sin kxとcos kxの和

同義語:三角関数の和の公式sums of sines and cosines

概要

sin kxとcos kxの和(sums of sines and cosines)とは、$\sum_{k=1}^{n}\cos kx$ と $\sum_{k=1}^{n}\sin kx$ を 1 つの式で表す公式である。$x$ が $2\pi$ の整数倍でなければ順に $\frac{\sin\frac{nx}{2}\cos\frac{(n+1)x}{2}}{\sin\frac{x}{2}}$、$\frac{\sin\frac{nx}{2}\sin\frac{(n+1)x}{2}}{\sin\frac{x}{2}}$ に等しく、整数倍なら $n$、$0$ である。$2\sin\frac{x}{2}$ を掛けて積和の公式で隣どうしを打ち消すか、公比 $\cos x+i\sin x$ の等比数列の和として導く。$N\ge2$ なら 1 の $N$ 乗根すべての和は $0$ である。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 加法定理から積和・和積・合成・正接の公式を導く, 等差数列と等比数列, 複素数の掛け算は回転と拡大

高校での出発点:隣どうしが打ち消し合う和

角が等差数列になっている余弦の和
$$ \cos x+\cos2x+\cos3x+\cdots+\cos nx $$
や、同じ形の正弦の和を考える。$x$ に特別な角を入れれば値を 1 つずつ計算できるが、$n$ が大きくなると大変である。この記事では、この和を 1 つの式で表す公式を導き、その公式が何を意味しているかを見る。
使う道具は 2 つある。1 つは積和の公式(加法定理から積和・和積・合成・正接の公式を導く)で、和の各項に同じ正弦を掛けると、隣どうしの項が打ち消し合う形になる。もう 1 つは複素数で、和を等比数列の和と見る(等差数列と等比数列、複素数の掛け算は回転と拡大)。

例 1:$\cos x+\cos2x+\cos3x$ を $x=\frac{\pi}{2}$ で計算する

$\cos\dfrac\pi2=0$、$\cos\pi=-1$、$\cos\dfrac{3\pi}2=0$ なので
$$ \cos\frac\pi2+\cos\pi+\cos\frac{3\pi}2=0+(-1)+0=-1 $$
である。
次に、$x$ を文字のまま扱う。積和の公式 $2\sin\alpha\cos\beta=\sin(\alpha+\beta)+\sin(\alpha-\beta)$ で $\alpha=\dfrac x2$、$\beta=kx$ とおくと、$\sin(-\theta)=-\sin\theta$ から
$$ 2\sin\frac x2\cos kx=\sin\frac{(2k+1)x}2-\sin\frac{(2k-1)x}2 $$
となる。$k=1,2,3$ を入れて足すと
$$ \begin{aligned} 2\sin\frac x2\,(\cos x+\cos2x+\cos3x) &=\Bigl(\sin\frac{3x}2-\sin\frac x2\Bigr)+\Bigl(\sin\frac{5x}2-\sin\frac{3x}2\Bigr)+\Bigl(\sin\frac{7x}2-\sin\frac{5x}2\Bigr)\\ &=\sin\frac{7x}2-\sin\frac x2 \end{aligned} $$
である。$\sin\dfrac{3x}2$ と $\sin\dfrac{5x}2$ が、正と負で 1 回ずつ現れて消えた。$x=\dfrac\pi2$ を入れると、左辺は $2\sin\dfrac\pi4\times(\text{求める和})=\sqrt2\times(\text{求める和})$、右辺は $\sin\dfrac{7\pi}4-\sin\dfrac\pi4=-\dfrac{\sqrt2}2-\dfrac{\sqrt2}2=-\sqrt2$ なので、和は $-1$ である。直接計算した値と一致する。

例 2:$\sin x+\sin2x+\sin3x+\sin4x$ を $x=\frac{\pi}{3}$ で計算する

$\sin\dfrac\pi3=\dfrac{\sqrt3}2$、$\sin\dfrac{2\pi}3=\dfrac{\sqrt3}2$、$\sin\pi=0$、$\sin\dfrac{4\pi}3=-\dfrac{\sqrt3}2$ なので、和は
$$ \frac{\sqrt3}2+\frac{\sqrt3}2+0-\frac{\sqrt3}2=\frac{\sqrt3}2 $$
である。この値は、後の thm-ssc-main の式 $\dfrac{\sin\frac{nx}2\sin\frac{(n+1)x}2}{\sin\frac x2}$ に $n=4$、$x=\dfrac\pi3$ を入れた $\dfrac{\sin\frac{2\pi}3\sin\frac{5\pi}6}{\sin\frac\pi6}=\dfrac{\frac{\sqrt3}2\cdot\frac12}{\frac12}=\dfrac{\sqrt3}2$ と一致する。

2 つの例から、次の問いが出てくる。

  1. 一般の $n$ で、和を 1 つの式で表せるか。→ thm-ssc-main、prf-ssc-main
  2. 例 1 の「$\sin\frac x2$ を掛ける」工夫は、どこから出てくるのか。→ prf-ssc-main-complex、rem-ssc-compare
  3. $\sin\frac x2=0$ のとき($x$ が $2\pi$ の整数倍のとき)はどうなるか。→ ex-ssc-zero-denominator
  4. 正多角形の頂点の座標の和が $0$ になることと、どうつながるか。→ cor-ssc-roots
  5. 和の式のグラフはどんな形か。$n$ を大きくするとどうなるか。→ prop-ssc-dirichlet、ex-ssc-bounded
    高校の計算この記事での見方ボックス
    $2\sin\frac x2$ を掛けて積和の公式で打ち消す差の和(隣どうしが消える和)prf-ssc-main
    $\cos kx+i\sin kx=(\cos x+i\sin x)^k$公比 $\cos x+i\sin x$ の等比数列の和prf-ssc-main-complex
    正 $N$ 角形の頂点の座標の和は $0$1 の $N$ 乗根の和は $0$cor-ssc-roots
    $\frac12+\cos x+\cdots+\cos nx$Fourier 級数の部分和に現れる Dirichlet 核prop-ssc-dirichlet

