球面上のベクトル束の分類

同義語:classification of vector bundles over spheres球面上のベクトル束

概要

球面上のベクトル束の分類(classification of vector bundles over spheres)とは、球面 $S^n$ の 2 つの閉半球の上の自明化を赤道 $S^{n-1}$ でつなぐ行列値の関数(貼り合わせ関数)で、$S^n$ 上のベクトル束の同型類を数える定理である。$n\ge1$ のとき、階数 $k$ の束の同型類は、基点で単位行列をとる貼り合わせ関数の基点付きホモトピー類を定数行列の共役で割ったものと一対一に対応する。$n\ge2$ ならこれは、複素の場合 $\pi_{n-1}(U(k))$、四元数の場合 $\pi_{n-1}(\mathrm{Sp}(k))$、実の場合 $\pi_{n-1}(SO(k))$ を鏡映の共役で割った集合である。偶数次元の球面の接束が自明でないことや、低い次元の $K$ 群の値もここから従う。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: ベクトル束, n次元球面, ホモトピー群, 古典群のホモトピー群

球面上のベクトル束の分類(classification of vector bundles over spheres)は、球面 $S^n$ の上のベクトル束の同型類を、赤道 $S^{n-1}$ から一般線形群への写像(貼り合わせ関数)のホモトピー類で数える定理である。球面を北と南の 2 つの閉半球に分けると、半球の上の束は自明になり、束の情報は赤道で 2 つの自明化をつなぐ行列値の関数に集まる。
主定理(thm-vbs-main)は、$n\ge1$ のとき、階数 $k$ の実・複素・四元数ベクトル束の同型類が、基点で単位行列をとる貼り合わせ関数の基点付きホモトピー類を、定数行列による共役で割ったものと一対一に対応することを述べる。$n\ge2$ なら、これは実の場合 $\pi_{n-1}(SO(k))$ を鏡映による共役で割った集合、複素の場合 $\pi_{n-1}(U(k))$、四元数の場合 $\pi_{n-1}(\mathrm{Sp}(k))$ である(cor-vbs-groups)。こうして束の分類は 古典群のホモトピー群 の計算に帰着する。正規化と共役による割り算は、どちらも外すと一対一の対応が崩れる(ex-vbs-counter)。
$n=1$ の実の場合は 円周上のベクトル束の分類 で、$S^2$ と直積 $X\times S^2$ の上の複素ベクトル束を貼り合わせで表す話は クラッチング構成 で扱われている。実・複素の微分可能な束についての同じ分類は BT82 Proposition 23.14(p. 301)にある。

記号と構成

$\mathbb F$ を $\mathbb R$、$\mathbb C$、四元数体 $\mathbb H$(四元数)のいずれかとし、$\mathbb F^k$ には右からスカラーを掛ける。階数 $k$ の $\mathbb F$ ベクトル束とは、各ファイバーが右 $\mathbb F$ 線形空間で、ファイバーごとに $\mathbb F$ 線形な局所自明化 $E|_U\cong U\times\mathbb F^k$ をもつものをいう($\mathbb F=\mathbb R,\mathbb C$ では ベクトル束 の定義と同じ)。底空間 $X$ の上の階数 $k$ の束の同型類の集合を $\mathrm{Vect}^{\mathbb F}_k(X)$、自明束を $\varepsilon^k$ と書く。$\mathrm{GL}_k(\mathbb F)$ は可逆な $k$ 次正方行列の群で、$G_k(\mathbb F):=U_{\mathbb F}(k)$ は $O(k)$、$U(k)$、$\mathrm{Sp}(k)$ のどれかを表す(記号は 古典群のホモトピー群 にそろえる)。
$n\ge1$ とし、$S^n\subset\mathbb R^{n+1}$ の閉半球を $D_\pm:=\{x\in S^n\mid\pm x_{n+1}\ge0\}$、赤道を $S^{n-1}=D_+\cap D_-$、基点を $x_0:=e_1\in S^{n-1}$ とする。最後の座標を忘れる写像は $D_\pm$ から閉単位球体 $B^n\subset\mathbb R^n$ への同相写像で(逆は $y\mapsto(y,\pm\sqrt{1-|y|^2})$)、赤道の上では恒等写像である。以下、$D_\pm$ をこれで $B^n$ と同一視する。

