であり、$p<\alpha< q<\beta$ から $f(p)=(p-\alpha)(p-\beta)>0$、$f(q)=(q-\alpha)(q-\beta)<0$ である。$\beta$ が中にあるなら、同様に $\alpha< p<\beta< q$ で $f(p)<0< f(q)$ である。どちらでも $f(p)f(q)<0$ である。$\square$

定理を使って、高校の例を見直す。

定理で読み直す
  1. ex-lr-start1 の 3 条件は thm-lr-right で $p=0$ としたものである。「異なる」ので $D\ge0$ を $D>0$ に強めた。
  2. ex-lr-start2 では、$f(1)<0$ から thm-lr-sep により $\alpha<1<\beta$ である。$f(0)>0$ と cor-lr-one を区間 $(0,1)$ に使うと、$f(0)f(1)<0$ なので $(0,1)$ に解がちょうど 1 つある。同じく $f(1)f(2)<0$ なので $(1,2)$ にもちょうど 1 つある。判別式を調べなくてよいのは、$f(1)<0$ が実数の解の存在を保証するからである。
  3. $x^2-2mx+m+2=0$ の 2 つの解がともに $3$ より小さい条件は、cor-lr-left で $q=3$ として
    $$ \frac D4=(m-2)(m+1)\ge0,\qquad s=m<3,\qquad f(3)=9-6m+m+2=11-5m>0 $$
    である。1 つ目から $m\le-1$ または $m\ge2$、3 つ目から $m<\frac{11}5$ なので、条件は $m\le-1$ または $2\le m<\frac{11}5$ である(2 つ目の $m<3$ は自動的に満たされる)。$m=-2$ なら $x^2+4x=0$ で解は $-4$ と $0$、$m=0$ なら $x^2+2=0$ で実数の解はない。
  4. 同じ方程式の 2 つの解がともに $0$ と $3$ の間にある条件は、cor-lr-between により
    $$ (m-2)(m+1)\ge0,\qquad 0< m<3,\qquad f(0)=m+2>0,\qquad f(3)=11-5m>0 $$
    で、$2\le m<\frac{11}5$ である。$m=2.1$ なら解は約 $1.543$ と約 $2.657$、$m=2$ なら重解 $2$ である。
  5. 同じ方程式の解の 1 つが $1$ より大きく、もう 1 つが $1$ より小さい条件は、thm-lr-sep により $f(1)=3-m<0$、つまり $m>3$ である。$m=4$ なら解は $4\pm\sqrt{10}$、約 $0.838$ と約 $7.162$ である。
最高次の係数が負のとき

$F(x)=-x^2+4x-3$ について、$F(x)=0$ の 2 つの解がともに正かどうかを、$F$ のまま調べる。最高次の係数は $a=-1$ である。
$$ \begin{aligned} &\text{判別式}:\ 4^2-4\cdot(-1)\cdot(-3)=16-12=4>0,\\ &\text{軸}:\ x=-\frac{4}{2\cdot(-1)}=2>0,\\ &\text{端の値}:\ aF(0)=(-1)\cdot(-3)=3>0. \end{aligned} $$
3 つとも満たされるので、2 つの解はともに正である。実際 $F(x)=-(x-1)(x-3)$ で、解は $1$ と $3$ である。グラフ $y=F(x)$ は上に凸なので、2 つの解の外側の $x=0$ では $F(0)=-3<0$ になる。「$F(0)>0$」を条件にすると誤りになる。全体を $-1$ で割った $f(x)=x^2-4x+3$ なら、$f(0)=3>0$ で thm-lr-right の形のまま使える。

高校の技法:文字定数を分離する

文字 $m$ が 1 次でしか現れない方程式は、$m=g(x)$ の形に直せることがある。このとき、方程式の解は 曲線 $y=g(x)$ と直線 $y=m$ の交点の $x$ 座標 である。$m$ を動かすと直線が上下に平行移動するだけなので、$g$ の増減さえ調べれば、解の個数と位置がすべての $m$ について一度に分かる。

