多重円板

同義語:多重円柱polydiscpolydisk

概要

多重円板(polydisc)とは、複素平面の円板の直積 $\Delta(a,r)=\{z\in\mathbb{C}^n\mid |z_j-a_j|<r_j\}$ のことであり、多変数の正則関数の理論で 1 変数の円板の役割を担う。閉多重円板の近くで正則な関数は、円周の直積である区別された境界 $T(a,r)$ の上の値から Cauchy の積分公式で復元され、多重円板の上で冪級数 $\sum_\alpha\frac{\partial^\alpha f(a)}{\alpha!}(z-a)^\alpha$ に展開され、絶対値の最大値も $T(a,r)$ の上でとる。一方 $n\ge2$ では単位多重円板と単位球は同相だが双正則でない。非 Archimedes 的な体の上の閉多重円板は Tate 代数の舞台になる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 正則関数, Cauchyの積分公式, 冪級数, 多重指数

多重円板(polydisc)とは、複素平面の円板を $n$ 個掛け合わせた $\mathbb{C}^n$ の部分集合 $\{z\in\mathbb{C}^n\mid |z_j-a_j|< r_j\ (j=1,\dots,n)\}$ のことである。多変数の正則関数の理論では、1 変数の円板の役割を多重円板が担う。多重円板の上では 1 変数の Cauchy の積分公式を変数ごとに繰り返すことができ、そこから正則関数の冪級数展開、Cauchy の評価式、最大値の原理が 1 変数とほぼ同じ形で得られる。
一方で、多重円板は「円板の多変数版」として唯一のものではない。$\mathbb{C}^n$ の単位球も円板の自然な一般化だが、$n\ge2$ では単位球と単位多重円板は同相なのに双正則ではない。この記事では、多重円板の上の Cauchy の積分公式と冪級数展開を証明し、球と双正則でないことを示す。あわせて、絶対値の最大値が「区別された境界」でとられることにも触れる。最後に、非 Archimedes 的な体の上の多重円板にも触れる。

定義

多重円板

$n\ge1$、$a=(a_1,\dots,a_n)\in\mathbb{C}^n$ とする。

  1. $r=(r_1,\dots,r_n)$、$0< r_j\le\infty$ に対し、$a$ を中心とする多重半径 $r$ の開多重円板を
    $$ \Delta(a,r):=\{z\in\mathbb{C}^n\mid |z_j-a_j|< r_j\ (j=1,\dots,n)\} $$
    と定める($r_j=\infty$ の因子は $\mathbb{C}$ 全体)。
  2. $0< r_j<\infty$ に対し、閉多重円板 $\overline{\Delta}(a,r):=\{z\mid |z_j-a_j|\le r_j\ (j=1,\dots,n)\}$ と、その区別された境界(distinguished boundary)
    $$ T(a,r):=\{z\in\mathbb{C}^n\mid |z_j-a_j|=r_j\ (j=1,\dots,n)\} $$
    を定める。
  3. $\mathbb{D}^n:=\Delta(0,(1,\dots,1))$ を単位多重円板という。$n=2$ のときは双円板(bidisc)ともいう。

$\Delta(a,r)$ は $\mathbb{C}$ の円板 $\{|z_j-a_j|< r_j\}$ の直積であり、すべての $r_j$ が等しい値 $\rho$ なら、最大値ノルム $\| z\|_\infty:=\max_j|z_j|$ に関する半径 $\rho$ の開球にほかならない。$\overline{\Delta}(a,r)$ はコンパクトで、$T(a,r)$ は円周の直積、つまり実 $n$ 次元のトーラスである。$T(a,r)$ は位相的な境界 $\partial\Delta(a,r)$(実 $2n-1$ 次元)よりずっと小さい。たとえば $n=2$ では
$$ \partial\Delta(0,(1,1))=\bigl(\{|z_1|=1\}\times\{|z_2|\le1\}\bigr)\cup\bigl(\{|z_1|\le1\}\times\{|z_2|=1\}\bigr) $$
は 2 つの「中身の詰まったトーラス」の和であり、$T=\{|z_1|=|z_2|=1\}$ はその共通部分である。それでも正則関数は $T$ の上の値で決まり(thm-pdisc-cauchy)、絶対値の最大値も $T$ の上でとる(thm-pdisc-max)。
この記事で扱う正則関数は次のものである。

多変数の正則関数

$U\subset\mathbb{C}^n$ を開集合とする。関数 $f\colon U\to\mathbb{C}$ が正則であるとは、$f$ が連続であり、各 $j$ と各点 $z\in U$ について、$z_j$ 以外の変数を止めた 1 変数の関数 $w\mapsto f(z_1,\dots,z_{j-1},w,z_{j+1},\dots,z_n)$ が $w=z_j$ の近くで正則であることをいう。写像 $F=(F_1,\dots,F_m)\colon U\to\mathbb{C}^m$ は、各成分が正則なとき正則という。