貼り合わせで作る束

連続写像 $f\colon S^{n-1}\to\mathrm{GL}_k(\mathbb F)$ に対し、$D_+\times\mathbb F^k$ と $D_-\times\mathbb F^k$ の非交和で、$x\in S^{n-1}$、$v\in\mathbb F^k$ について $D_-$ 側の点 $(x,v)_-$ と $D_+$ 側の点 $(x,f(x)v)_+$ を同一視した商空間を $E_f$ と書く。$f$ を $E_f$ の貼り合わせ関数(clutching function)という。$f(x_0)=I$ のとき、$f$ は正規化されているという。

貼り合わせの基本性質

$f,f',h$ を $S^{n-1}$ から $\mathrm{GL}_k(\mathbb F)$($h$ は $\mathrm{GL}_l(\mathbb F)$)への連続写像とする。

  1. $E_f$ は $S^n$ 上の階数 $k$ の $\mathbb F$ ベクトル束であり、$D_\pm$ の上では $D_\pm\times\mathbb F^k$ そのものである。
  2. 連続写像 $a_\pm\colon D_\pm\to\mathrm{GL}_k(\mathbb F)$ があって、赤道の上で $f'=a_+fa_-^{-1}$ なら $E_{f'}\cong E_f$ である。とくに定数 $c\in\mathrm{GL}_k(\mathbb F)$ について $E_{cf}\cong E_{fc}\cong E_{cfc^{-1}}\cong E_f$ である。
  3. $f$ と $f'$ が $\mathrm{GL}_k(\mathbb F)$ の中でホモトピック(基点を固定しなくてよい)なら $E_f\cong E_{f'}$ である。
  4. $E_f\oplus E_h\cong E_{f\oplus h}$ である($f\oplus h$ はブロック対角の行列)。
  5. $S^n$ 上の階数 $k$ の $\mathbb F$ ベクトル束は、どれも正規化された貼り合わせ関数による $E_f$ と同型である。

要点:束の写像は 2 つの半球の上で別々に与え、赤道で両立させればよい。ホモトピーは片側の半球の上の行列値の関数に吸収できる。

詳しい証明を開く

1:赤道から離れた点の近くでは、片側の $D_\pm\times\mathbb F^k$ の座標がそのまま局所自明化である。赤道の近傍 $A:=\{x\in S^n\mid|x_{n+1}|<1/2\}$ では、$r(x):=(x_1,\dots,x_n)/|(x_1,\dots,x_n)|\in S^{n-1}$ を使って、$(x,v)_+\mapsto(x,v)$、$(x,w)_-\mapsto(x,f(r(x))w)$ と定める。赤道では $(x,w)_-$ と $(x,f(x)w)_+$ の像がともに $(x,f(x)w)$ なので矛盾なく定まり、2 つの閉集合の上で連続なので連続である。逆写像も同じ式の逆で与えられ、$A\times\mathbb F^k$ との同相でファイバーごとに $\mathbb F$ 線形である。

2:$E_{f'}\to E_f$ を $(x,v)_+\mapsto(x,a_+(x)^{-1}v)_+$、$(x,w)_-\mapsto(x,a_-(x)^{-1}w)_-$ で定める。赤道では $(x,w)_-$ の像 $(x,a_-^{-1}w)_-$ は $(x,fa_-^{-1}w)_+$ と同一視され、$(x,f'w)_+$ の像は $(x,a_+^{-1}f'w)_+=(x,fa_-^{-1}w)_+$ なので両立する。逆写像は $a_\pm$ を掛ける同じ形の写像である。定数の場合は $a_+=c$ または $a_-=c^{-1}$、あるいは $a_+=a_-=c$ とすればよい。

3:ホモトピー $H\colon S^{n-1}\times[0,1]\to\mathrm{GL}_k(\mathbb F)$、$H(\cdot,0)=f$、$H(\cdot,1)=f'$ をとり、$D_+=B^n$ の上で $a_+(\rho x):=H(x,\rho)f(x)^{-1}$($x\in S^{n-1}$、$\rho\in[0,1]$)とおく。$\rho=0$ では $x$ によらず $I$ であり、$(x,\rho)\mapsto\rho x$ はコンパクト空間から Hausdorff 空間への閉写像なので商写像であるから、$a_+$ は連続である。赤道では $a_+f=f'$ なので、2($a_-=I$)により $E_{f'}\cong E_f$ である。

