はさみうちと評価の技法

同義語:squeezing and estimation techniques

概要

はさみうちと評価の技法(squeezing and estimation techniques)とは、極限を直接計算できない数列を、極限の分かる 2 つの数列で上下から挟んで調べる方法と、挟む不等式を作る技法をまとめたものである。基礎は、ある番号から先のすべての $n$ で $a_n\le b_n\le c_n$ が成り立ち、$a_n$ と $c_n$ が同じ値に収束すれば $b_n$ もその値に収束するというはさみうちの原理である。挟む式は、二項定理で $(1+h)^n$ を下から押さえる、隣り合う項の比をとる、和を定積分と比べる、などで作る。これにより $\sqrt[n]{n}\to1$、$a>1$ での $\log n$・$n^k$・$a^n$・$n!$・$n^n$ の増え方の順序が示せる。結果は漸近記法 $O$・$o$・$\sim$ で表す。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 数列の極限, 二項定理, 指数関数, 対数関数, 三角関数, 定積分

高校での出発点:はさみうち

数列の極限を求めるとき、式を変形して直接計算できないことがある。そのとき高校では、はさみうちの原理を使う。求めたい数列を、極限が分かっている 2 つの数列で上下から挟むのである。

例 1:振動しながら 0 に近づく数列

$b_n=\dfrac{\sin n}{n}$ の極限を求める。$\sin n$ は $-1$ 以上 $1$ 以下なので、両辺を正の数 $n$ で割ると
$$ -\frac1n\le\frac{\sin n}{n}\le\frac1n $$
である。左端と右端はどちらも $n\to\infty$ で $0$ に近づく。よって $\displaystyle\lim_{n\to\infty}\frac{\sin n}{n}=0$ である。
数値で見ると、$b_{10}=-0.0544\ldots$、$b_{100}=-0.00506\ldots$、$b_{1000}=0.000826\ldots$ で、確かに $\pm\frac1n$ の間にある(図1)。

点で示した sin(n)/n が、曲線 1/n と −1/n の間に挟まれて 0 に押しつぶされる様子を見る図 点で示した sin(n)/n が、曲線 1/n と −1/n の間に挟まれて 0 に押しつぶされる様子を見る図

例 2:大きいほうの項だけが残る

$b_n=\sqrt[n]{3^n+2^n}$ の極限を求める。$3^n<3^n+2^n\le3^n+3^n=2\cdot3^n$ なので、$n$ 乗根をとると
$$ 3<\sqrt[n]{3^n+2^n}\le3\cdot2^{1/n} $$
である。$2^{1/n}\to1$ なので右端は $3$ に近づき、極限は $3$ である。

$n$$1$$2$$5$$10$$20$
$\sqrt[n]{3^n+2^n}$$5$$3.6056$$3.0752$$3.00516$$3.000045$
$3\cdot2^{1/n}$$6$$4.2426$$3.4461$$3.2153$$3.1058$

右端の数列は $b_n$ よりずっとゆっくり $3$ に近づく。挟む式は粗くてよく、極限さえ一致すれば結論が出る。

2 つの例を見ると、次の 3 つの疑問がわく。

  1. 挟んだ両側の極限が等しいと、なぜ真ん中の極限も決まるのか。「限りなく近づく」を言葉のまま使うと、証明にならない。→ thm-sqz-squeeze
  2. 挟む式はどうやって作るのか。例 1・例 2 は簡単に見つかったが、$\sqrt[n]{n}$ や $\frac{10^n}{n!}$ ではどうするか。→ lem-sqz-binomial、ex-sqz-ratio、prop-sqz-harmonic
  3. 「$0$ に近づく」だけでなく、「どのくらいの速さで」「何と同じくらいの大きさで」と言いたいとき、どう書けばよいか。→ thm-sqz-growth、def-sqz-asymptotic
    本記事は、はさみうちの原理を土台にして、不等式で数列を評価する(上下から押さえる)技法を整理する。高校での計算と大学での言葉の対応は次のとおりである。
    高校での計算大学での言葉本記事の箇所
    「限りなく近づく」$\varepsilon$-$N$ 論法による収束の定義def-sqz-limit
    はさみうちの原理はさみうちの原理(証明つき)thm-sqz-squeeze
    二項定理で $(1+h)^n$ を下から押さえる冪根・指数の評価lem-sqz-binomial
    隣り合う項の比をとる比による評価ex-sqz-ratio
    和を積分と比べる調和数・階乗の対数の評価prop-sqz-harmonic、ex-sqz-log-factorial
    「$n^2$ より $2^n$ のほうが速く大きくなる」増え方の順序thm-sqz-growth
    「だいたい $\log n$ くらい」漸近記法 $O$・$o$・$\sim$def-sqz-asymptotic

はさみうちの原理

収束の定義

「$a_n$ が $\alpha$ に限りなく近づく」を、不等式だけで述べ直す。

数列の収束

実数の数列 $(a_n)$ と実数 $\alpha$ について、次の条件が成り立つとき、$(a_n)$ は $\alpha$ に収束するといい、$\displaystyle\lim_{n\to\infty}a_n=\alpha$ と書く。
どんな正の数 $\varepsilon$ に対しても、ある番号 $N$ があって、$n\ge N$ となるすべての $n$ で $|a_n-\alpha|<\varepsilon$ が成り立つ。
$\alpha$ をこの数列の極限という。