連続性の仮定は実は不要である(各変数について正則なら連続になる。Hartogs の定理、Hor90 Theorem 2.2.8、p. 28。この記事では証明しない)。実変数ではこれに当たることが成り立たない(ex-pdisc-real)。

Cauchy の積分公式

以下、区別された境界の上の積分を、$\zeta_j=a_j+r_je^{i\theta_j}$ による媒介変数表示で
$$ \int_{T(a,r)}g(\zeta)\,d\zeta_1\cdots d\zeta_n:=\int_{[0,2\pi]^n}g\bigl(a+(r_1e^{i\theta_1},\dots,r_ne^{i\theta_n})\bigr)\prod_{j=1}^n\bigl(ir_je^{i\theta_j}\bigr)\,d\theta_1\cdots d\theta_n $$
と定める($g$ は $T(a,r)$ 上の連続関数)。連続関数の $[0,2\pi]^n$ 上の積分なので、どの順に逐次積分しても同じ値になる。

多重円板上の Cauchy の積分公式

$U\subset\mathbb{C}^n$ を開集合、$f\colon U\to\mathbb{C}$ を正則とし、閉多重円板 $\overline{\Delta}(a,r)$ が $U$ に含まれるとする。このとき任意の $z\in\Delta(a,r)$ に対し
$$ f(z)=\frac{1}{(2\pi i)^n}\int_{T(a,r)}\frac{f(\zeta)}{(\zeta_1-z_1)\cdots(\zeta_n-z_n)}\,d\zeta_1\cdots d\zeta_n $$
が成り立つ。

1 変数の公式を変数ごとに使う

$\overline{\Delta}(a,r)$ はコンパクトで、$U$ の補集合は閉集合なので、両者の(最大値ノルムによる)距離 $\delta$ は正である。$r_j':=r_j+\delta/2$ とおくと $\overline{\Delta}(a,r')\subset U$ である。$z\in\Delta(a,r)$ を固定する。
$\zeta_1,\dots,\zeta_{k}$ を $|\zeta_j-a_j|\le r_j$ を満たす点とし($0\le k< n$)、1 変数の関数 $\varphi(w):=f(\zeta_1,\dots,\zeta_k,w,z_{k+2},\dots,z_n)$ を考える。$|w-a_{k+1}|< r'_{k+1}$ なら変数の点は $\Delta(a,r')$ に入るので $\varphi$ はこの円板の上で正則であり、閉円板 $|w-a_{k+1}|\le r_{k+1}$ はその中に含まれる。よって 1 変数の Cauchy の積分公式(Cauchyの積分公式 の定理「円板に対する Cauchy の積分公式」)により
$$ f(\zeta_1,\dots,\zeta_k,z_{k+1},\dots,z_n)=\frac1{2\pi i}\oint_{|\zeta_{k+1}-a_{k+1}|=r_{k+1}}\frac{f(\zeta_1,\dots,\zeta_{k+1},z_{k+2},\dots,z_n)}{\zeta_{k+1}-z_{k+1}}\,d\zeta_{k+1} $$
である。$k=0$ のこの式の被積分関数に $k=1$ の式を代入し、さらに $k=2,\dots,n-1$ の式を順に代入すると、$f(z)$ は円周上の $n$ 重の逐次積分
$$ f(z)=\frac1{(2\pi i)^n}\oint\cdots\oint\frac{f(\zeta_1,\dots,\zeta_n)}{(\zeta_1-z_1)\cdots(\zeta_n-z_n)}\,d\zeta_n\cdots d\zeta_1 $$
で表される。被積分関数は $T(a,r)$ の上で連続($f$ は連続で、分母は $0$ にならない)なので、この逐次積分は $[0,2\pi]^n$ 上の積分に等しい。

この公式の右辺は $z$ について微分でき、その導関数も同じ形の積分で表される。

導関数の積分表示と滑らかさ

thm-pdisc-cauchy の状況で、$f$ は $\Delta(a,r)$ 上 $C^\infty$ 級であり、任意の多重指数 $\alpha\in\mathbb{N}^n$ に対し、複素偏微分 $\partial^\alpha f=\partial^{|\alpha|}f/\partial z_1^{\alpha_1}\cdots\partial z_n^{\alpha_n}$ は
$$ \partial^\alpha f(z)=\frac{\alpha!}{(2\pi i)^n}\int_{T(a,r)}\frac{f(\zeta)}{(\zeta-z)^{\alpha+\mathbf 1}}\,d\zeta_1\cdots d\zeta_n\qquad(z\in\Delta(a,r)) $$
で与えられ、再び正則である。ここで $\mathbf 1=(1,\dots,1)$、$(\zeta-z)^{\alpha+\mathbf 1}=\prod_j(\zeta_j-z_j)^{\alpha_j+1}$ である(多重指数 の記法)。したがって、開集合 $U$ 上の正則関数は $C^\infty$ 級で、その複素偏導関数はすべて正則である。