主定理:$\sum\cos kx$ と $\sum\sin kx$ の公式

記号

以下、$n$ は正の整数、$x$ は実数とし、
$$ C_n(x)=\sum_{k=1}^{n}\cos kx=\cos x+\cos2x+\cdots+\cos nx,\qquad S_n(x)=\sum_{k=1}^{n}\sin kx=\sin x+\sin2x+\cdots+\sin nx $$
とおく。和は $k=1$ から始め、$k=0$ の項($\cos0=1$、$\sin0=0$)は入れない。$k=0$ から始める和との違いは ex-ssc-start-index で扱う。

主定理

$\sum\cos kx$ と $\sum\sin kx$ の公式

$x$ が $2\pi$ の整数倍でない(つまり $\sin\dfrac x2\ne0$ である)とき、
$$ C_n(x)=\sum_{k=1}^{n}\cos kx=\frac{\sin\frac{nx}2\,\cos\frac{(n+1)x}2}{\sin\frac x2},\qquad S_n(x)=\sum_{k=1}^{n}\sin kx=\frac{\sin\frac{nx}2\,\sin\frac{(n+1)x}2}{\sin\frac x2} $$
である。$x$ が $2\pi$ の整数倍なら、$C_n(x)=n$、$S_n(x)=0$ である。

$\sin\dfrac x2=0$ と「$x$ が $2\pi$ の整数倍」が同じであることを確かめておく。$\sin\theta=0$ となるのは $\theta$ が $\pi$ の整数倍のときだけなので、$\sin\dfrac x2=0$ は $\dfrac x2=m\pi$($m$ は整数)、つまり $x=2m\pi$ と同じである。$x=2m\pi$ なら、すべての $k$ で $\cos kx=\cos2km\pi=1$、$\sin kx=0$ なので、$C_n(x)=n$、$S_n(x)=0$ である。

積和の公式で差の和にする

方針:両辺に $2\sin\frac x2$ を掛けた式を示す。各項 $2\sin\frac x2\cos kx$ を積和の公式で 2 つの正弦の差に直すと、隣どうしが打ち消し合い、両端だけが残る。残った差を和積の公式で積に戻す。
段 1(1 項ずつ差に直す)。積和の公式(加法定理から積和・和積・合成・正接の公式を導く)
$$ 2\sin\alpha\cos\beta=\sin(\alpha+\beta)+\sin(\alpha-\beta) $$
で $\alpha=\dfrac x2$、$\beta=kx$ とおくと、$\alpha+\beta=\dfrac{(2k+1)x}2$、$\alpha-\beta=-\dfrac{(2k-1)x}2$ である。$\sin(-\theta)=-\sin\theta$ なので
$$ 2\sin\frac x2\cos kx=\sin\frac{(2k+1)x}2-\sin\frac{(2k-1)x}2\qquad(k=1,2,\dots,n) $$
である。
段 2(足すと打ち消し合う)。段 1 の式を $k=1$ から $n$ まで足す。$k$ 番目の式の第 1 項 $\sin\frac{(2k+1)x}2$ と、$k+1$ 番目の式の第 2 項 $-\sin\frac{(2(k+1)-1)x}2=-\sin\frac{(2k+1)x}2$ は打ち消し合う。
$$ \begin{aligned} 2\sin\frac x2\,C_n(x) &=\Bigl(\cancel{\sin\frac{3x}2}-\sin\frac x2\Bigr)+\Bigl(\cancel{\sin\frac{5x}2}-\cancel{\sin\frac{3x}2}\Bigr)+\cdots+\Bigl(\sin\frac{(2n+1)x}2-\cancel{\sin\frac{(2n-1)x}2}\Bigr)\\ &=\sin\frac{(2n+1)x}2-\sin\frac x2 \end{aligned} $$
残るのは、最後の式の第 1 項と最初の式の第 2 項だけである。
段 3(和積の公式で積に戻す)。和積の公式 $\sin A-\sin B=2\cos\dfrac{A+B}2\sin\dfrac{A-B}2$ で $A=\dfrac{(2n+1)x}2$、$B=\dfrac x2$ とおくと、$\dfrac{A+B}2=\dfrac{(n+1)x}2$、$\dfrac{A-B}2=\dfrac{nx}2$ なので
$$ 2\sin\frac x2\,C_n(x)=2\cos\frac{(n+1)x}2\sin\frac{nx}2 $$
である。$\sin\frac x2\ne0$ なので両辺を $2\sin\frac x2$ で割ってよく、$C_n(x)$ の式が得られる。
段 4(正弦の和)。積和の公式 $2\sin\alpha\sin\beta=\cos(\alpha-\beta)-\cos(\alpha+\beta)$ で $\alpha=\dfrac x2$、$\beta=kx$ とおくと、$\cos(-\theta)=\cos\theta$ なので
$$ 2\sin\frac x2\sin kx=\cos\frac{(2k-1)x}2-\cos\frac{(2k+1)x}2 $$
である。段 2 と同じく $k=1$ から $n$ まで足すと、隣どうしが打ち消し合って
$$ 2\sin\frac x2\,S_n(x)=\cos\frac x2-\cos\frac{(2n+1)x}2 $$
となる。和積の公式 $\cos B-\cos A=2\sin\dfrac{A+B}2\sin\dfrac{A-B}2$($A,B$ は段 3 と同じ)により、右辺は $2\sin\dfrac{(n+1)x}2\sin\dfrac{nx}2$ である。$2\sin\frac x2$ で割って $S_n(x)$ の式が得られる。$\square$

