根軸と根心(radical axis and radical center)とは、中心が異なる 2 円に関する方べきが等しい点の集合(根軸)と、3 つの円に関する方べきがすべて等しい点(根心)である。根軸は中心を結ぶ直線に垂直な 1 本の直線である。円の方程式を $x^2+y^2$ の係数が 1 の形 $f_1=0$、$f_2=0$ に書けば、根軸は $f_1-f_2=0$ である。2 円が交われば共通弦の延長、接すれば共通接線、交わらなければ 2 円への接線の長さが等しい点の集まりである。中心が一直線上にない 3 円では 3 本の根軸が 1 点(根心)で交わる。中心が一直線上なら 3 本の根軸は互いに平行か一致し、根心は定まらない。$(1-t)f_1+tf_2=0$ の形の円の全体(円の束)はどの 2 円も同じ根軸をもち、根心の有無は係数の $3\times3$ 行列式で判定できる。
前提知識: 方べきの定理(高校数学), 円の方程式, 円と直線の位置関係
2 つの円の交点を求めるとき、教科書では 2 つの方程式を引き算して 2 次の項 $x^2+y^2$ を消す。残った 1 次式は直線を表し、その直線と一方の円を連立すると交点が求まる。この記事の主役は、この「引き算して残った直線」である。2 つの円が交わらないときにも、引き算はできて、直線が残る。その直線は何を表しているのだろうか。
円 $\Gamma_1:\ x^2+y^2-10=0$(中心 $(0,0)$、半径 $\sqrt{10}$)と、円 $\Gamma_2:\ (x-4)^2+(y-2)^2=10$、展開して $x^2+y^2-8x-4y+10=0$(中心 $(4,2)$、半径 $\sqrt{10}$)を考える。
引き算すると
$$
(x^2+y^2-10)-(x^2+y^2-8x-4y+10)=8x+4y-20
$$
なので、直線 $8x+4y-20=0$、つまり $2x+y=5$ が残る。$y=5-2x$ を $\Gamma_1$ に入れると $x^2+(5-2x)^2=10$、$5x^2-20x+15=0$、$x^2-4x+3=0$ で、$x=1,3$ である。交点は $(1,3)$ と $(3,-1)$ で、どちらも $\Gamma_2$ の式を満たす($(1-4)^2+(3-2)^2=10$、$(3-4)^2+(-1-2)^2=10$)。直線 $2x+y=5$ は 2 つの交点を通る直線、つまり共通弦を延ばした直線である。
円 $\Gamma_1:\ x^2+y^2-4=0$(中心 $(0,0)$、半径 $2$)と、円 $\Gamma_2:\ (x-6)^2+y^2=1$、展開して $x^2+y^2-12x+35=0$(中心 $(6,0)$、半径 $1$)を考える。中心間の距離 $6$ は半径の和 $3$ より大きいので、2 円は交わらない。
それでも引き算はできて、$(x^2+y^2-4)-(x^2+y^2-12x+35)=12x-39$ なので、直線 $x=\dfrac{13}4$ が残る。この直線の上の点 $Q\left(\dfrac{13}4,2\right)$ から 2 つの円に接線を引く。接線の長さの 2 乗は「中心までの距離の 2 乗 $-$ 半径の 2 乗」なので(方べきの定理(高校数学))
$$
\left(\frac{13}4\right)^2+2^2-2^2=\frac{169}{16},\qquad \left(\frac{13}4-6\right)^2+2^2-1^2=\frac{121}{16}+\frac{48}{16}=\frac{169}{16}
$$
で、どちらの接線の長さも $\dfrac{13}4$ である。直線 $x=\dfrac{13}4$ の上のどの点 $\left(\dfrac{13}4,t\right)$ でも、同じ計算で 2 つの値はどちらも $t^2+\dfrac{105}{16}$ になる。
左は交わる 2 円と、共通弦を延ばした直線 2x + y = 5。右は交わらない 2 円と直線 x = 13/4。この直線上の点 Q から 2 円に引いた接線の長さは等しい
2 つの例で残った直線は、どちらも「2 つの円に対する方べきが等しい点」の集まりになっている。この記事で答える問いは次の 4 つである。
| 高校の計算 | この記事の言葉 | 大学の言葉 |
|---|---|---|
| 2 円の方程式を引き算して 1 次式 | 根軸 | 2 次の部分が共通なので差は 1 次式 |
| 共通弦・共通接線・接線の長さが等しい点 | 根軸の意味 | 方べきの等位集合 |
| 3 本の共通弦が 1 点で交わる | 根心 | 連立 1 次方程式の解 |
| $f_1+kf_2=0$ で 2 円の交点を通る円 | 円の束 | 係数ベクトルの 1 次結合 |
| 3 つの中心が一直線上だと根心がない | 根心がない場合 | 係数の $3\times3$ 行列式が $0$ |
中心 $O$、半径 $r$ の円 $\Gamma$ と点 $P$ について、$\operatorname{pow}_\Gamma(P):=OP^2-r^2$ を、$P$ の $\Gamma$ に関する 方べき という。円の方程式を $x^2+y^2+Dx+Ey+F=0$ の形($x^2$、$y^2$ の係数が $1$)に書き、左辺を $f(x,y)$ とすると、$P=(p,q)$ の方べきは $f(p,q)$ に等しい。
方べきが $f(p,q)$ に等しいのは、中心 $(a,b)$ の円では $f(x,y)=(x-a)^2+(y-b)^2-r^2$ と平方完成できるからである(証明は 方べきの定理(高校数学))。方べきは $P$ が円の内部なら負、円周上なら $0$、外部なら正で、外部の点から引いた接線の長さを $t$ とすると $\operatorname{pow}_\Gamma(P)=t^2$ である(三平方の定理 $OP^2=r^2+t^2$)。