積分記号の下で微分する

要点:被積分関数 $f(\zeta)/\prod_j(\zeta_j-z_j)$ は $z$ について何回でも微分でき、すべての導関数が $(\zeta,z)\in T(a,r)\times K$($K\subset\Delta(a,r)$ はコンパクト)で連続なので、積分記号の下で微分できる。

詳しい証明を開く

$K\subset\Delta(a,r)$ をコンパクトとすると、$\eta:=\min_j\min_{z\in K}(r_j-|z_j-a_j|)>0$ であり、$\zeta\in T(a,r)$、$z\in K$ で $|\zeta_j-z_j|\ge\eta$ である。$z$ の関数 $k(\zeta,z):=\prod_j(\zeta_j-z_j)^{-1}$ を $z_j$ について複素微分すると $\partial_{z_j}k=(\zeta_j-z_j)^{-1}k$ であり、帰納的に $\partial_z^\alpha k=\alpha!\,(\zeta-z)^{-(\alpha+\mathbf 1)}$ を得る。$K':=\{z\mid \max_j|z_j-w_j|\le\eta/2\ \text{となる}\ w\in K\ \text{がある}\}$ はコンパクトで、$\zeta\in T(a,r)$、$z\in K'$ で $|\zeta_j-z_j|\ge\eta/2$ だから、これらの導関数は $T(a,r)\times K'$ 上で連続、したがって一様連続である。$z\in K$、$h\in\mathbb{C}$、$|h|\le\eta/2$ なら線分 $z+the_j$($0\le t\le1$)は $K'$ に入り、$k(\zeta,z+he_j)-k(\zeta,z)=h\int_0^1\partial_{z_j}k(\zeta,z+the_j)\,dt$ なので $\bigl|\frac{k(\zeta,z+he_j)-k(\zeta,z)}{h}-\partial_{z_j}k(\zeta,z)\bigr|\le\sup_{0\le t\le1}|\partial_{z_j}k(\zeta,z+the_j)-\partial_{z_j}k(\zeta,z)|$ であり、差分商は $h\to0$ で $\zeta$ について一様に $\partial_{z_j}k$ に収束する。よって $f(\zeta)k(\zeta,z)$ の積分は $z_j$ について複素微分でき、導関数は $f(\zeta)\partial_{z_j}k$ の積分である。これを繰り返して式を得る。右辺は $z$ について連続で、同じ議論で各変数について複素微分可能なので $\partial^\alpha f$ は正則である。実の偏微分 $\partial/\partial x_j$、$\partial/\partial y_j$ は複素微分から $\partial_{z_j}$、$i\partial_{z_j}$ として得られるので、$f$ は $C^\infty$ 級である。最後の主張は、$U$ の各点がそのまわりの小さい閉多重円板を $U$ の中にもつことから従う。

冪級数展開

多重円板の上の正則関数は、多重指数で添字づけた冪級数に展開される。冪級数 $\sum_{\alpha\in\mathbb{N}^n}c_\alpha(z-a)^\alpha$ が集合 $K$ 上で正規収束するとは、$\sum_\alpha\sup_{z\in K}|c_\alpha(z-a)^\alpha|<\infty$ となることをいう。このとき和は項の順序によらず、$K$ 上で絶対かつ一様に収束する。

冪級数展開

$0< r_j\le\infty$、$f$ を開多重円板 $\Delta(a,r)$ 上の正則関数とする。このとき
$$ f(z)=\sum_{\alpha\in\mathbb{N}^n}\frac{\partial^\alpha f(a)}{\alpha!}(z-a)^\alpha\qquad(z\in\Delta(a,r)) $$
が成り立ち、右辺の級数は $\Delta(a,r)$ の任意のコンパクト部分集合の上で正規収束する。