言葉で言えば、「許される誤差 $\varepsilon$ をどれほど小さく指定されても、十分先の番号からはすべての項がその誤差の範囲に入る」ということである。$\varepsilon$ が先に与えられ、それに応じて $N$ を選ぶ順番が大切である。

例 3:$\frac1n$ が $0$ に収束することを定義で確かめる

$\varepsilon=0.01$ と指定されたとする。$\left|\frac1n-0\right|=\frac1n$ なので、$\frac1n<0.01$ すなわち $n>100$ となればよい。$N=101$ と選べば、$n\ge101$ のすべての $n$ で $\frac1n\le\frac1{101}<0.01$ である。
一般の $\varepsilon>0$ に対しては、$\frac1\varepsilon$ より大きい整数を $N$ に選ぶ。$n\ge N$ なら $n>\frac1\varepsilon$ なので $\frac1n<\varepsilon$ である。こうして、どの $\varepsilon$ にも $N$ が見つかるので、$\displaystyle\lim_{n\to\infty}\frac1n=0$ である。

例 4:$\frac{n}{n+1}$ が $1$ に収束することを定義で確かめる

$\left|\frac{n}{n+1}-1\right|=\frac1{n+1}$ である。$\varepsilon=0.001$ なら、$\frac1{n+1}<0.001$ となるのは $n>999$ のときなので、$N=1000$ と選べばよい。一般の $\varepsilon>0$ には、$\frac1\varepsilon$ より大きい整数を $N$ に選べば、$n\ge N$ で $\frac1{n+1}<\frac1n<\varepsilon$ となる。

定理と証明

はさみうちの原理

3 つの実数の数列 $(a_n)$、$(b_n)$、$(c_n)$ と番号 $n_0$ があって、$n\ge n_0$ となるすべての $n$ で
$$ a_n\le b_n\le c_n $$
が成り立つとする。$(a_n)$ と $(c_n)$ が同じ実数 $\alpha$ に収束するならば、$(b_n)$ も $\alpha$ に収束する。

両側の誤差を同時に小さくする

方針:$b_n$ は $a_n$ と $c_n$ の間にあるので、$a_n$ と $c_n$ がそろって $\alpha$ の近くに来れば、$b_n$ もその近くに閉じ込められる。これを def-sqz-limit の形で書く。
段 1($\varepsilon$ を与える)。正の数 $\varepsilon$ を任意に 1 つとる。
段 2(両側の数列に定義を使う)。$(a_n)$ は $\alpha$ に収束するので、def-sqz-limit により、ある番号 $N_1$ があって、$n\ge N_1$ ならば $|a_n-\alpha|<\varepsilon$ である。この不等式は $\alpha-\varepsilon< a_n<\alpha+\varepsilon$ と同じである。同様に、ある番号 $N_2$ があって、$n\ge N_2$ ならば $\alpha-\varepsilon< c_n<\alpha+\varepsilon$ である。
段 3(番号をそろえる)。$N$ を $n_0$、$N_1$、$N_2$ のうち最大のものとする。$n\ge N$ ならば、3 つの条件 $n\ge n_0$、$n\ge N_1$、$n\ge N_2$ がすべて成り立つ。
段 4(挟む)。$n\ge N$ とする。段 2 の左側の不等式 $\alpha-\varepsilon< a_n$、仮定の $a_n\le b_n\le c_n$、段 2 の右側の不等式 $c_n<\alpha+\varepsilon$ をつなぐと
$$ \alpha-\varepsilon< a_n\le b_n\le c_n<\alpha+\varepsilon $$
となる。両端だけを見ると $\alpha-\varepsilon< b_n<\alpha+\varepsilon$、すなわち $|b_n-\alpha|<\varepsilon$ である。
段 5(まとめ)。任意の $\varepsilon>0$ に対して、$n\ge N$ ならば $|b_n-\alpha|<\varepsilon$ となる番号 $N$ が見つかった。def-sqz-limit により、$(b_n)$ は $\alpha$ に収束する。$\square$

証明で使ったのは、$a_n$ については「$\alpha-\varepsilon$ より大きい」という下側の情報だけ、$c_n$ については「$\alpha+\varepsilon$ より小さい」という上側の情報だけである。これが「下から押さえる数列」「上から押さえる数列」という言い方の意味である(ほぼ同じ定理と証明が Leb26 Lemma 2.2.1、p. 61 にある。Lebl はすべての $n$ で挟む形で述べている)。

例 5:分母が少しずつ違う和

$$ S_n=\frac1{\sqrt{n^2+1}}+\frac1{\sqrt{n^2+2}}+\cdots+\frac1{\sqrt{n^2+n}} $$
の極限を求める。項は $n$ 個ある。分母は $\sqrt{n^2+1}$ 以上 $\sqrt{n^2+n}$ 以下なので、各項は $\frac1{\sqrt{n^2+n}}$ 以上 $\frac1{\sqrt{n^2+1}}$ 以下である。$n$ 個足すと
$$ \frac{n}{\sqrt{n^2+n}}\le S_n\le\frac{n}{\sqrt{n^2+1}} $$
となる。分母と分子を $n$ で割ると、左端は $\frac1{\sqrt{1+1/n}}$、右端は $\frac1{\sqrt{1+1/n^2}}$ で、どちらも $1$ に近づく。thm-sqz-squeeze により $\displaystyle\lim_{n\to\infty}S_n=1$ である。