4:$((x,v)_\pm,(x,w)_\pm)\mapsto(x,(v,w))_\pm$ が同型を与える。

5:$D_\pm$ はコンパクトで可縮なので $E|_{D_\pm}$ は自明である。$\mathbb F=\mathbb R,\mathbb C$ では ベクトル束 の定理「ホモトピー不変性と分類」の 1 による。$\mathbb H$ の場合も含めて、$E$ の枠($\mathbb F^k$ からファイバーへの $\mathbb F$ 線形同型)全体は主 $\mathrm{GL}_k(\mathbb F)$ 束であり、パラコンパクト Hausdorff で可縮な $D_\pm$ の上の主束は自明である(主束の分類定理 の系「パラコンパクト Hausdorff 空間の上の主束」と定理「引き戻しのホモトピー不変性」)から、その大域切断が大域的な枠を与える。自明化 $\varphi_\pm\colon E|_{D_\pm}\to D_\pm\times\mathbb F^k$ をとると、赤道の上で $\varphi_+\varphi_-^{-1}(x,w)=(x,f(x)w)$ となる連続な $f$ があり、$(x,v)_+\mapsto\varphi_+^{-1}(x,v)$、$(x,w)_-\mapsto\varphi_-^{-1}(x,w)$ は同型 $E_f\to E$ である(赤道で両立し、逆写像は $\varphi_\pm$ を貼り合わせたもの)。最後に 2 で $f$ を $f(x_0)^{-1}f$ に替えれば正規化される。$\square$

主定理

$(S^{n-1},x_0)$ から $(\mathrm{GL}_k(\mathbb F),I)$ への基点付き写像の、基点を固定したホモトピー類の集合を $[S^{n-1},\mathrm{GL}_k(\mathbb F)]_*$ と書く。群 $\pi_0(\mathrm{GL}_k(\mathbb F))$(弧状連結成分のなす群)は、$[c]\cdot[f]:=[cfc^{-1}]$ によってこの集合に作用する。$c$ と $c'$ が同じ成分にあれば、$c$ から $c'$ への道 $c_t$ について $c_tfc_t^{-1}$ が基点を固定したホモトピーなので、作用は矛盾なく定まる。

基点付きホモトピー類による分類

$n\ge1$、$k\ge1$ とする。$[f]\mapsto[E_f]$ は全単射
$$ [S^{n-1},\mathrm{GL}_k(\mathbb F)]_*\big/\pi_0(\mathrm{GL}_k(\mathbb F))\xrightarrow{\ \cong\ }\mathrm{Vect}^{\mathbb F}_k(S^n) $$
を定める。すなわち、すべての束は正規化された貼り合わせ関数で表され、正規化された $f,f'$ について $E_f\cong E_{f'}$ となるのは、ある $c\in\mathrm{GL}_k(\mathbb F)$ について $f'$ と $cfc^{-1}$ が基点を固定してホモトピックであるときに限る。

半球を基点へ縮める

矛盾なく定まること:基点を固定したホモトピックな写像は同型な束を与え(lem-vbs-basic の 3)、$E_{cfc^{-1}}\cong E_f$ である(同じ補題の 2)。
全射:lem-vbs-basic の 5 である。
単射:$f,f'$ を正規化された貼り合わせ関数とし、$\Psi\colon E_f\to E_{f'}$ を同型とする。lem-vbs-basic の 1 により $E_f$ と $E_{f'}$ は $D_\pm$ の上で $D_\pm\times\mathbb F^k$ そのものなので、$\Psi$ は連続写像 $a_\pm\colon D_\pm\to\mathrm{GL}_k(\mathbb F)$ によって $\Psi(x,v)_\pm=(x,a_\pm(x)v)_\pm$ と書ける。赤道の点 $x$ で、同一視されている $(x,v)_-$ と $(x,f(x)v)_+$ の像 $(x,a_-(x)v)_-$ と $(x,a_+(x)f(x)v)_+$ が $E_{f'}$ で同一視されることから、
$$ f'(x)\,a_-(x)=a_+(x)\,f(x)\qquad(x\in S^{n-1}) $$
である。$f(x_0)=f'(x_0)=I$ なので $a_+(x_0)=a_-(x_0)=:c$ である。$D_\pm=B^n$ は凸で $x_0$ を含むので、$t\in[0,1]$ について $\gamma_t(y):=(1-t)y+tx_0$ は $B^n$ の中の点であり、
$$ F_t(x):=a_+(\gamma_t(x))\,f(x)\,a_-(\gamma_t(x))^{-1}\qquad(x\in S^{n-1}) $$
は $\mathrm{GL}_k(\mathbb F)$ に値をとる連続なホモトピーである。$F_0=a_+fa_-^{-1}=f'$、$F_1=cfc^{-1}$ であり、すべての $t$ で $F_t(x_0)=a_+(x_0)\,I\,a_-(x_0)^{-1}=I$ である。よって $f'$ と $cfc^{-1}$ は基点を固定してホモトピックである。$\square$

