Calabiの三角形(Calabi's triangle)とは、正三角形ではないのに、三角形に入る最大の正方形を 3 通りに置ける三角形である。ここで正方形は 1 辺を三角形の辺に沿わせて置くものに限り、3 つの辺のどの上でも置ける最大の正方形が同じ大きさになることをいう。脚 $1$、底辺 $x$ の二等辺三角形では、底辺の上の最大の正方形の 1 辺は $\dfrac{xh}{x+h}$($h=\sqrt{1-x^2/4}$)、脚の上は頂角が鈍角($x>\sqrt2$)のとき $\dfrac{2h}{2h+x}$ である。2 つが等しくなるのは $x=1$(正三角形)と、$2x^3-2x^2-3x+2=0$ の区間 $\sqrt2<x<2$ のただ 1 つの解 $x=1.55138752\ldots$ のときだけである。鈍角のない三角形でこの性質をもつのは正三角形だけである。
前提知識: 三角形に内接する正方形, 余弦定理(高校数学), 関数の連続性と中間値の定理(高校数学)
正三角形では、3 つの辺のどれの上に正方形を置いても、置ける最大の正方形は同じ大きさである。正三角形でない三角形で、同じことが起こるものはあるだろうか。まず二等辺三角形で、底辺の上と脚(等しい 2 辺)の上を比べてみる。
三角形に内接する正方形 の公式を使う。辺の長さ $a$、その辺への高さ $h_a$ の辺の上に置ける最大の正方形の 1 辺は、辺の両端の角が $90^\circ$ 以下なら $\dfrac{ah_a}{a+h_a}$、一方の端の角 $B$ が鈍角なら $\dfrac{ah_a}{a+h_a-c\cos B}$($c$ は $B$ で隣り合うもう 1 つの辺)である。
(1) 脚 $5$、底辺 $6$ の二等辺三角形。高さは $\sqrt{5^2-3^2}=4$、面積は $12$ である。頂角 $A$ は余弦定理から $\cos A=\dfrac{5^2+5^2-6^2}{2\cdot5\cdot5}=\dfrac7{25}>0$ で鋭角、底角も鋭角である。
脚 5、底辺 6 の二等辺三角形。脚の上の最大の正方形(赤)が底辺の上の正方形(青)より大きい
脚 5、底辺 8 の二等辺三角形。底辺の上の最大の正方形(青)が脚の上の正方形(赤)より大きい
底辺を $6$ から $8$ へ長くしていくと、どちらが大きいかが入れかわる。その途中に、底辺の上と脚の上の正方形がちょうど同じ大きさになる二等辺三角形があるはずである。そのとき、底辺の上に 1 通り、2 つの脚の上に 1 通りずつ、合わせて 3 通りの置き方で最大の正方形がそろう。この記事で答える問いは次の 3 つである。
| 高校の計算 | この記事の言葉 |
|---|---|
| 余弦定理で頂角が鈍角かを調べる | 脚の上の正方形の式の場合分け(lem-cal-two) |
| 分数の方程式を整理して 2 乗する | 3 次方程式 $2x^3-2x^2-3x+2=0$(thm-cal-main) |
| 中間値の定理と増減 | 解がただ 1 つあること(lem-cal-cubic) |
| 区間を狭めて解に近づく | 解の近似値 $1.55138\ldots$(ex-cal-bisection) |
以下、三角形 $ABC$ の辺 $BC$、$CA$、$AB$ の上に置ける最大の正方形の 1 辺を $m_a$、$m_b$、$m_c$ とする。「辺 $BC$ の上に置ける正方形」は、三角形からはみ出さず、1 つの辺が辺 $BC$ の上にある正方形のことである(三角形に内接する正方形)。
正三角形でない三角形で、3 つの辺の上に置ける最大の正方形がすべて同じ大きさ($m_a=m_b=m_c$)になるものを、この記事では Calabi の三角形 という。
Wei26 は、Calabi の三角形を「三角形に入る最大の正方形を 3 通りに置ける、正三角形以外でただ 1 つの三角形」と述べ、それが二等辺三角形であることを挙げている。この言い方は、向きを限らずに三角形に入る正方形の中で最大のものについてであり、def-cal は 1 辺を三角形の辺の上に置いた正方形だけを比べている。2 つが一致するには、三角形に入る最大の正方形が、1 辺を三角形のどれかの辺の上に置いたものの中にあることが要るが、この記事ではこの事実を証明しない。この記事では、def-cal の意味で、二等辺三角形の中で Calabi の三角形を決める。一般の三角形の中でただ 1 つであることは、この記事では証明しない(「大学数学で見る」の節)。
