Fourier級数(Fourier series)とは、周期 $2\pi$ の関数 $f$ に、係数 $\hat f(n)=\frac1{2\pi}\int_{-\pi}^{\pi}f(x)e^{-inx}\,dx$ を並べた級数 $\sum_n\hat f(n)e^{inx}$(実数の形では $\cos nx$ と $\sin nx$ の級数)を対応させたものである。三角関数系の直交性から係数の 2 乗の和は $f$ の 2 乗の平均以下になり(Bessel の不等式)、係数は $0$ に近づく。区分的に $C^1$ 級の関数の級数は各点で左右の極限の平均に収束し、さらに連続なら一様に収束するが、跳びの近くでは部分和の山が残り(Gibbs 現象)、連続関数でも発散する点がありうる。
$\sin x$ と $\frac13\sin3x$ と $\frac15\sin5x$ を足したグラフを描くと、山と谷が平らに近づき、角ばった「矩形の波」に似てくる。項を増やすほど似てくる(図 3)。逆に、周期 $2\pi$ でくり返す関数が与えられたとき、それを $\cos nx$ と $\sin nx$($n=0,1,2,\dots$)の重ね合わせとして書けるか、書けるなら係数はどう決まるか、というのが Fourier 級数の問いである。
係数の決め方は、高校で学ぶ積分の計算で分かる。$m,n$ が正の整数なら $\int_{-\pi}^{\pi}\sin mx\sin nx\,dx$ は $m\ne n$ のとき $0$、$m=n$ のとき $\pi$ である(三角関数の直交性(高校数学))。そこで $f(x)=\sum_n b_n\sin nx$ と書けていると仮定して両辺に $\sin mx$ を掛けて積分すると、右辺は $n=m$ の項だけが残り、$b_m=\frac1\pi\int_{-\pi}^{\pi}f(x)\sin mx\,dx$ となる。この式を逆に係数の定義に使い、「その係数で作った級数が本当に $f$ に戻るか」を調べる。
この記事では次の問いに答える。
| 高校での見方 | この記事の言葉 |
|---|---|
| $\sin nx$、$\cos nx$ の重ね合わせ | 三角多項式、Fourier 級数 |
| 積の積分が $0$ になる | 三角関数系の直交性 |
| 両辺に $\sin mx$ を掛けて積分 | Fourier 係数 $\hat f(n)$、$a_n$、$b_n$ |
| 項を増やすと形が近づく | 部分和 $s_N(f;x)$ の収束 |
関数 $f\colon\mathbb{R}\to\mathbb{C}$ が $2\pi$ 周期であるとは、すべての $x$ で $f(x+2\pi)=f(x)$ となることをいう。複素数値の関数 $f=u+iv$($u,v$ は実数値)が区間 $[a,b]$ で Riemann 積分可能であるとは、$u$ と $v$ がともに Riemann積分 の意味で積分可能であることとし、$\int_a^bf:=\int_a^bu+i\int_a^bv$ と定める。線形性と $\bigl\lvert\int_a^bf\bigr\rvert\le\int_a^b\lvert f\rvert$ は実数値の場合に帰着して従う。
$2\pi$ 周期の関数 $f$ が $[-\pi,\pi]$ で積分可能なら、任意の有界区間で積分可能であり、長さ $2\pi$ の任意の区間での積分は $\int_{-\pi}^{\pi}f$ に等しい。$t\mapsto f(x\pm t)$ も積分可能で、$\int_{-\pi}^{\pi}f(x-t)\,dt=\int_{-\pi}^{\pi}f(t)\,dt$ である。
分割を $2\pi$ だけずらしても上限和・下限和は変わらないので $\int_{c}^{d}f=\int_{c+2\pi}^{d+2\pi}f$ である。区間 $[c,c+2\pi]$ を $2\pi$ の整数倍の点で切り、区間についての加法性(Riemann積分 の定理「区間についての加法性」)を使って各部分を $[-\pi,\pi]$ の中へずらして並べ替えればよい。$t\mapsto f(x-t)$ については、$t\mapsto-t$ の置き換えで分割を裏返しても上限和・下限和は変わらないことを合わせて使う。不等式 $\bigl\lvert\int_a^bf\bigr\rvert\le\int_a^b\lvert f\rvert$ は、$\int_a^bf=re^{i\theta}$($r\ge0$)と書き、$r=\int_a^b\operatorname{Re}\bigl(e^{-i\theta}f\bigr)\le\int_a^b\lvert f\rvert$ とすればよい。ここで $\lvert f\rvert$ が積分可能なのは、$f=u+iv$ について $\bigl\lvert\lvert f(s)\rvert-\lvert f(t)\rvert\bigr\rvert\le\lvert u(s)-u(t)\rvert+\lvert v(s)-v(t)\rvert$ から、各小区間での $\lvert f\rvert$ の上限と下限の差が $u$ と $v$ のそれぞれの差の和以下になるからである(Riemann積分 の定理「可積分性の判定条件」)。
$f,g\colon[a,b]\to\mathbb{C}$ が積分可能なら、積 $fg$ と $\lvert f\rvert^2$ も積分可能である。
要点:実数値の $f$ について $f^2$ の振れ幅は $f$ の振れ幅の $2\sup\lvert f\rvert$ 倍で抑えられるので $f^2$ は積分可能であり、積は $fg=\frac14\bigl((f+g)^2-(f-g)^2\bigr)$ で 2 乗に帰着する。
実数値の場合。積分可能な関数は有界なので $\lvert f\rvert\le M$ とする。小区間 $I$ の上で $\lvert f(s)^2-f(t)^2\rvert=\lvert f(s)+f(t)\rvert\,\lvert f(s)-f(t)\rvert\le2M\lvert f(s)-f(t)\rvert$ だから、$I$ での $f^2$ の上限と下限の差は $f$ の上限と下限の差の $2M$ 倍以下である。したがって任意の分割 $P$ で(上限和)$-$(下限和)は $f^2$ について $f$ の $2M$ 倍以下になり、Riemann積分 の定理「可積分性の判定条件」から $f^2$ は積分可能である。$f+g$、$f-g$ は積分可能(線形性)なので、$fg=\frac14\bigl((f+g)^2-(f-g)^2\bigr)$ も積分可能である。
複素数値の場合。$f=u+iv$、$g=p+iq$ なら $fg=(up-vq)+i(uq+vp)$、$\lvert f\rvert^2=u^2+v^2$ であり、実数値の場合から各項が積分可能である。
$f\colon\mathbb{R}\to\mathbb{C}$ を $2\pi$ 周期で $[-\pi,\pi]$ 上 Riemann 積分可能な関数とする。整数 $n$ に対して
