Stone双対性

同義語:Stone dualityStone双対Stoneの表現定理Stone's representation theoremStone空間Stone spaceBoole空間Priestley双対性Priestley空間

概要

Stone双対性(Stone duality)とは、Boole 代数と Stone 空間(コンパクト Hausdorff で完全不連結な空間)が互いに相手から復元できる形で対応するという定理である。Boole 代数 $B$ の超フィルター全体に位相を入れると Stone 空間 $S(B)$ になり、$B$ はその開閉集合の代数に同型である(Stone の表現定理)。証明には Boole 素イデアル定理が要る。逆に Stone 空間 $X$ は $S(\operatorname{Clop}(X))$ に同相で、準同型と連続写像は向きを反転して 1 対 1 に対応する。有界分配束には、スペクトル空間による Stone の双対と、順序つきの空間による Priestley の双対があり、スペクトル空間は可換環のスペクトルとして現れる(Hochster)。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: Boole代数, 超フィルター, コンパクト空間, Hausdorff空間, 完全不連結空間

Stone双対性(Stone duality)とは、Boole 代数と Stone 空間(コンパクト Hausdorff で完全不連結な空間)とが、互いに相手から復元できる形で 1 対 1 に対応するという定理である。Boole 代数 $B$ からは、その超フィルター全体に位相を入れた Stone 空間 $S(B)$ が得られ、Stone 空間 $X$ からは開かつ閉な集合全体のなす Boole 代数 $\operatorname{Clop}(X)$ が得られる。この 2 つの操作は互いに逆であり(同型・同相を除いて)、準同型と連続写像を向きを反転させて対応させる。M. H. Stone が Boole 代数の表現定理として導入した(Sto36)。
この記事の主定理は、Boole 代数が $\operatorname{Clop}(S(B))$ に同型であるという Stoneの表現定理 と、Stone 空間が $S(\operatorname{Clop}(X))$ に同相であることであり、どちらも完全に証明する。表現定理の証明で選択原理(Boole 素イデアル定理)を使う位置を明示する。あわせて Stone 空間の同値な定義を証明し、分配束への拡張(Stone によるスペクトル空間の双対、Priestley の双対)と、Hochster のスペクトル空間との関係を所在付きで述べる。

Stone 空間

この記事では、コンパクト性に Hausdorff 性を含めない(コンパクト空間 の定義)。位相空間 $X$ の開かつ閉な部分集合を 開閉集合 と呼び、その全体を $\operatorname{Clop}(X)$ と書く。開閉集合の全体が開基をなす空間を 零次元 という。

Stone 空間

コンパクト Hausdorff 空間で、完全不連結空間(空でない連結部分集合が 1 点集合だけ)であるものを Stone 空間(Boole 空間)という。

Stone 空間の同値な条件

コンパクト空間 $X$ について、次の 3 条件は同値である。

  1. $X$ は Hausdorff かつ完全不連結である(Stone 空間である)。
  2. $X$ は Hausdorff かつ零次元である。
  3. 相異なる 2 点 $x\neq y$ に対し、$x\in K$、$y\notin K$ となる開閉集合 $K$ がある。

2 ⇒ 3.$x\neq y$ なら Hausdorff 性から開集合 $W\ni x$ で $y\notin W$ となるものがあり、零次元性から開閉集合 $K$ で $x\in K\subset W$ となるものがある。
3 ⇒ 1.$x\neq y$ を分ける開閉集合 $K$ について $K$ と $X\setminus K$ は交わらない開集合なので、$X$ は Hausdorff である。2 点以上を含む部分集合 $A$ は、$x,y\in A$ を分ける開閉集合 $K$ によって、交わらない相対開集合 $A\cap K$ と $A\setminus K$ に分かれるので連結でない。
1 ⇒ 2.$x\in X$ を固定し、$x$ を含む開閉集合全体の共通部分を $Q$ とする。
段 1:$Q$ は連結である.$Q=A\cup A'$ を、$Q$ の交わらない相対閉集合への分解とし、$x\in A$ とする。$Q$ は閉集合の共通部分として閉集合なので、$A,A'$ は $X$ の閉集合である。コンパクト Hausdorff 空間は正規なので(コンパクト空間 の命題「コンパクトHausdorff空間の正規性」)、交わらない開集合 $U\supset A$、$V\supset A'$ がある。閉集合 $X\setminus(U\cup V)$ は $Q$ と交わらないので、$x$ を含む開閉集合 $K$ の補集合 $X\setminus K$ たちで覆われる。$X\setminus(U\cup V)$ はコンパクト空間の閉集合としてコンパクトなので、有限個の $K_1,\dots,K_n$ で覆われる。$K:=K_1\cap\cdots\cap K_n$ は $x$ を含む開閉集合で、$K\subset U\cup V$ である。$K\cap U$ は開集合であり、$K\subset U\cup V$ と $U\cap V=\emptyset$ から $K\cap U=K\setminus V$ なので閉集合でもある。$x\in K\cap U$ なので $Q\subset K\cap U\subset U$ であり、$A'\subset Q\cap V\subset U\cap V=\emptyset$ となる。よって $Q$ は連結である。
段 2:零次元性.完全不連結性と段 1 から $Q=\{x\}$ である。$W$ を $x$ の開近傍とすると、閉集合 $X\setminus W$ は $Q$ と交わらないので、段 1 と同じく $x$ を含む有限個の開閉集合の共通部分 $K$ で $K\subset W$ となるものがある。$K$ は開閉集合なので、開閉集合全体は開基をなす。$\square$