ex-rad-start の $\Gamma_1:\ f_1=x^2+y^2-10$、$\Gamma_2:\ f_2=x^2+y^2-8x-4y+10$ で、原点 $(0,0)$ の方べきは $f_1(0,0)=-10$、$f_2(0,0)=10$ である。原点は $\Gamma_1$ の中心(内部)にあり、$\Gamma_2$ の外部にある。$\Gamma_2$ への接線の長さは $\sqrt{10}$ である。点 $(2,1)$ では $f_1(2,1)=-5$、$f_2(2,1)=4+1-16-4+10=-5$ で、2 つの方べきは等しい。実際 $(2,1)$ は直線 $2x+y=5$ の上にある。
中心が異なる 2 つの円 $\Gamma_1$(中心 $O_1$、半径 $r_1$)、$\Gamma_2$(中心 $O_2$、半径 $r_2$)について、$\operatorname{pow}_{\Gamma_1}(P)=\operatorname{pow}_{\Gamma_2}(P)$ を満たす点 $P$ の全体は、直線 $O_1O_2$ に垂直な 1 本の直線である。この直線は、$d=O_1O_2$ として、直線 $O_1O_2$ と点 $H$ で交わる。ここで $H$ は直線 $O_1O_2$ の上の点で、$O_1$ から $O_2$ の向きに測った符号つきの距離が
$$
x_0=\frac{d^2+r_1^2-r_2^2}{2d}
$$
の点である($x_0<0$ なら $O_2$ と反対の向きに $|x_0|$ 進んだ点)。この直線を 2 円の 根軸 という。
方針:$O_1$ を原点、$O_2$ を $x$ 軸の正の部分にとる座標で、方べきの差を計算する。$x^2+y^2$ が消えて $x$ の 1 次式が残る。
段 1(座標)。座標を $O_1=(0,0)$、$O_2=(d,0)$($d>0$)となるようにとる。点 $P=(x,y)$ の方べきは
$$
\operatorname{pow}_{\Gamma_1}(P)=x^2+y^2-r_1^2,\qquad \operatorname{pow}_{\Gamma_2}(P)=(x-d)^2+y^2-r_2^2=x^2-2dx+d^2+y^2-r_2^2
$$
である。
段 2(差をとる)。2 つの方べきが等しいという式から、両辺の $x^2+y^2$ を引くと
$$
-r_1^2=-2dx+d^2-r_2^2
$$
となる。整理すると $2dx=d^2+r_1^2-r_2^2$ で、$d>0$ なので $x=\dfrac{d^2+r_1^2-r_2^2}{2d}=x_0$ である。
段 3(直線)。段 2 の変形はどれも同値な変形なので、2 つの方べきが等しい点 $P=(x,y)$ の全体は、$y$ が何でもよく $x=x_0$ である点の全体、つまり直線 $x=x_0$ である。これは $x$ 軸(直線 $O_1O_2$)に垂直で、$x$ 軸と $(x_0,0)$ で交わる。$\square$
2 つの円の方程式が $f_1=x^2+y^2+D_1x+E_1y+F_1$、$f_2=x^2+y^2+D_2x+E_2y+F_2$ の形で与えられていれば、根軸はそのまま $f_1-f_2=0$、つまり
$$
(D_1-D_2)x+(E_1-E_2)y+(F_1-F_2)=0
$$
である(def-rad-power により方べきは $f_1$、$f_2$ の値だから)。同じ証明は 方べきの定理(高校数学) にもある。
中心が異なる 2 円 $\Gamma_1$、$\Gamma_2$ の根軸を $\ell$ とする。
方針:円周上の点の方べきは $0$、外部の点の方べきは接線の長さの 2 乗であることを使う。
段 1(交わるとき)。交点 $X$ は両方の円の上にあるので、$\operatorname{pow}_{\Gamma_1}(X)=0=\operatorname{pow}_{\Gamma_2}(X)$ であり、$X$ は根軸の上にある。2 つの交点が根軸の上にあり、異なる 2 点を通る直線はただ 1 つなので、根軸は 2 つの交点を通る直線である。
段 2(接するとき)。接点 $T$ は両方の円の上にあるので、段 1 と同じく $T$ は根軸の上にある。接する 2 円の接点は中心を結ぶ直線 $O_1O_2$ の上にあり(2円の位置関係と共通接線)、根軸は $O_1O_2$ に垂直である(thm-rad-axis)。$T$ を通り $O_1T$ に垂直な直線は $\Gamma_1$ の $T$ における接線であり、$O_2T$ に垂直な直線は $\Gamma_2$ の $T$ における接線である。$O_1$、$T$、$O_2$ は一直線上にあるので、どちらも根軸と一致する。
段 3(接線の長さ)。$P$ が $\Gamma_1$ の外部にあるとき、$P$ から $\Gamma_1$ に引いた接線の長さを $t_1$ とすると $t_1^2=\operatorname{pow}_{\Gamma_1}(P)$ である。同じように $t_2^2=\operatorname{pow}_{\Gamma_2}(P)$ である。$P$ は根軸の上にあるので $t_1^2=t_2^2$ で、$t_1,t_2>0$ より $t_1=t_2$ である。$\square$