三角形に内接する正方形 の結果から、鈍角のない三角形はこの意味の Calabi の三角形にならないことがすぐに分かる。
鈍角をもたない三角形で $m_a=m_b=m_c$ となるのは、正三角形だけである。
鈍角がないので、3 つの辺の上に内接正方形があり、三角形に内接する正方形 の主定理 2 の等式
$$
(b+h_b)-(a+h_a)=(b-a)(1-\sin C)
$$
と、頂点の名前を入れかえた式が使える。正方形の 1 辺は $\dfrac{2S}{\text{辺}+\text{高さ}}$($S$ は面積)なので、$m_a=m_b=m_c$ なら $a+h_a=b+h_b=c+h_c$ で、
$$
(b-a)(1-\sin C)=0,\qquad (c-b)(1-\sin A)=0,\qquad (a-c)(1-\sin B)=0
$$
である。
直角がない場合、$\sin A$、$\sin B$、$\sin C$ はどれも $1$ でないので、$a=b=c$ で正三角形である。
直角がある場合、直角は 1 つだけである。$\angle C=90^\circ$ とすると、$\angle A$、$\angle B$ は鋭角で $\sin A\ne1$、$\sin B\ne1$ だから、2 つ目と 3 つ目の式から $c=b$ かつ $a=c$ である。しかし斜辺 $c$ は 2 つの脚 $a$、$b$ より長いので、これは起こらない。$\angle A$、$\angle B$ が直角の場合も同じである。$\square$
したがって Calabi の三角形は鈍角三角形である。ex-cal-start の (2) のように頂角が鈍角の二等辺三角形では、脚の上の正方形に鈍角の式を使うことになる。
大きさをそろえて考えるため、脚の長さを $1$ にする(全体を拡大・縮小しても、正方形の大きさの比は変わらない)。
以下、$AB=AC=1$、$BC=x$($0< x<2$)の二等辺三角形を考える。$x<2$ は三角形ができる条件($x<1+1$、三角形の成立条件)である。
脚 $1$、底辺 $x$ の二等辺三角形で、底辺の上に置ける最大の正方形の 1 辺を $m_1(x)$、脚の上に置ける最大の正方形の 1 辺を $m_2(x)$ とすると
$$
m_1(x)=\frac{xh}{x+h},\qquad m_2(x)=\begin{cases}\dfrac{xh}{1+xh} & (0< x\le\sqrt2)\\[2ex]\dfrac{2h}{2h+x} & (\sqrt2< x<2)\end{cases}
$$
である。ただし $h=\sqrt{1-\dfrac{x^2}4}$ である。2 つの脚の上の正方形は、対称性から同じ大きさである。
底辺 $BC$ の両端の角 $B$、$C$ は鋭角なので、三角形に内接する正方形 の主定理 1 から $m_1(x)=\dfrac{xh}{x+h}$ である。
脚 $AB$ の長さは $1$ で、$C$ から直線 $AB$ までの距離(脚への高さ)を $h'$ とすると、面積から $\dfrac12\cdot1\cdot h'=\dfrac12xh$ で $h'=xh$ である。脚 $AB$ の両端の角は $A$ と $B$ で、$B$ はいつも鋭角である。
$0< x\le\sqrt2$ のとき、$\angle A\le90^\circ$ なので主定理 1 の式が使え、$m_2(x)=\dfrac{1\cdot xh}{1+xh}$ である。
$\sqrt2< x<2$ のとき、$\angle A$ は鈍角である。三角形に内接する正方形 の鈍角の場合の命題を、鈍角の頂点 $A$、辺 $AB$ に使う。$A$ で隣り合うもう 1 つの辺は $AC=1$ なので
$$
m_2(x)=\frac{1\cdot xh}{1+xh-1\cdot\cos A}=\frac{xh}{1+xh-1+\frac{x^2}2}=\frac{xh}{xh+\frac{x^2}2}=\frac{2h}{2h+x}
$$
である(最後は分母と分子を $\dfrac x2$ で割った)。$\square$
ex-cal-start の 2 つの三角形を $\dfrac15$ に縮めたものである。
(1) $x=\dfrac65$ では $h=\sqrt{1-\dfrac9{25}}=\dfrac45$、$xh=\dfrac{24}{25}$ で、$x\le\sqrt2$ なので
$$