条件 3 は Hausdorff 性を含まないが、コンパクト性と合わせると Hausdorff 性を導く。条件 3 を Stone 空間の定義とする文献もある(GvG Definition 3.38、p. 72)。

Stone 空間の例
  1. 有限集合に離散位相を入れた空間。
  2. Cantor集合、すなわち $\{0,1\}^{\mathbb N}$ に積位相を入れた空間。第 $1$ 座標から第 $n$ 座標までを指定した集合(柱状集合)は開閉集合で開基をなし、Tychonoffの定理 からコンパクトである。
  3. $p$ 進整数環 $\mathbb Z_p$。$p^n\mathbb Z_p$ の剰余類が開閉集合の開基をなす(p進整数環)。
  4. $\mathbb N$ に 1 点 $\infty$ を加え、$\mathbb N$ の各点を孤立点とし、$\infty$ の開近傍を「有限集合の補集合で $\infty$ を含むもの」とした空間 $\mathbb N\cup\{\infty\}$($\mathbb N$ の 1 点コンパクト化)。

超フィルターの空間

Boole 代数 $B$(最小元 $0$、最大元 $1$、結び $\vee$、交わり $\wedge$、補元 $\neg$)の準同型は、$0,1,\vee,\wedge,\neg$ を保つ写像とする。

超フィルターと Stone 空間 $S(B)$

Boole 代数 $B$ の部分集合 $F$ が フィルター であるとは、$1\in F$、$0\notin F$ で、上に閉じ、$a,b\in F$ なら $a\wedge b\in F$ となることをいう。フィルター $F$ が 超フィルター であるとは、各 $a\in B$ について $a\in F$ または $\neg a\in F$ となることをいう。$B$ の超フィルター全体の集合を $S(B)$ と書き、$a\in B$ に対し
$$ \widehat a:=\{F\in S(B)\mid a\in F\} $$
とおく。$\{\widehat a\}_{a\in B}$ を開基とする位相を入れた $S(B)$ を $B$ の Stone 空間(双対空間)という。

$a\wedge\neg a=0\notin F$ なので、超フィルターは $a$ と $\neg a$ のちょうど一方を含む。超フィルターは包含について極大なフィルターである。実際、フィルター $F\subsetneq G$ で $F$ が超フィルターなら、$a\in G\setminus F$ について $\neg a\in F\subset G$ となり $0=a\wedge\neg a\in G$ に反する。逆に極大なフィルターは超フィルターである(GvG Definition 3.37 の後の説明、p. 72)。

基本開集合の演算

$F$ を $B$ の超フィルターとすると、$a\vee b\in F$ と「$a\in F$ または $b\in F$」は同値である。したがって
$$ \widehat{a\wedge b}=\widehat a\cap\widehat b,\qquad \widehat{a\vee b}=\widehat a\cup\widehat b,\qquad \widehat{\neg a}=S(B)\setminus\widehat a,\qquad \widehat 0=\emptyset,\qquad \widehat 1=S(B) $$
であり、各 $\widehat a$ は $S(B)$ の開閉集合である。