3 の逆も成り立つ。2 つの円の外部にあって、2 円に引いた接線の長さが等しい点は、方べきが等しいので根軸の上にある。したがって、交わらない 2 円の根軸は「2 円に引いた接線の長さが等しい点の集まり」と言い換えられる。ex-rad-start-disjoint の点 $Q$ はその例である。
2 つの円に共通な接線が、$\Gamma_1$ と $T_1$ で、$\Gamma_2$ と $T_2$ で接するとする。線分 $T_1T_2$ の中点 $M$ は直線 $T_1T_2$ の上にあるので、$MT_1$ は $M$ から $\Gamma_1$ に引いた接線の長さ、$MT_2$ は $\Gamma_2$ に引いた接線の長さである。$MT_1=MT_2$ なので、prop-rad-meaning 3 の逆により $M$ は根軸の上にある。つまり、根軸は共通接線の線分を 2 等分する。
数値で確かめる。$\Gamma_1:\ x^2+y^2=49$(中心 $(0,0)$、半径 $7$)と $\Gamma_2:\ (x-13)^2+y^2=4$(中心 $(13,0)$、半径 $2$)では、根軸は $x=\dfrac{169+49-4}{26}=\dfrac{214}{26}=\dfrac{107}{13}$ である。単位ベクトル $\boldsymbol n=\left(\dfrac5{13},\dfrac{12}{13}\right)$ について、直線 $\boldsymbol n\cdot(x,y)=7$ は $\Gamma_1$ に $T_1=7\boldsymbol n=\left(\dfrac{35}{13},\dfrac{84}{13}\right)$ で接し、$\boldsymbol n\cdot(13,0)=5=7-2$ なので $\Gamma_2$ の中心からの距離が $2$ で、$\Gamma_2$ にも $T_2=(13,0)+2\boldsymbol n=\left(\dfrac{179}{13},\dfrac{24}{13}\right)$ で接する。中点は $\left(\dfrac{107}{13},\dfrac{54}{13}\right)$ で、確かに根軸 $x=\dfrac{107}{13}$ の上にある。$T_1T_2$ の長さは $\sqrt{13^2-(7-2)^2}=12$ である。
円が 3 つあると、2 つずつの組は 3 組あり、根軸が 3 本できる。
3 つの円 $\Gamma_1$、$\Gamma_2$、$\Gamma_3$ の中心 $O_1$、$O_2$、$O_3$ が一直線上にないとする。このとき、$\Gamma_1$ と $\Gamma_2$、$\Gamma_2$ と $\Gamma_3$、$\Gamma_3$ と $\Gamma_1$ の 3 本の根軸は 1 点で交わる。この点を 3 円の 根心 という。根心は、3 つの円に関する方べきがすべて等しい、ただ 1 つの点である。
方針:2 本の根軸の交点 $P$ では、3 つの方べきのうち 2 組が等しい。等しさはつながるので、3 本目の根軸にも乗る。
段 1(2 本は交わる)。$\Gamma_1$ と $\Gamma_2$ の根軸 $\ell_{12}$ は直線 $O_1O_2$ に垂直で、$\Gamma_1$ と $\Gamma_3$ の根軸 $\ell_{13}$ は直線 $O_1O_3$ に垂直である(thm-rad-axis。中心は互いに異なる)。$O_1$、$O_2$、$O_3$ は一直線上にないので、直線 $O_1O_2$ と $O_1O_3$ は平行でない。それぞれに垂直な $\ell_{12}$ と $\ell_{13}$ も平行でなく、ただ 1 点 $P$ で交わる。
段 2(3 本目に乗る)。$P$ は $\ell_{12}$ の上にあるので $\operatorname{pow}_{\Gamma_1}(P)=\operatorname{pow}_{\Gamma_2}(P)$、$\ell_{13}$ の上にあるので $\operatorname{pow}_{\Gamma_1}(P)=\operatorname{pow}_{\Gamma_3}(P)$ である。2 つを合わせて $\operatorname{pow}_{\Gamma_2}(P)=\operatorname{pow}_{\Gamma_3}(P)$ で、$P$ は $\Gamma_2$ と $\Gamma_3$ の根軸 $\ell_{23}$ の上にもある。
段 3(ただ 1 つ)。3 つの方べきがすべて等しい点は $\ell_{12}$ と $\ell_{13}$ の両方の上にあるので、段 1 の交点 $P$ に限る。$\square$
ex-rad-start の $\Gamma_1:\ f_1=x^2+y^2-10$、$\Gamma_2:\ f_2=x^2+y^2-8x-4y+10$ に、$\Gamma_3:\ x^2+(y-5)^2=9$、つまり $f_3=x^2+y^2-10y+16$ を加える。中心は $(0,0)$、$(4,2)$、$(0,5)$ で、一直線上にない。
根軸は $f_1-f_2=8x+4y-20=0$、$f_1-f_3=10y-26=0$、$f_2-f_3=-8x+6y-6=0$ である。2 本目から $y=\dfrac{13}5$、1 本目に入れて $2x=5-\dfrac{13}5=\dfrac{12}5$、$x=\dfrac65$ である。3 本目に入れると $-\dfrac{48}5+\dfrac{78}5-6=0$ で、確かに乗っている。根心は $P\left(\dfrac65,\dfrac{13}5\right)$ で、3 つの方べきは $f_1(P)=\dfrac{36}{25}+\dfrac{169}{25}-10=\dfrac{205-250}{25}=-\dfrac95$ などとなり、すべて $-\dfrac95$ である。方べきが負なので、$P$ は 3 つの円すべての内部にある。