m_1=\frac{\frac{24}{25}}{\frac65+\frac45}=\frac{24}{50}=0.48,\qquad m_2=\frac{\frac{24}{25}}{1+\frac{24}{25}}=\frac{24}{49}=0.4897\ldots
$$
である。ex-cal-start の (1) の $2.4$、$2.4489\ldots$ のちょうど $\dfrac15$ である。
(2) $x=\dfrac85$ では $h=\sqrt{1-\dfrac{16}{25}}=\dfrac35$ で、$x>\sqrt2$ なので
$$
m_1=\frac{\frac85\cdot\frac35}{\frac85+\frac35}=\frac{\frac{24}{25}}{\frac{11}5}=\frac{24}{55}=0.4363\ldots,\qquad m_2=\frac{2\cdot\frac35}{2\cdot\frac35+\frac85}=\frac{\frac65}{\frac{14}5}=\frac37=0.4285\ldots
$$
である。ex-cal-start の (2) の $\dfrac{24}{11}$、$\dfrac{15}7$ の $\dfrac15$ である。
3 次関数 $f(x)=2x^3-2x^2-3x+2$ について、先に解の様子を調べておく。
$f(x)=2x^3-2x^2-3x+2$ は、区間 $\sqrt2< x<2$ でただ 1 つの解 $x^*$ をもつ。$f(x)<0$($\sqrt2\le x< x^*$)、$f(x)>0$($x^*< x\le2$)である。
段 1(端の値)。$f(\sqrt2)=2\cdot2\sqrt2-2\cdot2-3\sqrt2+2=\sqrt2-2<0$、$f(2)=16-8-6+2=4>0$ である。$f$ は多項式なので連続で、中間値の定理から $\sqrt2< x<2$ に $f(x)=0$ となる $x$ がある(関数の連続性と中間値の定理(高校数学))。
段 2(増加)。$\sqrt2\le p< q\le2$ とする。
$$
f(q)-f(p)=2(q^3-p^3)-2(q^2-p^2)-3(q-p)=(q-p)\bigl\{2(q^2+qp+p^2)-2(q+p)-3\bigr\}
$$
である。$p$、$q$ は $\sqrt2$ 以上なので $q^2+qp+p^2\ge2+2+2=6$、また $q+p\le4$ である。よって中かっこの中は $2\cdot6-2\cdot4-3=1$ 以上で正、$f(q)-f(p)>0$ である。$f$ は $\sqrt2\le x\le2$ で増加するので、解はただ 1 つで、その左では負、右では正である。$\square$
3 次関数 f(x)=2x^3-2x^2-3x+2 のグラフ。3 つの実数解のうち、色を付けた区間に入るのは 1 つだけである
$f$ には実数解が 3 つあり(約 $-1.1246$、$0.5732$、$1.5514$)、区間 $\sqrt2< x<2$ に入るのは $x^*\fallingdotseq1.5514$ だけである(図 3)。ほかの 2 つの解が三角形と関係ないことは、ex-cal-cx-root で確かめる。
脚 $1$、底辺 $x$($0< x<2$)の二等辺三角形で、底辺の上と脚の上に置ける最大の正方形が同じ大きさ($m_1(x)=m_2(x)$)になるのは、$x=1$(正三角形)と $x=x^*$ のときだけである。ここで $x^*$ は 3 次方程式
$$
2x^3-2x^2-3x+2=0
$$
の区間 $\sqrt2< x<2$ にあるただ 1 つの解で、$x^*=1.55138752\ldots$ である。したがって、正三角形でない二等辺三角形で Calabi の三角形になるのは、底辺と脚の比が $x^*:1$ のものだけである。
方針:lem-cal-two の 2 つの場合に分けて、方程式 $m_1(x)=m_2(x)$ を解く。
段 1($0< x\le\sqrt2$ のとき)。$m_1(x)=\dfrac{xh}{x+h}$、$m_2(x)=\dfrac{xh}{1+xh}$ で分子が等しく正なので、$m_1=m_2$ は分母が等しいこと、$x+h=1+xh$ と同じである。移項して因数分解すると
$$
x+h-1-xh=-(1-x)(1-h)=0
$$
である。$x>0$ なので $h=\sqrt{1-\dfrac{x^2}4}<1$ で $1-h\ne0$、したがって $x=1$ である。逆に $x=1$ なら $m_1=m_2$ である(正三角形)。