2 次方程式を分離する

$x^2-2mx+m+2=0$ を考える。$x=\frac12$ を代入すると $\frac14+2=\frac94\ne0$ なので、$x=\frac12$ は解にならない。よって $2x-1\ne0$ として両辺を割ってよく、方程式は
$$ m=g(x):=\frac{x^2+2}{2x-1}\qquad\Bigl(x\ne\frac12\Bigr) $$
と同値である。商の微分法により
$$ g'(x)=\frac{2x(2x-1)-2(x^2+2)}{(2x-1)^2}=\frac{2(x-2)(x+1)}{(2x-1)^2} $$
である。増減は次のとおりである。

$x$$\cdots$$-1$$\cdots$$\frac12$$\cdots$$2$$\cdots$
$g'(x)$$+$$0$$-$$-$$0$$+$
$g(x)$増加$-1$(極大)減少なし減少$2$(極小)増加

また $g(0)=-2$ であり、$x\to\frac12$ で左からは $-\infty$、右からは $+\infty$ に向かう。直線 $y=m$ との交点を見ると、次が分かる。

  • $m>2$:$x>\frac12$ の部分と 2 回交わり、異なる 2 つの正の解をもつ(ex-lr-start1 と一致)。$m=3$ では交点は $x=1,5$。
  • $m=2$:$x=2$ で接し、重解 $x=2$。$-1< m<2$:交点がなく、実数の解はない。
  • $m=-1$:$x=-1$ で接し、重解 $x=-1$。
  • $-2\le m<-1$:$x\le0$ の部分と 2 回交わり、異なる 2 つの解はともに $0$ 以下である($m=-2$ では $x=0,-4$)。
  • $m<-2$:$0< x<\frac12$ の部分と 1 回、$x<-1$ の部分と 1 回交わり、正の解と負の解を 1 つずつもつ。$m=-3$ では解は $-3\pm\sqrt{10}$(約 $0.162$ と約 $-6.162$)。

文字定数を分離して、曲線と水平な直線の交点で解を数える 文字定数を分離して、曲線と水平な直線の交点で解を数える
図2 は ex-lr-separate の $y=g(x)$ に直線 $y=3$、$y=2$、$y=-3$ を重ねたものである。直線を上下に動かすと交点の数が $2\to1\to0$ と変わる境目が、極小値 $2$ と極大値 $-1$ である。$y=-3$ のもう 1 つの交点 $x=-3-\sqrt{10}$ は図の左の外にある。

3 次方程式の実数解の個数

$x^3-3x-m=0$ の実数解の個数を調べる。$m=g(x):=x^3-3x$ と分離すると、$g'(x)=3x^2-3=3(x-1)(x+1)$ なので、$g$ は $x=-1$ で極大値 $g(-1)=2$、$x=1$ で極小値 $g(1)=-2$ をとり、$x\to\pm\infty$ で $g(x)\to\pm\infty$ である。よって実数解の個数は
$$ |m|>2\ \text{のとき}\ 1\ \text{個},\qquad |m|=2\ \text{のとき}\ 2\ \text{個},\qquad |m|<2\ \text{のとき}\ 3\ \text{個} $$
である($|m|=2$ では 1 つが重解)。$m=1$ なら解は約 $-1.532$、$-0.347$、$1.879$ の 3 つ、$m=2$ なら $x^3-3x-2=(x+1)^2(x-2)$ で解は $-1$(重解)と $2$ である。

3 次方程式 x³−3x=m の実数解の個数 3 次方程式 x³−3x=m の実数解の個数
図3 は ex-lr-cubic のグラフである。直線 $y=m$ が極大値 $2$ と極小値 $-2$ の間にあるとき 3 点で交わり、外にあるとき 1 点で交わる。
軸と区間の位置で場合分けする同じ考え方は 2次関数の最大・最小 でも使う。