$$
\hat f(n):=\frac1{2\pi}\int_{-\pi}^{\pi}f(x)e^{-inx}\,dx
$$
を $f$ の第 $n$ Fourier 係数(Fourier coefficient)という。形式的な和
$$
\sum_{n=-\infty}^{\infty}\hat f(n)e^{inx}
$$
を $f$ の Fourier 級数(Fourier series)といい、$f(x)\sim\sum_n\hat f(n)e^{inx}$ と書く。自然数 $N$ に対して
$$
s_N(f;x):=\sum_{n=-N}^{N}\hat f(n)e^{inx}
$$
を第 $N$ 部分和という。Fourier 級数が点 $x$ で収束するとは、$N\to\infty$ で $s_N(f;x)$ が収束することをいう。
$\sim$ は「この係数の級数を対応させる」という意味で、等号ではない。級数が収束するか、収束するとして $f(x)$ に等しいかは、この記事の後半で調べる問題である。部分和は $-N$ から $N$ までの対称な和で定める。$n\ge0$ の部分と $n<0$ の部分がそれぞれ収束することを要求すると、収束の意味が変わる。
後の ex-fs-sawtooth の $f(x)=x$ では $\hat f(n)=\frac{i(-1)^n}n$($n\ne0$)なので、点 $x=\pi$ で $\hat f(n)e^{in\pi}=\frac in$ となる。$n\ge1$ の部分 $\sum_{n\ge1}\frac in$ は発散するが、$n$ と $-n$ の項が打ち消し合うので対称な部分和はすべて $0$ である。
実数値の関数では、$\cos nx$ と $\sin nx$ で書くほうが分かりやすい。
$f$ を def-fs-coefficient と同じ関数とする。
$$
a_n:=\frac1\pi\int_{-\pi}^{\pi}f(x)\cos nx\,dx\quad(n\ge0),\qquad b_n:=\frac1\pi\int_{-\pi}^{\pi}f(x)\sin nx\,dx\quad(n\ge1)
$$
とおき、
$$
\frac{a_0}2+\sum_{n=1}^{\infty}\bigl(a_n\cos nx+b_n\sin nx\bigr)
$$
を $f$ の Fourier 級数の実数の形という。
$n\ge1$ について $\hat f(n)=\frac12(a_n-ib_n)$、$\hat f(-n)=\frac12(a_n+ib_n)$、また $\hat f(0)=\frac{a_0}2$ である。したがって
$$
s_N(f;x)=\frac{a_0}2+\sum_{n=1}^{N}\bigl(a_n\cos nx+b_n\sin nx\bigr)
$$
であり、2 つの形の部分和は一致する。$f$ が実数値なら $a_n,b_n$ は実数で、$\hat f(-n)=\overline{\hat f(n)}$ である。
要点:Euler の公式 $e^{\mp inx}=\cos nx\mp i\sin nx$ を係数の定義に入れ、$n$ と $-n$ の項を組にする。
定義に入れると $\hat f(\pm n)=\frac1{2\pi}\int f\cos nx\,dx\mp\frac i{2\pi}\int f\sin nx\,dx=\frac12(a_n\mp ib_n)$、$\hat f(0)=\frac1{2\pi}\int f=\frac{a_0}2$ である。よって $n\ge1$ について
$$\hat f(n)e^{inx}+\hat f(-n)e^{-inx}=\frac{a_n}2\bigl(e^{inx}+e^{-inx}\bigr)-\frac{ib_n}2\bigl(e^{inx}-e^{-inx}\bigr)=a_n\cos nx+b_n\sin nx$$
であり、$n=\pm1,\dots,\pm N$ の項を組にして足せば部分和の式を得る。$f$ が実数値なら $a_n,b_n$ は実数値の関数の積分なので実数であり、$\hat f(-n)=\frac12(a_n+ib_n)=\overline{\hat f(n)}$ である。$\square$
$f$ が偶関数なら $b_n=0$ で $\cos$ だけの級数(余弦級数)に、奇関数なら $a_n=0$ で $\sin$ だけの級数(正弦級数)になる。奇関数の $[-\pi,\pi]$ での積分は $0$ であり、偶関数 $f$ では $f(x)\sin nx$ が、奇関数 $f$ では $f(x)\cos nx$ が奇関数になるからである。
周期 $2L$($L>0$)の関数 $g$ は、$f(x):=g(Lx/\pi)$ とおけば $2\pi$ 周期になる。$f$ の Fourier 級数を $x=\pi y/L$ で書き直すと、$g$ の級数 $\sum_n\hat g_ne^{in\pi y/L}$、$\hat g_n:=\frac1{2L}\int_{-L}^{L}g(y)e^{-in\pi y/L}\,dy$ が得られる。以下の定理はすべてこの変数変換で周期 $2L$ の場合に移せるので、周期は $2\pi$ に固定する。
係数の式が「$e^{-inx}$ を掛けて平均をとる」形になっている理由は、次の直交性である。
整数 $m,n$ について
$$
\frac1{2\pi}\int_{-\pi}^{\pi}e^{imx}\,\overline{e^{inx}}\,dx=\begin{cases}1&(m=n)\\0&(m\ne n)\end{cases}
$$
である。実数の形では、$m,n\ge0$ について $\int_{-\pi}^{\pi}\cos mx\sin nx\,dx=0$、$m\ne n$ なら $\int_{-\pi}^{\pi}\cos mx\cos nx\,dx=\int_{-\pi}^{\pi}\sin mx\sin nx\,dx=0$、$n\ge1$ なら $\int_{-\pi}^{\pi}\cos^2nx\,dx=\int_{-\pi}^{\pi}\sin^2nx\,dx=\pi$ である。
$e^{imx}\,\overline{e^{inx}}=e^{i(m-n)x}$ である。$m=n$ なら被積分関数は $1$ で、値は $1$ である。$k:=m-n\ne0$ なら $\frac{e^{ikx}}{ik}$ が原始関数なので、積分は $\frac{e^{ik\pi}-e^{-ik\pi}}{ik}=\frac{2\sin k\pi}{k}=0$ である。実数の形は、$\cos mx=\frac12(e^{imx}+e^{-imx})$、$\sin nx=\frac1{2i}(e^{inx}-e^{-inx})$ を代入して展開し、上の式を項ごとに使えば得られる(たとえば $n\ge1$ のとき $\sin^2nx=-\frac14(e^{2inx}-2+e^{-2inx})$ の積分は $-\frac14\cdot(-2)\cdot2\pi=\pi$)。$\square$