$n$左端$S_n$右端
$10$$0.95346$$0.97386$$0.99504$
$100$$0.99504$$0.99749$$0.99995$
$1000$$0.99950$$0.99975$$0.9999995$

各項がすべて $0$ に近づくからといって「和の極限は $0$」とはならない。項の個数 $n$ も同時に増えるからである(ex-sqz-many-terms)。

挟む式の作り方

はさみうちの原理を使うには、極限の分かる 2 つの数列で挟まなければならない。ここでは、挟む式を作る代表的な 3 つの技法を見る。

技法 1:二項定理で下から押さえる

二項展開の 1 つの項で押さえる

$h\ge0$ を実数、$n$ を正の整数、$k$ を $0\le k\le n$ の整数とする。このとき
$$ (1+h)^n\ge\binom nk h^k $$
が成り立つ。特に $n\ge2$ なら $(1+h)^n\ge\dfrac{n(n-1)}2h^2$ である。

正の項を捨てる

二項定理により
$$ (1+h)^n=\binom n0+\binom n1h+\binom n2h^2+\cdots+\binom nnh^n $$
である。$h\ge0$ なので、右辺の $n+1$ 個の項はどれも $0$ 以上である。$0$ 以上の数の和は、そのうちの 1 つの項以上である。よって $(1+h)^n\ge\binom nkh^k$ である。$k=2$ とすると $\binom n2=\frac{n(n-1)}2$ なので、後半の不等式が得られる。$\square$

例 6:小さな数で確かめる

$h=0.1$、$n=10$ とする。$(1.1)^{10}=2.5937\ldots$ である。一方 $\binom{10}2(0.1)^2=45\times0.01=0.45$ で、確かに $2.5937\ldots\ge0.45$ である。捨てた項のうち $1+10\times0.1=2$ を戻すと $2.45$ となり、真の値にかなり近い。評価に使うときは、目的に足りる項だけを残せばよい。

この補題の使いどころは、「$1$ より少し大きい数の $n$ 乗」を下から押さえる場面である。

例 7:$\sqrt[n]{n}$ の極限

$n\ge2$ のとき $\sqrt[n]{n}>1$ なので、$\sqrt[n]{n}=1+h_n$($h_n>0$)と書ける。両辺を $n$ 乗し、lem-sqz-binomial を使うと
$$ n=(1+h_n)^n\ge\frac{n(n-1)}2h_n^2 $$
である。両辺を正の数 $\frac{n(n-1)}{2}$ で割ると $h_n^2\le\frac2{n-1}$、したがって
$$ 0< h_n\le\sqrt{\frac2{n-1}} $$
となる。右端は $0$ に近づくので、thm-sqz-squeeze により $h_n\to0$、すなわち $\displaystyle\lim_{n\to\infty}\sqrt[n]{n}=1$ である。

$n$$\sqrt[n]{n}$$h_n$$\sqrt{2/(n-1)}$
$10$$1.25893$$0.25893$$0.47140$
$100$$1.04713$$0.04713$$0.14213$
$1000$$1.00693$$0.00693$$0.04474$

$h_n$ は右端よりずっと小さい。はさみうちでは、上からの押さえが粗くても、$0$ に近づきさえすれば十分である。

技法 2:隣り合う項の比をとる

項が積の形のときは、隣り合う項の比 $\frac{a_{n+1}}{a_n}$ を調べると評価しやすい。比がある番号から先ずっと $\frac12$ 以下なら、その先は公比 $\frac12$ の等比数列で上から押さえられる。

例 8:$\frac{10^n}{n!}$ の極限

$a_n=\dfrac{10^n}{n!}$ とする。隣り合う項の比は
$$ \frac{a_{n+1}}{a_n}=\frac{10^{n+1}}{(n+1)!}\cdot\frac{n!}{10^n}=\frac{10}{n+1} $$
である。これは $n\le8$ で $1$ より大きく、$n=9$ でちょうど $1$、$n\ge10$ で $1$ より小さい。よって $a_n$ は $a_9=a_{10}=2755.73\ldots$ で最大になり、その後は減る。
$n\ge19$ なら $\frac{10}{n+1}\le\frac12$ である。よって $n\ge20$ のとき、$a_{20}$ から 1 段ずつ比 $\frac12$ 以下を掛けていくと
$$ 0< a_n\le a_{20}\left(\frac12\right)^{n-20} $$
となる。$a_{20}=41.10\ldots$ は定数で、$\left(\frac12\right)^{n-20}\to0$ なので、thm-sqz-squeeze により $a_n\to0$ である。

$n$$10$$20$$25$$30$$40$
$a_n$$2755.7$$41.10$$0.6447$$0.00377$$1.2\times10^{-8}$
上からの押さえ—$41.10$$1.284$$0.0401$$3.9\times10^{-5}$

途中までは増えるが、比が $1$ を下回ってからは急速に $0$ に近づく。

技法 3:和を積分で挟む

$\frac1x$ のような単調な関数の値を足した和は、同じ関数の定積分と比べると挟める。積分は原始関数で計算できるからである。
例として、調和数 $H_n=1+\frac12+\frac13+\cdots+\frac1n$ を考える。