$a\in F$ なら $a\le a\vee b$ から $a\vee b\in F$ である。逆に $a,b\notin F$ なら $\neg a,\neg b\in F$ なので $\neg(a\vee b)=\neg a\wedge\neg b\in F$ となり、$a\vee b\notin F$ である。交わりの式はフィルターの定義から、補元の式は超フィルターが $a,\neg a$ のちょうど一方を含むことから従う。$\widehat a$ の補集合は $\widehat{\neg a}$ で開集合なので、$\widehat a$ は閉集合でもある。$\square$

$\{\widehat a\}$ は有限個の共通部分で閉じ、$\widehat 1=S(B)$ を含むので、実際に開基になる。

主定理:Stoneの表現定理

表現定理の証明では、次の選択原理を使う。

超フィルターへの延長

Boole 代数 $B$ の任意のフィルター $G$ は、ある超フィルターに含まれる。

補題の位置づけ

この補題は選択原理そのものであり、構成的な手順では得られない。以下の表現定理では、この補題を使う箇所を明示して引用する。

この補題は Boole素イデアル定理 の定理「Boole 素イデアル定理の同値な形」の 2(真のイデアルは素イデアルに含まれる)を、$I\mapsto\{\neg a\mid a\in I\}$ でフィルターに言い換えたものであり、$\mathsf{ZF}$ の上で Boole 素イデアル定理と同値である。$\mathsf{ZF}$ だけでは証明できず、選択公理からは従う。この記事では、選択原理を使う箇所をこの補題の引用として明示する。

Stoneの表現定理

$B$ を Boole 代数とする。

  1. $S(B)$ は Stone 空間である。
  2. $a\mapsto\widehat a$ は Boole 代数の同型 $B\cong\operatorname{Clop}(S(B))$ である。
    とくに、任意の Boole 代数は、ある集合の冪集合の部分 Boole 代数(和集合・共通部分・補集合で閉じた部分集合族)に同型である。

段 1(2 点の分離).$F\neq G$ を超フィルターとする。超フィルターは極大なフィルターなので $F\not\subset G$ であり、$a\in F\setminus G$ がとれる。$\widehat a$ は $F$ を含み $G$ を含まない開閉集合である。
段 2(コンパクト性、選択原理を使う).開集合はどれも基本開集合 $\widehat a$ の和なので、基本開集合による被覆 $S(B)=\bigcup_{i\in I}\widehat{a_i}$ が有限部分被覆をもつことを示せばよい。有限部分被覆がないと仮定する。有限個の $i_1,\dots,i_n$ について $\widehat{a_{i_1}}\cup\cdots\cup\widehat{a_{i_n}}\neq S(B)$ なので、lem-stone-basic-open により $\widehat{\neg a_{i_1}\wedge\cdots\wedge\neg a_{i_n}}\neq\emptyset$、とくに $\neg a_{i_1}\wedge\cdots\wedge\neg a_{i_n}\neq0$ である。よって
$$ G:=\{b\in B\mid \text{ある有限個の } i_1,\dots,i_n \text{ で } \neg a_{i_1}\wedge\cdots\wedge\neg a_{i_n}\le b\} $$
はフィルターである($n=0$ のときの交わりは $1$ とする)。lem-stone-bpi により、$G$ を含む超フィルター $F$ がある。$F$ はすべての $\neg a_i$ を含むので、どの $\widehat{a_i}$ にも属さない。これは被覆の仮定に反する。
段 3(Stone 空間).段 1・段 2 と thm-stone-space-equivalent の条件 3 により、$S(B)$ は Stone 空間である。
段 4(単射、選択原理を使う).$a\neq b$ とし、たとえば $a\not\le b$ とする。このとき $c:=a\wedge\neg b\neq0$ である($a\wedge\neg b=0$ なら $a=a\wedge(b\vee\neg b)=a\wedge b\le b$)。$\{x\mid c\le x\}$ はフィルターなので、lem-stone-bpi により $c$ を含む超フィルター $F$ がある。$a\in F$、$\neg b\in F$ なので $F\in\widehat a\setminus\widehat b$ であり、$\widehat a\neq\widehat b$ である。
段 5(全射).$C$ を $S(B)$ の開閉集合とする。$C$ は開集合なので基本開集合の和であり、コンパクト空間の閉集合なのでコンパクトである。よって $C=\widehat{a_1}\cup\cdots\cup\widehat{a_n}=\widehat{a_1\vee\cdots\vee a_n}$ と書ける($n=0$ なら $C=\widehat 0$)。
lem-stone-basic-open により $a\mapsto\widehat a$ は準同型であり、段 4・段 5 により全単射なので同型である。最後の主張は、$\operatorname{Clop}(S(B))$ が $S(B)$ の冪集合の部分 Boole 代数であることによる。$\square$