古典群のホモトピー群による表示

古典群による表示
  1. $n\ge2$ なら $\mathrm{Vect}^{\mathbb C}_k(S^n)\cong\pi_{n-1}(U(k))$、$\mathrm{Vect}^{\mathbb H}_k(S^n)\cong\pi_{n-1}(\mathrm{Sp}(k))$ である。
  2. $n\ge2$ なら $\mathrm{Vect}^{\mathbb R}_k(S^n)\cong\pi_{n-1}(SO(k))/\{1,r\}$ である。ここで $r\in O(k)$ は $\det r=-1$ の元で、$[f]\mapsto[rfr^{-1}]$ により $\pi_{n-1}(SO(k))$ に作用する(作用は $r$ の選び方によらない)。
  3. 2 の作用は、$k$ が奇数のとき、および $\pi_{n-1}(SO(k-1))\to\pi_{n-1}(SO(k))$ が全射のとき(たとえば $k\ge n+1$ のとき)自明であり、このとき $\mathrm{Vect}^{\mathbb R}_k(S^n)\cong\pi_{n-1}(SO(k))$ である。
  4. $n=1$ では、同型類は実の場合に 2 つ、複素・四元数の場合に 1 つである。

$A\in\mathrm{GL}_k(\mathbb F)$ の列を Gram–Schmidt の直交化(四元数では係数を右から掛ける)で正規直交にした行列を $\mathrm{GS}(A)\in G_k(\mathbb F)$ とする。$A_t:=(1-t)A+t\,\mathrm{GS}(A)$ の第 $j$ 列は $A$ の第 $1,\dots,j$ 列の一次結合で、第 $j$ 列の係数は正の実数なので、$A_t$ は可逆である(Stiefel多様体 の定義のあとの段落と同じ議論)。$A\in G_k(\mathbb F)$ なら $A_t=A$ である。よって $G_k(\mathbb F)$ は $I$ を動かさない $\mathrm{GL}_k(\mathbb F)$ の変形レトラクトであり、包含は全単射 $[S^{n-1},G_k(\mathbb F)]_*\to[S^{n-1},\mathrm{GL}_k(\mathbb F)]_*$ と $\pi_0(G_k(\mathbb F))\cong\pi_0(\mathrm{GL}_k(\mathbb F))$ を与え、共役の作用は $G_k(\mathbb F)$ の元で代表して計算できる。
1・2:$n\ge2$ なら $S^{n-1}$ は弧状連結なので、正規化された写像の値は単位元の成分 $SO(k)$、$U(k)$、$\mathrm{Sp}(k)$ に入り、$[S^{n-1},G_k(\mathbb F)]_*=\pi_{n-1}$ である。$U(k)$、$\mathrm{Sp}(k)$ は弧状連結(古典群のホモトピー群 の定理「低い次数のホモトピー群の表」)なので作用は自明で 1 を得る。$O(k)$ の成分は 2 つで、$\det=-1$ の元はすべて同じ成分にあるので 2 を得る。
3:$k$ が奇数なら $-I$ は $\det=-1$ の中心の元なので、$(-I)f(-I)^{-1}=f$ である。全射の場合は $r:=\operatorname{diag}(1,\dots,1,-1)$ をとると、$r$ は $SO(k-1)\subset SO(k)$(左上のブロック)の元と可換なので、像の元を動かさない。像が全体なので作用は自明である。$k\ge n+1$ なら $n-1\le k-2$ で、古典群のホモトピー群 の定理「最初のブロックへの包含の安定性」により全射である。
4:$S^0=\{x_0,-x_0\}$ なので $[S^0,G_k(\mathbb F)]_*$ は $-x_0$ での値の成分の集合 $\pi_0(G_k(\mathbb F))$ であり、共役の作用は可換な群 $\pi_0(O(k))\cong\mathbb Z/2$ の上で自明、$\pi_0(U(k))$ と $\pi_0(\mathrm{Sp}(k))$ は自明な群である。$\square$