3 つの円は 2 つずつ交わり、共通弦は $\Gamma_1$ と $\Gamma_2$ で $(1,3)$ と $(3,-1)$、$\Gamma_1$ と $\Gamma_3$ で $\left(\pm\dfrac95,\dfrac{13}5\right)$、$\Gamma_2$ と $\Gamma_3$ で $\left(\dfrac{21}{25},\dfrac{53}{25}\right)$ と $(3,5)$ を結ぶ線分である。3 本の共通弦は根心 $P$ で交わる(図 2)。
3 つの円の 2 つずつの共通弦(根軸)は、根心 P(6/5, 13/5) で交わる
3 つの円が 2 つずつ 2 点で交わり、中心が一直線上にないならば、3 本の共通弦を延ばした直線は 1 点で交わる。
prop-rad-meaning 1 により、共通弦を延ばした直線は根軸である。thm-rad-center により 3 本の根軸は 1 点で交わる。$\square$
三角形 $ABC$ の 3 辺 $BC$、$CA$、$AB$ を直径とする 3 つの円を考える。中心は 3 辺の中点で、一直線上にない。$A$ から直線 $BC$ に下ろした垂線の足を $D$ とすると、$D\ne B$ なら $\angle ADB=90^\circ$ なので $D$ は $AB$ を直径とする円の上にあり(直径に対する円周角。$D=B$ なら $D$ は直径の端点)、同じように $D$ は $CA$ を直径とする円の上にもある。$A$ も両方の円の上にあり、$A\ne D$ なので、2 つの円は $A$ と $D$ で交わり、その根軸は直線 $AD$、つまり $A$ から下ろした垂線である(prop-rad-meaning 1)。$B$、$C$ から下ろした垂線も同じように根軸になる。thm-rad-center により 3 本の垂線は根心で交わり、根心は三角形の垂心 $H$ である(三角形の垂心)。$B$、$C$ から下ろした垂線の足を $E$、$F$ とすると、$H$ の 3 つの方べきが等しいことから $\overrightarrow{HA}\cdot\overrightarrow{HD}=\overrightarrow{HB}\cdot\overrightarrow{HE}=\overrightarrow{HC}\cdot\overrightarrow{HF}$ も分かる(方べきの定理(高校数学))。
数値で確かめる。$A(1,4)$、$B(0,0)$、$C(5,0)$ とする。$XY$ を直径とする円は $(x-x_X)(x-x_Y)+(y-y_X)(y-y_Y)=0$ なので、3 つの円は
$$
f_{BC}=x^2+y^2-5x,\qquad f_{CA}=x^2+y^2-6x-4y+5,\qquad f_{AB}=x^2+y^2-x-4y
$$
である。根軸は $f_{CA}-f_{AB}=-5x+5=0$ から $x=1$、$f_{BC}-f_{AB}=-4x+4y=0$ から $y=x$、$f_{BC}-f_{CA}=x+4y-5=0$ である。$x=1$ は $A$ を通り $BC$($x$ 軸)に垂直、$y=x$ は $B$ を通り $\overrightarrow{AC}=(4,-4)$ に垂直、$x+4y=5$ は $C$ を通り $\overrightarrow{AB}=(-1,-4)$ に垂直で、どれも垂線である。3 本は $H(1,1)$ で交わり、$f_{BC}(1,1)=f_{CA}(1,1)=f_{AB}(1,1)=-3$ である。垂線の足は $D(1,0)$、$E\left(\dfrac52,\dfrac52\right)$、$F\left(\dfrac5{17},\dfrac{20}{17}\right)$ で、たとえば $\overrightarrow{HA}\cdot\overrightarrow{HD}=(0,3)\cdot(0,-1)=-3$ である。
根心は、交わらない 2 円の根軸を作図するのにも使える。
ex-rad-start-disjoint の交わらない 2 円 $\Gamma_1:\ x^2+y^2-4=0$、$\Gamma_2:\ x^2+y^2-12x+35=0$ の根軸を、両方と交わる補助の円で求める。補助の円として中心 $(3,3)$、半径 $\dfrac72$ の円 $\Gamma_3:\ x^2+y^2-6x-6y+\dfrac{23}4=0$ をとる($\Gamma_1$、$\Gamma_2$ の両方と 2 点で交わる)。
$\Gamma_1$ と $\Gamma_3$ の共通弦の直線は $f_1-f_3=6x+6y-\dfrac{39}4=0$、$\Gamma_2$ と $\Gamma_3$ の共通弦の直線は $f_2-f_3=-6x+6y+\dfrac{117}4=0$ である。2 式を足すと $12y+\dfrac{78}4=0$、$y=-\dfrac{13}8$ で、1 つ目の式から $6x=\dfrac{39}4+\dfrac{78}8=\dfrac{39}2$、$x=\dfrac{13}4$ である。交点 $\left(\dfrac{13}4,-\dfrac{13}8\right)$ は 3 円の根心で、特に $\Gamma_1$ と $\Gamma_2$ の根軸 $x=\dfrac{13}4$ の上にある。作図では、この点から中心を結ぶ直線に垂線を下ろせば根軸が引ける。