表現定理の最後の主張は Stone Sto36 Theorem 67(p. 106)の内容である。Stone は、表現に必要な素イデアルの存在(Theorem 63、p. 100)を超限帰納法で示し、表現の存在と「素イデアルが十分にある」ことが超限的な方法を使わずに同値であることも示した(Theorem 70、p. 110)。有限な Boole 代数では選択原理は要らず、表現定理は原子全体の冪集合との同型になる(Boole代数 の定理「有限Boole代数の構造」)。

Stone 空間の復元と双対性

Stone 空間の復元

$X$ を Stone 空間とする。$x\in X$ に対し $F_x:=\{K\in\operatorname{Clop}(X)\mid x\in K\}$ とおくと、$F_x$ は $\operatorname{Clop}(X)$ の超フィルターであり、$x\mapsto F_x$ は同相写像 $X\cong S(\operatorname{Clop}(X))$ である。

$F_x$ がフィルターであることは明らかで、各開閉集合 $K$ について $x\in K$ または $x\in X\setminus K$ なので超フィルターである。
単射.thm-stone-space-equivalent の条件 3 により、$x\neq y$ なら $x$ だけを含む開閉集合があり、$F_x\neq F_y$ である。
全射.$F$ を $\operatorname{Clop}(X)$ の超フィルターとする。$F$ の元は閉集合で、有限個の共通部分はまた $F$ の元なので空でない。$X$ はコンパクトなので、有限交叉性をもつ閉集合族の共通部分は空でない(コンパクト空間 の命題「有限交叉性による言い換え」)。$x\in\bigcap F$ をとると $F\subset F_x$ であり、超フィルターの極大性から $F=F_x$ である。この段で選択原理は使わない。
同相.開閉集合 $K$ について、$x\mapsto F_x$ による $\widehat K$ の逆像は $K$ であり、$K$ の像は $\widehat K$ である。$X$ も $S(\operatorname{Clop}(X))$ も開閉集合を開基にもつので、この全単射は連続かつ開写像であり、同相写像である。$\square$

thm-stone-representation と thm-stone-recover-space は、対象について $B\cong\operatorname{Clop}(S(B))$、$X\cong S(\operatorname{Clop}(X))$ を与える。射については、Boole 代数の準同型 $h\colon B\to B'$ に連続写像 $S(h)\colon S(B')\to S(B)$、$F\mapsto h^{-1}(F)$ を、Stone 空間の連続写像 $f\colon X\to Y$ に準同型 $f^{-1}\colon\operatorname{Clop}(Y)\to\operatorname{Clop}(X)$ を対応させる。

Stone双対性

上の対応 $S$ と $\operatorname{Clop}$ は、Boole 代数と準同型の圏と、Stone 空間と連続写像の圏の反対圏との圏同値を与える。とくに、Boole 代数の準同型 $B\to B'$ と連続写像 $S(B')\to S(B)$ は $h\mapsto S(h)$ で 1 対 1 に対応する。

要点:$S(h)$ が連続写像になること、$\widehat{\,\cdot\,}$ と $x\mapsto F_x$ が準同型・連続写像と両立すること(自然性)を確かめれば、主定理の 2 つの同型から圏同値が従う。

詳しい証明を開く

$h$ は $\neg$ と $\wedge$ と $0,1$ を保つので、超フィルター $F$ の逆像 $h^{-1}(F)$ は超フィルターである。$S(h)^{-1}(\widehat a)=\{F\mid h(a)\in F\}=\widehat{h(a)}$ なので $S(h)$ は連続であり、この式は $\operatorname{Clop}(S(h))\circ\widehat{\,\cdot\,}=\widehat{\,\cdot\,}\circ h$、つまり表現定理の同型が $h$ と両立することを表す。連続写像 $f\colon X\to Y$ について、$f^{-1}$ は開閉集合を開閉集合に写し、集合演算を保つので準同型である。$x\in X$ と $K\in\operatorname{Clop}(Y)$ について $K\in(f^{-1})^{-1}(F_x)\iff x\in f^{-1}(K)\iff K\in F_{f(x)}$ なので、$S(f^{-1})(F_x)=F_{f(x)}$ であり、thm-stone-recover-space の同相が $f$ と両立する。こうして $\operatorname{Clop}\circ S$ と $S\circ\operatorname{Clop}$ はそれぞれ恒等関手に自然に同型であり、$S$ と $\operatorname{Clop}$ は互いに逆の反変的な圏同値である。圏同値は射の集合の全単射を与えるので、最後の主張が従う。$\square$