低い次元の球面の上の束

cor-vbs-groups と 古典群のホモトピー群 の定理「低い次数のホモトピー群の表」から、$S^1$ から $S^4$ の上の階数 $k\ge1$ の束の同型類は次のとおりである(「$1$」は自明束だけ、「$2$」は 2 つの類を表す)。

底空間実複素四元数
$S^1$$2$$1$$1$
$S^2$$k=1$:$1$、$k=2$:$\mathbb Z_{\ge0}$、$k\ge3$:$\mathbb Z/2$$\mathbb Z$$1$
$S^3$$1$$1$$1$
$S^4$$k\le2$:$1$、$k=3$:$\mathbb Z$、$k=4$:$\mathbb Z^2/\sim$、$k\ge5$:$\mathbb Z$$k=1$:$1$、$k\ge2$:$\mathbb Z$$\mathbb Z$

$S^2$ の上の階数 $2$ の実束では、$\pi_1(SO(2))\cong\mathbb Z$ の元 $m$(貼り合わせ関数 $z\mapsto z^m$、$S^1\subset\mathbb C$、$SO(2)\cong U(1)$)に鏡映の共役が $m\mapsto-m$ と作用するので、同型類は $|m|$ で決まる。$S^4$ の上の階数 $4$ の実束では、古典群のホモトピー群 の命題「4 次元の回転群の 3 次ホモトピー群」の基底 $g,s$ で $\pi_3(SO(4))=\mathbb Zg\oplus\mathbb Zs$ と書くと、四元数の共役 $\kappa(z)=\bar z$($\det\kappa=-1$)の共役は $ag+bs\mapsto(a+b)g-bs$ と作用し、$\sim$ はこの対合で移り合う元を同一視する関係である。

要点:各欄は cor-vbs-groups に群の値を入れたもので、作用が自明でない可能性があるのは実の偶数階数で全射の条件が成り立たない欄だけである。

確かめを開く

$S^1$ は cor-vbs-groups の 4。$S^3$ は $\pi_2=0$ による。$S^2$:実 $k=1$ は $SO(1)=\{1\}$、$k\ge3$ は $\pi_1(SO(k))\cong\mathbb Z/2$ の自己同型が恒等写像しかないこと、$k=2$ は $r=\operatorname{diag}(1,-1)$ について $r\,R_\theta\,r^{-1}=R_{-\theta}$($R_\theta$ は角 $\theta$ の回転)による。複素は $\pi_1(U(k))\cong\mathbb Z$、四元数は $\pi_1(\mathrm{Sp}(k))=0$ である。

$S^4$:実 $k\le2$ は $\pi_3(SO(1))=\pi_3(SO(2))=0$、$k=3$ は奇数、$k\ge5$ は $k\ge n+1$ による(いずれも cor-vbs-groups の 3)。複素は $\pi_3(U(1))=0$、$\pi_3(U(k))\cong\mathbb Z$($k\ge2$)、四元数は $\pi_3(\mathrm{Sp}(k))\cong\mathbb Z$ である。$k=4$:$\kappa L_x\kappa(z)=\overline{x\bar z}=z\bar x$、$\kappa C_x\kappa(z)=\overline{x\bar z\bar x}=xz\bar x$ なので、$\kappa L_x\kappa^{-1}=R_{\bar x}$、$\kappa C_x\kappa^{-1}=C_x$ である。共役 $\phi(x)=\bar x$ は $\pi_3(S^3)$ で $-[\mathrm{id}]$ を表すので、写像 $u\colon S^3\to SO(4)$ について $[u\circ\phi]=u_*[\phi]=-[u]$ であり、$[x\mapsto R_{\bar x}]=-[x\mapsto R_x]=-(s-g)$ である(最後は同じ命題の 3)。よって $s\mapsto g-s$、$g\mapsto g$ である。$\square$

例:球面の接束

接束の貼り合わせ関数

$n\ge1$ とし、$\mathbb R^n=e_{n+1}^\perp$ の単位ベクトル $x$ に関する鏡映を $\rho_x(z):=z-2(z\cdot x)x$ と書く。