段 2($\sqrt2< x<2$ のとき、分母を払う)。$m_1(x)=\dfrac{xh}{x+h}$、$m_2(x)=\dfrac{2h}{2h+x}$ である。$m_1=m_2$ の両辺に $(x+h)(2h+x)$ を掛けて $h>0$ で割ると
$$
x(2h+x)=2(x+h)
$$
である。展開して $h$ を含む項を左辺に集めると $2xh-2h=2x-x^2$、つまり
$$
2h(x-1)=x(2-x)
$$
である。
段 3(2 乗して $h$ を消す)。$x>1$ なので両辺は正である。正の数どうしが等しいことは、2 乗が等しいことと同じなので、$h^2=1-\dfrac{x^2}4=\dfrac{4-x^2}4$ を使って両辺を 2 乗すると、段 2 の式は
$$
(4-x^2)(x-1)^2=x^2(2-x)^2
$$
と同じである。$4-x^2=(2-x)(2+x)$ で、$2-x>0$ なので両辺を $2-x$ で割ると
$$
(2+x)(x-1)^2=x^2(2-x)
$$
である。左辺を展開すると $(2+x)(x^2-2x+1)=2x^2-4x+2+x^3-2x^2+x=x^3-3x+2$ なので、$x^3-3x+2=2x^2-x^3$、移項して
$$
2x^3-2x^2-3x+2=0
$$
である。
段 4(解)。段 2・3 の変形はどれも逆にたどれる(掛けた数・割った数は正で、2 乗は正の数どうしの間で行った)。よって $\sqrt2< x<2$ では、$m_1=m_2$ は $f(x)=0$ と同じで、lem-cal-cubic から $x=x^*$ だけである。段 1 と合わせて結論を得る。$\square$
段 3 で割った $2-x$ は、$x=2$(三角形がつぶれる場合)に対応する。$(4-x^2)(x-1)^2-x^2(2-x)^2$ を因数分解すると $(2-x)(2x^3-2x^2-3x+2)$ になる。
$x^*=1.5513875245\ldots$ のとき、高さは $h=\sqrt{1-\dfrac{(x^*)^2}4}=0.6311086\ldots$ である。
(1) 3 通りの最大の正方形は
$$
m_1=\frac{x^*h}{x^*+h}=0.44861247\ldots,\qquad m_2=\frac{2h}{2h+x^*}=0.44861247\ldots
$$
で、底辺の上と 2 つの脚の上で同じ大きさである。
(2) 頂角は $\cos A=1-\dfrac{(x^*)^2}2=-0.20340\ldots$ から $\angle A\fallingdotseq101.74^\circ$ の鈍角、底角は $\angle B=\angle C\fallingdotseq39.13^\circ$ である。
(3) 脚の上の最大の正方形は、1 つの頂点を鈍角の頂点 $A$ に置いたもので、向かいの頂点が底辺の上にくる(図 4 の中央と右)。4 つめの頂点は三角形の内部にあるので、三角形に内接する正方形 の意味の内接正方形ではない。
Calabi の三角形で、底辺 BC の上、脚 AB の上、脚 AC の上に置いた最大の正方形。3 つとも 1 辺は 0.44861… である
$x^*$ の値は、中間値の定理をくり返し使って求められる。
$f(x)=2x^3-2x^2-3x+2$ の値を計算する。
| $x$ | $1.5$ | $1.6$ | $1.55$ | $1.56$ | $1.551$ | $1.552$ |
|---|---|---|---|---|---|---|
| $f(x)$ | $-0.25$ | $0.272$ | $-0.00725$ | $0.045632$ | $-0.002028$ | $0.003209$ |
$1.55^2=2.4025$、$1.55^3=3.723875$ で、$f(1.55)=7.44775-4.805-4.65+2=-0.00725$。$1.56^2=2.4336$、$1.56^3=3.796416$ で、$f(1.56)=7.592832-4.8672-4.68+2=0.045632$。
ex-cal-start で見た「底辺を長くすると、どちらが大きいかが入れかわる」ことも、式で確かめられる。
脚 $1$、底辺 $x$ の二等辺三角形で、$m_1(x)$ と $m_2(x)$ の大小は次のとおりである。
脚 1、底辺 x の二等辺三角形で、底辺の上(青)と脚の上(赤)に置ける最大の正方形の 1 辺。2 つの曲線は x=1 と x≈1.5514 で交わる