Boole 代数と Boole 空間の双対は GvG Theorem 3.44(p. 73)にもあり、そこでは Priestley の双対の特別な場合として導かれている。

双対の例

Boole 代数 $B$Stone 空間 $S(B)$
有限 Boole 代数(原子が $n$ 個)$n$ 点の離散空間
$\mathbb N$ の有限部分集合と補有限部分集合の全体$\mathbb N\cup\{\infty\}$($\mathbb N$ の 1 点コンパクト化)
無限集合 $X$ の冪集合 $\mathcal P(X)$離散空間 $X$ の Stone–Čech コンパクト化 $\beta X$
$\{0,1\}^{\mathbb N}$ の開閉集合の代数(可算で原子をもたない)Cantor集合
補有限代数と 1 点コンパクト化

$B$ を $\mathbb N$ の有限部分集合と補有限部分集合の全体とする。$X:=\mathbb N\cup\{\infty\}$(ex-stone-space-examples の 4)の開閉集合 $K$ を考える。$\infty\in K$ なら $K$ は $\infty$ の開近傍なので補有限であり、$\infty\notin K$ なら $X\setminus K$ が $\infty$ の開近傍なので $K$ は $\mathbb N$ の有限部分集合である。逆にこれらはどれも開閉集合である。よって $K\mapsto K\cap\mathbb N$ は同型 $\operatorname{Clop}(X)\cong B$ を与え、thm-stone-recover-space により $S(B)\cong X$ である。$B$ の超フィルターは、$n\in\mathbb N$ を含む集合全体($n$ に対応する点)と、補有限集合全体($\infty$ に対応する点)である(GvG Example 3.46、p. 74)。

Cantor 集合の開閉集合

$C:=\{0,1\}^{\mathbb N}$ の開閉集合は開集合なので柱状集合の和であり、コンパクトなので有限個の柱状集合の和である。柱状集合は可算個なので、$\operatorname{Clop}(C)$ は可算である。空でない開閉集合 $K$ はある柱状集合 $Z$(第 $1$ 座標から第 $n$ 座標までを指定したもの)を含み、$Z$ は第 $n+1$ 座標で 2 つの空でない柱状集合に分かれるので、$K$ より真に小さい空でない開閉集合がある。よって $\operatorname{Clop}(C)$ は原子をもたない可算な Boole 代数であり、その Stone 空間は thm-stone-recover-space により $C$ である。

$\mathcal P(X)$ の Stone 空間が $\beta X$ であることは、この記事では証明しない(GvG Example 3.45、p. 74)。$S(\mathcal P(X))$ は $X$ の点に対応する主超フィルターを孤立点として稠密に含むコンパクト Hausdorff 空間である。

分配束への拡張

Boole 代数から補元を除いた有界分配束($0,1$ をもつ分配束)にも、同じ型の双対がある。有界分配束 $L$ の 素フィルター とは、真のフィルター $F$ で $a\vee b\in F$ ならば $a\in F$ または $b\in F$ となるものをいう。Boole 代数では素フィルターと超フィルターは一致する。分配束では、フィルター $F$ とイデアル $I$ が交わらなければ、$F$ を含み $I$ と交わらない素フィルターがある(GvG Theorem 3.10、p. 54。Zorn の補題を使い、$\mathsf{ZF}$ の上で Boole 素イデアル定理と同値)。ここから、$a\mapsto\widehat a:=\{F\mid a\in F\}$ が $L$ を素フィルター全体の部分集合の束に埋め込むこと(分配束の Stone 表現、GvG Theorem 3.11、p. 55)が従う。素フィルター全体にどんな位相を入れるかで、2 つの双対が得られる。