段 4 で使った和積の公式 $\cos B-\cos A=2\sin\frac{A+B}2\sin\frac{A-B}2$ は、よく見る形 $\cos A-\cos B=-2\sin\frac{A+B}2\sin\frac{A-B}2$ の両辺に $-1$ を掛けたものである。
主定理の 2 つの式は、段 2 の途中の形で覚えておくと使いやすい。
$$ C_n(x)=\frac{\sin\frac{(2n+1)x}2-\sin\frac x2}{2\sin\frac x2},\qquad S_n(x)=\frac{\cos\frac x2-\cos\frac{(2n+1)x}2}{2\sin\frac x2} $$

主定理を使う
  1. $n=6$、$x=\dfrac\pi3$:$C_6\left(\dfrac\pi3\right)=\dfrac{\sin\pi\cos\frac{7\pi}6}{\sin\frac\pi6}=0$ である。実際、6 つの項は $\dfrac12,\ -\dfrac12,\ -1,\ -\dfrac12,\ \dfrac12,\ 1$ で、足すと
    $$ \frac12-\frac12-1-\frac12+\frac12+1=\boxed{0} $$
    である。
  2. $n=10$、$x=1$(弧度):$C_{10}(1)=\dfrac{\sin5\cos\frac{11}2}{\sin\frac12}=-1.41744\ldots$、$S_{10}(1)=\dfrac{\sin5\sin\frac{11}2}{\sin\frac12}=1.41118\ldots$ である。10 項を 1 つずつ足した値と一致する(数値計算で小数第 12 位まで確かめた)。
    例 1 の値を主定理で確かめる

    $n=3$、$x=\dfrac\pi2$:$C_3\left(\dfrac\pi2\right)=\dfrac{\sin\frac{3\pi}4\cos\pi}{\sin\frac\pi4}=\dfrac{\frac{\sqrt2}2\cdot(-1)}{\frac{\sqrt2}2}=-1$ で、ex-ssc-first-direct の値と一致する。

もう 1 つの証明:複素数の等比数列

例 1 の「$\sin\frac x2$ を掛ける」工夫は、複素数を使うと自然に出てくる。$z=\cos x+i\sin x$ とおくと、de Moivre の定理(複素数の掛け算は回転と拡大)により
$$ z^k=\cos kx+i\sin kx $$
である。したがって $C_n(x)+iS_n(x)=z+z^2+\cdots+z^n$ は、初項 $z$、公比 $z$ の等比数列の和である。等比数列の和の公式 $z+z^2+\cdots+z^n=\dfrac{z(z^n-1)}{z-1}$($z\ne1$)は、実数のときと同じ計算(和を $T$ として $zT-T$ を作る)で、複素数でも成り立つ。

半分の角の複素数で分母と分子をそろえる

要点:公比 $z$ の「半分」にあたる複素数 $w$ を使って、分母の $z-1$ と分子の $z^n-1$ を「$w$ の冪 $\times$ 純虚数」の形にする。実部と虚部を比べると 2 つの式が同時に出る。結果は $C_n(x)+iS_n(x)=\Bigl(\cos\frac{(n+1)x}2+i\sin\frac{(n+1)x}2\Bigr)\dfrac{\sin\frac{nx}2}{\sin\frac x2}$ である。

詳しい証明を開く

段 1($w$ を用意する)。$w=\cos\dfrac x2+i\sin\dfrac x2$ とおく。de Moivre の定理により $w^2=z$、$w^{2n}=z^n$ である。また $w^{-1}=\cos\dfrac x2-i\sin\dfrac x2$ である($w\cdot(\cos\frac x2-i\sin\frac x2)=\cos^2\frac x2+\sin^2\frac x2=1$ だから)。同じように、正の整数 $n$ について $w^{-n}=\cos\dfrac{nx}2-i\sin\dfrac{nx}2$ である。

段 2(分母)。$z-1=w^2-1=w\,(w-w^{-1})$ で、段 1 から $w-w^{-1}=2i\sin\dfrac x2$ である。よって$$z-1=2i\,w\sin\frac x2$$である。$\sin\frac x2\ne0$ なので $z\ne1$ であり、等比数列の和の公式が使える。

段 3(分子)。同じく $z^n-1=w^{2n}-1=w^n\,(w^n-w^{-n})$ で、段 1 から $w^n-w^{-n}=2i\sin\dfrac{nx}2$ なので$$z^n-1=2i\,w^n\sin\frac{nx}2$$である。

段 4(まとめる)。段 2・段 3 と $z=w^2$ から$$C_n(x)+iS_n(x)=\frac{z(z^n-1)}{z-1}=\frac{w^2\cdot2i\,w^n\sin\frac{nx}2}{2i\,w\sin\frac x2}=w^{n+1}\,\frac{\sin\frac{nx}2}{\sin\frac x2}$$である。de Moivre の定理により $w^{n+1}=\cos\dfrac{(n+1)x}2+i\sin\dfrac{(n+1)x}2$ で、$\dfrac{\sin\frac{nx}2}{\sin\frac x2}$ は実数である。両辺の実部と虚部を比べると、thm-ssc-main の 2 つの式が得られる。$\square$