図 5 で、赤い曲線は $x=\sqrt2$ で折れ曲がっている。$x=\sqrt2$ は頂角が直角になるところで、それより先では脚の上の正方形の 1 つの頂点が頂点 $A$ に固定され、式が $\dfrac{xh}{1+xh}$ から $\dfrac{2h}{2h+x}$ に切りかわる。$x=\sqrt2$ ではどちらの式も $\dfrac12$ になり、曲線はつながっている。3 つの辺の上の最大の正方形のうちいちばん大きいものは、$x<1$ では底辺の上、$1< x< x^*$ では脚の上、$x>x^*$ では底辺の上にあり、そろうのは $x=1$ と $x=x^*$ だけである。
thm-cal-main の証明では、場合分けと方程式の変形の範囲が大切だった。それを外すと何が起こるかを並べる。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 頂角が鈍角なら脚の上に鈍角の式を使う | $x=x^*$ で鋭角の式 $\dfrac{xh}{1+xh}$ を使う | 3 通りの正方形がそろう |
| 3 次方程式の解が $\sqrt2< x<2$ にある | 解 $x\fallingdotseq0.5732$ | 底辺の上と脚の上の正方形が等しい |
$x=x^*$、$h=0.6311\ldots$ で、脚の上に鋭角の式を使うと
$$
\frac{x^*h}{1+x^*h}=\frac{0.97910\ldots}{1.97910\ldots}=0.49471\ldots
$$
となり、底辺の上の $0.44861\ldots$ より大きい。この値から「脚の上の方が大きい」と結論すると、Calabi の三角形を見落とす。実際には、この大きさの正方形を脚 $AB$ の上に置こうとすると、脚 $AB$ の上の 2 頂点の一方が $A$ の外側にはみ出す(図 6 の破線)。頂角 $A$ が鈍角なので、三角形に内接する正方形 の鈍角の場合と同じことが起こる。
Calabi の三角形の脚 AB の上に、鋭角の式の大きさ 0.4947 の正方形を置くと A の外にはみ出す(破線)。実際に置ける最大の正方形(青)は 0.4486 である
3 次方程式 $2x^3-2x^2-3x+2=0$ は $x\fallingdotseq0.5732$ にも解をもつ。$0< x<2$ に入っているが、$x\le\sqrt2$ なので脚の上の正方形は鋭角の式で求める。$x=0.5732$ では $h\fallingdotseq0.9581$ で
$$
m_1=\frac{xh}{x+h}\fallingdotseq0.3586,\qquad m_2=\frac{xh}{1+xh}\fallingdotseq0.3545
$$
となり、等しくない。3 次方程式は $\sqrt2< x<2$ の場合の式($m_2=\dfrac{2h}{2h+x}$)から導いたので、区間の外の解は正方形がそろう三角形を表さない。負の解 $x\fallingdotseq-1.1246$ は長さにならない。
$x^*$ は 3 次方程式の解なので、3 次方程式の解の公式(Cardanoの公式)を使うと根号で書ける。Wei26 には
$$
x^*=\frac13+\frac{\sqrt[3]{-23+3\sqrt{237}\,i}}{3\cdot2^{2/3}}+\frac{11}{3\sqrt[3]{2\left(-23+3\sqrt{237}\,i\right)}}
$$
という形が挙げられている(3 乗根は複素数の主値をとる)。実数の解を表すのに虚数単位 $i$ が現れるのは、3 つの解がすべて実数の 3 次方程式に Cardano の公式を使ったためである(還元不能の場合。Cardanoの公式)。数値で計算すると、虚部は打ち消し合って $1.5513875245\ldots$ になる。
prop-cal-nonobtuse と thm-cal-main で示したのは、「鈍角のない三角形と二等辺三角形の中では、Calabi の三角形は底辺と脚の比が $x^*:1$ のものだけ」ということである。Wei26 は、正三角形以外で最大の正方形が 3 通りに置ける三角形はこの三角形だけであると述べ、その参考文献に E. Calabi の 1997 年の文書を挙げている。二等辺でない鈍角三角形を含めた一般の場合は、この記事では証明しない。
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