$\Gamma_1:\ x^2+y^2=4$、$\Gamma_2:\ (x-6)^2+y^2=1$、$\Gamma_3:\ x^2+(y-6)^2=1$ の根心を求める。$f_1-f_2=12x-39$、$f_1-f_3=12y-39$ なので、根心は $P\left(\dfrac{13}4,\dfrac{13}4\right)$ で、3 つの方べきは $\dfrac{169}{16}\cdot2-4=\dfrac{137}8$ である。方べきが正なので $P$ は 3 円の外部にあり、$P$ から 3 円に引いた接線の長さはどれも $\sqrt{\dfrac{137}8}$ である。
$P$ を中心とし、半径 $\rho=\sqrt{\dfrac{137}8}$ の円 $\Sigma$ を描くと、$\Sigma$ は 3 つの円のそれぞれと直角に交わる。実際、$\Sigma$ と $\Gamma_1$ の中心間の距離の 2 乗は $\dfrac{169}8$ で、$\rho^2+2^2=\dfrac{137}8+\dfrac{32}8=\dfrac{169}8$ に等しい。中心間の距離の 2 乗が半径の 2 乗の和に等しいことは、2 円が直交することと同値である(方べきの定理(高校数学))。
根軸が直線になるのは、円の方程式を $x^2+y^2$ の係数が $1$ の形にそろえると、2 次の部分 $x^2+y^2$ がすべての円で共通だからである。円の方程式を「係数 $(D,E,F)$ の組」とみると、引き算や 1 次結合といった線形代数の操作が、そのまま図形の操作になる。
中心が異なる 2 つの円を $f_1=x^2+y^2+D_1x+E_1y+F_1=0$、$f_2=x^2+y^2+D_2x+E_2y+F_2=0$ とする。実数 $t$ に対して
$$
g_t:=(1-t)f_1+tf_2=x^2+y^2+\{(1-t)D_1+tD_2\}x+\{(1-t)E_1+tE_2\}y+(1-t)F_1+tF_2
$$
とおく。方程式 $g_t=0$ は、円、1 点、または空集合を表す(平方完成したとき右辺が正、$0$、負の場合)。$t$ を動かしてできる図形 $g_t=0$ の全体に、根軸 $f_1-f_2=0$ を加えたものを、$f_1$ と $f_2$ が定める 円の束 という。
$g_t=0$ は、2曲線の交点を通る図形(束) で扱う「$f_1+kf_2=0$」と同じ考え方の式である($k=\dfrac{t}{1-t}$ として両辺に $1-t$ を掛けた形)。$x^2+y^2$ の係数が $1$ になるように $(1-t)$ と $t$ に分けておくと、$g_t$ の値がそのまま方べきになる。
def-rad-pencil の記号で、次が成り立つ。
方針:すべて、$g_t$ が $f_1$ と $f_2$ の 1 次結合で、係数の和が $1$ であることから出る。
段 1(1)。共有点 $X$ では $f_1(X)=f_2(X)=0$ なので、$g_t(X)=(1-t)\cdot0+t\cdot0=0$ である。
段 2(2)。$g_t$ の $x$、$y$ の係数は $(1-t)D_1+tD_2$、$(1-t)E_1+tE_2$ なので、中心は
$$
\left(-\frac{(1-t)D_1+tD_2}2,\ -\frac{(1-t)E_1+tE_2}2\right)=(1-t)O_1+tO_2
$$
である($O_i=\left(-\dfrac{D_i}2,-\dfrac{E_i}2\right)$)。これは直線 $O_1O_2$ の上の点である(位置ベクトルと内分点)。
段 3(3)。$g_s-g_t=\{(1-s)-(1-t)\}f_1+(s-t)f_2=(t-s)f_1-(t-s)f_2=(t-s)(f_1-f_2)$ である。2 円 $g_s=0$、$g_t=0$ の根軸は $g_s-g_t=0$ で、$t-s\ne0$ で割ると $f_1-f_2=0$ になる。
段 4(4)。$h=0$ と $\Gamma_1$ の根軸 $f_1-h=0$ が直線 $f_1-f_2=0$ と一致するので、1 次式 $f_1-h$ は 1 次式 $f_1-f_2$ の $0$ でない定数倍である(同じ直線を表す 1 次方程式は定数倍しか違わない)。$f_1-h=c(f_1-f_2)$ とおくと、$h=(1-c)f_1+cf_2=g_c$ である。$\square$
左は 2 点 (1, 3)、(3, −1) を通る円の束。右は交わらない 2 円が定める円の束。どちらも中心は 1 本の直線上にあり、束のどの 2 円も同じ根軸(黒い直線)をもつ
ex-rad-pencil (2) の 2 点 $\left(\dfrac{13\pm\sqrt{105}}4,0\right)$ は、根軸と $x$ 軸の交点 $\left(\dfrac{13}4,0\right)$ から $\dfrac{\sqrt{105}}4$ だけ離れている。$\dfrac{\sqrt{105}}4$ は、$\left(\dfrac{13}4,0\right)$ から 2 円に引いた接線の長さに等しい(ex-rad-start-disjoint の最後の計算で、根軸上の点の $y$ 座標を $0$ とすると、接線の長さの 2 乗は $\dfrac{105}{16}$ になる)。束の円はこの 2 点に向かって縮んでいき、2 点は束の 極限点 と呼ばれる。
3 つの円 $f_i=x^2+y^2+D_ix+E_iy+F_i=0$($i=1,2,3$)の中心を $O_i=(a_i,b_i)=\left(-\dfrac{D_i}2,-\dfrac{E_i}2\right)$ とする。3 つの方べきがすべて等しい点がただ 1 つあることは
