回転(ベクトル場)(curl)とは、空間の開集合の上のベクトル場 $F$ に、成分の偏導関数から $\operatorname{rot}F=(\partial_2F_3-\partial_3F_2,\ \partial_3F_1-\partial_1F_3,\ \partial_1F_2-\partial_2F_1)$ で定まるベクトル場を対応させる微分作用素であり、Jacobi 行列の反対称部分を表す。$F$ が $C^1$ 級なら、単位ベクトル $n$ との内積 $n\cdot\operatorname{rot}F$ は、$n$ に垂直な小さな円に沿う循環を面積で割った値の極限に等しい。直交変換で座標を替えると行列式の符号を掛けて移り、$C^2$ 級の関数の勾配の回転は $0$ である。Stokes の定理で、曲面の境界に沿う線積分と結ばれる。
流れる水に小さな羽根車を沈めると、羽根車はその場所の流れに応じて回り出す。回る向きと速さは、羽根車の軸の向きによって変わる。ベクトル場 $F$ を流体の速度の場とみなすとき、各点でこの「回そうとする働き」を 1 本のベクトルにまとめたものが $F$ の回転(curl)$\operatorname{rot}F$ である。軸を単位ベクトル $n$ の向きに置いた羽根車の回り方は $n\cdot\operatorname{rot}F$ で決まり、$F$ が $C^1$ 級なら、これは点のまわりの小さな円に沿って流れが回り込む量(循環)を円の面積で割ったものの極限に等しい。図形を回す「回転」(特殊直交群 の元など)とは別の意味の語である。
この記事では、$\mathbb{R}^3$ の開集合の上のベクトル場の回転を定義し、Jacobi 行列の反対称部分としての特徴づけ、循環の密度としての特徴づけ、直交変換で座標を取り替えたときのふるまい(向きを逆にすると符号が変わること)、計算の規則を証明する。最後に、向き付けられた Riemann 3 次元多様体の上の回転と、Stokes の定理との関係を述べる。
以下、$U\subset\mathbb{R}^3$ は開集合、$F=(F_1,F_2,F_3)\colon U\to\mathbb{R}^3$ はベクトル場、座標を $(x_1,x_2,x_3)$ または $(x,y,z)$ と書き、$\partial_i=\partial/\partial x_i$ であり、$DF(x)=\bigl(\partial_jF_i(x)\bigr)_{i,j}$ を $F$ の Jacobi 行列とする($i$ 行 $j$ 列の成分が $\partial_jF_i$)。$a\cdot b$ は標準内積、$a\times b$ はベクトル積、$e_1,e_2,e_3$ は標準基底である。
$F$ の各成分が点 $x\in U$ で偏微分可能であるとき、
$$
\operatorname{rot}F(x):=\bigl(\partial_2F_3-\partial_3F_2,\ \ \partial_3F_1-\partial_1F_3,\ \ \partial_1F_2-\partial_2F_1\bigr)(x)
$$
を $F$ の $x$ における回転という。$\operatorname{curl}F$、$\nabla\times F$ とも書く。
$F$ が $C^1$ 級なら $\operatorname{rot}F$ は $U$ 上の連続なベクトル場である。$\nabla=(\partial_1,\partial_2,\partial_3)$ を形式的なベクトルとみなし、ベクトル積の成分の式に代入したものが上の式である。この定義は Rud76 10.42(p. 281)と同じである。$\mathbb{R}^3$ の微分形式では、1 次形式 $\lambda_F:=F_1\,dx+F_2\,dy+F_3\,dz$ の外微分が $\operatorname{rot}F$ の成分をもつ 2 次形式 $\omega_{\operatorname{rot}F}:=(\operatorname{rot}F)_1\,dy\wedge dz+(\operatorname{rot}F)_2\,dz\wedge dx+(\operatorname{rot}F)_3\,dx\wedge dy$ になる(外微分 の例「$\mathbb{R}^3$ のベクトル解析」)。
平面のベクトル場 $F=(F_1,F_2)$ については、$F$ を $(F_1,F_2,0)$(成分は $x_3$ によらない)とみたときの回転は $(0,0,\partial_1F_2-\partial_2F_1)$ なので、スカラー $\partial_1F_2-\partial_2F_1$ を平面の場の回転と呼ぶ。Greenの定理 の右辺の被積分関数 $Q_x-P_y$ は、場 $(P,Q)$ の回転である。
Jacobi 行列 $DF(x)$ を対称な部分と反対称な部分に分けると、回転は反対称な部分の情報そのものである。$\omega\in\mathbb{R}^3$ について $v\mapsto\omega\times v$ は線形写像で、その行列は
$$
W_\omega=\begin{pmatrix}0&-\omega_3&\omega_2\\ \omega_3&0&-\omega_1\\ -\omega_2&\omega_1&0\end{pmatrix}