Boole 代数有界分配束(Stone)有界分配束(Priestley)
双対空間の点超フィルター素フィルター素フィルター(包含の逆の順序つき)
位相$\widehat a$ を開基$\widehat a$ を開基$\widehat a$ とその補集合を準開基
空間の種類Stone 空間スペクトル空間Priestley 空間
元の復元開閉集合コンパクト開集合開閉な下方集合
射連続写像spectral 写像順序を保つ連続写像
  • スペクトル空間による双対(Stone).素フィルター全体に $\{\widehat a\}$ を開基とする位相を入れた空間は $T_0$ で、$\widehat a$ はちょうどそのコンパクト開集合であり、コンパクト開集合は開基をなし有限個の共通部分で閉じる(Sto38 Theorem 15、p. 14)。逆にこの性質をもつ空間は、コンパクト開集合の束の双対空間として復元される(Sto38 Theorem 16、p. 15)。こうして得られる空間はスペクトル空間(Spectral space)であり、有界分配束の圏はスペクトル空間と spectral 写像の圏と反対に同値である(GvG Definition 6.3 と図 6.1、p. 169)。双対空間が Hausdorff になるのは、束が Boole 代数のときである(Sto38 Theorem 18、p. 17)。
  • Priestley 双対.コンパクトな順序つき位相空間 $(X,\tau,\le)$ で、$x\not\le y$ ならば $y\in U$、$x\notin U$ となる開閉な下方集合 $U$($u\in U$、$v\le u$ なら $v\in U$)があるものを Priestley 空間 という(GvG Definition 3.14、p. 59)。有界分配束の圏は、Priestley 空間と順序を保つ連続写像の圏と反対に同値である(GvG Theorem 3.31、p. 68)。順序が自明な Priestley 空間はちょうど Stone 空間であり、このとき上の Boole 代数の双対に戻る。
  • 2 つの双対の関係.スペクトル空間の圏と Priestley 空間の圏は同型である。スペクトル空間に、コンパクト開集合とその補集合を準開基とする位相(パッチ位相)と、特殊化の順序の逆を入れると Priestley 空間になり、この対応が同型を与える(GvG Theorem 6.4、p. 169)。
    この記事ではこれらの双対を証明しない。

可換環のスペクトルとの関係

Hochster は、可換環の素イデアル全体に Zariski 位相を入れた空間 $\operatorname{Spec}A$ として現れる空間を特徴づけ、それがちょうどスペクトル空間であることを示した。すなわち、任意のスペクトル空間と spectral 写像は、ある可換環のスペクトルと環準同型の誘導する写像に同型である(Hoc69 Theorem 6、p. 51。Spectral space の定理「Hochster の定理」)。Stone 空間については構成が具体的で、Stone 空間 $X$ は、体 $k$ に離散位相を入れたときの連続写像 $X\to k$ 全体のなす環 $A(X)$ のスペクトルに同相である(Hoc69 Theorem 6 の (c) の証明、p. 51)。
Hochster はまた、スペクトル空間 $X$ のコンパクト開集合を閉集合の基とする新しい位相を入れると再びスペクトル空間になり、特殊化の順序が逆になることを示した(Hoc69 Proposition 8、p. 54)。分配束の側では、これは順序を逆にした束の双対空間をとることにあたる。パッチ位相をとる操作は、スペクトル空間から Stone 空間への関手を与える(Hoc69 §9、p. 54)。

反例と注意

表の各行は、双対の前提の 1 つを外すと何が起こるかを示す。

外す条件反例成り立たなくなること
コンパクト性離散空間 $\mathbb N$$\operatorname{Clop}(\mathbb N)=\mathcal P(\mathbb N)$ の Stone 空間はコンパクトで、$\mathbb N$ と同相でない
完全不連結性閉区間 $[0,1]$開閉集合は $\emptyset$ と $[0,1]$ だけで、$S(\operatorname{Clop}([0,1]))$ は 1 点
Hausdorff 性Sierpinski空間開閉集合は $\emptyset$ と全体だけで、2 点が復元されない
補元(Boole 性)3 元の鎖 $0< m< 1$$\widehat a$ を開基とする素フィルターの空間は Sierpiński 空間で Hausdorff でない
準同型が $1$ を保つこと$h\colon\mathbf 2\to\mathbf 2\times\mathbf 2$、$x\mapsto(x,0)$超フィルターの逆像が空集合になり、$S(h)$ が定まらない
選択原理$\mathsf{ZF}$ だけ無限の Boole 代数一般には、表現定理が証明できない
反例の確認

各行の計算を確かめる。

各行の確認を開く

1 行目:$\mathbb N$ は離散なので任意の部分集合が開閉である。$S(\mathcal P(\mathbb N))$ は thm-stone-representation によりコンパクトだが、$\mathbb N$ はコンパクトでない。