実数の形は、高校の範囲で積和の公式から示すこともできる(三角関数の直交性(高校数学) の定理「三角関数の直交関係」)。直交性から、有限個の項の和(三角多項式)では係数が積分で取り出せる。
$T(x)=\sum_{n=-K}^{K}c_ne^{inx}$($c_n\in\mathbb{C}$)を三角多項式とする。$\lvert n\rvert\le K$ なら $\hat T(n)=c_n$、$\lvert n\rvert>K$ なら $\hat T(n)=0$ である。したがって $N\ge K$ なら $s_N(T;x)=T(x)$ であり、$T$ が恒等的に $0$ ならすべての $c_n$ が $0$ である。
積分の線形性と prop-fs-orthogonality から $\hat T(m)=\sum_{n=-K}^{K}c_n\frac1{2\pi}\int_{-\pi}^{\pi}e^{inx}e^{-imx}\,dx$ は、$\lvert m\rvert\le K$ なら $c_m$、そうでなければ $0$ である。$N\ge K$ なら $s_N(T;x)=\sum_{\lvert n\rvert\le K}c_ne^{inx}=T(x)$ である。$T=0$ なら $c_m=\hat T(m)=\hat0(m)=0$ である。$\square$
$\{e^{inx}\}_{n\in\mathbb{Z}}$ は、内積 $\langle f,g\rangle:=\frac1{2\pi}\int_{-\pi}^{\pi}f(x)\overline{g(x)}\,dx$ に関する正規直交系であり(積分で定める内積)、$\hat f(n)=\langle f,e^{inx}\rangle$ は $f$ の「$e^{inx}$ 方向の成分」である。有限次元のベクトルを正規直交基底の成分で書くのと同じ形をしているが、無限個の成分の和がもとの関数に戻るかどうかは自明でない。
$-\pi< x<\pi$ で $f(x)=x$ とし、$2\pi$ 周期に延長する($x=\pi$ の値は後で問題にするので決めないでおく)。$f$ は奇関数なので $a_n=0$ であり、部分積分 で $b_n=\frac{2(-1)^{n+1}}n$ となる。
$$b_n=\frac1\pi\int_{-\pi}^{\pi}x\sin nx\,dx=\frac1\pi\Bigl[-\frac{x\cos nx}n\Bigr]_{-\pi}^{\pi}+\frac1{\pi n}\int_{-\pi}^{\pi}\cos nx\,dx=-\frac{2\cos n\pi}n=\frac{2(-1)^{n+1}}n$$
$x=\frac\pi2$ での部分和は $s_1=2$、$s_3=1.333\ldots$、$s_5=1.733\ldots$、$s_{100}=1.5607\ldots$ で、$\frac\pi2=1.5707\ldots$ に近づくが、近づき方は遅い。
のこぎり波 f と部分和 s_3、s_10、s_40。跳びの点の外では部分和が f に近づき、跳びの点では 0 を通る
図 1 はのこぎり波と部分和のグラフである。跳びの点 $x=\pm\pi$ の外では部分和が $f$ に近づき、跳びの点ではどの部分和も $0$ を通る。跳びの点のすぐ近くでは、部分和が $f$ の値を超えて振れる山が残る(「反例:条件を外すと崩れること」の節で調べる)。
$0< x<\pi$ で $h(x)=1$、$-\pi< x<0$ で $h(x)=-1$、$h(0)=h(\pi)=0$ とし、$2\pi$ 周期に延長する。$h$ は奇関数なので $a_n=0$ であり、
$$
b_n=\frac2\pi\int_0^{\pi}\sin nx\,dx=\frac{2(1-\cos n\pi)}{\pi n}=\begin{cases}\dfrac4{\pi n}&(n\text{ が奇数})\\0&(n\text{ が偶数})\end{cases}
$$
である。したがって
$$
h(x)\sim\frac4\pi\Bigl(\sin x+\frac{\sin3x}3+\frac{\sin5x}5+\cdots\Bigr)
$$
であり、冒頭で足した $\sin x+\frac13\sin3x+\frac15\sin5x$ は $\frac\pi4s_5(h;x)$ にあたる。
$-\pi\le x\le\pi$ で $g(x)=\lvert x\rvert$ とし、$2\pi$ 周期に延長する($g(-\pi)=g(\pi)$ なので延長は連続である)。$g$ は偶関数なので $b_n=0$、$a_0=\frac2\pi\int_0^\pi x\,dx=\pi$ であり、$n\ge1$ では部分積分で、奇数の $n$ で $a_n=-\frac4{\pi n^2}$、偶数の $n$ で $a_n=0$ となる。
$$a_n=\frac2\pi\int_0^{\pi}x\cos nx\,dx=\frac2\pi\Bigl(\Bigl[\frac{x\sin nx}n\Bigr]_0^\pi-\frac1n\int_0^\pi\sin nx\,dx\Bigr)=\frac{2(\cos n\pi-1)}{\pi n^2}$$
3 つの例を比べると、関数がなめらかなほど係数が速く小さくなり、収束のしかたもよくなる。
| のこぎり波 $x$ | 矩形波 $h$ | 三角波 $\lvert x\rvert$ | |
|---|---|---|---|
| 周期的に延長した関数の連続性 | $x=\pi$ で跳び | $x=0,\pi$ で跳び | 連続 |
| 係数の大きさ | $2/n$ | $4/(\pi n)$(奇数の $n$) | $4/(\pi n^2)$(奇数の $n$) |
| 係数の絶対値の和 | 発散 | 発散 | 収束 |
| 級数の収束 | 各点(跳びでは平均) | 各点(跳びでは平均) | 一様 |
係数の 2 乗の和は、関数の 2 乗の平均で抑えられる。
$f$ を $2\pi$ 周期で $[-\pi,\pi]$ 上積分可能な関数とする。すべての自然数 $N$ について
$$
\frac1{2\pi}\int_{-\pi}^{\pi}\bigl\lvert f(x)-s_N(f;x)\bigr\rvert^2dx=\frac1{2\pi}\int_{-\pi}^{\pi}\lvert f(x)\rvert^2dx-\sum_{n=-N}^{N}\lvert\hat f(n)\rvert^2
$$
が成り立つ。とくに $\sum_{n=-N}^{N}\lvert\hat f(n)\rvert^2$ は $N\to\infty$ で収束し、
$$
\sum_{n=-\infty}^{\infty}\lvert\hat f(n)\rvert^2\le\frac1{2\pi}\int_{-\pi}^{\pi}\lvert f(x)\rvert^2dx
$$
である。