$$
という反対称行列である(ベクトル積 の定義を成分で書いたもの)。逆に、どの 3 次の反対称行列もただ 1 つの $\omega$ について $W_\omega$ と書ける。
$F$ が点 $x$ で偏微分可能なら、すべての $v\in\mathbb{R}^3$ について
$$
\bigl(DF(x)-DF(x)^{\top}\bigr)v=\operatorname{rot}F(x)\times v
$$
である。したがって、すべての $u,v\in\mathbb{R}^3$ について
$$
v\cdot\bigl(DF(x)\,u\bigr)-u\cdot\bigl(DF(x)\,v\bigr)=\operatorname{rot}F(x)\cdot(u\times v)
$$
である。
$M:=DF(x)-DF(x)^{\top}$ の $(i,j)$ 成分は $\partial_jF_i-\partial_iF_j$ で、$M$ は反対称行列である。$\omega:=\operatorname{rot}F(x)$ とおくと、$M_{32}=\partial_2F_3-\partial_3F_2=\omega_1$、$M_{13}=\partial_3F_1-\partial_1F_3=\omega_2$、$M_{21}=\partial_1F_2-\partial_2F_1=\omega_3$ であり、反対称性から残りの成分も $W_\omega$ と一致する。よって $Mv=W_\omega v=\omega\times v$ である。
後半:$v\cdot(DF\,u)-u\cdot(DF\,v)=v\cdot(DF\,u)-v\cdot(DF^{\top}u)=v\cdot(Mu)=v\cdot(\omega\times u)$ である。ベクトル積 の命題「ベクトル積の基本性質」の 3(スカラー三重積の巡回)により $v\cdot(\omega\times u)=(\omega\times u)\cdot v=(u\times v)\cdot\omega$ である。$\square$
この命題から、$F$ の点 $a$ の近くでの 1 次近似が分解できる。$F$ が $a$ で全微分可能なら、$S:=\frac12\bigl(DF(a)+DF(a)^{\top}\bigr)$ とおいて
$$
F(a+h)=F(a)+S\,h+\tfrac12\operatorname{rot}F(a)\times h+o(|h|)\qquad(h\to0)
$$
である。右辺の 3 項はそれぞれ、平行な移動、対称行列による伸び縮み(直交する 3 方向への伸縮)、角速度 $\frac12\operatorname{rot}F(a)$ の剛体の回転の速度の場である。回転は、流れの 1 次近似のうち「剛体として回る部分」の角速度の $2$ 倍を表している(ex-cu-basic の 1)。
点 $a\in U$ と単位ベクトル $n$ をとり、$u,v$ を $n$ に直交する単位ベクトルで $u\cdot v=0$、$u\times v=n$ となるものとする($n$ を正規直交基底に延ばし、順序と符号を調節すればよい)。$r>0$ について、$a$ を中心とし $n$ に垂直な平面の中の半径 $r$ の円を
$$
C_r(\theta):=a+r\cos\theta\,u+r\sin\theta\,v\qquad(0\le\theta\le2\pi)
$$
で表す。$n$ の先から見て反時計回りの向きである。円 $C_r$ の像が $U$ に含まれるとき、$F$ の $C_r$ に沿う循環を
$$
\Gamma_F(a,n;r):=\int_0^{2\pi}F\bigl(C_r(\theta)\bigr)\cdot C_r'(\theta)\,d\theta
$$
で定める。これは 1 次形式 $\lambda_F$ の $C_r$ に沿う線積分である。
$F$ を $U$ 上の $C^1$ 級のベクトル場、$a\in U$、$n$ を単位ベクトルとする。このとき
$$
n\cdot\operatorname{rot}F(a)=\lim_{r\to+0}\frac{\Gamma_F(a,n;r)}{\pi r^2}
$$
である。とくに右辺の極限は $u,v$ の選び方によらない。
$\Phi(s,t):=a+su+tv$ とおく。$\Phi^{-1}(U)\subset\mathbb{R}^2$ は開集合で、$r_0>0$ を閉じた円板 $\overline{D}_{r_0}:=\{s^2+t^2\le r_0^2\}$ が $\Phi^{-1}(U)$ に含まれるようにとり、$0< r\le r_0$ とする。$\Phi^{-1}(U)$ の上の $C^1$ 級の関数
$$
g_1(s,t):=F\bigl(\Phi(s,t)\bigr)\cdot u,\qquad g_2(s,t):=F\bigl(\Phi(s,t)\bigr)\cdot v
$$
を考える。$\gamma(\theta):=(r\cos\theta,r\sin\theta)$ とおくと $C_r=\Phi\circ\gamma$、$C_r'(\theta)=-r\sin\theta\,u+r\cos\theta\,v$ なので