等比級数を積分の中で展開する

平行移動して $a=0$ としてよい。$K\subset\Delta(0,r)$ をコンパクトとし、$s_j:=\max_{z\in K}|z_j|< r_j$ とする。$s_j< \rho_j< r_j$ となる有限の $\rho_j$ をとると $\overline{\Delta}(0,\rho)\subset\Delta(0,r)$ であり、thm-pdisc-cauchy を $\Delta(0,r)$ と $\rho$ に使える。$q_j:=s_j/\rho_j< 1$、$M:=\max_{T(0,\rho)}|f|$ とおく。
$\zeta\in T(0,\rho)$、$z\in K$ では $|z_j/\zeta_j|\le q_j< 1$ なので、等比級数により
$$ \frac{1}{\prod_j(\zeta_j-z_j)}=\prod_{j=1}^n\sum_{k=0}^\infty\frac{z_j^{k}}{\zeta_j^{k+1}}=\sum_{\alpha\in\mathbb{N}^n}\frac{z^\alpha}{\zeta^{\alpha+\mathbf 1}} $$
であり、各項は $\Bigl|\frac{z^\alpha}{\zeta^{\alpha+\mathbf 1}}\Bigr|\le\frac{q^\alpha}{\rho_1\cdots\rho_n}$ を満たす。$\sum_\alpha q^\alpha=\prod_j\frac1{1-q_j}< \infty$ なので、この級数は $T(0,\rho)\times K$ の上で一様に絶対収束し、$f(\zeta)$ を掛けて項別に積分できる。よって
$$ f(z)=\sum_\alpha c_\alpha z^\alpha,\qquad c_\alpha:=\frac1{(2\pi i)^n}\int_{T(0,\rho)}\frac{f(\zeta)}{\zeta^{\alpha+\mathbf 1}}\,d\zeta_1\cdots d\zeta_n $$
である。$T(0,\rho)$ の各点で $|f(\zeta)\zeta^{-\alpha-\mathbf 1}\prod_j(i\zeta_j)|= |f(\zeta)|\rho^{-\alpha}\le M\rho^{-\alpha}$ なので $|c_\alpha|\le M\rho^{-\alpha}$ であり、$\sup_K|c_\alpha z^\alpha|\le Mq^\alpha$ となって級数は $K$ 上で正規収束する。最後に、cor-pdisc-derivatives で $z=0$ とおくと $\partial^\alpha f(0)=\alpha!\,c_\alpha$ である。特に係数 $c_\alpha$ は $\rho$ の選び方によらない。

Cauchy の評価式と Liouville の定理
  1. $f$ が $\Delta(a,r)$($r_j< \infty$)上で正則で $|f|\le M$ なら、すべての $\alpha$ について $|\partial^\alpha f(a)|\le M\,\alpha!\,r^{-\alpha}$ である。
  2. $\mathbb{C}^n$ 全体で正則な有界関数は定数である。
半径を広げる
  1. prf-pdisc-series の評価 $|c_\alpha|\le M\rho^{-\alpha}$($\rho_j< r_j$ は任意)で $\rho\to r$ とすればよい。2. $|f|\le M$ とし、1 を $a=0$、$r=(R,\dots,R)$ に使うと $|\partial^\alpha f(0)|\le M\alpha!R^{-|\alpha|}$ である。$|\alpha|\ge1$ なら $R\to\infty$ で右辺は $0$ に近づくので $\partial^\alpha f(0)=0$ であり、thm-pdisc-series($r_j=\infty$)により $f(z)=f(0)$ である。

冪級数の収束する範囲

逆に、冪級数が 1 点で有界な項をもてば、それより小さい多重円板の上で正則関数を定める。

Abel の補題(多変数)

冪級数 $\sum_\alpha c_\alpha z^\alpha$ と、すべての成分が $0$ でない $w\in\mathbb{C}^n$ について $M:=\sup_\alpha|c_\alpha w^\alpha|< \infty$ とする。このとき級数は $\Delta(0,(|w_1|,\dots,|w_n|))$ の任意のコンパクト部分集合の上で正規収束し、その和はこの開多重円板の上の正則関数である。

等比級数で上から押さえる

要点:コンパクト集合の上で $|c_\alpha z^\alpha|\le Mq^\alpha$($q_j<1$)と押さえ、正則性は 1 変数の Weierstrass の定理を変数ごとに使う。

詳しい証明を開く

コンパクト集合 $K$ に対し $q_j:=\max_{z\in K}|z_j|/|w_j|< 1$ とおくと、$z\in K$ で $|c_\alpha z^\alpha|\le|c_\alpha w^\alpha|q^\alpha\le Mq^\alpha$ であり、$\sum_\alpha q^\alpha=\prod_j(1-q_j)^{-1}< \infty$ である。よって正規収束する。$\alpha$ を $|\alpha|$ の小さい順に並べた部分和は多項式で、和に局所一様収束するから、和は連続である。各変数について、他の変数を止めた部分和は 1 変数の多項式で、和に局所一様収束するので、1 変数の Weierstrass の定理(Cauchyの積分公式 の系「Weierstrass の定理」)により和は各変数について正則である。

多重円板でない収束域

$n=2$ の冪級数 $\sum_{k=0}^\infty(z_1z_2)^k$ は、$|z_1z_2|< 1$ で $\frac1{1-z_1z_2}$ に絶対収束し、$|z_1z_2|\ge1$ では項が $0$ に近づかないので収束しない。収束する点の集合 $\{|z_1z_2|< 1\}$ は多重円板ではない。実際、$(2,\frac14)$ と $(\frac14,2)$ を含む原点中心の多重円板は $r_1,r_2>2$ を満たし、$|z_1z_2|=3.61$ の点 $(1.9,1.9)$ も含んでしまう。この集合は多重円板 $\Delta(0,(s,1/s))$($s>0$)の和集合であり、prop-pdisc-abel のとおり、収束する点 $w$ ごとにその内側の多重円板全体で収束している。1 変数では収束域が円板(と境界の一部)に限られるのに対し、多変数では冪級数の収束域の形は多様である。