調和数を対数で挟む

正の整数 $n$ について
$$ \log(n+1)\le H_n\le1+\log n $$
が成り立つ。ここで $\log$ は自然対数である。

1 つの区間で比べてから足す

方針:区間 $[k,k+1]$ ごとに $\frac1x$ を定数で上下から押さえ、積分してから $k$ について足す。
段 1(1 つの区間)。正の整数 $k$ と $k\le x\le k+1$ について、$\frac1x$ は減少関数なので $\frac1{k+1}\le\frac1x\le\frac1k$ である。これを $x$ について $k$ から $k+1$ まで積分する。定数の積分は(定数)×(区間の長さ 1)であり、$\int_k^{k+1}\frac{dx}x=\log(k+1)-\log k$ なので
$$ \frac1{k+1}\le\log(k+1)-\log k\le\frac1k $$
を得る。
段 2(下からの押さえ)。段 1 の右側の不等式 $\log(k+1)-\log k\le\frac1k$ を $k=1,2,\ldots,n$ について足す。左辺は隣どうしが打ち消し合って $\log(n+1)-\log1=\log(n+1)$ になり、右辺は $H_n$ になる。よって $\log(n+1)\le H_n$ である。
段 3(上からの押さえ)。$n=1$ のときは $H_1=1=1+\log1$ なので成り立つ(等号)。$n\ge2$ のとき、段 1 の左側の不等式 $\frac1{k+1}\le\log(k+1)-\log k$ を $k=1,2,\ldots,n-1$ について足す。左辺は $\frac12+\cdots+\frac1n=H_n-1$、右辺は打ち消し合って $\log n$ になる。よって $H_n-1\le\log n$ である。$\square$

左は高さ 1/k の長方形が曲線 y=1/x の上にはみ出すこと(和は積分以上)、右は 1 つずらした長方形が曲線の下に収まること(和から 1 を引くと積分以下)を見る図 左は高さ 1/k の長方形が曲線 y=1/x の上にはみ出すこと(和は積分以上)、右は 1 つずらした長方形が曲線の下に収まること(和から 1 を引くと積分以下)を見る図
図2 は $n=6$ の場合に、この証明を面積で描いたものである。左の図では、$k$ 番目の長方形は区間 $[k,k+1]$ の上に立ち、幅 $1$、高さ $\frac1k$ で、面積は $\frac1k$ である。この長方形は、同じ区間で曲線 $y=\frac1x$ の下にある部分(面積 $\log(k+1)-\log k$)を覆っている。これが段 1 の右側の不等式で、$k=1,\ldots,6$ について足したもの(段 2)が図の上の式 $H_6\ge\log7$ である。右の図では、高さ $\frac1k$ の長方形を 1 つ左にずらし、区間 $[k-1,k]$ の上に立てている。こうすると長方形は曲線の下に収まる。これが段 1 の左側の不等式で、$k=2,\ldots,6$ の長方形を足したもの(段 3)が $H_6-1\le\log6$ である。
和と積分の差が収束して Euler の定数が現れることは 和と積分の差 で扱う。

例 9:調和数の値
$n$$\log(n+1)$$H_n$$1+\log n$
$1$$0.6931$$1$$1$
$10$$2.3979$$2.9290$$3.3026$
$100$$4.6151$$5.1874$$5.6052$
$1000$$6.9088$$7.4855$$7.9078$

$n=1$ では右側が等号になる。両端の差は $1+\log n-\log(n+1)<1$ なので、$H_n$ は幅 $1$ 未満の範囲に閉じ込められる。$H_n\to\infty$ であることも左側の押さえから分かる。

同じ方法は、増加関数 $\log x$ にも使える。

例 10:$\log n!$ を挟む

$\log n!=\log1+\log2+\cdots+\log n$ である。$\log x$ は増加関数なので、正の整数 $k$ について、$k-1\le x\le k$ では $\log x\le\log k$、$k\le x\le k+1$ では $\log k\le\log x$ である。それぞれ積分すると
$$ \int_{k-1}^k\log x\,dx\le\log k\le\int_k^{k+1}\log x\,dx $$
(左側は $k\ge2$ で使う)。左側を $k=2,\ldots,n$、右側を $k=1,\ldots,n$ について足す。$\log1=0$ なので、左側を足した $\log2+\cdots+\log n$ は $\log n!$ に等しい。$\int\log x\,dx=x\log x-x$ を使うと
$$ n\log n-n+1\le\log n!\le(n+1)\log(n+1)-n $$
となる。左端は $\int_1^n\log x\,dx=(n\log n-n)-(1\cdot\log1-1)$、右端は $\int_1^{n+1}\log x\,dx=\bigl((n+1)\log(n+1)-(n+1)\bigr)-(0-1)$ である。

$n$左端$\log n!$右端
$5$$4.0472$$4.7875$$5.7506$
$10$$14.0259$$15.1044$$16.3768$
$100$$361.517$$363.739$$366.127$