$$
F\bigl(C_r(\theta)\bigr)\cdot C_r'(\theta)=g_1\bigl(\gamma(\theta)\bigr)(-r\sin\theta)+g_2\bigl(\gamma(\theta)\bigr)(r\cos\theta)
$$
であり、$\Gamma_F(a,n;r)$ は平面の 1 次形式 $g_1\,ds+g_2\,dt$ の、円 $\gamma$ に沿う反時計回りの線積分である。円板は縦線領域なので、Greenの定理 の定理「縦線領域に対する Green の定理」により
$$
\Gamma_F(a,n;r)=\iint_{D_r}\Bigl(\frac{\partial g_2}{\partial s}-\frac{\partial g_1}{\partial t}\Bigr)ds\,dt
$$
である($D_r$ は半径 $r$ の円板)。連鎖律 により $\partial_sg_2=v\cdot\bigl(DF(\Phi)\,u\bigr)$、$\partial_tg_1=u\cdot\bigl(DF(\Phi)\,v\bigr)$ なので、prop-cu-antisym の後半により
$$
\frac{\partial g_2}{\partial s}-\frac{\partial g_1}{\partial t}=\operatorname{rot}F\bigl(\Phi(s,t)\bigr)\cdot(u\times v)=n\cdot\operatorname{rot}F\bigl(\Phi(s,t)\bigr)
$$
である。$D_r$ の面積は $\pi r^2$ なので
$$
\Bigl|\frac{\Gamma_F(a,n;r)}{\pi r^2}-n\cdot\operatorname{rot}F(a)\Bigr|\le\max_{(s,t)\in\overline{D}_r}\bigl|n\cdot\operatorname{rot}F(\Phi(s,t))-n\cdot\operatorname{rot}F(a)\bigr|
$$
であり、$\operatorname{rot}F$ は連続なので右辺は $r\to+0$ で $0$ に近づく。$\square$
$n$ を $e_1,e_2,e_3$ にとれば回転の 3 つの成分が出るので、回転は「各点のまわりの小さな円に沿う循環」で決まる。羽根車の比喩では、$n\cdot\operatorname{rot}F(a)$ が正なら軸 $n$ の先から見て反時計回りに回る。循環が最大になる軸の向きは $\operatorname{rot}F(a)$ の向きであり、その値は $|\operatorname{rot}F(a)|$ である($n\cdot\omega\le|\omega|$ で、等号は $n=\omega/|\omega|$ のとき)。この定理を小さな円板から一般の曲面に広げたものが、曲面についての Stokes の定理である(rem-cu-riemannian)。
座標を $x=Ay+b$($A$ は 3 次の直交行列、$b\in\mathbb{R}^3$)と取り替えると、新しい座標は正規直交な座標であり、点 $x$ のベクトル $w$ の新しい成分は $A^{-1}w=A^{\top}w$ である。したがって $F$ は新しい座標では
$$
G(y):=A^{\top}F(Ay+b)\qquad\bigl(y\in V:=A^{\top}(U-b)\bigr)
$$
というベクトル場で表される。
$F$ が $U$ 上で $C^1$ 級なら、$V$ 上で
$$
\operatorname{rot}G(y)=(\det A)\,A^{\top}\operatorname{rot}F(Ay+b)
$$
である。とくに $\det A=1$($A\in\mathrm{SO}(3)$)なら $\operatorname{rot}G(y)=A^{\top}\operatorname{rot}F(Ay+b)$ であり、回転は新しい座標でも同じ式で計算できる。
連鎖律 により $DG(y)=A^{\top}DF(x)A$($x=Ay+b$)なので $DG(y)-DG(y)^{\top}=A^{\top}\bigl(DF(x)-DF(x)^{\top}\bigr)A$ である。$\omega:=\operatorname{rot}F(x)$ とおくと、prop-cu-antisym によりすべての $w$ について
$$
\bigl(DG(y)-DG(y)^{\top}\bigr)w=A^{\top}\bigl(\omega\times Aw\bigr)
$$