$c_n:=\hat f(n)$、$s_N:=s_N(f;\cdot)$ と書き、$\langle u,v\rangle:=\frac1{2\pi}\int_{-\pi}^{\pi}u\overline v\,dx$ とおく(lem-fs-product から、積分可能な $u,v$ について定まる)。$\lvert u-v\rvert^2=\lvert u\rvert^2-2\operatorname{Re}(u\overline v)+\lvert v\rvert^2$ を積分すると
$$
\langle f-s_N,f-s_N\rangle=\langle f,f\rangle-2\operatorname{Re}\langle f,s_N\rangle+\langle s_N,s_N\rangle
$$
である。係数の定義から $\langle f,s_N\rangle=\sum_{\lvert n\rvert\le N}\lvert c_n\rvert^2$、直交性 prop-fs-orthogonality から $\langle s_N,s_N\rangle=\sum_{\lvert n\rvert\le N}\lvert c_n\rvert^2$ であり、代入すると等式を得る。
$s_N=\sum_{\lvert n\rvert\le N}c_ne^{inx}$ だから、積分の線形性により $\langle f,s_N\rangle=\sum_{\lvert n\rvert\le N}\overline{c_n}\,\frac1{2\pi}\int_{-\pi}^{\pi}f(x)e^{-inx}\,dx=\sum_{\lvert n\rvert\le N}\overline{c_n}\,c_n$ である。また $\langle s_N,s_N\rangle=\sum_{\lvert m\rvert,\lvert n\rvert\le N}c_m\overline{c_n}\,\frac1{2\pi}\int_{-\pi}^{\pi}e^{imx}\,\overline{e^{inx}}\,dx$ で、直交性から $m=n$ の項だけが残る。
等式の左辺は、$f$ と部分和の「平均 2 乗の距離」である。等式は、$f$ を $s_N$ と残り $f-s_N$ に分けると、長さの 2 乗が足し算になる(Pythagoras の定理)ことを述べている。同じ考え方から、次数 $N$ 以下の三角多項式のうち平均 2 乗の距離で $f$ にいちばん近いのは $s_N(f;\cdot)$ である。この最良近似の性質は、実数の形で Fourier係数と最良近似 の系「Fourier 係数の Bessel の不等式と最良近似」が扱っている。
$f$ を $2\pi$ 周期で $[-\pi,\pi]$ 上積分可能な関数とすると、$\lvert n\rvert\to\infty$ で $\hat f(n)\to0$ である。とくに、$[-\pi,\pi]$ 上積分可能な関数 $u$ について
$$
\lim_{n\to\infty}\int_{-\pi}^{\pi}u(t)\cos nt\,dt=0,\qquad\lim_{n\to\infty}\int_{-\pi}^{\pi}u(t)\sin nt\,dt=0
$$
である。
thm-fs-bessel から $\sum_n\lvert\hat f(n)\rvert^2$ は収束するので、項 $\lvert\hat f(n)\rvert^2$ は $\lvert n\rvert\to\infty$ で $0$ に近づく。後半は、$u$ を周期的に延長して(端の値は積分に影響しない)$\cos nt=\frac12(e^{int}+e^{-int})$、$\sin nt=\frac1{2i}(e^{int}-e^{-int})$ と書けば
$$
\int_{-\pi}^{\pi}u(t)\cos nt\,dt=\pi\bigl(\hat u(-n)+\hat u(n)\bigr),\qquad\int_{-\pi}^{\pi}u(t)\sin nt\,dt=\pi i\bigl(\hat u(n)-\hat u(-n)\bigr)
$$
となり、前半から $0$ に近づく。$\square$
直感的には、$n$ が大きいと $\cos nt$ は細かく振動し、$u$ がほぼ一定とみなせる短い区間の上で正と負の部分が打ち消し合う。係数が $0$ に近づくことは言えても、その速さは $f$ によって違う(例の表)。速さについては、thm-fs-uniform の証明で使う $\widehat{f'}(n)=in\hat f(n)$ が、なめらかさと係数の減り方を結びつける。
自然数 $N$ について $D_N(t):=\sum_{n=-N}^{N}e^{int}=1+2\sum_{n=1}^{N}\cos nt$ とおく(Dirichlet 核)。
(R1) $D_N$ は実数値の偶関数で $2\pi$ 周期であり、$\frac1{2\pi}\int_{-\pi}^{\pi}D_N(t)\,dt=1$、$\frac1{2\pi}\int_0^{\pi}D_N(t)\,dt=\frac12$ である。
(R2) $\sin\frac t2\ne0$ なら $D_N(t)=\dfrac{\sin\bigl(N+\frac12\bigr)t}{\sin\frac t2}$ である。
(R3) $f$ が $2\pi$ 周期で $[-\pi,\pi]$ 上積分可能なら、すべての $x$ で $\displaystyle s_N(f;x)=\frac1{2\pi}\int_{-\pi}^{\pi}f(x-t)D_N(t)\,dt=\frac1{2\pi}\int_0^{\pi}\bigl(f(x+t)+f(x-t)\bigr)D_N(t)\,dt$ である。
要点:(i) は直交性から、(ii) は等比数列の和の公式から、(iii) は係数の定義を部分和に入れて和と積分を入れ替えることから従う。
性質 (i):$e^{int}+e^{-int}=2\cos nt$ から 2 つ目の式が従い、$\cos$ の和なので実数値・偶・$2\pi$ 周期である。prop-fs-orthogonality で $m=0$ とすると、$n\ne0$ の項の積分は $0$ なので $\frac1{2\pi}\int_{-\pi}^{\pi}D_N=1$ であり、偶関数なので $[0,\pi]$ の積分はその半分である。
性質 (ii):$D_N$ は初項 $e^{-iNt}$、公比 $e^{it}$ の等比数列の和なので、$(e^{it}-1)D_N(t)=e^{i(N+1)t}-e^{-iNt}$ である。両辺に $e^{-it/2}$ を掛けると $\bigl(e^{it/2}-e^{-it/2}\bigr)D_N(t)=e^{i(N+\frac12)t}-e^{-i(N+\frac12)t}$ であり、$e^{i\theta}-e^{-i\theta}=2i\sin\theta$ から $2i\sin\frac t2\cdot D_N(t)=2i\sin\bigl(N+\frac12\bigr)t$ を得る。