$$
\delta:=\det\begin{pmatrix}D_1&E_1&1\\ D_2&E_2&1\\ D_3&E_3&1\end{pmatrix}\ne0
$$
と同値である。さらに $\delta=4\det\begin{pmatrix}a_1&b_1&1\\ a_2&b_2&1\\ a_3&b_3&1\end{pmatrix}$ であり、右辺の行列式は三角形 $O_1O_2O_3$ の 符号付き面積 の $2$ 倍なので、$\delta\ne0$ は「3 つの中心が一直線上にない」ことと同値である。
方針:3 つの方べきが等しい点は、2 本の根軸 $f_1-f_2=0$、$f_1-f_3=0$ の連立方程式の解である。解がただ 1 つであることは、係数の $2\times2$ 行列式が $0$ でないことと同値であり、それが $\delta$ に等しいことを計算で確かめる。
段 1(連立方程式)。$f_1=f_2=f_3$ となる点 $(x,y)$ は
$$
(D_1-D_2)x+(E_1-E_2)y=F_2-F_1,\qquad (D_1-D_3)x+(E_1-E_3)y=F_3-F_1
$$
の解である。2 元連立 1 次方程式 $px+qy=u$、$p'x+q'y=u'$ は、$pq'-qp'\ne0$ ならただ 1 つの解をもつ。$pq'-qp'=0$ なら、左辺の係数の組 $(p,q)$ と $(p',q')$ が平行(一方が $(0,0)$ の場合を含む)で、解は存在しないか無数にある(行列式)。
段 2(係数の行列式)。この連立方程式の係数の行列式は
$$
(D_1-D_2)(E_1-E_3)-(E_1-E_2)(D_1-D_3)
$$
である。展開すると $D_1E_1-D_1E_3-D_2E_1+D_2E_3-E_1D_1+E_1D_3+E_2D_1-E_2D_3$ で、$D_1E_1$ の 2 つの項が消えて
$$
D_1E_2-D_2E_1+D_2E_3-D_3E_2+D_3E_1-D_1E_3
$$
になる。一方、$\delta$ を第 3 列で展開すると $(D_2E_3-D_3E_2)-(D_1E_3-D_3E_1)+(D_1E_2-D_2E_1)$ で、同じ式である。よって、ただ 1 つの解があることは $\delta\ne0$ と同値である。
段 3(中心の行列式)。$D_i=-2a_i$、$E_i=-2b_i$ を代入すると、$\delta$ の第 1 列と第 2 列はそれぞれ $-2$ 倍されているので、$\delta=(-2)(-2)\det\begin{pmatrix}a_1&b_1&1\\ a_2&b_2&1\\ a_3&b_3&1\end{pmatrix}$ である(1 つの列を $c$ 倍すると行列式は $c$ 倍になる。行列式)。$\square$
def-rad-pencil の $g_t$ は、係数の組 $(D,E,F)$ を 3 次元の点とみると、$(D_1,E_1,F_1)$ と $(D_2,E_2,F_2)$ を通る直線の上の点である。つまり円の束は、係数の空間の中の直線である。2 つの円の根軸 $f_1-f_2=0$ は、その直線の「向き」$(D_1-D_2,E_1-E_2,F_1-F_2)$ で決まる。
さらに $x^2+y^2$ の係数も含めて円を 4 つの数の組とみると、方べきや 2 円が直交する条件は、この 4 次元の空間の符号 $(3,1)$ の 2次形式 で書ける(方べきの定理(高校数学) の後半)。この見方では、1 つの束のすべての円と直交する円の全体がまた 1 つの束になる。たとえば 2 点で交わる円の束に直交する円の全体は、ex-rad-pencil (2) のような交わらない円の束になり、その円は Apolloniusの円 として現れる(ここでは証明しない。円の束は CG67 でも共軸円(coaxal circles)として扱われている)。円の束は Möbius変換 の幾何の基本的な対象である。
どの仮定を外すと何が崩れるかを一覧にする。
| 外した仮定 | 崩れる主張 | ボックス |
|---|---|---|
| 2 円の中心が異なる | 根軸が存在する | ex-rad-concentric |
| $x^2+y^2$ の係数を $1$ にそろえる | 引き算で直線が残る | ex-rad-normalize |
| 図形が円である | 等しい値の点が 1 本の直線をなす | ex-rad-ellipse |
| 3 つの中心が一直線上にない | 根心が存在する | ex-rad-collinear |
同心円 $x^2+y^2-1=0$ と $x^2+y^2-9=0$ では、方べきの差は $(x^2+y^2-1)-(x^2+y^2-9)=8$ で、どの点でも $0$ にならない。方べきが等しい点はなく、根軸は存在しない。prf-rad-axis では $d>0$ で割ったので、$d=0$ の場合は除く必要があった。
ex-rad-start-disjoint の $\Gamma_2$ は、両辺を 2 倍して $2x^2+2y^2-24x+70=0$ と書いても同じ円である。この形のまま $\Gamma_1$ の式から引くと
$$
(x^2+y^2-4)-(2x^2+2y^2-24x+70)=-x^2-y^2+24x-74
$$
で、2 次の項が消えない。$-x^2-y^2+24x-74=0$ は $(x-12)^2+y^2=70$ という円で、根軸ではない。方べきが方程式の左辺の値に等しいのは、$x^2+y^2$ の係数が $1$ のときだけである(def-rad-power)。