$n=100$ では $\log n!$ そのものは約 $364$ だが、挟む幅は $5$ 程度にすぎない。

増え方の順序

図 3 は、$\log n$、$n^2$、$2^n$、$n!$、$n^n$ の値を、縦軸を対数目盛にして並べたものである。対数目盛では、$2^n$ は直線になり、$n!$ と $n^n$ はそれより速く反り上がる。
log n、n²、2ⁿ、n!、nⁿ の値を対数目盛で比べ、n が大きくなると右端のラベルの下から順に大きくなることを見る図(log 1 = 0 は対数目盛に描けないので、log n は n = 2 から描いた) log n、n²、2ⁿ、n!、nⁿ の値を対数目盛で比べ、n が大きくなると右端のラベルの下から順に大きくなることを見る図(log 1 = 0 は対数目盛に描けないので、log n は n = 2 から描いた)
ただし、最初のうちは順序が入れ替わることがある。図3 の左端($n\le5$ あたり)では点が重なって見分けにくいので、$n^2$ と $2^n$ の入れ替わりを次の例の表で見る。

例 11:$n^2$ と $2^n$ の比
$n$$1$$2$$3$$4$$5$$10$$20$
$\frac{n^2}{2^n}$$0.5$$1$$1.125$$1$$0.78$$0.098$$0.00038$

$n=3$ では $n^2=9$ が $2^n=8$ より大きい。$n\ge5$ からは $2^n$ のほうが大きくなり、比は急速に $0$ に近づく。「どちらが速く大きくなるか」は、$n$ を大きくしたときの比の極限で決まる。

増え方の順序

$a>1$ を実数、$k$ を正の整数とする。$n\to\infty$ のとき

  1. $\dfrac{n^k}{a^n}\to0$
  2. $\dfrac{a^n}{n!}\to0$
  3. $\dfrac{n!}{n^n}\to0$
  4. $\dfrac{\log n}{n}\to0$
    が成り立つ。
4 つの技法を使い分ける

方針:どれも、$0$ 以上であることと、$0$ に近づく数列で上から押さえられることを示し、thm-sqz-squeeze を使う(下から押さえる数列は定数 $0$)。
段 1($\frac{n^k}{a^n}$。技法 1)。$h=a-1>0$ とおく。$n\ge2k$ とする。このとき $n\ge k+1$ なので、lem-sqz-binomial を $k+1$ 番目の項に使って
$$ a^n=(1+h)^n\ge\binom n{k+1}h^{k+1}=\frac{n(n-1)\cdots(n-k)}{(k+1)!}h^{k+1} $$
である。分子の $k+1$ 個の因数 $n-j$($0\le j\le k$)はどれも $n-k$ 以上で、$n\ge2k$ から $n-k\ge\frac n2$ である。よって $n(n-1)\cdots(n-k)\ge\left(\frac n2\right)^{k+1}$ であり、
$$ 0<\frac{n^k}{a^n}\le\frac{n^k\,(k+1)!}{\left(\frac n2\right)^{k+1}h^{k+1}}=\frac{2^{k+1}(k+1)!}{h^{k+1}}\cdot\frac1n $$
となる。右端は定数と $\frac1n$ の積なので $0$ に近づく。
段 2($\frac{a^n}{n!}$。技法 2)。$2a$ 以上の整数 $m$ を 1 つとる。$n\ge m$ なら、比は $\frac{a^{n+1}/(n+1)!}{a^n/n!}=\frac a{n+1}\le\frac a{2a}=\frac12$ である。よって $n\ge m$ で
$$ 0<\frac{a^n}{n!}\le\frac{a^m}{m!}\left(\frac12\right)^{n-m} $$
であり、右端は $0$ に近づく。
段 3($\frac{n!}{n^n}$。積をばらす)。
$$ \frac{n!}{n^n}=\frac1n\cdot\frac2n\cdots\frac nn $$
である。2 番目以降の因数はどれも $1$ 以下で正なので、積は最初の因数 $\frac1n$ 以下である。よって $0<\frac{n!}{n^n}\le\frac1n$ で、右端は $0$ に近づく。
段 4($\frac{\log n}n$。$\sqrt[n]n$ に帰着)。まず、$x\ge0$ で $\log(1+x)\le x$ を示す。$g(x)=x-\log(1+x)$ とおくと $g(0)=0$、$g'(x)=1-\frac1{1+x}=\frac x{1+x}\ge0$ なので、$g$ は $x\ge0$ で増加し $g(x)\ge0$ である。次に、$n\ge2$ で ex-sqz-nth-root の $h_n$ を使うと、$\frac{\log n}n=\log\sqrt[n]n=\log(1+h_n)$ なので
$$ 0<\frac{\log n}{n}=\log(1+h_n)\le h_n\le\sqrt{\frac2{n-1}} $$
となる。右端は $0$ に近づく。$\square$

例 12:段 1 の押さえを数値で見る

$k=2$、$a=2$($h=1$)とすると、段 1 の押さえは $n\ge4$ で $\frac{n^2}{2^n}\le\frac{2^3\cdot3!}{1}\cdot\frac1n=\frac{48}n$ である。$n=20$ では真の値 $0.00038$ に対して押さえは $2.4$、$n=30$ では $8.4\times10^{-7}$ に対して $1.6$ である。押さえは非常に粗いが、$0$ に近づくという結論には十分である。

thm-sqz-growth は、$n$ を大きくしたときの増え方が
$$ \log n\ \ll\ n^k\ \ll\ a^n\ \ll\ n!\ \ll\ n^n $$
の順であることを表す($\ll$ は「比が $0$ に近づく」の意味の略記。$\log n\ll n^k$ は 4 から従う。ex-sqz-asymptotic-restate で確かめる)。この順序は、計算機で手順にかかる時間を見積もるときにも基本になる(GKP94 Chapter 9)。