である。$\omega=A(A^{\top}\omega)$ と書き、ベクトル積 の定理「直交変換とベクトル積」$(Rp)\times(Rq)=(\det R)\,R(p\times q)$ を $R=A$ に当てると、$\omega\times Aw=(\det A)\,A\bigl((A^{\top}\omega)\times w\bigr)$ なので、右辺は $(\det A)(A^{\top}\omega)\times w$ である。一方、prop-cu-antisym を $G$ に当てると左辺は $\operatorname{rot}G(y)\times w$ である。よって $c:=\operatorname{rot}G(y)-(\det A)A^{\top}\omega$ はすべての $w$ について $c\times w=0$ を満たす。$w=e_1$ とすると $c\times e_1=(0,c_3,-c_2)$ なので $c_2=c_3=0$、$w=e_2$ とすると $c\times e_2=(-c_3,0,c_1)$ なので $c_1=0$ であり、$c=0$ である。$\square$
向きを逆にする直交変換($\det A=-1$、鏡映や $A=-I_3$)では、回転は座標のベクトルと逆の符号で移る。物理学で回転や角速度を「軸性ベクトル(擬ベクトル)」と呼ぶのはこのためである(ベクトル積についての同じ現象は ベクトル積 の系「鏡映でのふるまい」)。直交でない線形な座標変換では、ベクトルの成分と 1 次形式の成分の変わり方が異なり、$\operatorname{rot}$ の成分の式はそのままでは座標によらない量を与えない(ex-cu-table の 3 行目)。
$U$ 上で次が成り立つ。
1:第 1 成分は $\partial_2(fF_3)-\partial_3(fF_2)=(\partial_2f)F_3-(\partial_3f)F_2+f(\partial_2F_3-\partial_3F_2)$ であり、$(\partial_2f)F_3-(\partial_3f)F_2$ は $\nabla f\times F$ の第 1 成分である。第 2・第 3 成分も同じである。2:第 1 成分は $\partial_2\partial_3f-\partial_3\partial_2f$ で、偏微分 の系「$C^2$ 級関数の偏微分の可換性」により $0$ である。第 2・第 3 成分も同じである。3 は 発散(ベクトル場) の命題「発散の計算規則」の 3 である。$\square$
2・3 は Rud76 Theorem 10.43 (a)・(b)(p. 281)にあたる。2 回の回転についての $\operatorname{rot}(\operatorname{rot}F)=\nabla(\operatorname{div}F)-\Delta F$ や $\operatorname{rot}(F\times G)$ の公式は、ベクトル解析 の定理「ベクトル積を含む恒等式」で証明する。2 の逆、すなわち回転が $0$ の場が勾配として書けるかどうかは領域の形による(ベクトル解析 の定理「星型の開集合の上のポテンシャル」と例「渦なしの渦」)。
$U_1:=\mathbb{R}^3\setminus\{x=y=0\}$ の上の
$$
F:=\Bigl(\frac{-y}{x^2+y^2},\ \frac{x}{x^2+y^2},\ 0\Bigr)
$$
は $U_1$ の各点で $\operatorname{rot}F=0$ である(第 3 成分は $\partial_x\frac{x}{x^2+y^2}-\partial_y\frac{-y}{x^2+y^2}=\frac{y^2-x^2}{(x^2+y^2)^2}-\frac{y^2-x^2}{(x^2+y^2)^2}=0$、ほかの成分は $F_3=0$ と $F_1,F_2$ が $z$ によらないことから $0$)。一方、$z$ 軸の点 $a=0$ を中心に $n=e_3$、$u=e_1$、$v=e_2$ でとった円では $F(C_r(\theta))\cdot C_r'(\theta)=\frac{r^2\sin^2\theta+r^2\cos^2\theta}{r^2}=1$ なので、どの半径でも $\Gamma_F(0,e_3;r)=2\pi$ である。流れは $z$ 軸のまわりを回るが、軸から離れた点の近くでは剛体としての回転の成分がない。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| $F$ が $a$ の近くで $C^1$ 級(thm-cu-circulation) | ex-cu-vortex の $F$、$a=0$、$n=e_3$ | 循環を面積で割った値が収束する |
| $\det A=1$(thm-cu-orthogonal の後半) | $A=\operatorname{diag}(1,1,-1)$、$b=0$、$F=(-y,x,0)$ | $\operatorname{rot}G(y)=A^{\top}\operatorname{rot}F(Ay+b)$ |
| $A$ が直交行列(thm-cu-orthogonal) | $A=\operatorname{diag}(1,1,2)$、$b=0$、$G(y):=A^{\top}F(Ay)$、$F=(-y,x,0)$ | $\operatorname{rot}G(y)=(\det A)A^{\top}\operatorname{rot}F(Ay)$ |
| $f$ が $C^2$ 級(prop-cu-rules の 2) | $f=\dfrac{xy(x^2-y^2)}{x^2+y^2}$(原点で $f=0$) | $\operatorname{rot}(\nabla f)=0$ |