2 つの証明の比べ方
積和の公式(prf-ssc-main)等比数列(prf-ssc-main-complex)
使う道具積和・和積の公式de Moivre の定理、等比数列の和
何が打ち消し合うか隣どうしの正弦(差の和)$zT-T$ で $z^2,\dots,z^n$ が消える
$\sin\frac x2$ の出どころ掛ける数として工夫して選ぶ分母 $z-1=2iw\sin\frac x2$ から自然に出る
余弦の和と正弦の和別々に示す実部と虚部で同時に出る
2 つの証明が同じ計算であることを開く

2 つの証明は同じ計算を別の言葉で書いたものである。等比数列の和の公式の証明で $zT-T$ を作ると、$z^2,\dots,z^n$ の項が正と負で消える。$z-1=w(w-w^{-1})$ なので、両辺に $w^{-1}$ を掛けて 1 項ずつ見ると $(w-w^{-1})z^k=w^{2k+1}-w^{2k-1}$ である。左辺は $2i\sin\frac x2\,(\cos kx+i\sin kx)$ なので、両辺の虚部を比べると prf-ssc-main の段 1 の式になり、実部を比べると段 4 の式の両辺に $-1$ を掛けた式になる。

次の例は、主定理を $x=\frac\pi n$ で使うと、区分求積(区分求積と積分の定義)の和が正確に計算できることを示す。

等間隔の角の正弦の和と積分

$n\ge2$ とし、$x=\dfrac\pi n$ で、和を $k=1$ から $n-1$ までとる。主定理で $n$ を $n-1$ に替えると
$$ \sum_{k=1}^{n-1}\sin\frac{k\pi}n=\frac{\sin\frac{(n-1)\pi}{2n}\,\sin\frac{\pi}{2}}{\sin\frac{\pi}{2n}}=\frac{\cos\frac{\pi}{2n}}{\sin\frac{\pi}{2n}}=\frac1{\tan\frac{\pi}{2n}} $$
である($\frac{(n-1)\pi}{2n}=\frac\pi2-\frac\pi{2n}$ と $\sin\left(\frac\pi2-\theta\right)=\cos\theta$ を使った)。

  • $n=3$:左辺は $\sin\dfrac\pi3+\sin\dfrac{2\pi}3=\sqrt3$、右辺は $\dfrac1{\tan\frac\pi6}=\sqrt3$ である。
  • $n=4$:左辺は $\dfrac{\sqrt2}2+1+\dfrac{\sqrt2}2=1+\sqrt2$、右辺は $\dfrac1{\tan\frac\pi8}=1+\sqrt2$ である。
    区分求積との関係を開く

    両辺に $\dfrac\pi n$ を掛けた $\dfrac\pi n\displaystyle\sum_{k=1}^{n-1}\sin\frac{k\pi}n$ は、$\int_0^\pi\sin x\,dx=2$ を区分求積で近似した和である($k=n$ の項 $\sin\pi$ は $0$ なので、入れても同じ)。この値は $n=10$ で $1.98352\ldots$、$n=100$ で $1.99983\ldots$ である。$n\to\infty$ では、$\theta=\dfrac\pi{2n}$ とおくと $\dfrac\pi n\cdot\dfrac1{\tan\theta}=2\cdot\dfrac\theta{\sin\theta}\cdot\cos\theta\to2$ となり(sin x/xの極限)、積分の値 $2$ に一致する。

系:正多角形の頂点の和は $0$

主定理で $\sin\frac{nx}2=0$ となるように $x$ を選ぶと、和が $0$ になる。

1 の $N$ 乗根の和

$N\ge2$ を整数、$m$ を $N$ の倍数でない整数とする。このとき
$$ \sum_{k=0}^{N-1}\cos\frac{2\pi mk}N=0,\qquad\sum_{k=0}^{N-1}\sin\frac{2\pi mk}N=0 $$
である。

主定理に $x=\frac{2\pi m}{N}$ を入れる

方針:主定理で分子の $\sin\frac{nx}2$ が $0$ になり、分母は $0$ にならないことを確かめる。
段 1(分母)。$x=\dfrac{2\pi m}N$ とおく。$\dfrac x2=\dfrac{m\pi}N$ で、$m$ は $N$ の倍数でないので $\dfrac mN$ は整数でない。よって $\dfrac x2$ は $\pi$ の整数倍でなく、$\sin\dfrac x2\ne0$ である。
段 2(分子)。主定理で $n=N$ とすると、分子の因数 $\sin\dfrac{Nx}2=\sin m\pi=0$ なので、$C_N(x)=0$、$S_N(x)=0$ である。
段 3(和の範囲をずらす)。求める和は $k=0$ から $N-1$ まで、$C_N(x)$、$S_N(x)$ は $k=1$ から $N$ までの和である。$k=0$ の項と $k=N$ の項は、$\cos0=1=\cos2\pi m$、$\sin0=0=\sin2\pi m$ で等しいので、2 つの和は等しい。よってどちらも $0$ である。$\square$

$N=5$、$m=1$ のとき、系は、単位円に内接する正五角形の頂点 $\left(\cos\frac{2\pi k}5,\ \sin\frac{2\pi k}5\right)$($k=0,1,2,3,4$)の座標の和が $0$ であることを言っている。原点から各頂点へのベクトルを足すと $\vec0$ になる、と言ってもよい。図 1 は 5 本のベクトル、図 2 はそれらを順につないだものである。ベクトル $k$ の向きは、ベクトル $k-1$ の向きを $\frac{2\pi}5=72^\circ$ だけ回したものなので、順につなぐと 5 回曲がって向きが 1 周し、正五角形を描いて始点に戻る。戻るので、和は $\vec0$ である。