性質 (iii):係数の定義を部分和に入れて和と積分を入れ替える(有限和なのでよい)と
$$s_N(f;x)=\sum_{\lvert n\rvert\le N}\frac1{2\pi}\int_{-\pi}^{\pi}f(s)e^{-ins}\,ds\,e^{inx}=\frac1{2\pi}\int_{-\pi}^{\pi}f(s)D_N(x-s)\,ds$$
である。$s=x-t$ と置き換えると積分区間は $[x-\pi,x+\pi]$ になるが、被積分関数 $f(x-t)D_N(t)$ は $t$ について $2\pi$ 周期なので、区間を $[-\pi,\pi]$ に戻せる(「周期関数と積分」の節)。最後に $[-\pi,0]$ の部分で $t$ を $-t$ に置き換え、$D_N(-t)=D_N(t)$ を使うと 2 つ目の式になる。$\square$
Dirichlet 核 D_5 と D_20。原点の山は高さ 2N+1 で細くなり、脇の振動は小さくならずに細かくなる
図 2 のように、$D_N$ は原点で値 $2N+1$ の鋭い山をもち、全体の平均は $1$ である。部分和は $f$ を $D_N$ で重み付けした平均なので、山が $t=0$ に集中していくことから $s_N(f;x)$ が $f(x)$ に近づくと期待される。ただし脇の振動の振れ幅は小さくならない($\lvert D_N(t)\rvert$ の $\frac1{\lvert\sin(t/2)\rvert}$ という上からの評価は $N$ によらない)ので、打ち消し合いを使う議論が要る。$\frac12+\sum_{k=1}^n\cos kt$ を Dirichlet 核と呼ぶ流儀もあり、この記事の $D_N$ の半分にあたる(sin kxとcos kxの和 の命題「Dirichlet 核の式と性質」)。
跳びのある関数も扱うため、片側の極限の記号を用意する。$f(x+0):=\lim_{t\to+0}f(x+t)$、$f(x-0):=\lim_{t\to+0}f(x-t)$ と書く。
$f$ を $2\pi$ 周期で $[-\pi,\pi]$ 上積分可能な関数とし、点 $x$ で次を仮定する:片側の極限 $f(x+0)$、$f(x-0)$ が存在し、ある $\delta>0$ と $M\ge0$ があって、$0< t<\delta$ のとき
$$
\lvert f(x+t)-f(x+0)\rvert\le Mt,\qquad\lvert f(x-t)-f(x-0)\rvert\le Mt
$$
が成り立つ。このとき
$$
\lim_{N\to\infty}s_N(f;x)=\frac{f(x+0)+f(x-0)}2
$$
である。とくに $f$ が $x$ で連続なら、Fourier 級数は $x$ で $f(x)$ に収束する。
$m:=\frac12\bigl(f(x+0)+f(x-0)\bigr)$ とおく。prop-fs-dirichlet-kernel の性質 (i) の $\frac1{2\pi}\int_0^\pi D_N=\frac12$ と性質 (iii) から
$$
s_N(f;x)-m=\frac1{2\pi}\int_0^{\pi}\varphi(t)D_N(t)\,dt,\qquad\varphi(t):=f(x+t)-f(x+0)+f(x-t)-f(x-0)
$$
である。$0< t\le\pi$ で $g(t):=\varphi(t)/\sin\frac t2$、$g(0):=0$ と定めると、性質 (ii) から $0< t\le\pi$ で $\varphi(t)D_N(t)=g(t)\sin\bigl(N+\frac12\bigr)t$ である($t=0$ の 1 点は積分に影響しない)。
仮定の評価はちょうど $g$ が $t=0$ の近くで有界であることを保証し、これから $g$ は $[0,\pi]$ で積分可能になる。
$0\le t\le\pi$ では $\sin\frac t2\ge\frac t\pi$ である($\sin$ は $[0,\frac\pi2]$ で上に凸なので、グラフは $(0,0)$ と $(\frac\pi2,1)$ を結ぶ線分より上にある)。仮定から $0< t<\delta$ で $\lvert\varphi(t)\rvert\le2Mt$ なので $\lvert g(t)\rvert\le2\pi M$ である。$\delta\le t\le\pi$ では $\lvert g(t)\rvert\le4\sup\lvert f\rvert/\sin\frac\delta2$ である。よって $g$ は有界である。さらに $0<\eta<\pi$ なら $[\eta,\pi]$ 上で $\varphi$ は積分可能、$1/\sin\frac t2$ は連続なので、lem-fs-product から $g$ は $[\eta,\pi]$ で積分可能である。有界で、端を少し削った区間ごとに積分可能な関数は全体で積分可能である(Leb26a Lemma 5.2.8、実部と虚部に使う)から、$g$ は $[0,\pi]$ で積分可能である。
証明が示すように、収束するかどうかは $x$ の近くの $f$ の値だけで決まる($x$ の近くで一致する 2 つの関数は、$x$ で同時に収束し、同じ値に近づく。Leb26b Corollary 11.8.12)。遠くの値は $g$ の積分可能性にしか効かないからである。ただし、近づく速さは関数全体のなめらかさに左右される。
仮定を確かめやすい形にしておく。$2\pi$ 周期の関数 $f$ が区分的に $C^1$ 級であるとは、分点 $-\pi=x_0< x_1<\cdots< x_k=\pi$ があって、各 $j$ について $f$ の開区間 $(x_{j-1},x_j)$ への制限が、閉区間 $[x_{j-1},x_j]$ 上の $C^1$ 級の関数 $F_j$ の制限になっていることをいう(分点での $f$ の値は問わない)。
$f$ が $2\pi$ 周期で区分的に $C^1$ 級なら、すべての $x$ で $s_N(f;x)\to\frac12\bigl(f(x+0)+f(x-0)\bigr)$ である。とくに $f$ が連続な点では $f(x)$ に収束する。
要点:各小区間では $f$ は $C^1$ 級の関数 $F_j$ と一致するので、平均値の定理から thm-fs-dirichlet の評価が $M=2\max\lvert F_j'\rvert$ で成り立つ。