  1. 接束 $TS^n$(ベクトル束 の例「球面の接束」)は $E_f$、$f(x)=\rho_x$ と同型であり、正規化された貼り合わせ関数 $f'(x)=\rho_x\rho_{x_0}\in SO(n)$ による $E_{f'}$ とも同型である。
  2. $n\ge2$ なら、$h(x):=f'(x)x_0=2(x\cdot x_0)x-x_0$ で定まる $h\colon S^{n-1}\to S^{n-1}$ の写像度は $1+(-1)^n$ である。
  3. したがって $n$ が偶数なら $TS^n$ は自明でない。$n=2$ では $f'$ は $\pi_1(SO(2))\cong\mathbb Z$ の $\pm2$ を表し、$n=4$ では $\pi_3(SO(4))$ の $2s-g$ を表す。
大円に沿った回転で自明化する

1:$w:=e_{n+1}$ とする。$y\in D_+$ について、$w$ と $y$ の張る平面で $w$ を $y$ に写し、その平面の直交補を固定する回転を $Q_+(y)$ とする($y=w$ なら $I$)。$Q_+$ は $D_+$ の上で連続である

式を開く

$y':=y-(y\cdot w)w$ とおくと $|y'|^2=1-(y\cdot w)^2$ で、$$Q_+(y)=I-\frac{y'y'^{\mathsf T}+|y'|^2\,ww^{\mathsf T}}{1+y\cdot w}+y'w^{\mathsf T}-wy'^{\mathsf T}$$と書ける。$y=\cos\phi\,w+\sin\phi\,u$($u\perp w$ は単位ベクトル)とすれば、これは平面 $\langle w,u\rangle$ の角 $\phi$ の回転 $I+(\cos\phi-1)(ww^{\mathsf T}+uu^{\mathsf T})+\sin\phi\,(uw^{\mathsf T}-wu^{\mathsf T})$ と一致する。分母は $y\cdot w\ge0$ の範囲で $1$ 以上である。

。$Q_+(y)$ は $T_wS^n=\mathbb R^n$ を $T_yS^n=y^\perp$ に写すので、$(y,z)\mapsto(y,Q_+(y)z)$ は $D_+$ の上の自明化である。$D_-$ でも、$-w$ を $y$ に写す同じ形の回転 $Q_-(y)$ で自明化する。赤道の点 $x$ では、$Q_+(x)$ は $w\mapsto x$、$x\mapsto-w$、$Q_-(x)$ は $-w\mapsto x$、$x\mapsto w$ であり、どちらも $\{w,x\}^\perp$ を固定する。$z\in\mathbb R^n$ を $z=(z\cdot x)x+z''$($z''\perp x,w$)と分けると
$$ Q_-(x)^{-1}Q_+(x)z=Q_-(x)^{-1}\bigl(-(z\cdot x)w+z''\bigr)=-(z\cdot x)x+z''=\rho_xz $$
である。lem-vbs-basic の 5 の証明の $f=\varphi_+\varphi_-^{-1}$ は $Q_+(x)^{-1}Q_-(x)=\rho_x^{-1}=\rho_x$ である。同じ補題の 2(右から定数 $\rho_{x_0}$ を掛ける)で $f'$ に替えられる。
2:$h(x)=x_0$ となるのは $x=\pm x_0$ のときだけである。$v\perp x_0$ について $h(x_0+v)=x_0+2v+O(|v|^2)$ なので、$h$ の $x_0$ での微分は $T_{x_0}S^{n-1}$ の上の $2$ 倍写像で、行列式は正である。$h(-x)=h(x)$ なので、$-x_0$ の近くで $h=h\circ a$($a$ は対蹠写像)であり、そこでの微分の行列式の符号は $a$ の局所写像度、すなわち $\deg a=(-1)^n$ である(写像度 の命題「直交変換の写像度」、局所写像度 の定理「局所写像度の和の公式」)。$\pm x_0$ と異なる点からの立体射影を座標にとって 局所写像度 の系「符号付きの個数としての写像度」を使えば、$\deg h=1+(-1)^n$ である。
3:$TS^n\cong\varepsilon^n=E_I$ なら、thm-vbs-main により $f'$ は $cIc^{-1}=I$ と基点を固定してホモトピックで、$h$ は定値写像とホモトピックになり写像度は $0$ である。$n$ が偶数なら $\deg h=2$ なので矛盾する。$n=2$ では $x=(\cos\theta,\sin\theta)$ について $\rho_x\rho_{x_0}$ は角 $2\theta$ の回転である。$n=4$ では $\mathbb R^4=\mathbb H$、$x_0=1$ とすると $\rho_x\rho_1=L_xR_x$ であり、古典群のホモトピー群 の命題「5 次元の回転群と境界写像」の前の計算により、その類は $2s-g$ である。$\square$