単位円上の正五角形の 5 つの頂点へ、原点から引いた 5 本のベクトル。 単位円上の正五角形の 5 つの頂点へ、原点から引いた 5 本のベクトル。
同じ 5 本のベクトルを順につなぐと正五角形を描いて始点に戻り、和が零ベクトルになることを見る図。 同じ 5 本のベクトルを順につなぐと正五角形を描いて始点に戻り、和が零ベクトルになることを見る図。

系を確かめる
  1. $N=6$、$m=1$:$\cos\dfrac{2\pi k}6$($k=0,\dots,5$)は $1,\ \dfrac12,\ -\dfrac12,\ -1,\ -\dfrac12,\ \dfrac12$ で、和は $0$ である。$\sin\dfrac{2\pi k}6$ は $0,\ \dfrac{\sqrt3}2,\ \dfrac{\sqrt3}2,\ 0,\ -\dfrac{\sqrt3}2,\ -\dfrac{\sqrt3}2$ で、和は $0$ である。
    ほかの例($m=3$、星形)を開く

    $N=6$、$m=3$:$\cos\dfrac{2\pi\cdot3k}6=\cos k\pi$ は $1,-1,1,-1,1,-1$ で、和は $0$ である。点は $(1,0)$ と $(-1,0)$ を 3 回ずつくり返す。

    $N=5$、$m=2$:角は $0,\ \dfrac{4\pi}5,\ \dfrac{8\pi}5,\ \dfrac{12\pi}5,\ \dfrac{16\pi}5$ で、点は正五角形の頂点を 1 つおきにたどる(星形)。点の集まりは $m=1$ のときと同じなので、和はやはり $0$ である。

  2. $m$ が $N$ の倍数(たとえば $N=5$、$m=5$)なら、すべての項が $\cos2\pi k=1$ で、余弦の和は $N=5$ になる。系の仮定「$m$ は $N$ の倍数でない」は外せない。

複素数で言えば、$\omega=\cos\frac{2\pi}N+i\sin\frac{2\pi}N$ とおくと系は $1+\omega^m+\omega^{2m}+\cdots+\omega^{(N-1)m}=0$ である。1 の $N$ 乗根の和が $0$ になることを使って係数を振り分ける方法は 1の冪根で数を振り分ける で扱う。正七角形の場合($\cos\frac\pi7-\cos\frac{2\pi}7+\cos\frac{3\pi}7=\frac12$)を、例 1 と同じく $\sin$ を掛けて打ち消す方法で示す問題は、加法定理から積和・和積・合成・正接の公式を導く の数学オリンピックの節にある。

和のグラフ:Dirichlet 核

主定理の余弦の和に $\frac12$ を足すと、式がさらに簡単になる。

Dirichlet 核

正の整数 $n$ について、実数 $x$ の関数
$$ D_n(x)=\frac12+\sum_{k=1}^{n}\cos kx=\frac12+\cos x+\cos2x+\cdots+\cos nx $$
を Dirichlet 核という。

Dirichlet 核の式と性質
  1. $x$ が $2\pi$ の整数倍でないとき、$D_n(x)=\dfrac{\sin\left(n+\frac12\right)x}{2\sin\frac x2}$ である。$x$ が $2\pi$ の整数倍のとき、$D_n(x)=n+\dfrac12$ である。
  2. $D_n$ は偶関数($D_n(-x)=D_n(x)$)で、周期 $2\pi$ をもつ。
  3. $\displaystyle\int_{-\pi}^{\pi}D_n(x)\,dx=\pi$ である。
  4. $x$ が $2\pi$ の整数倍でないとき、$\lvert D_n(x)\rvert\le\dfrac1{2\lvert\sin\frac x2\rvert}$ である。
主定理の途中の形と、項ごとの積分

1 の証明。prf-ssc-main の段 2 により $2\sin\frac x2\,C_n(x)=\sin\frac{(2n+1)x}2-\sin\frac x2$ である。両辺に $\sin\frac x2$ を足すと
$$ 2\sin\frac x2\,\Bigl(C_n(x)+\frac12\Bigr)=\sin\frac{(2n+1)x}2 $$
で、$C_n(x)+\frac12=D_n(x)$、$\frac{(2n+1)x}2=\left(n+\frac12\right)x$ なので、$2\sin\frac x2$ で割れば 1 の式になる。$x$ が $2\pi$ の整数倍なら、主定理の後半から $C_n(x)=n$ なので $D_n(x)=n+\frac12$ である。
2 の証明。$\cos k(-x)=\cos kx$、$\cos k(x+2\pi)=\cos(kx+2k\pi)=\cos kx$ なので、各項が偶関数で周期 $2\pi$ をもつ。和も同じ性質をもつ。
3 の証明。$k\ge1$ の整数について $\displaystyle\int_{-\pi}^{\pi}\cos kx\,dx=\Bigl[\frac{\sin kx}k\Bigr]_{-\pi}^{\pi}=\frac{\sin k\pi-\sin(-k\pi)}k=0$ である。よって $\displaystyle\int_{-\pi}^{\pi}D_n(x)\,dx=\int_{-\pi}^{\pi}\frac12\,dx=\pi$ である。
4 の証明。1 の式で、分子について $\lvert\sin(n+\frac12)x\rvert\le1$ である。$\square$