漸近記法:大きさを比で比べる

評価の結果を短く書くために、大学では次の記号を使う。どれも「$n$ を大きくしたときの比のふるまい」で定める。

漸近記法 $O$・$o$・$\sim$

$(a_n)$、$(b_n)$ を実数の数列とし、ある番号から先で $b_n\ne0$ とする(比 $\frac{a_n}{b_n}$ を考えるため)。

  1. ある正の定数 $C$ と番号 $N$ があって、$n\ge N$ のすべての $n$ で $|a_n|\le C|b_n|$ となるとき、$a_n=O(b_n)$ と書き、「$a_n$ は高々 $b_n$ の程度」と読む。
  2. $\dfrac{a_n}{b_n}\to0$ のとき、$a_n=o(b_n)$ と書き、「$a_n$ は $b_n$ より小さい程度」と読む。
  3. $\dfrac{a_n}{b_n}\to1$ のとき、$a_n\sim b_n$ と書き、「$a_n$ と $b_n$ は漸近的に等しい」と読む。
    $O$ と $o$ を Landau の記号という。

$a_n=O(b_n)$ の「$=$」は等式ではなく、「$a_n$ は $O(b_n)$ という性質をもつ」という意味の約束である。

例 13:3 つの記号を 1 つの式で

$a_n=3n^2+5n$ とする。

  • $a_n=O(n^2)$:$n\ge1$ なら $5n\le5n^2$ なので $|a_n|\le3n^2+5n^2=8n^2$ である。$C=8$、$N=1$ とすればよい。
  • $5n=o(n^2)$:$\frac{5n}{n^2}=\frac5n\to0$ である。
  • $a_n\sim3n^2$:$\frac{a_n}{3n^2}=1+\frac5{3n}\to1$ である。
    $n$$10$$100$$1000$
    $\frac{a_n}{3n^2}$$1.1667$$1.01667$$1.001667$
    $\frac{5n}{n^2}$$0.5$$0.05$$0.005$
例 14:これまでの結果を記号で書く
  • ex-sqz-sin-over-n:$|\sin n|\le1$ なので $\sin n=O(1)$、$\frac{\sin n}n=O\!\left(\frac1n\right)$ である。
  • thm-sqz-growth:$n^k=o(a^n)$($a>1$)、$a^n=o(n!)$、$n!=o(n^n)$、$\log n=o(n)$ である。
  • $\log n=o(n^k)$($k$ は正の整数):$n\ge1$ で $n^k\ge n$ なので $0\le\frac{\log n}{n^k}\le\frac{\log n}n$ である。右端は thm-sqz-growth の 4 により $0$ に近づくので、thm-sqz-squeeze により $\frac{\log n}{n^k}\to0$ である。
  • ex-sqz-nth-root:$\sqrt[n]n-1=O\!\left(\frac1{\sqrt n}\right)$ である。実際、$n\ge2$ で $n-1\ge\frac n2$ なので $h_n\le\sqrt{\frac2{n-1}}\le\frac2{\sqrt n}$ である。

$\sim$ は、掛け算・割り算とは相性がよい。

漸近的に等しい数列の性質

以下、現れる数列 $a_n$、$b_n$、$c_n$、$d_n$ はどれも、ある番号から先で $0$ にならないとする(def-sqz-asymptotic の条件で、割り算ができるようにするため)。

  1. $a_n\sim b_n$ であることと、$\dfrac{a_n-b_n}{b_n}\to0$(すなわち $a_n-b_n=o(b_n)$ の形)とは同値である。
  2. $a_n\sim b_n$ かつ $c_n\sim d_n$ ならば、$a_nc_n\sim b_nd_n$ かつ $\dfrac{a_n}{c_n}\sim\dfrac{b_n}{d_n}$ である。
  3. $a_n\sim b_n$ かつ $b_n\sim c_n$ ならば、$a_n\sim c_n$ である。
比に直して極限の性質を使う

収束する 2 つの数列の和・積・商(分母の極限が $0$ でないとき)はそれぞれの極限の和・積・商に収束する、という高校で使う極限の性質を用いる(Leb26 Proposition 2.2.5、p. 63。本記事では証明しない)。
1 について。$\frac{a_n-b_n}{b_n}=\frac{a_n}{b_n}-1$ である。右辺が $0$ に近づくことと、$\frac{a_n}{b_n}$ が $1$ に近づくことは同じである。
2 について。$\frac{a_nc_n}{b_nd_n}=\frac{a_n}{b_n}\cdot\frac{c_n}{d_n}$ で、右辺の 2 つの因数はどちらも $1$ に近づくので、積は $1\cdot1=1$ に近づく。商は $\frac{a_n/c_n}{b_n/d_n}=\frac{a_n/b_n}{c_n/d_n}$ で、分子・分母とも $1$ に近づくので、商は $1$ に近づく。
3 について。$\frac{a_n}{c_n}=\frac{a_n}{b_n}\cdot\frac{b_n}{c_n}$ で、2 と同じく $1$ に近づく。$\square$