1 行目:$F$ を $z$ 軸の上で $0$ と定めて $U=\mathbb{R}^3$ の上のベクトル場とみる。$F_1(0,y,0)=-1/y$ なので $F$ は原点で連続でもなく、$a=0$ のどの近傍でも $C^1$ 級でない。それ以外の仮定($a\in U$、$n$ は単位ベクトル、$u\times v=n$)は満たされ、円 $C_r$ は $z$ 軸と交わらない。ex-cu-vortex により $\Gamma_F(0,e_3;r)/(\pi r^2)=2/r^2\to\infty$ である。$z$ 軸の外では $\operatorname{rot}F=0$ なのに、軸に「渦が集中している」。
2 行目:$A$ は直交行列で $\det A=-1$ である。$G(y)=A^{\top}F(Ay)=(-y_2,\ y_1,\ 0)$(第 3 成分は $-F_3=0$)なので $\operatorname{rot}G=(0,0,2)$ である。一方 $A^{\top}\operatorname{rot}F=A^{\top}(0,0,2)=(0,0,-2)$ で、符号が逆である。thm-cu-orthogonal の式 $(\det A)A^{\top}\operatorname{rot}F=(0,0,2)$ とは一致する。
3 行目:$A$ は正則だが直交でない($A^{\top}A=\operatorname{diag}(1,1,4)$)。$F(Ay)=(-y_2,\ y_1,\ 0)$ なので、定理と同じ形の $G(y)=A^{\top}F(Ay)$ は $(-y_2,\ y_1,\ 0)$ であり、$\operatorname{rot}G=(0,0,2)$ である。一方 $(\det A)A^{\top}\operatorname{rot}F=2\cdot(0,0,4)=(0,0,8)$ で、一致しない。ベクトルの成分の移り方 $A^{-1}$ を使った $A^{-1}F(Ay)$ も $(-y_2,\ y_1,\ 0)$ で回転は $(0,0,2)$ であり、やはり一致しない。
4 行目:$f$ は $C^1$ 級で、$\partial_xf(0,y)=-y$、$\partial_yf(x,0)=x$ である(偏微分 の例「反例:2 階の偏導関数の順序を交換できない関数」。$f$ を $z$ によらない $\mathbb{R}^3$ の関数とみる)。$\operatorname{rot}(\nabla f)$ の第 3 成分は $\partial_x(\partial_yf)-\partial_y(\partial_xf)$ で、原点では $1-(-1)=2\ne0$ である。
$(M,g)$ を向き付けられた 3 次元の Riemann 多様体、$dV_g$ をその体積形式とする。ベクトル場 $X$ に 2 次形式 $\iota_XdV_g$ を対応させる写像は、ベクトル場と 2 次形式の間の全単射である。そこで、$X^\flat$ を計量で $X$ に対応する 1 次形式として、
$$
\iota_{\operatorname{rot}X}\,dV_g=d\bigl(X^\flat\bigr)
$$
となるベクトル場 $\operatorname{rot}X$ を $X$ の回転と定める(Lee13 式 (16.14)、p. 426)。$\mathbb{R}^3$ の標準の計量では $X^\flat=\lambda_X$、$\iota_YdV=\omega_Y$ なので、def-cu-main の回転に一致する。この定義では $d\circ d=0$ から $\operatorname{rot}(\operatorname{grad}f)=0$ と $\operatorname{div}(\operatorname{rot}X)=0$ がすぐに出る(同書の式 (16.15)。発散は 発散(ベクトル場) の定義「Riemann 多様体の上の発散」)。回転がベクトル場として定まるのは、2 次形式とベクトル場が同じ個数の成分をもつ 3 次元に限られる。
曲面についての Stokes の定理 は次の形である(Lee13 Theorem 16.34、p. 427。この記事では証明しない):$S\subset M$ が向き付けられたコンパクトな 2 次元の境界付き部分多様体、$N$ がその向きを決める単位法線、$T$ が境界 $\partial S$ の正の向きの単位接ベクトルなら、滑らかな $X$ について
$$
\int_S\langle\operatorname{rot}X,N\rangle_g\,dA=\int_{\partial S}\langle X,T\rangle_g\,ds
$$
である。$\mathbb{R}^3$ の場合は Rud76 10.50(p. 287)にもある。微分形式の形は Stokesの定理 の系「古典的な積分定理」の 4 である。thm-cu-circulation は、この定理の左辺を小さな円板の上で考え、極限をとったものにあたる。
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