Dirichlet 核 !FORMULA[337][1360035706][0] の !FORMULA[338][1936700897][0] のグラフ。!FORMULA[339][36881821][0] の山の高さ !FORMULA[340][-1360582][0] は !FORMULA[341][38042][0] とともに高くなり、山の幅は狭くなることを見る図。 Dirichlet 核 $D_n(x)$ の $n=2,5,10$ のグラフ。$x=0$ の山の高さ $n+\frac12$ は $n$ とともに高くなり、山の幅は狭くなることを見る図。
図 3 は $D_n$ のグラフである。次のことが読みとれ、どれも定義と prop-ssc-dirichlet から確かめられる。

  • $x=0$ で最大値 $n+\frac12$ をとる(どの項も $\cos kx\le1$ で、$x=0$ ではすべて $1$ になるから)。$n$ を大きくすると山は高くなる。
  • $x=0$ に最も近い $0$ 点は $x=\pm\dfrac{2\pi}{2n+1}$ である(1 の式の分子 $\sin\left(n+\frac12\right)x$ が $0$ になる点)。$n$ を大きくすると山の幅は狭くなる。
  • 積分(グラフと $x$ 軸で挟まれた部分の面積を、$x$ 軸の上を正、下を負として足したもの)は、$n$ によらず $\pi$ のままである(3)。高くなるぶん、幅が狭くなって釣り合っている。
  • $x=0$ から離れたところでは、グラフは細かく振動するが、4 により振れ幅は $\dfrac1{2\lvert\sin\frac x2\rvert}$ 以下にとどまる。
数値で確かめる
  1. $n=2$:$D_2(x)=\dfrac12+\cos x+\cos2x$ である。$x=0$ で $\dfrac12+1+1=\dfrac52=2+\dfrac12$ である。$x=\dfrac{2\pi}5$ では、1 の式の分子が $\sin\left(\frac52\cdot\frac{2\pi}5\right)=\sin\pi=0$ なので $D_2=0$ である。直接計算すると $\cos\dfrac{2\pi}5=\dfrac{\sqrt5-1}4$、$\cos\dfrac{4\pi}5=-\dfrac{\sqrt5+1}4$ で、$\dfrac12+\dfrac{\sqrt5-1}4-\dfrac{\sqrt5+1}4=\dfrac12-\dfrac24=0$ となり、一致する。
    $n=10$ の検算を開く

    $n=10$:$x=0$ で $10.5$、最初の $0$ 点は $x=\dfrac{2\pi}{21}=0.2991\ldots$ である。数値積分でも $\int_{-\pi}^{\pi}D_{10}(x)\,dx=3.14159\ldots$ となる。

例と反例:どの条件が効いているか

外した条件・誤った推測反例成り立たなくなること
$\sin\frac x2\ne0$($x$ が $2\pi$ の整数倍でない)$x=2\pi$主定理の分数の式(分母が $0$ になる)
和を $k=1$ から始める$k=0$ から始めた和主定理の式そのまま($\cos$ の和は $1$ ずれる)
角が等差数列 $x,2x,\dots,nx$$\cos x+\cos4x+\cos9x$隣どうしが打ち消し合うこと
(誤った推測)部分和がある範囲にとどまれば、1 つの値に近づく$S_n\left(\frac\pi2\right)$、$C_n(1)$無限和 $\sum\cos kx$ が値をもつこと
反例:$x$ が $2\pi$ の整数倍のとき

$x=2\pi$ とすると、主定理の式は $\dfrac{\sin n\pi\cos(n+1)\pi}{\sin\pi}=\dfrac00$ の形になり、値が決まらない。実際の和は、すべての項が $\cos2k\pi=1$ なので $C_n(2\pi)=n$ である。prf-ssc-main の段 2 の等式 $2\sin\frac x2\,C_n(x)=\sin\frac{(2n+1)x}2-\sin\frac x2$ は $x=2\pi$ でも成り立つが、両辺とも $0$ で、$C_n$ について何も教えてくれない。段 3 で $2\sin\frac x2$ で割るところで、この条件を使っている。

$x\to0$ の極限を開く

一方、$x\to0$ の極限をとると、$\sin\theta\approx\theta$(sin x/xの極限)から$$\frac{\sin\frac{nx}2\cos\frac{(n+1)x}2}{\sin\frac x2}=\frac{\sin\frac{nx}2}{\frac{nx}2}\cdot\frac{\frac x2}{\sin\frac x2}\cdot n\cos\frac{(n+1)x}2\to1\cdot1\cdot n\cdot1=n$$となり、$C_n(0)=n$ に一致する。分数の式は $x=0$ では意味をもたないが、$x\to0$ の極限は正しい値になる。

注意:$k=0$ の項を入れるかどうか

$k=0$ から始めた和では、余弦の和には $\cos0=1$ が加わり、正弦の和は変わらない($\sin0=0$)。たとえば $x=1$、$n=3$ では
$$ \sum_{k=1}^{3}\cos k=-0.86583\ldots,\qquad\sum_{k=0}^{3}\cos k=1+(-0.86583\ldots)=0.13416\ldots $$
である。主定理の式を $k=0$ から始める和に使うと $1$ だけずれる。

Dirichlet 核と和の範囲について開く

Dirichlet 核 $D_n$ では、$k=0$ の項の代わりに $\frac12$ を足している。$\frac12$ にするのは、式が $\dfrac{\sin(n+\frac12)x}{2\sin\frac x2}$ とまとまるからである(prop-ssc-dirichlet の 1)。cor-ssc-roots のように $k=0$ から $N-1$ までの和を扱うときも、範囲のずれを 1 項ずつ確かめる。