2 行目:$[0,1]$ は 連結空間 なので開閉集合は $\emptyset$ と全体だけであり、$\operatorname{Clop}([0,1])=\{0,1\}$ の超フィルターは $\{1\}$ ただ 1 つである。

3 行目:$\{1\}$ は開だが閉でなく、$\{0\}$ は閉だが開でない。

4 行目:鎖の素フィルターは $\{1\}$ と $\{m,1\}$ で、$\widehat 0=\emptyset$、$\widehat m=\{\{m,1\}\}$、$\widehat 1$ は全体である。開集合は $\emptyset$、$\{\{m,1\}\}$、全体で、Sierpiński 空間と同じである。

5 行目:$\mathbf 2\times\mathbf 2$ の超フィルター $G=\{(0,1),(1,1)\}$ について $h^{-1}(G)=\{x\mid(x,0)\in G\}=\emptyset$ であり、$1$ を含まない。$h$ は $0,\vee,\wedge$ を保つが $h(1)=(1,0)\neq(1,1)$ である。

6 行目:Boole素イデアル定理 の記事のとおり、Boole 素イデアル定理は $\mathsf{ZF}$ で証明できない。表現定理の一般形は $\mathsf{ZF}$ の上で素イデアルの存在を導く(Sto36 Theorem 70、p. 110)。

注意を 2 つ挙げる。

  • 点のない見方.有界分配束 $L$ のイデアル全体はフレームをなし、その点は $L$ の素フィルターにあたる。「このフレームがつねに空間的である」ことは分配束の素イデアル定理と同値であり、Stone の表現定理の選択原理に依存する部分はここに集まっている(Joh83 §3、p. 46)。フレームと点の一般論は sober空間 と フレーム(順序論) にある。
  • 名前の揺れ.「Stone 空間」を、分配束の双対に現れるスペクトル空間の意味で使う文献もある(GvG Definition 3.38 の脚注、p. 72)。この記事の Stone 空間は Boole 代数の双対に現れるコンパクト Hausdorff 空間である。

関連項目

参考文献

[1]
M. H. Stone, The theory of representations for Boolean algebras, Trans. Amer. Math. Soc., Trans. Amer. Math. Soc. 40 (1936), 37–111。Theorem 63(素イデアルの存在、超限帰納法による、p. 100)、Theorem 67(素イデアルによる表現、p. 106)、Theorem 70(表現の存在と素イデアルの存在の同値、p. 110)
[2]
M. H. Stone, Topological representations of distributive lattices and Brouwerian logics, Časopis pro pěstování matematiky a fysiky, Časopis pro pěstování matematiky a fysiky 67 (1938), 1–25。Theorem 15(素イデアルの空間の位相、p. 14)、Theorem 16(逆の構成、p. 15)、Theorem 18(Hausdorff になることと一般化 Boole 代数、p. 17)
[3]
M. Hochster, Prime ideal structure in commutative rings, Trans. Amer. Math. Soc., Trans. Amer. Math. Soc. 142 (1969), 43–60。Theorem 6 と (c) の証明(スペクトル空間と Spec、Stone 空間と局所定数関数の環、p. 51)、Proposition 8(逆の位相、p. 54)、§9(パッチ関手、p. 54)
[4]
Mai Gehrke, Sam van Gool, Topological Duality for Distributive Lattices: Theory and Applications, arXiv:2203.03286, arXiv:2203.03286v5(2023-04-05。Cambridge University Press から刊行される本の著者公開版)。Theorem 3.10–3.11(素フィルター・イデアル定理と分配束の表現、p. 54–55)、Definition 3.14(Priestley 空間、p. 59)、Theorem 3.31(Priestley 双対、p. 68)、Definition 3.37–3.38(超フィルター、Boole 空間、p. 72)、Theorem 3.44(Boole 代数の双対、p. 73)、Example 3.45–3.46(冪集合と補有限代数の双対空間、p. 74)、Definition 6.3・図 6.1・Theorem 6.4(スペクトル空間による双対、Priestley 空間との同型、p. 169)
[5]
Peter T. Johnstone, The point of pointless topology, Bull. Amer. Math. Soc., Bull. Amer. Math. Soc. (N.S.) 8 (1983), 41–53。§3、p. 46(分配束のイデアルのフレームが空間的であることと素イデアル定理の同値)

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