例 15:掛け算・割り算の中で ∼ を使う

$x_n=\dfrac{(n+1)(2n-1)}{n+3}$ の大きさを調べる。3 つの因数をそれぞれ比で見ると
$$ \frac{n+1}{n}=1+\frac1n\to1,\qquad\frac{2n-1}{2n}=1-\frac1{2n}\to1,\qquad\frac{n+3}{n}=1+\frac3n\to1 $$
なので、$n+1\sim n$、$2n-1\sim2n$、$n+3\sim n$ である。prop-sqz-asymptotic-rules の 2 を、まず積 $(n+1)(2n-1)\sim n\cdot2n$ に、次に商に使うと
$$ x_n\sim\frac{n\cdot2n}{n}=2n $$
となる。$n=10$ なら手で計算できて、$x_{10}=\frac{11\cdot19}{13}=\frac{209}{13}=16.077\ldots$、$2n=20$ で、比は $0.8038\ldots$ である。

$n$$10$$100$$1000$
$x_n$$16.077$$195.136$$1995.014$
$2n$$20$$200$$2000$
$\frac{x_n}{2n}$$0.8038$$0.9757$$0.9975$

比は $1$ に近づく。差 $x_n-2n$ は $-3.92$、$-4.86$、$-4.99$ で、$0$ には近づかない(差については ex-sqz-asymp-difference で見る)。

技法 3 の評価を $\sim$ で言い直すと、次のようになる。

調和数と階乗の対数の大きさ

$n\to\infty$ のとき、$H_n\sim\log n$ かつ $\log n!\sim n\log n$ である。

挟んだ式を割ってはさみうち

段 1($H_n$)。$n\ge2$ とすると $\log n>0$ である。prop-sqz-harmonic の不等式を $\log n$ で割り、左端に $\log(n+1)>\log n$ を使うと
$$ 1<\frac{H_n}{\log n}\le1+\frac1{\log n} $$
となる。$\log n\to\infty$ なので右端は $1$ に近づく。左端は定数 $1$ である。thm-sqz-squeeze により $\frac{H_n}{\log n}\to1$ である。
段 2($\log n!$ の下側)。ex-sqz-log-factorial の左端を $n\log n$ で割ると
$$ \frac{n\log n-n+1}{n\log n}=1-\frac1{\log n}+\frac1{n\log n} $$
で、これは $1$ に近づく。
段 3($\log n!$ の上側)。thm-sqz-growth の証明の段 4 で示した $\log(1+x)\le x$ を $x=\frac1n$ に使うと、$\log(n+1)=\log n+\log\left(1+\frac1n\right)\le\log n+\frac1n$ である。よって
$$ (n+1)\log(n+1)-n\le(n+1)\left(\log n+\frac1n\right)-n=n\log n+\log n+\frac1n+1-n $$
である。これを $n\log n$ で割ると $1+\frac1n+\frac1{n^2\log n}+\frac1{n\log n}-\frac1{\log n}$ となり、$1$ に近づく。
段 4(まとめ)。段 2・段 3 により、$\frac{\log n!}{n\log n}$ は $1$ に近づく 2 つの数列で挟まれる。thm-sqz-squeeze により $\frac{\log n!}{n\log n}\to1$ である。$\square$

階乗のより正確な大きさ(Stirling の公式)は 階乗の大きさの見積もり で扱う。

例 16:比が 1 に近づく速さ
$n$$10$$100$$1000$
$\frac{H_n}{\log n}$$1.2720$$1.1264$$1.0836$
$H_n-\log n$$0.6264$$0.5822$$0.5777$
$\frac{\log n!}{n\log n}$$0.6560$$0.7899$$0.8559$

比 $\frac{H_n}{\log n}$ は $1$ にゆっくりとしか近づかない。$\frac{\log n!}{n\log n}$ はさらに遅く、$n=1000$ でもまだ $0.86$ 程度である。一方、差 $H_n-\log n$ はほぼ一定の値 $0.577\ldots$ に落ち着いていく。$\sim$ は比についての主張であり、差については何も言わない(ex-sqz-asymp-difference)。

例と反例

はさみうちと漸近記法を使うときに外してはいけない条件を、反例で確かめる。表の最後の行だけは、仮定を外す反例ではなく、よくある誤った主張の反例である。

外した仮定崩れる主張ボックス
両側の極限が等しい真ん中の数列の極限が決まるex-sqz-different-limits
不等式が「ある番号から先のすべての $n$」で成り立つ同上ex-sqz-infinitely-often
足す項の個数が一定各項の極限を足したものが和の極限ex-sqz-many-terms
比を考える(差ではない)$a_n\sim b_n$ なら差が $0$ に近づくex-sqz-asymp-difference
掛け算・割り算だけ$\sim$ を足し算・指数の肩でも使えるex-sqz-asymp-sum
(仮定ではなく主張の形の誤り)$a_n< b_n$ なら $\lim a_n<\lim b_n$ex-sqz-strict
反例:両側の極限が違う

$b_n=(-1)^n$ は $-1\le b_n\le1$ を満たすが、両側の極限 $-1$ と $1$ は等しくない。この場合 thm-sqz-squeeze は何も言わない。実際 $b_n$ は $-1$ と $1$ を交互にとり、収束しない。同じ不等式 $-1\le0\le1$ を満たす定数列 $0$ は収束するので、この挟み方からは収束するかどうかすら分からない。