区別された境界での最大値

1 変数の最大値の原理は、多重円板では位相的な境界でなく区別された境界 $T(a,r)$ の上の最大値で内部を押さえる形になる。

1 変数の評価

$g$ が閉円板 $|w-c|\le\rho$ を含む開集合の上で正則なら、$|w-c|\le\rho$ を満たすすべての $w$ について $|g(w)|\le\max_{|\zeta-c|=\rho}|g(\zeta)|$ である。

冪をとって根を開く

要点:$g^m$ に Cauchy の積分公式を使って $|g(w)|^m\le CM^m$ とし、$m$ 乗根をとって $m\to\infty$ とする。

詳しい証明を開く

円周上の点では明らかなので $|w-c|< \rho$ とし、右辺を $M$ とおく。$m\ge1$ について $g^m$ に 1 変数の Cauchy の積分公式を使うと、$|\zeta-w|\ge\rho-|w-c|$ なので$$|g(w)|^m\le\frac1{2\pi}\cdot2\pi\rho\cdot\frac{M^m}{\rho-|w-c|}$$である。$m$ 乗根をとると $|g(w)|\le M\bigl(\rho/(\rho-|w-c|)\bigr)^{1/m}$ で、$m\to\infty$ とすれば $|g(w)|\le M$ を得る。

区別された境界での最大値

$f$ が閉多重円板 $\overline{\Delta}(a,r)$ を含む開集合 $U$ の上で正則なら、
$$ \max_{z\in\overline{\Delta}(a,r)}|f(z)|=\max_{\zeta\in T(a,r)}|f(\zeta)| $$
である。

変数を 1 つずつ境界へ動かす

要点:lem-pdisc-one-variable を第 1 変数から順に使い、変数を 1 つずつ円周 $|\zeta_j-a_j|=r_j$ の上へ動かすと、$|f(z)|\le|f(\zeta)|$ となる $\zeta\in T(a,r)$ が得られる。

詳しい証明を開く

$T(a,r)\subset\overline{\Delta}(a,r)$ なので左辺は右辺以上である。prf-pdisc-cauchy と同じく $r'_j>r_j$ を $\overline{\Delta}(a,r')\subset U$ ととる。$z\in\overline{\Delta}(a,r)$ とする。$w\mapsto f(w,z_2,\dots,z_n)$ は $|w-a_1|< r'_1$ で正則なので、lem-pdisc-one-variable により $|\zeta_1-a_1|=r_1$ を満たすある $\zeta_1$ で $|f(z)|\le|f(\zeta_1,z_2,\dots,z_n)|$ となる(円周はコンパクトなので最大値をとる点がある)。同様に第 2 変数について $|f(\zeta_1,z_2,\dots,z_n)|\le|f(\zeta_1,\zeta_2,z_3,\dots,z_n)|$ となる $\zeta_2$($|\zeta_2-a_2|=r_2$)があり、これを $n$ 回繰り返すと $|f(z)|\le|f(\zeta)|$ となる $\zeta\in T(a,r)$ が得られる。

最大値をとる場所

単位双円板の閉包の上で、$f(z)=z_1z_2$ の絶対値の最大値 $1$ をとる点は $|z_1||z_2|=1$、すなわち $|z_1|=|z_2|=1$ の点であり、ちょうど $T$ である。$f(z)=z_1$ では最大値 $1$ を $\{|z_1|=1\}\times\{|z_2|\le1\}$ の全体でとる。どちらの場合も最大値は $T$ の上でとられている。

球と多重円板

$n\ge2$ のとき、単位球 $\mathbb{B}_n:=\{z\in\mathbb{C}^n\mid|z_1|^2+\cdots+|z_n|^2< 1\}$ と $\mathbb{D}^n$ はどちらも有界で凸であり、互いに同相だが、正則な写像では移り合わない。連続写像 $F\colon X\to Y$ が固有であるとは、$Y$ の任意のコンパクト集合の逆像がコンパクトであることをいう。同相写像は固有であるから、双正則写像(正則な全単射で逆写像も正則なもの)も固有である。

球面に値をとる正則写像

$V\subset\mathbb{C}^m$ を連結な開集合、$G=(G_1,\dots,G_n)\colon V\to\mathbb{C}^n$ を正則写像とし、$V$ 上で $|G_1|^2+\cdots+|G_n|^2=1$ とする。このとき $G$ は定数である。

絶対値の 2 乗を 2 回微分する

要点:正則関数 $g$ では $\partial_{z_i}\partial_{\bar z_i}|g|^2=|\partial_{z_i}g|^2$ なので、$\sum_j|G_j|^2$ が定数なら導関数がすべて消える。