$f$ は各小区間で有界な連続関数に一致するので $[-\pi,\pi]$ 上積分可能である。周期性から、$x$ を $2\pi$ の整数倍だけずらして $-\pi\le x<\pi$ としてよい。$x_{j-1}\le x< x_j$ となる $j$ をとり、$\delta:=x_j-x$ とすると、$0< t<\delta$ で $f(x+t)=F_j(x+t)$ なので $f(x+0)=F_j(x)$ であり、$F_j$ の実部と虚部に平均値の定理を使うと $\lvert f(x+t)-f(x+0)\rvert\le2\bigl(\max_{[x_{j-1},x_j]}\lvert F_j'\rvert\bigr)t$ である。左側も同様で、$x_{j-1}< x$ なら同じ $F_j$ を、$x=x_{j-1}$ で $j\ge2$ なら 1 つ左の小区間の $F_{j-1}$ を、$x=x_0=-\pi$ なら周期性により $F_k$ を $2\pi$ ずらした関数を使えばよい。左右で得た $\delta$ のうち小さいほう、$M$ のうち大きいほうをとれば、thm-fs-dirichlet の仮定が成り立つ。$\square$
のこぎり波(ex-fs-sawtooth)と矩形波(ex-fs-square)は区分的に $C^1$ 級である。のこぎり波の級数は $-\pi< x<\pi$ で $x$ に、$x=\pm\pi$ で $0$ に収束し、矩形波の級数は $0< x<\pi$ で $1$ に、跳びの点 $x=0$ で $0$ に収束する。矩形波で $x=\frac\pi2$ とすると
$$
1=\frac4\pi\Bigl(1-\frac13+\frac15-\cdots\Bigr)
$$
となり、のこぎり波から得た Leibniz の級数がもう一度得られる。
三角波 $\lvert x\rvert$(ex-fs-abs)は連続で区分的に $C^1$ 級なので、級数はすべての点で $\lvert x\rvert$ に収束する。$x=0$ とすると
$$
0=\frac\pi2-\frac4\pi\Bigl(1+\frac19+\frac1{25}+\cdots\Bigr),\qquad\text{すなわち}\qquad\sum_{k=0}^{\infty}\frac1{(2k+1)^2}=\frac{\pi^2}8
$$
である。$S:=\sum_{n\ge1}\frac1{n^2}$(収束する)とおくと、偶数の項の和は $\sum\frac1{(2n)^2}=\frac S4$ なので、奇数の項の和は $\frac34S$ であり、$S=\frac43\cdot\frac{\pi^2}8=\frac{\pi^2}6$ を得る。これは Basel問題 の定理「平方数の逆数の和」の別証明である(同じ値の Parseval の等式による導出は 無限次元のピタゴラスの定理 の定理「平方数の逆数の和」にある)。
各点収束の定理は点ごとの主張である。関数が連続で区分的に $C^1$ 級なら、係数の絶対値の和が収束し、級数は一様に収束する。
$f\colon\mathbb{R}\to\mathbb{C}$ が $2\pi$ 周期で連続かつ区分的に $C^1$ 級なら、$\sum_{n=-\infty}^{\infty}\lvert\hat f(n)\rvert<\infty$ であり、部分和 $s_N(f;x)$ は $\mathbb{R}$ 上で $f(x)$ に一様収束する。
要点:分点以外で $g:=f'$(分点では $0$)とおくと、各小区間で部分積分して境界の項が $f$ の連続性と周期性で打ち消し合うので
$$
\hat g(n)=in\,\hat f(n)\qquad(n\ne0)
$$
となる。これと Cauchy–Schwarz の不等式、$g$ に対する thm-fs-bessel から
$$
\sum_{1\le\lvert n\rvert\le N}\lvert\hat f(n)\rvert=\sum_{1\le\lvert n\rvert\le N}\frac{\lvert\hat g(n)\rvert}{\lvert n\rvert}\le\Bigl(\frac1{2\pi}\int_{-\pi}^{\pi}\lvert g\rvert^2\Bigr)^{1/2}\Bigl(2\sum_{n=1}^{\infty}\frac1{n^2}\Bigr)^{1/2}
$$
が $N$ によらずに成り立ち、$\sum_n\lvert\hat f(n)\rvert<\infty$ である。すると優級数判定法で部分和はある関数に一様収束し、cor-fs-piecewise からその極限は $f$ である。
分点を $-\pi=x_0<\cdots< x_k=\pi$、各小区間の $C^1$ 級の関数を $F_j$ とする。
段 1(導関数の係数).分点(と、それを $2\pi$ の整数倍ずらした点)以外では $f$ は微分可能なので、そこで $g:=f'$、分点で $g:=0$ とおく。$g$ は各 $[x_{j-1},x_j]$ で連続関数 $F_j'$ と端点以外で一致するので積分可能であり(有限個の点で値を変えても積分可能性と積分は変わらない。Leb26a Proposition 5.2.10)、したがって $[-\pi,\pi]$ で積分可能である。$n\ne0$ とする。各小区間で 部分積分 を使うと
$$\int_{x_{j-1}}^{x_j}F_j(x)e^{-inx}\,dx=\Bigl[\frac{F_j(x)e^{-inx}}{-in}\Bigr]_{x_{j-1}}^{x_j}+\frac1{in}\int_{x_{j-1}}^{x_j}F_j'(x)e^{-inx}\,dx$$
である。$f$ は連続なので $F_j(x_j)=f(x_j)$、$F_j(x_{j-1})=f(x_{j-1})$ であり、$j=1,\dots,k$ について足すと境界の項は打ち消し合って $\frac{f(\pi)e^{-in\pi}-f(-\pi)e^{in\pi}}{-in}$ だけが残る。$f(\pi)=f(-\pi)$、$e^{-in\pi}=e^{in\pi}$ なのでこれも $0$ である。よって $2\pi\hat f(n)=\frac{2\pi}{in}\hat g(n)$、すなわち $\hat g(n)=in\,\hat f(n)$ である。
段 2(係数の絶対値の和).$N\ge1$ について、有限和の Cauchy–Schwarz の不等式から $\sum_{1\le\lvert n\rvert\le N}\frac{\lvert\hat g(n)\rvert}{\lvert n\rvert}\le\bigl(\sum_{1\le\lvert n\rvert\le N}\lvert\hat g(n)\rvert^2\bigr)^{1/2}\bigl(\sum_{1\le\lvert n\rvert\le N}\frac1{n^2}\bigr)^{1/2}$ であり、右辺の第 1 因子は thm-fs-bessel により $\bigl(\frac1{2\pi}\int_{-\pi}^{\pi}\lvert g\rvert^2\bigr)^{1/2}$ 以下、第 2 因子は $\bigl(2\sum_{n\ge1}\frac1{n^2}\bigr)^{1/2}$ 以下である。右辺は $N$ によらない有限の値なので、$\sum_n\lvert\hat f(n)\rvert$ は収束する。