楕円 $\dfrac{x^2}4+y^2=1$ と $x^2+\dfrac{y^2}4=1$ の左辺から $1$ を引いた式の差は
$$
\left(\frac{x^2}4+y^2-1\right)-\left(x^2+\frac{y^2}4-1\right)=-\frac34x^2+\frac34y^2=-\frac34(x-y)(x+y)
$$
で、$0$ になるのは 2 本の直線 $y=x$ と $y=-x$ の上である。2 つの楕円の交点は $\left(\pm\dfrac2{\sqrt5},\pm\dfrac2{\sqrt5}\right)$ の 4 点で、1 本の直線の上には並ばない。2 次の部分 $\dfrac{x^2}4+y^2$ と $x^2+\dfrac{y^2}4$ が異なるので、引き算しても 2 次の項が残る。根軸は「2 次の部分がすべて $x^2+y^2$」という円の特徴から生まれる。
ex-rad-start-disjoint の $f_1=x^2+y^2-4$、$f_2=x^2+y^2-12x+35$ に、中心 $(3,0)$、半径 $3$ の円 $f_3=x^2+y^2-6x=0$ を加える。根軸は $f_1-f_2=0$ から $x=\dfrac{13}4$、$f_1-f_3=6x-4=0$ から $x=\dfrac23$、$f_2-f_3=35-6x=0$ から $x=\dfrac{35}6$ で、3 本とも $y$ 軸に平行な異なる直線である。3 つの方べきがすべて等しい点はなく、根心は存在しない。
中心が一直線上でも、3 つの円が 1 つの円の束(def-rad-pencil)に入っているときは、prop-rad-pencil 3 により 3 本の根軸は一致し、その直線の上のすべての点で 3 つの方べきが等しい。たとえば ex-rad-pencil (1) の $f_1=0$、$f_2=0$、$g_{1/2}=0$ は、中心 $(0,0)$、$(4,2)$、$(2,1)$ が一直線上にあり、3 本の根軸はどれも $2x+y=5$ である。このときも、方べきが等しい点がただ 1 つには決まらないので、根心はない。
2 つの円の共通弦(根軸)の上の点の方べきを使う問題である。
相異なる 4 点 $A$、$B$、$C$、$D$ が、この順に 1 本の直線の上にある。$AC$ を直径とする円と $BD$ を直径とする円が、2 点 $X$、$Y$ で交わる。直線 $XY$ と直線 $BC$ の交点を $Z$ とする。$P$ を直線 $XY$ の上の $Z$ と異なる点とする。直線 $CP$ が $AC$ を直径とする円と交わる点を $C$、$M$ とし、直線 $BP$ が $BD$ を直径とする円と交わる点を $B$、$N$ とする。3 本の直線 $AM$、$DN$、$XY$ は 1 点で交わることを示せ。
(出典:国際数学オリンピック(1995 年)第 1 問 Oly95。問題文は英文からの和訳。)
A(−4, 0)、B(−1, 0)、C(2, 0)、D(8, 0)、P(0, 4) の場合。AM と DN は根軸 XY 上の点 Q(0, 2) で交わる
方針:根軸 $XY$ を $y$ 軸、直線 $AD$ を $x$ 軸にとる。$AM$ と $DN$ がそれぞれ $y$ 軸と交わる点の $y$ 座標を計算し、$Z$ の 2 つの方べきが等しいことから、2 つが一致することを示す。
段 1(座標)。2 つの円を $\Gamma_1$(直径 $AC$)、$\Gamma_2$(直径 $BD$)とする。中心はそれぞれ $AC$、$BD$ の中点で、どちらも直線 $AD$ の上にある。2 つの中心は異なる(中心が同じ 2 つの円は、一致しない限り共有点をもたないが、この 2 円は $X$、$Y$ で交わり、直径 $AC$ と $BD$ は異なる線分なので一致しない)。直線 $XY$ は 2 円の根軸なので(prop-rad-meaning 1)、直線 $AD$ に垂直である(thm-rad-axis)。そこで $Z$ を原点、直線 $AD$ を $x$ 軸、直線 $XY$ を $y$ 軸とする座標をとり、$A(a,0)$、$B(b,0)$、$C(c,0)$、$D(d,0)$、$P(0,p)$ とおく。$P\ne Z$ なので $p\ne0$ である。
段 2(円の式と $Z$ の方べき)。点 $(x,y)$ が $\Gamma_1$ の上にあることは、$A$、$C$ と異なる点 $W=(x,y)$ については $\angle AWC$ が直角であること、つまり $(x-a,y)\cdot(x-c,y)=0$ と同じで(直径に対する円周角)、$A$、$C$ もこの式を満たす。よって $\Gamma_1$ の方程式は
$$
f_1(x,y)=(x-a)(x-c)+y^2=x^2+y^2-(a+c)x+ac=0
$$
で、$x^2+y^2$ の係数は $1$ である。同じように $\Gamma_2$ は $f_2(x,y)=(x-b)(x-d)+y^2=0$ である。$Z=(0,0)$ は根軸の上にあるので $f_1(0,0)=f_2(0,0)$、つまり
$$
ac=bd
$$
である。
段 3($C$ は原点でない)。もし $c=0$ なら $C=Z$ は $\Gamma_1$ の上の点で、根軸の上にもあるので $f_2(C)=f_1(C)=0$ となり、$C$ は 2 円の交点、つまり $X$ か $Y$ になる。しかし 2 円が 2 点で交わるとき、交点は根軸の上で直線 $AD$ に関して対称な位置にあり($f_1$、$f_2$ は $y$ を $-y$ に替えても変わらない)、$x$ 軸の上にはない($x$ 軸の上にあれば 2 点が一致してしまう)。よって $c\ne0$ で、同じように $b\ne0$ である。