詳しい証明を開く

$G$ は $C^\infty$ 級である(cor-pdisc-derivatives)。変数 $z_i=x_i+iy_i$ について $\partial_{z_i}=\frac12(\partial_{x_i}-i\partial_{y_i})$、$\partial_{\bar z_i}=\frac12(\partial_{x_i}+i\partial_{y_i})$ とおくと、正則関数 $g$ は $\partial_{\bar z_i}g=0$、$\partial_{z_i}\bar g=\overline{\partial_{\bar z_i}g}=0$ を満たし、$\partial_{z_i}g$ は複素微分に等しい。よって$$\partial_{z_i}\partial_{\bar z_i}\bigl(g\bar g\bigr)=\partial_{z_i}\bigl(g\,\overline{\partial_{z_i}g}\bigr)=|\partial_{z_i}g|^2$$である。仮定の等式の両辺にこれを当てると $\sum_j|\partial_{z_i}G_j|^2=0$、すなわちすべての $i,j$ で $\partial_{z_i}G_j=0$ である。よって $G_j$ の実の偏導関数はすべて $0$ で、$V$ は連結なので $G$ は定数である。

球と多重円板は双正則でない

$n\ge2$ とする。

  1. $\mathbb{D}^n$ と $\mathbb{B}_n$ は同相である。
  2. 固有な正則写像 $F\colon\mathbb{D}^n\to\mathbb{B}_n$ は存在しない。特に $\mathbb{D}^n$ と $\mathbb{B}_n$ は双正則でない。
境界に近い円板の像を調べる
  1. 原点を通る各半直線の上で、最大値ノルムで測った長さと Euclid ノルムで測った長さを取り替える写像が同相写像を与える。
    詳細

    $\| z\|_\infty=\max_j|z_j|$、$\| z\|_2=(\sum_j|z_j|^2)^{1/2}$ とし、$\varphi(z):=\frac{\| z\|_\infty}{\| z\|_2}z$($z\ne0$)、$\varphi(0)=0$ とおく。$\|\varphi(z)\|_2=\| z\|_\infty$ なので $\varphi$ は $\mathbb{D}^n$ を $\mathbb{B}_n$ に写し、$\psi(u):=\frac{\| u\|_2}{\| u\|_\infty}u$($u\ne0$)、$\psi(0)=0$ が逆写像である。$\psi(\varphi(z))=z$、$\varphi(\psi(u))=u$ は直接確かめられる。$\varphi$、$\psi$ は原点以外で連続で、$\|\varphi(z)\|_2=\| z\|_\infty$、$\|\psi(u)\|_\infty=\| u\|_2$ なので原点でも連続である。よって $\varphi$ は同相写像である。

  2. 固有な正則写像 $F$ があったとして矛盾を導く。$z=(z',w)$($z'\in\mathbb{D}^{n-1}$、$w\in\mathbb{D}$)と書く。
    段 1(境界に近い $w$ での極限).$w_k\in\mathbb{D}$、$|w_k|\to1$ とし、$G_k(z'):=F(z',w_k)$ とおく。$G_k$ は $\mathbb{D}^{n-1}$ 上の正則写像で $|G_k|< 1$ なので、Montel の定理(Hor90 Corollary 2.2.5、p. 26。各成分に使う。この記事では証明しない)により、部分列が $\mathbb{D}^{n-1}$ のコンパクト集合上で一様にある正則写像 $G$ に収束する。各 $z'$ で $\| G_k(z')\|_2\to1$ である。実際そうでなければ、ある $\rho< 1$ と部分列で $F(z',w_k)\in\{\| u\|_2\le\rho\}$ となるが、この閉球の逆像はコンパクトで、コンパクト集合の上では $|w|$ は $1$ より小さい最大値をもつから、$|w_k|\to1$ に反する。よって $\| G\|_2\equiv1$ であり、lem-pdisc-sphere により $G$ は定数である。
    段 2(導関数の消滅).$i\le n-1$、$z'_0\in\mathbb{D}^{n-1}$ を固定し、$\overline{\Delta}(z'_0,(\rho,\dots,\rho))\subset\mathbb{D}^{n-1}$ となる $\rho>0$ をとる。cor-pdisc-estimates を $G_k-G$ に使うと $|\partial_{z_i}(G_k-G)(z'_0)|\le\rho^{-1}\max_{\overline{\Delta}(z'_0,\rho)}\| G_k-G\|$ であり、右辺は $0$ に近づく。$\partial_{z_i}G=0$ なので、部分列について $\partial_{z_i}F(z'_0,w_k)\to0$ である。
    段 3($F$ は $z'$ によらない).$h(w):=\partial_{z_i}F_j(z'_0,w)$ は $\mathbb{D}$ 上の正則関数である(cor-pdisc-derivatives)。段 1・2 は任意の列 $|w_k|\to1$ の任意の部分列に使えるので、$|w|\to1$ のとき $h(w)\to0$ である。$|w|< \rho< 1$ なら lem-pdisc-one-variable により $|h(w)|\le\max_{|\zeta|=\rho}|h(\zeta)|$ で、右辺は $\rho\to1$ で $0$ に近づくから $h\equiv0$ である。$i,j,z'_0$ は任意なので $\mathbb{D}^n$ 上で $\partial_{z_i}F=0$($i\le n-1$)であり、$t\mapsto F(tz',w)$($0\le t\le1$)の導関数は $\sum_{i\le n-1}z'_i\,\partial_{z_i}F(tz',w)=0$ だから $F(z',w)=F(0,w)$ である。
    段 4(矛盾).$L:=F(\{0\}\times\{|w|\le\frac12\})$ は $\mathbb{B}_n$ のコンパクト集合で、段 3 により $F^{-1}(L)\supset\mathbb{D}^{n-1}\times\{|w|\le\frac12\}$ である。点列 $(1-\frac1k,0,\dots,0)$ はこの集合に含まれるが、$\mathbb{D}^n$ の中に収束する部分列をもたない。よって $F^{-1}(L)$ はコンパクトでなく、$F$ が固有であることに反する。