偶数次元の球面の接束が自明でないことは、毛玉の定理 の別の見方である。$n=4$ の類 $2s-g$ は、古典群のホモトピー群 では $SO(4)\to SO(5)\to S^4$ の境界写像の像として現れる。

安定同値類

$S^i$ 上の $\mathbb F$ ベクトル束 $E,E'$ は、ある $a,b\ge0$ で $E\oplus\varepsilon^a\cong E'\oplus\varepsilon^b$ となるとき安定同値であるという。安定同値類の集合を $\widetilde V_{\mathbb F}(S^i)$ と書く。$\mathbb F=\mathbb C$、$i\ge1$ では、これは 位相的K理論 の系「安定同型」の 1・2 により、$[E]\mapsto[E]-[\varepsilon^{\operatorname{rank}E}]$ で被約 $K$ 群 $\widetilde K(S^i)$ と一対一に対応する($\widetilde K(S^i)$ の元は $[E]-[\varepsilon^N]$ と書け、基点での値が $0$ なので $\operatorname{rank}E=N$ である。$[E]-[\varepsilon^{\operatorname{rank}E}]=[E']-[\varepsilon^{\operatorname{rank}E'}]$ は、ある $m$ で $E\oplus\varepsilon^{\operatorname{rank}E'+m}\cong E'\oplus\varepsilon^{\operatorname{rank}E+m}$ となること、すなわち安定同値と同値である)。実・四元数の場合の同じ群は $\widetilde{KO}(S^i)$、$\widetilde{KSp}(S^i)$ と書かれる。

安定類の群

$i\ge1$ とする。$\widetilde V_{\mathbb F}(S^i)$ は Whitney 和 $\oplus$ によって可換群になり、$k\ge i+1$ のとき $\pi_{i-1}(G_k(\mathbb F))$ と同型である。これにより $i=1,\dots,4$ の値は次の表のとおりである($i=0$ の列は、2 点の上の束の階数の差による $\mathbb Z$ である)。

$i$$0$$1$$2$$3$$4$
実 $\widetilde{KO}(S^i)$$\mathbb Z$$\mathbb Z/2$$\mathbb Z/2$$0$$\mathbb Z$
複素 $\widetilde{K}(S^i)$$\mathbb Z$$0$$\mathbb Z$$0$$\mathbb Z$
四元数 $\widetilde{KSp}(S^i)$$\mathbb Z$$0$$0$$0$$\mathbb Z$

0 でない欄の生成元は、$\widetilde{KO}(S^1)$ では Möbius 束、$\widetilde{KO}(S^2)$ では貼り合わせ関数 $z\mapsto z\in SO(2)$ の階数 $2$ の実束、$\widetilde{KO}(S^4)$ では $x\mapsto L_x\in SO(4)$(左からの掛け算)の階数 $4$ の実束、$\widetilde K(S^2)$ では $z\mapsto z$ の複素直線束(クラッチング構成 の命題「トートロジー直線束のクラッチング関数」)、$\widetilde K(S^4)$ では $S^3\cong SU(2)$ による階数 $2$ の複素束、$\widetilde{KSp}(S^4)$ では $x\mapsto x\in\mathrm{Sp}(1)$ の四元数直線束で代表される。表の値は Bott周期性定理 の安定な群と一致するが、ここでは周期性を使っていない。

安定化で作用が消える

要点:$\varepsilon^1$ を足すことは貼り合わせ関数に $1$ を付け足すことで、付け足した座標の鏡映は古い座標と可換なので、安定化したあとの共役の作用は自明になる。

詳しい証明を開く

lem-vbs-basic の 4 により $E_f\oplus\varepsilon^1\cong E_{f\oplus1}$ である。$[f]\mapsto[f\oplus1]$ は包含 $G_k\to G_{k+1}$ の誘導する写像 $\pi_{i-1}(G_k)\to\pi_{i-1}(G_{k+1})$ である($i=1$ でも cor-vbs-groups の 4 の証明と同じく $\pi_0$ の写像)。実の場合、$r_{k+1}:=\operatorname{diag}(1,\dots,1,-1)$ は $f\oplus1$ と可換なので、$\pi_{i-1}(O(k))$ の元の像は共役の作用で動かない。したがって thm-vbs-main と cor-vbs-groups により、$\widetilde V_{\mathbb F}(S^i)$ は帰納極限 $\operatorname{colim}_k\pi_{i-1}(G_k(\mathbb F))$ と一対一に対応し、古典群のホモトピー群 の系「何段も上の群への包含」により $k\ge i+1$ ではこれは $\pi_{i-1}(G_k(\mathbb F))$ に等しい($G_k$ の安定域は $i-1\le c(k+1)-3$ を含み、$c\ge1$ なら $k\ge i+1$ で足りる)。