一般の関数へ:中間値の定理

2 次関数では、$f(p)=(p-\alpha)(p-\beta)$ という式があったので、解の位置を代数的に決められた。一般の関数ではこの式がない。代わりに使うのが次の定理である。

Bolzano の中間値の定理

$f$ を閉区間 $[p,q]$ で連続な関数とする。$f(p)$ と $f(q)$ の符号が異なる($f(p)f(q)<0$)なら、$f(c)=0$ となる $c$ が開区間 $(p,q)$ の中に少なくとも 1 つある。

証明について

本記事では証明しない。証明には、実数に「すき間がない」こと(実数の連続性)が必要である(Leb26 Theorem 3.3.8、およびその前の Lemma 3.3.7)。証明の考え方は、区間を半分に分け、両端の符号が異なるほうを残すことをくり返す 二分法(二分法)である。残る区間は長さが半分ずつになって 1 点に縮み、その点で $f=0$ となる。有理数だけの世界では、$f(x)=x^2-2$ が $f(1)<0< f(2)$ なのに $(1,2)$ に有理数の解をもたないので、この定理は成り立たない。

二分法で解を追い込む

$f(x)=x^3-x-1$ は $f(1)=-1<0$、$f(2)=5>0$ なので、thm-lr-ivt により $(1,2)$ に解がある。中点での値を調べて、符号が変わるほうの半分を残す。

区間中点 $c$$f(c)$残す区間
$[1,\,2]$$1.5$$0.875$$[1,\,1.5]$
$[1,\,1.5]$$1.25$$-0.297$$[1.25,\,1.5]$
$[1.25,\,1.5]$$1.375$$0.225$$[1.25,\,1.375]$
$[1.25,\,1.375]$$1.3125$$-0.052$$[1.3125,\,1.375]$
$[1.3125,\,1.375]$$1.34375$$0.083$$[1.3125,\,1.34375]$

5 回で解は長さ $\frac1{32}$ の区間に入った。実際の解は約 $1.3247$ である。$f'(x)=3x^2-1>0$($x\ge1$)なので $f$ はこの区間で増加し、解はちょうど 1 つである。

2 次関数の cor-lr-one のうち「$f(p)f(q)<0$ なら $(p,q)$ に解がある」の部分は、thm-lr-ivt の特別な場合である。しかし thm-lr-ivt が保証するのは「少なくとも 1 つ」だけで、「ちょうど 1 つ」は 2 次式であることや、ex-lr-bisect のような単調性から出てくる。
3 次方程式の実数解の個数を判別式で判定する方法は 3次方程式と多項式の判別式 で扱う。

例と反例:どの条件が効いているか

外した条件崩れる主張ボックス
軸の条件 $s>p$3 条件で 2 解とも $p$ より大ex-lr-drop (1)
端の値 $f(p)>0$同上ex-lr-drop (2)
判別式 $D\ge0$同上ex-lr-drop (3)
2 次式であること$f(p)f(q)<0$ なら解はちょうど 1 つex-lr-cubic3
連続であること$f(p)f(q)<0$ なら解があるex-lr-jump
解が区間に「ちょうど 1 つ」区間に解があれば $f(p)f(q)<0$ex-lr-both
3 条件の 1 つを外す

thm-lr-right で $p=0$ とし、条件を 1 つずつ外す。
(1) 軸の条件を外す:$x^2-2mx+m+2$ で $m=-\frac32$ とすると、$\frac D4=(m-2)(m+1)=\frac74>0$、$f(0)=\frac12>0$ だが、軸は $x=-\frac32<0$ である。方程式は $x^2+3x+\frac12=0$ で、解 $\frac{-3\pm\sqrt7}2$(約 $-0.177$ と約 $-2.823$)はどちらも負である。$0$ は 2 つの解の右の外にある。
(2) 端の値の条件を外す:$x^2-2x-3=(x+1)(x-3)$ は $D=16>0$、軸 $x=1>0$ だが、$f(0)=-3<0$ で、解 $-1$ は負である。
(3) 判別式の条件を外す:$x^2-2x+2$ は軸 $x=1>0$、$f(0)=2>0$ だが、$D=4-8=-4<0$ で実数の解がない。