$n=2$ の主張 2 は Rothstein(1935)による(LebT26 Theorem 1.4.4、p. 33)。球と多重円板が双正則でないことは Poincaré が自己同型群を比べて示したのが最初で、完全な証明は H. Cartan による(同 p. 33)。1 変数では Riemann の写像定理により、$\mathbb{C}$ と異なる単連結な領域はすべて単位円板と双正則であり、多変数ではこれに当たることが成り立たない。

非 Archimedes 的な体の上の多重円板

$K$ を非自明な非 Archimedes 的絶対値 $|\cdot|$($|x+y|\le\max(|x|,|y|)$)について完備な体とする。$p$ 進数体 $\mathbb{Q}_p$ が代表例である。$r_j>0$ に対し、$K^n$ の閉多重円板 $\{x\in K^n\mid |x_j|\le r_j\}$ が同じように定まり、$r=(1,\dots,1)$ のものを閉単位多重円板という。閉多重円板は $K$ の位相で開集合でもあるので、ここでは冪級数の収束で多重円板を調べる($\mathbb{N}^n$ を添字とする級数の収束は項の順序によらない意味で考える)。

閉多重円板の上での収束

$r_j\in|K^\times|$($j=1,\dots,n$)とし、$c_\alpha\in K$ とする。次は同値である。

  1. 冪級数 $\sum_\alpha c_\alpha x^\alpha$ が、$|x_j|\le r_j$ を満たすすべての $x\in K^n$ で収束する。
  2. $|x_j|=r_j$($j=1,\dots,n$)を満たすある $x$ で収束する。
  3. $|c_\alpha|r^\alpha\to0$、すなわち任意の $\varepsilon>0$ に対し $|c_\alpha|r^\alpha\ge\varepsilon$ となる $\alpha$ は有限個である。
    このとき、$|x_j|\le r_j$ なら $|\sum_\alpha c_\alpha x^\alpha|\le\max_\alpha|c_\alpha|r^\alpha$ である。
非 Archimedes 的な級数は項が 0 に近づけば収束する

要点:非 Archimedes 的な絶対値では、級数が収束することと項が $0$ に近づくことが同値になる。

詳しい証明を開く

$\mathbb{N}^n$ を添字とする級数 $\sum_\alpha b_\alpha$ が $s$ に収束するとは、任意の $\varepsilon>0$ に対し有限集合 $F_\varepsilon\subset\mathbb{N}^n$ があって、$F_\varepsilon$ を含む任意の有限集合 $G$ で $|\sum_{\alpha\in G}b_\alpha-s|< \varepsilon$ となることをいう。

まず一般の $b_\alpha\in K$ について、$\sum_\alpha b_\alpha$ が収束することと $b_\alpha\to0$ が同値であることを示す。収束するなら、$\varepsilon$ に対する $F_\varepsilon$ の外の $\beta$ について $|b_\beta|=|\sum_{F_\varepsilon\cup\{\beta\}}b-\sum_{F_\varepsilon}b|< 2\varepsilon$ なので $b_\alpha\to0$ である。逆に $b_\alpha\to0$ なら $E_\varepsilon:=\{\alpha\mid|b_\alpha|\ge\varepsilon\}$ は有限で、$E_\varepsilon$ を含む有限集合 $G,G'$ について、非 Archimedes 的な不等式により $|\sum_Gb-\sum_{G'}b|\le\max_{\alpha\in G\triangle G'}|b_\alpha|< \varepsilon$ である。$\mathbb{N}^n$ を有限集合の増大列 $G_1\subset G_2\subset\cdots$ で尽くすと $\sum_{G_m}b$ は Cauchy 列なので、$K$ の完備性によりある $s$ に収束し、上の評価から級数は $s$ に収束する。