反例:角が等差数列でない和

$\cos x+\cos4x+\cos9x$ では、$2\sin\frac x2$ を掛けて積和の公式を使っても、隣どうしの項が打ち消し合わない。

確かめる計算を開く

$\cos x+\cos4x+\cos9x$(角が $1^2x,2^2x,3^2x$)に $2\sin\frac x2$ を掛けると、積和の公式で$$\Bigl(\sin\frac{3x}2-\sin\frac x2\Bigr)+\Bigl(\sin\frac{9x}2-\sin\frac{7x}2\Bigr)+\Bigl(\sin\frac{19x}2-\sin\frac{17x}2\Bigr)$$となる。$k$ 番目の正の項 $\sin\frac{(2k^2+1)x}2$ と $k+1$ 番目の負の項 $\sin\frac{(2(k+1)^2-1)x}2$ は、$2k^2+1\ne2k^2+4k+1$($k\ge1$)なので同じにならず、打ち消し合わない。主定理の方法は、角が一定の差 $x$ で増えていること(公差 $x$ の等差数列)を使っている。

反例:部分和はとどまるが、近づかない

$x=\dfrac\pi2$ の正弦の和は、$\sin\frac{k\pi}2$ が $1,0,-1,0,1,0,-1,0,\dots$ とくり返すので
$$ S_1,S_2,S_3,\dots=1,\ 1,\ 0,\ 0,\ 1,\ 1,\ 0,\ 0,\ \dots $$
である。部分和は $0$ と $1$ の間にとどまるが、1 つの値に近づかない。
$x=1$ の余弦の和 $C_n(1)$ も同じである。prop-ssc-dirichlet の 1・4 から $C_n(1)=D_n(1)-\frac12$ は
$$ -\frac12-\frac1{2\sin\frac12}\le C_n(1)\le-\frac12+\frac1{2\sin\frac12} $$
を満たし、$-1.5429\ldots$ から $0.5429\ldots$ の範囲にとどまる。しかし図 4 のように、$n$ を大きくしても上下にゆれ続ける。

1 つの値に近づかないことの証明を開く

$C_n(1)$ がある値 $L$ に近づくとすると、$C_n(1)-C_{n-1}(1)=\cos n$ は $0$ に近づくはずである。すると $\cos(n+1)$ も $0$ に近づき、$\cos^2n+\cos^2(n+1)$ は $0$ に近づくはずである。ところが、下の exc-ssc-odd の (2) により、どの $n$ でも $\cos^2n+\cos^2(n+1)\ge1-\cos1=0.4596\ldots$ なので、これは起こらない。よって $C_n(1)$ は 1 つの値に近づかない。


「ある範囲にとどまる」(有界)ことと「1 つの値に近づく」(収束する)ことは別のことである。

!FORMULA[464][36881852][0] での部分和 !FORMULA[465][472463794][0] を !FORMULA[466][36583942][0] から !FORMULA[467][1125894][0] まで打った図。2 本の破線の間にとどまるが、1 つの値には近づかないことを見る。 $x=1$ での部分和 $C_n(1)$ を $n=1$ から $60$ まで打った図。2 本の破線の間にとどまるが、1 つの値には近づかないことを見る。

演習

$\cos^2$ の和

$\sin x\ne0$ のとき、$\displaystyle\sum_{k=1}^{n}\cos^2kx=\frac n2+\frac{\sin nx\cos(n+1)x}{2\sin x}$ を示せ。また $n=3$、$x=\dfrac\pi4$ で両辺を計算して確かめよ。

解答を開く

2 倍角の公式 $\cos^2kx=\dfrac{1+\cos2kx}2$ から、$\displaystyle\sum_{k=1}^{n}\cos^2kx=\frac n2+\frac12\sum_{k=1}^{n}\cos k(2x)$ である。主定理を $x$ の代わりに $2x$ で使う($\sin\frac{2x}2=\sin x\ne0$)と $\displaystyle\sum_{k=1}^{n}\cos k(2x)=\frac{\sin nx\cos(n+1)x}{\sin x}$ なので、示す式が得られる。$n=3$、$x=\frac\pi4$ では、左辺は $\frac12+0+\frac12=1$、右辺は $\frac32+\dfrac{\sin\frac{3\pi}4\cos\pi}{2\sin\frac\pi4}=\frac32-\frac12=1$ で一致する。

奇数倍の角の余弦の和と、$\cos n$ の大きさ
  1. $\sin x\ne0$ のとき、$\displaystyle\sum_{k=1}^{n}\cos(2k-1)x=\frac{\sin2nx}{2\sin x}$ を示せ。
  2. すべての整数 $n$ について $\cos^2n+\cos^2(n+1)\ge1-\cos1$ を示せ(ex-ssc-bounded で使った)。
解答を開く

(1) 積和の公式から $2\sin x\cos(2k-1)x=\sin2kx-\sin(2k-2)x$ である。$k=1$ から $n$ まで足すと隣どうしが打ち消し合い、$2\sin x\sum_{k=1}^{n}\cos(2k-1)x=\sin2nx-\sin0=\sin2nx$ となる。$2\sin x$ で割ればよい。たとえば $n=3$、$x=\frac\pi8$ では両辺とも $0.92387\ldots$ である。

(2) 2 倍角の公式から $\cos^2n+\cos^2(n+1)=1+\dfrac{\cos2n+\cos(2n+2)}2$ で、和積の公式から $\cos2n+\cos(2n+2)=2\cos(2n+1)\cos1$ である。よって $\cos^2n+\cos^2(n+1)=1+\cos(2n+1)\cos1\ge1-\cos1$ である($\cos1>0$ と $\cos(2n+1)\ge-1$ から $\cos(2n+1)\cos1\ge-\cos1$)。$1-\cos1=0.4596\ldots>0$ なので、$\cos n$ と $\cos(n+1)$ が同時に $0$ に近づくことはない。