反例:不等式が一部の番号でしか成り立たない

$n$ が偶数なら $b_n=\frac1n$、奇数なら $b_n=1$ とする。$a_n=0$、$c_n=\frac1n$ はどちらも $0$ に収束し、偶数の $n$ では $a_n\le b_n\le c_n$ が成り立つ。偶数は無限にあるが、奇数の $n\ge3$ では $b_n=1>\frac1n=c_n$ となって不等式が破れる。$b_n$ は奇数番目が常に $1$、偶数番目が $0$ に近づくので収束しない。thm-sqz-squeeze の証明の段 4 は、$n\ge N$ のすべての $n$ で挟めることを使っている。

反例:項の個数が増える和

$T_n=\underbrace{\frac1n+\frac1n+\cdots+\frac1n}_{n\text{ 個}}$ を考える。各項 $\frac1n$ は $0$ に近づくが、$T_n=1$ なので極限は $1$ である。「各項の極限 $0$ を $n$ 個足して $0$」とするのは誤りである。極限の和の法則は、足す項の個数が一定のときにしか使えない。
もう 1 つ、$U_n=\frac1{n^2}+\frac2{n^2}+\cdots+\frac n{n^2}=\frac{n(n+1)}{2n^2}=\frac{n+1}{2n}$ は $\frac12$ に近づく。ここでも各項は $0$ に近づくが、和の極限は $0$ ではない。$U_n$ は和の公式で 1 つの式にまとめられたので極限が分かった。まとめられないときは、ex-sqz-sum-sqrt のように全体を不等式で挟む。

反例:漸近的に等しくても差は大きくなりうる

$a_n=n^2+n$、$b_n=n^2$ とすると $\frac{a_n}{b_n}=1+\frac1n\to1$ なので $a_n\sim b_n$ である。しかし差 $a_n-b_n=n$ は $0$ に近づかず、限りなく大きくなる。
同様に cor-sqz-harmonic-asymp の $\log n!\sim n\log n$ でも、差 $\log n!-n\log n$ は $n=100$ で約 $-96.8$ であり、$n$ とともに負の側に大きくなる。実際、ex-sqz-log-factorial の左端から $\log n!-n\log n\ge1-n$、右端と prf-cor-sqz-harmonic-asymp の段 3 の計算から $\log n!-n\log n\le\log n+\frac1n+1-n$ で、両端とも $-n$ 程度である。

反例:∼ は足し算や指数の肩では使えない

$a_n=n+1$、$b_n=n+2$ とすると $a_n\sim b_n$ である。$c_n=d_n=-n$ とすると、もちろん $c_n\sim d_n$ である。ところが $a_n+c_n=1$、$b_n+d_n=2$ で、比は $\frac12$ のままであり $a_n+c_n\sim b_n+d_n$ ではない。大きな部分が打ち消し合うと、残った小さな部分の比は $1$ とは限らない。
また、$n+1\sim n$ だが $\frac{e^{n+1}}{e^n}=e$ なので $e^{n+1}\sim e^n$ ではない。指数の肩に載せると、差(ここでは $1$)が比として効いてくる。

反例:極限をとると不等号に等号がつく

よくある誤った主張「すべての $n$ で $a_n< b_n$ なら $\lim a_n<\lim b_n$」の反例を挙げる。$a_n=0$、$b_n=\frac1n$ とすると、すべての $n$ で $0<\frac1n$ だが、極限はどちらも $0$ で、$0<0$ は成り立たない。
収束する 2 つの数列について言えるのは、「すべての $n$ で $a_n\le b_n$ なら $\lim a_n\le\lim b_n$」までである(極限は等号つきの不等式を保つ。Leb26 Lemma 2.2.3、p. 62。本記事では証明しない)。$a_n< b_n$ なら特に $a_n\le b_n$ なので、この場合も結論は $\lim a_n\le\lim b_n$ で、$<$ にはならない。
はさみうちの原理の仮定は $\le$ で書いてあるので、$a_n< b_n< c_n$ のように狭い意味の不等式で挟めた場合もそのまま使える。一方、結論の極限について $<$ を主張することはできない。

さらに先へ

  • 関数の極限。はさみうちの原理は、$x\to a$ の関数の極限でも同じ形で成り立ち、証明も同じである。たとえば $|x\sin\frac1x|\le|x|$ から $\lim_{x\to0}x\sin\frac1x=0$ が従う。$\varepsilon$-$\delta$ による定義は 極限とε-δ で扱う。
  • 定数項まで見る。ex-sqz-slow の差 $H_n-\log n$ は減少して $0.5772\ldots$(Euler の定数 $\gamma$)に収束し、$H_n=\log n+\gamma+O\!\left(\frac1n\right)$ が成り立つ(本記事では証明しない。GKP94 Chapter 9)。$\log n!$ についても、さらに精密な $n!\sim\sqrt{2\pi n}\left(\frac ne\right)^n$ が成り立つ。これは Stirlingの公式 で扱う。
  • 収束しない数列の評価。極限がないときでも、「ある番号から先の項の上限・下限」の極限(上極限・下極限)を使うと、数列の上下の振れ幅を評価できる(上極限と下極限)。

関連項目

参考文献

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