段 4(直線 $AM$)。$M$ は直線 $CP$ と $\Gamma_1$ の $C$ 以外の交点である。直線 $CP$ が $\Gamma_1$ に $C$ で接するのは $CP$ が $AC$ に垂直なとき、つまり $P$ の $x$ 座標が $c$ のときだが、$P$ の $x$ 座標は $0\ne c$ なので接しない。よって $M\ne C$ である。また $M\ne A$ である($M=A$ なら直線 $CP$ が $A$ を通り、$P$ が直線 $AC$、つまり $x$ 軸の上に来て $p=0$ となる)。$M$ は $AC$ を直径とする円の上の $A$、$C$ と異なる点なので $\angle AMC=90^\circ$ で、直線 $AM$ は直線 $CM$、つまり直線 $CP$ に垂直である。$\overrightarrow{PC}=(c,-p)$ なので、$A$ を通り $CP$ に垂直な直線は
$$
c(x-a)-py=0
$$
である。$p\ne0$ なのでこの直線は $y$ 軸と平行でなく、$x=0$ とすると $y=-\dfrac{ac}p$ である。直線 $AM$ は $y$ 軸(直線 $XY$)と点 $Q_1\left(0,-\dfrac{ac}p\right)$ で交わる。
段 5(直線 $DN$)。段 4 で $A$、$C$、$\Gamma_1$ を $D$、$B$、$\Gamma_2$ に替えて同じ議論をすると、直線 $DN$ は $D$ を通り $BP$ に垂直な直線 $b(x-d)-py=0$ で、$y$ 軸と点 $Q_2\left(0,-\dfrac{bd}p\right)$ で交わる。
段 6(結論)。段 2 の $ac=bd$ により $Q_1=Q_2$ である。よって 3 本の直線 $AM$、$DN$、$XY$ はこの 1 点で交わる。$\square$
3 本の直線が交わる点を $Q$ とすると、$Q$ は根軸 $XY$ の上にあるので $\operatorname{pow}_{\Gamma_1}(Q)=\operatorname{pow}_{\Gamma_2}(Q)$ である。$Q$ は直線 $AM$ の上にあるので、方べきの定理(高校数学) により $\operatorname{pow}_{\Gamma_1}(Q)=\overrightarrow{QA}\cdot\overrightarrow{QM}$、同じように $\operatorname{pow}_{\Gamma_2}(Q)=\overrightarrow{QD}\cdot\overrightarrow{QN}$ である。よって $\overrightarrow{QA}\cdot\overrightarrow{QM}=\overrightarrow{QD}\cdot\overrightarrow{QN}$ で、方べきの定理の逆により 4 点 $A$、$M$、$N$、$D$ は同一円周上にある。この円を $\Gamma_3$ とすると、直線 $AM$ は $\Gamma_1$ と $\Gamma_3$ の共通弦、直線 $DN$ は $\Gamma_2$ と $\Gamma_3$ の共通弦、直線 $XY$ は $\Gamma_1$ と $\Gamma_2$ の共通弦で、3 本はちょうど 3 円の根軸である。問題の結論は、thm-rad-center が 3 円 $\Gamma_1$、$\Gamma_2$、$\Gamma_3$ について成り立っているという事実にほかならない。
実際、よく知られた初等的な解き方は逆向きに進む。$P$ は根軸の上にあるので $\overrightarrow{PM}\cdot\overrightarrow{PC}=\operatorname{pow}_{\Gamma_1}(P)=\operatorname{pow}_{\Gamma_2}(P)=\overrightarrow{PN}\cdot\overrightarrow{PB}$ で、$B$、$C$、$M$、$N$ が同一円周上にある。そこから角を計算して $A$、$M$、$N$、$D$ が同一円周上にあることを示し(円に内接する四角形 の判定法を使う)、最後に根心の定理で 3 本の直線が 1 点で交わると結論する。
数値で確かめる。$A(-4,0)$、$B(-1,0)$、$C(2,0)$、$D(8,0)$ では $ac=bd=-8$ で、$\Gamma_1$ と $\Gamma_2$ は $X(0,2\sqrt2)$、$Y(0,-2\sqrt2)$ で交わる。$P(0,4)$ とすると $M\left(\dfrac45,\dfrac{12}5\right)$、$N\left(-\dfrac8{17},\dfrac{36}{17}\right)$、交点は $Q(0,2)$ である。$\overrightarrow{PM}\cdot\overrightarrow{PC}=\overrightarrow{PN}\cdot\overrightarrow{PB}=\overrightarrow{PX}\cdot\overrightarrow{PY}=8$、$\overrightarrow{QA}\cdot\overrightarrow{QM}=\overrightarrow{QD}\cdot\overrightarrow{QN}=-4$ で、$A$、$M$、$N$、$D$ の 4 点についての 円に内接する四角形 の行列式は $0$ になる。
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