3 ⇒ 1:$|x_j|\le r_j$ なら $|c_\alpha x^\alpha|\le|c_\alpha|r^\alpha\to0$ なので収束する。1 ⇒ 2:$r_j\in|K^\times|$ なので $|x_j|=r_j$ となる $x_j\in K$ がある。2 ⇒ 3:その $x$ で $|c_\alpha x^\alpha|=|c_\alpha|r^\alpha$ であり、収束するので $0$ に近づく。評価:有限部分和の絶対値は非 Archimedes 的な不等式で $\max|c_\alpha x^\alpha|\le\max_\alpha|c_\alpha|r^\alpha$ 以下で、極限でも保たれる。

$r=(1,\dots,1)$ のとき条件 3 を満たす冪級数全体が Tate代数 であり、prop-pdisc-nonarch はその記事の補題「閉単位多重円板上の収束」の半径を一般にしたものである。$r=(1,\dots,1)$ のとき $\max_\alpha|c_\alpha|$ は Tate 代数の Gauss ノルムであり(BGR84 第 5 章冒頭、p. 191 と §5.1.1、p. 192)、$\max_\alpha|c_\alpha|r^\alpha$ はその多重半径 $r$ の版である。閉単位多重円板より少し大きい多重円板の上で収束する冪級数が 過収束級数 である。条件 3 ⇒ 1 は複素数では成り立たない(ex-pdisc-complex-boundary)。

仮定を外すと成り立たなくなること

外す条件反例成り立たなくなること
$f$ が正則(調和関数にする)$h(z)=\lvert z_1\rvert^2-\lvert z_2\rvert^2$thm-pdisc-max
変数が複素数(実変数で変数ごとに解析的)$f(x,y)=\frac{xy}{x^2+y^2}$、$f(0,0)=0$連続性と冪級数展開
$n\ge2$$n=1$:$\mathbb{D}=\mathbb{B}_1$thm-pdisc-ball
絶対値が非 Archimedes 的$\mathbb{C}$ 上の $\sum_k z^k/k$prop-pdisc-nonarch の 3 ⇒ 1
反例:調和関数と区別された境界

$h(z)=|z_1|^2-|z_2|^2$ は $\mathbb{C}^2=\mathbb{R}^4$ 上の調和関数である($|z_1|^2=x_1^2+y_1^2$ の Laplacian は $4$、$|z_2|^2$ も $4$ で打ち消し合う)。単位双円板の閉包の上で $h$ の最大値は $1$ で、$|z_1|=1$、$z_2=0$ でとるが、$T=\{|z_1|=|z_2|=1\}$ の上では $h=0$ である。$h$ は調和なので最大値を位相的な境界でとるが、正則ではないので区別された境界でとるとは限らない。

反例:実変数では変数ごとの解析性から連続性が出ない

$f(x,y)=\frac{xy}{x^2+y^2}$($f(0,0)=0$)は変数ごとには解析的だが、$f(t,t)=\frac12$ なので原点で連続でなく、原点の近くで冪級数に展開できない。

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$f(x,y)=\frac{xy}{x^2+y^2}$($(x,y)\ne(0,0)$)、$f(0,0)=0$ とする。$y\ne0$ を止めると $x\mapsto\frac{xy}{x^2+y^2}$ は実数の極をもたない有理関数で、$\mathbb{R}$ 上の各点の近くで収束冪級数に展開される。$y=0$ では恒等的に $0$ である。$x$ を止めた場合も同様である。しかし $f(t,t)=\frac12$ なので $f$ は原点で連続でなく、原点の近くで収束する 2 変数の冪級数で表すこともできない(そのような級数の和は連続である)。複素変数では、変数ごとに正則なら連続で冪級数に展開される(def-pdisc-holomorphic の後の注意)。

反例:複素数では項が 0 に近づいても級数は収束しない

$\mathbb{C}$ 上の $\sum_{k\ge1}z^k/k$ は $r=1$ で $|1/k|\cdot1^k\to0$ を満たすが、$z=1$ で発散するので、複素数では条件 3 から条件 1 は出ない。

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$\mathbb{C}$ 上の冪級数 $\sum_{k\ge1}z^k/k$ は $z=-1$ で(交代級数として)収束するが、$z=1$ では調和級数になり発散する。$z=-1$ では番号順の和としては収束するが、prop-pdisc-nonarch の意味(項の順序によらない収束)では収束しない。複素数では順序によらない収束は絶対収束と同じなので、その意味では条件 2 ⇒ 1 は複素数でも成り立ち、崩れるのは 3 ⇒ 1 である。収束が絶対収束でないことと、項 $z^k/k$ が $0$ に近づくだけでは複素数の級数が収束しないことが、非 Archimedes 的な場合との違いである。

関連項目

参考文献

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