和:lem-vbs-basic の 4 により $E_f\oplus E_h\cong E_{f\oplus h}$ であり、$f\oplus h=(f\oplus I)(I\oplus h)$ は点ごとの積なので、古典群のホモトピー群 の補題「点ごとの積と和」の 1 により($i=1$ では $\pi_0$ の群の積の定義により)$[f\oplus h]=[f\oplus I]+[I\oplus h]$ である。ブロックを入れ替える置換行列 $P$ について $I\oplus h=P(h\oplus I)P^{-1}$ であり、上で見たとおり安定化したあとでは共役の作用は自明なので、$[I\oplus h]$ は $[h]$ の像に等しい。よって $\oplus$ は帰納極限の群の和に対応し、$\widetilde V_{\mathbb F}(S^i)$ は可換群である。

値:$\pi_{i-1}(G_k)$($k$ が大きいとき、$i-1=0,1,2,3$)は、$O$ で $\mathbb Z/2,\mathbb Z/2,0,\mathbb Z$、$U$ で $0,\mathbb Z,0,\mathbb Z$、$\mathrm{Sp}$ で $0,0,0,\mathbb Z$ である(古典群のホモトピー群 の定理「低い次数のホモトピー群の表」)。生成元:$\pi_1(SO(2))\to\pi_1(SO(3))$ は全射、$\pi_3(SO(5))$ は $s=[x\mapsto L_x]$ の像で生成され(同じ記事の命題「5 次元の回転群と境界写像」)、$\pi_3(SU(2))\to\pi_3(U(k))$ と $\pi_3(\mathrm{Sp}(1))\to\pi_3(\mathrm{Sp}(k))$ は同型である。$i=0$:$S^0$ の上の束は 2 点での階数の組 $(a,b)$ で決まり、安定同値類は $a-b\in\mathbb Z$ で決まる。$\square$

反例

外す条件反例成り立たなくなること
貼り合わせ関数を正規化して基点付きで数える(thm-vbs-main)$S^2$ 上の実直線束で、定数の貼り合わせ関数 $1$ と $-1$貼り合わせ関数のホモトピー類と束の同型類が一対一に対応する
$\pi_0$ の作用で割る(thm-vbs-main)$S^2$ 上の階数 $2$ の実束で、$z\mapsto z^m$ と $z\mapsto z^{-m}$($m\ne0$)$\pi_1(SO(2))$ の元と束の同型類が一対一に対応する
階数を固定して同型を問う(thm-vbs-main と thm-vbs-stable の違い)$TS^2$ と $\varepsilon^2$安定同値な束は同型である
表の確かめ

各行で外れているのは 1 つの条件だけである。

確かめを開く

1 行目:$\mathrm{GL}_1(\mathbb R)=\mathbb R\setminus\{0\}$ の中で定数 $1$ と $-1$ は弧状連結成分が違うのでホモトピックでない($-1$ は正規化されていない)。一方 lem-vbs-basic の 2($c=-1$)により $E_{-1}\cong E_1=\varepsilon^1$ である。

2 行目:$m\ne-m$ なので $z^m$ と $z^{-m}$ は $\pi_1(SO(2))\cong\mathbb Z$ の異なる元だが、鏡映 $r$ について $rz^mr^{-1}=z^{-m}$ なので、lem-vbs-basic の 2 により $E_{z^m}\cong E_{z^{-m}}$ である。

3 行目:$TS^2\oplus\varepsilon^1\cong\varepsilon^3$(ベクトル束 の命題「球面の接束は安定的に自明」)なので $TS^2$ と $\varepsilon^2$ は安定同値であるが、ex-vbs-tangent の 3 により $TS^2$ は自明でない。

関連項目

参考文献

[1]
Raoul Bott, Loring W. Tu, Differential Forms in Algebraic Topology, Graduate Texts in Mathematics 82, Springer, 1982, §23 Proposition 23.14(p. 301、球面上の微分可能なベクトル束の分類)

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