段 3(一様収束).$s_N(f;x)=\hat f(0)+\sum_{n=1}^{N}\bigl(\hat f(n)e^{inx}+\hat f(-n)e^{-inx}\bigr)$ の各項の絶対値は $x$ によらず $M_n:=\lvert\hat f(n)\rvert+\lvert\hat f(-n)\rvert$ 以下で、段 2 から $\sum_nM_n<\infty$ である。実部と虚部に 一様収束 の定理「Weierstrassの優級数判定法」を使うと、$s_N(f;\cdot)$ はある関数 $F$ に $\mathbb{R}$ 上で一様収束する。一方、$f$ は連続で区分的に $C^1$ 級なので、cor-fs-piecewise からすべての $x$ で $s_N(f;x)\to f(x)$ である。極限は 1 つなので $F=f$ であり、$s_N(f;\cdot)$ は $f$ に一様収束する。$\square$
証明の式 $\widehat{f'}(n)=in\hat f(n)$ は、「微分すると係数に $in$ が掛かる」ことを述べている。逆に言えば、$f$ がなめらかなほど係数は速く小さくなる。三角波 $\lvert x\rvert$ の係数が $1/n^2$ の速さで小さくなり、跳びのあるのこぎり波の係数が $1/n$ の速さでしか小さくならないのはこのためである。
三角波では、部分和と $\lvert x\rvert$ の差の最大値は $x=0$ でとられ、$\frac4\pi\sum_{k>N,\,k\text{ 奇数}}\frac1{k^2}$ に等しい(各項 $\frac4{\pi k^2}\cos kx$ の絶対値は $x=0$ で最大になり、そこで符号がそろうため)。$N=1,3,9,49$ でそれぞれ $0.2975\ldots$、$0.1560\ldots$、$0.0634\ldots$、$0.0127\ldots$ である。
$f$ が $2\pi$ 周期で連続かつ区分的に $C^1$ 級なら
$$
\frac1{2\pi}\int_{-\pi}^{\pi}\lvert f(x)\rvert^2dx=\sum_{n=-\infty}^{\infty}\lvert\hat f(n)\rvert^2
$$
である。$f$ が実数値なら、実数の形で $\displaystyle\frac1\pi\int_{-\pi}^{\pi}f(x)^2dx=\frac{a_0^2}2+\sum_{n=1}^{\infty}\bigl(a_n^2+b_n^2\bigr)$ である。
thm-fs-bessel の等式から
$$
0\le\frac1{2\pi}\int_{-\pi}^{\pi}\lvert f\rvert^2-\sum_{\lvert n\rvert\le N}\lvert\hat f(n)\rvert^2=\frac1{2\pi}\int_{-\pi}^{\pi}\lvert f-s_N(f;\cdot)\rvert^2\le\Bigl(\sup_{x\in\mathbb{R}}\lvert f(x)-s_N(f;x)\rvert\Bigr)^2
$$
であり、thm-fs-uniform から右辺は $N\to\infty$ で $0$ に近づく。実数の形は、prop-fs-real-complex から $\lvert\hat f(n)\rvert^2+\lvert\hat f(-n)\rvert^2=\frac12(a_n^2+b_n^2)$($n\ge1$)、$\lvert\hat f(0)\rvert^2=\frac{a_0^2}4$ なので、両辺を $2$ 倍すればよい。$\square$
三角波 $\lvert x\rvert$(ex-fs-abs)に cor-fs-parseval を使うと $\sum_{k\ge0}\frac1{(2k+1)^4}=\frac{\pi^4}{96}$ となり、ここから $\sum_{n\ge1}\frac1{n^4}=\frac{\pi^4}{90}=1.0823\ldots$ を得る。
左辺は $\frac1{2\pi}\int_{-\pi}^{\pi}x^2dx=\frac{\pi^2}3$ である。右辺は $\hat f(0)=\frac\pi2$、奇数の $n$ で $\hat f(\pm n)=\frac{a_n}2=-\frac2{\pi n^2}$、それ以外は $0$ なので
$$\frac{\pi^2}3=\frac{\pi^2}4+2\sum_{n\text{ 奇数}}\frac4{\pi^2n^4},\qquad\text{すなわち}\qquad\sum_{k=0}^{\infty}\frac1{(2k+1)^4}=\frac{\pi^2}{12}\cdot\frac{\pi^2}8=\frac{\pi^4}{96}$$
である。偶数の項の和 $\sum_{n\ge1}\frac1{(2n)^4}$ は全体の $\frac1{16}$ なので、奇数の項の和は全体の $\frac{15}{16}$ であり、$\sum_{n\ge1}\frac1{n^4}=\frac{16}{15}\cdot\frac{\pi^4}{96}=\frac{\pi^4}{90}$ である。
Parseval の等式は、連続でない関数を含む、$[-\pi,\pi]$ 上で Riemann 積分可能なすべての $2\pi$ 周期関数で成り立つ。さらに $\frac1{2\pi}\int_{-\pi}^{\pi}\lvert f-s_N(f;\cdot)\rvert^2\to0$ であり、Riemann 積分可能な $f,g$ について $\frac1{2\pi}\int_{-\pi}^{\pi}f\overline g=\sum_n\hat f(n)\overline{\hat g(n)}$ となる(Leb26b Theorem 11.8.13)。この記事では証明しない。実数値の連続関数の場合の証明は 無限次元のピタゴラスの定理 の定理「Parseval の等式」にある。
Parseval の等式は、$\{e^{inx}\}_{n\in\mathbb{Z}}$ が「座標軸として足りている」こと、すなわち平均 2 乗の距離について完全な正規直交系であることを述べている。Lebesgue 積分を使って 2 乗可積分な関数の空間 $L^2$ を作ると、この空間は完備になり(Hilbert空間)、$\{e^{inx}\}$ はその正規直交基底になる。このとき、すべての $f\in L^2$ で Fourier 級数は $L^2$ のノルムで $f$ に収束する(Axl20 11.30、11.31)。
thm-fs-dirichlet と thm-fs-uniform の仮定を外したとき、また級数を項別に微分したときに、次のように結論が崩れる。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 連続性(thm-fs-uniform) | 矩形波 $h$ | 部分和が一様収束すること。跳びの近くに高さ約 $1.179$ の山が残る |