3 次式では符号の変化が 1 つの解を意味しない

$f(x)=x^3-x=x(x-1)(x+1)$ は $f(-2)=-6<0$、$f(2)=6>0$ だが、$(-2,2)$ の中に解が $-1,0,1$ の 3 つある。thm-lr-ivt の「少なくとも 1 つ」は正しいが、「ちょうど 1 つ」は正しくない。多項式の場合に言えるのは、重複も数えた解の個数が奇数であることまでである(rem-lr-parity)。

連続でない関数

$x<0$ で $f(x)=-1$、$x\ge0$ で $f(x)=1$ と定める。$f(-1)=-1<0$、$f(1)=1>0$ だが、$f(x)=0$ となる $x$ はない。$f$ は $x=0$ で連続でないので、thm-lr-ivt の仮定を満たさない。

区間に 2 つの解があると端の符号は同じ

$f(x)=x^2-4x+3=(x-1)(x-3)$ は区間 $(0,4)$ に 2 つの解 $1,3$ をもつが、$f(0)=3$、$f(4)=3$ で $f(0)f(4)>0$ である。「$f(p)f(q)<0$ でなければ解がない」とは言えない。区間の中の解の有無は、cor-lr-between のように軸と判別式も合わせて判定する。

さらに先へ

2 次式を 1 次式の積に分けて符号を読んだ考え方は、一般の実数係数の多項式に広がる。

解の個数の偶奇

実数係数の多項式は、定数と、1 次式と、実数の解をもたない 2 次式の積に分解される(代数学の基本定理から従う。本記事では証明しない)。$p< q$ とし、$f(p)\ne0$、$f(q)\ne0$ とする。1 次の因数 $x-\gamma$ は、$\gamma$ が $p$ と $q$ の間にあるときだけ $x=p$ と $x=q$ で符号が異なる。実数の解をもたない 2 次の因数は、lem-lr-square (1) によりつねに同じ符号なので、符号を変えない。定数の因数も符号を変えない。よって $f(p)$ と $f(q)$ の符号が異なるのは、$(p,q)$ の中の解の個数(重解は重複度だけ数える)が奇数のときであり、$(p,q)$ の中の解の個数は、$f(p)f(q)<0$ なら奇数、$f(p)f(q)>0$ なら偶数である。
例:ex-lr-cubic3 の $x^3-x$ は $f(-2)f(2)=-36<0$ で、$(-2,2)$ の中の解は $-1,0,1$ の $3$ 個(奇数)である。ex-lr-both の $x^2-4x+3$ は $f(0)f(4)=9>0$ で、$(0,4)$ の中の解は $1,3$ の $2$ 個(偶数)である。

区間の両端が解でないとき、区間の中の異なる実数解の個数は、Sturmの定理で数えられる。これは $f$ と $f'$ から、整数の互除法と同じように割り算を繰り返し、そのたびに余りの符号を変えたもの(余りに $-1$ を掛けたもの)を次の項として多項式の列を作り、区間の両端での符号の変わり目の数の差として異なる解の個数を得る方法である。重解も 1 個と数えるので、重解を 2 つと数える本記事や rem-lr-parity の数え方とは異なる。たとえば $(x-1)^2$ の区間 $(0,2)$ の中の解は、本記事の数え方では 2 個、Sturm の定理の数え方では 1 個である。本記事では名前の紹介だけにとどめ、証明しない。
区間を小さく分けて、各区間に解がちょうど 1 つずつ入るようにすることを 根の分離 という。Sturm の定理と二分法を組み合わせると、多項式のすべての実数解を好きな精度で求めることができる。

関連項目

参考文献

Mathpediaは寄付と、参考文献の書籍リンク(Amazonアソシエイト)の紹介料で運営されています。 支援について / 寄付する