大学数学で見る:Fourier 級数の部分和

周期 $2\pi$ の関数 $f$ を、$\cos kx$、$\sin kx$ の和で近似することを考える。係数を
$$ a_k=\frac1\pi\int_{-\pi}^{\pi}f(t)\cos kt\,dt,\qquad b_k=\frac1\pi\int_{-\pi}^{\pi}f(t)\sin kt\,dt $$
で決めた和 $s_n(x)=\dfrac{a_0}2+\displaystyle\sum_{k=1}^{n}(a_k\cos kx+b_k\sin kx)$ を、$f$ の Fourier 級数の部分和という。係数がこの積分で決まる理由($\cos kx$、$\sin kx$ の直交性)は 三角関数の直交性(高校数学) で扱う。

部分和は Dirichlet 核との積分

係数の式を部分和に入れ、積分と有限和の順序を入れかえると
$$ s_n(x)=\frac1\pi\int_{-\pi}^{\pi}f(t)\Bigl(\frac12+\sum_{k=1}^{n}\bigl(\cos kt\cos kx+\sin kt\sin kx\bigr)\Bigr)dt=\frac1\pi\int_{-\pi}^{\pi}f(t)\,D_n(x-t)\,dt $$
となる。2 つ目の等号は、加法定理 $\cos kt\cos kx+\sin kt\sin kx=\cos k(x-t)$ による。つまり、Fourier 級数の部分和は、$f$ に Dirichlet 核を掛けて積分したもの($f$ と $D_n$ の畳み込み)である。

Dirichlet 核の形と収束の関係を開く

図 3 のように、$D_n$ は $n$ が大きいと $x=0$ の近くに高い山をもち、積分は $\pi$ のままである。このため $\frac1\pi\int f(t)D_n(x-t)\,dt$ は「$t=x$ の近くの $f$ の値」を強く拾い、多くの場合 $f(x)$ に近づく。ただし $D_n$ は負の値もとり、山の外の振動も $n$ とともに小さくはならない(図 3)。このため、部分和が $f(x)$ に近づくことを示すには $f$ についての条件が要る。連続な $f$ でも、部分和がある点で $f(x)$ に近づかない例が知られている(この記事では証明しない)。

大学の教科書(たとえば Leb26 §11.8.4)では、Dirichlet 核を $\displaystyle\sum_{k=-n}^{n}e^{ikx}=\frac{\sin(n+\frac12)x}{\sin\frac x2}$ と書くことが多い。$e^{ikx}+e^{-ikx}=2\cos kx$ なので、これはこの記事の $D_n$ の $2$ 倍である。

部分和 $D_0,D_1,\dots,D_n$ の平均 $\dfrac1{n+1}\displaystyle\sum_{j=0}^{n}D_j(x)$($D_0(x)=\frac12$ とする)を Fejér 核という。Fejér 核は負の値をとらない。Fourier 級数の部分和 $s_0,s_1,\dots,s_n$ の平均 $\dfrac1{n+1}\displaystyle\sum_{j=0}^{n}s_j$ は、連続な周期関数ならいつも元の関数に(一様に)近づく(Fejér の定理。この記事では証明しない)。

Fejér 核の式と導き方を開く

$x$ が $2\pi$ の整数倍でないとき、$$\frac1{n+1}\sum_{j=0}^{n}D_j(x)=\frac{\sin^2\frac{(n+1)x}2}{2(n+1)\sin^2\frac x2}\qquad(x\text{ は }2\pi\text{ の整数倍でない。}D_0(x)=\tfrac12)$$である。この式から、Fejér 核が負の値をとらないことが分かる。

prop-ssc-dirichlet の 1 から $2\sin\frac x2\,D_j(x)=\sin\left(j+\frac12\right)x$ である($j=0$ でも $D_0=\frac12$ で成り立つ)。もう一度 $2\sin\frac x2$ を掛け、積和の公式 $2\sin\alpha\sin\beta=\cos(\alpha-\beta)-\cos(\alpha+\beta)$ を使うと $4\sin^2\frac x2\,D_j(x)=\cos jx-\cos(j+1)x$ である。$j=0$ から $n$ まで足すと隣どうしが打ち消し合い、$4\sin^2\frac x2\sum_{j=0}^{n}D_j(x)=1-\cos(n+1)x=2\sin^2\frac{(n+1)x}2$ となる(2 倍角の公式)。両辺を $4(n+1)\sin^2\frac x2$ で割ればよい。

さらに先へ

  • 無限和の値:ex-ssc-bounded のように $\sum\cos kx$ 自身は値をもたないが、$\displaystyle\sum_{k=1}^{\infty}\frac{\sin kx}k$ は $0< x<2\pi$ で $\dfrac{\pi-x}2$ に収束する。部分和 $S_n(x)$ が有界であること(thm-ssc-main から $\lvert S_n(x)\rvert\le\frac1{\lvert\sin\frac x2\rvert}$)が、収束を示すときの鍵になる(Dirichlet の判定法。Fourier級数 で扱う)。
  • 有限の世界の Fourier 変換:cor-ssc-roots は、$N$ 個の値の組を 1 の $N$ 乗根で分解する 離散Fourier変換と反転公式 の出発点である。
  • 周期:$C_n(x)$、$S_n(x)$ はどれも周期 $2\pi$ をもつ。周期の違う関数を足したときに周期がどうなるかは 周期関数の和と基本周期 で扱う。

関連項目

参考文献

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