| 点での片側の評価 $\lvert f(x\pm t)-f(x\pm0)\rvert\le Mt$(thm-fs-dirichlet) | du Bois-Reymond の連続関数 | その点での各点収束 |
| 跳びの点での連続性 | のこぎり波で $f(\pi):=\pi$ と定めたもの | 級数の和が $f(x)$ に等しいこと(和は $0$) |
| 項別微分の前提(導関数の級数の収束) | のこぎり波の級数の項別微分 | 項別微分した級数の収束 |
3 行目は ex-fs-sawtooth で見たとおりである:級数は $x=\pi$ で $0$ に収束し、$f(\pi)$ をどう定めても左右の極限の平均 $0$ にしかならない。Fourier 係数は積分で決まるので、1 点の値を変えても級数は変わらないからである。残りの 3 行を以下で確かめる。
矩形波 $h$(ex-fs-square)は $x=0$ で跳ぶので連続でなく、thm-fs-uniform の仮定を満たさない。$h$ は区分的に $C^1$ 級なので、各点では $s_N(h;x)\to h(x)$ である(ex-fs-apply)。しかし一様収束はしない。より詳しく、$M\ge1$、$x_M:=\frac\pi{2M}$ とすると
$$
\lim_{M\to\infty}s_{2M}(h;x_M)=\frac2\pi\int_0^{\pi}\frac{\sin t}t\,dt=1.17897\ldots
$$
であり、$x_M\to0$ で $h(x_M)=1$ なので、跳びのすぐ右で部分和は $1$ を約 $0.179$ 超え、この超過は $M$ を大きくしても $0$ にならない。
証明の要点は、$s_{2M}(h;x_M)$ が関数 $\frac{\sin t}t$ の $[0,\pi]$ 上の Riemann 和に書けることである。したがって $\sup_{0< x<\pi}\lvert s_{2M}(h;x)-h(x)\rvert\ge s_{2M}(h;x_M)-1\to0.17897\ldots$ であり、一様収束しない。
偶数の $n$ の係数は $0$ なので $s_{2M}(h;x)=\frac4\pi\sum_{j=1}^{M}\frac{\sin(2j-1)x}{2j-1}$ である。$t_j:=(2j-1)x_M=\frac{(2j-1)\pi}{2M}$ とおくと $\frac1{2j-1}=\frac{\pi}{2Mt_j}$ なので
$$s_{2M}(h;x_M)=\frac2\pi\sum_{j=1}^{M}\frac\pi M\cdot\frac{\sin t_j}{t_j}$$
である。$t_j$ は $[0,\pi]$ を $M$ 等分した小区間の中点であり、$\varphi(t):=\frac{\sin t}t$($\varphi(0):=1$)は $[0,\pi]$ で連続なので、右辺の和は $\varphi$ の Riemann 和として $\int_0^\pi\varphi$ に近づく(Riemann積分 の定理「Riemann和の極限としての積分」)。数値では $s_{10}(h;\frac\pi{10})=1.1823\ldots$、$s_{40}(h;\frac\pi{40})=1.1798\ldots$、$s_{400}(h;\frac\pi{400})=1.17898\ldots$ である。
矩形波と部分和 s_9、s_39。右は跳び x = 0 の近くの拡大で、点線は高さ 1.179…。項を増やすと山は跳びに近づくが低くならない
図 3 の右では、$s_{39}$ の山は $s_9$ の山より跳びの点に近いが、高さはほぼ同じ $1.179\ldots$ の点線に達している。
連続な $2\pi$ 周期関数で、Fourier 級数が $x=0$ で収束しないものが存在する(du Bois-Reymond)。この関数は連続なので thm-fs-dirichlet の片側極限の存在は満たすが、点 $0$ での評価 $\lvert f(\pm t)-f(0)\rvert\le Mt$ を満たさない。つまり、連続性だけでは各点収束に足りない。
存在の証明の要点は、部分和を与える積分の「重みの総量」が有界でないことである。$L_N:=\frac1{2\pi}\int_{-\pi}^{\pi}\lvert D_N(t)\rvert\,dt$ とおくと $\lvert s_N(f;0)\rvert\le L_N\sup\lvert f\rvert$ であり、$L_N\ge\frac4{\pi^2}\sum_{k=1}^{N}\frac1k\to\infty$ となる。
$0< t\le\pi$ で $0<\sin\frac t2\le\frac t2$ なので
$$L_N\ge\frac1\pi\int_0^{\pi}\frac{2\lvert\sin(N+\frac12)t\rvert}t\,dt=\frac2\pi\int_0^{(N+\frac12)\pi}\frac{\lvert\sin u\rvert}u\,du\ge\frac2\pi\sum_{k=1}^{N}\frac1{k\pi}\int_{(k-1)\pi}^{k\pi}\lvert\sin u\rvert\,du=\frac4{\pi^2}\sum_{k=1}^{N}\frac1k$$
であり、右辺は調和級数の部分和なので発散する。
2 乗可積分な関数(とくに連続関数)の Fourier 級数はほとんどすべての点で収束する(Carleson、1966 年)。一方で、Lebesgue 積分可能な関数には Fourier 級数がほとんどすべての点で発散するものがある(Kolmogorov、1923 年)。どちらも Axl20 §11A の末尾で紹介されていて、証明は同書にない。
のこぎり波の級数 $2\sum_{n\ge1}\frac{(-1)^{n+1}}n\sin nx$ は $-\pi< x<\pi$ で $x$ に収束し、極限の導関数は $1$ である。項ごとに微分すると $2\sum_{n\ge1}(-1)^{n+1}\cos nx$ になるが、この級数はどの $x$ でも収束しない。項の絶対値 $2\lvert\cos nx\rvert$ が $0$ に近づかないからである($\lvert\cos nx\rvert<\frac12$ が十分大きいすべての $n$ で成り立つとすると、$\cos2nx=2\cos^2nx-1<-\frac12$ となって $\lvert\cos2nx\rvert>\frac12$ となり矛盾する)。したがって「収束する Fourier 級数の項別微分は導関数の Fourier 級数に収束する」は成り立たない。導関数の級数が一様収束するなら項別微分してよいことは、一様収束 の定理「一様収束と微分の交換」から分かる。
Fourier 級数は、複素関数論の Laurent 展開、畳み込み、離散 Fourier 変換とつながっている。
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