極座標で表された図形の面積(area in polar coordinates)とは、極方程式 $r=f(\theta)$($f$ は連続で $f\ge0$)の曲線と 2 本の半直線 $\theta=\alpha$、$\theta=\beta$($0<\beta-\alpha\le2\pi$)で囲まれた部分の面積で、$\frac12\int_\alpha^\beta f(\theta)^2\,d\theta$ に等しい。細い部分を 2 つの扇形で挟むと、面積の導関数が $\frac12f(\theta)^2$ になる。カージオイド $r=1+\cos\theta$ の面積は $\frac{3\pi}2$、2 曲線の間は $\frac12\int(f^2-g^2)\,d\theta$ である。1 周を超えたり、$f<0$ の範囲や曲線のない方向まで積分したりすると、面積と一致しない。
数学 C・III では、極方程式 $r=f(\theta)$ で表された曲線と、原点から出る 2 本の半直線 $\theta=\alpha$、$\theta=\beta$ で囲まれた部分の面積を
$$
S=\frac12\int_\alpha^\beta r^2\,d\theta=\frac12\int_\alpha^\beta f(\theta)^2\,d\theta
$$
で計算する。出発点は、半径 $\rho$、中心角 $\varphi$(弧度法)の扇形の面積が $\dfrac12\rho^2\varphi$ であることである。中心角が小さい扇形を、半径を変えながら並べていくと考えれば、この形の積分になる。まず 3 つの例で計算してみる。極座標と極方程式の約束($r\ge0$、偏角 $\theta$ は始線から反時計回りに測る)は 極座標と極方程式 のとおりとする。
$r=2\cos\theta$($-\dfrac\pi2\le\theta\le\dfrac\pi2$)は、中心 $(1,0)$、半径 $1$ の円である(極座標と極方程式 の系「原点を通る円の極方程式」)。公式で計算すると
$$
S=\frac12\int_{-\pi/2}^{\pi/2}4\cos^2\theta\,d\theta=\int_{-\pi/2}^{\pi/2}(1+\cos2\theta)\,d\theta=\Bigl[\theta+\frac{\sin2\theta}2\Bigr]_{-\pi/2}^{\pi/2}=\pi
$$
である。半径 $1$ の円の面積 $\pi$ と一致する。
カージオイド $r=1+\cos\theta$($0\le\theta\le2\pi$)が囲む部分の面積を求める。$(1+\cos\theta)^2=1+2\cos\theta+\cos^2\theta=1+2\cos\theta+\dfrac{1+\cos2\theta}2$ で、$\displaystyle\int_0^{2\pi}\cos\theta\,d\theta=\int_0^{2\pi}\cos2\theta\,d\theta=0$ なので
$$
S=\frac12\int_0^{2\pi}(1+\cos\theta)^2\,d\theta=\frac12\Bigl(2\pi+0+\pi\Bigr)=\frac{3\pi}2=4.712\ldots
$$
である。直交座標の式 $(x^2+y^2-x)^2=x^2+y^2$(極座標と極方程式 の例「螺旋・カージオイド・レムニスケート」)で縦に切って積分するより、ずっと簡単である。
Archimedes の螺旋 $r=\theta$ の $0\le\theta\le2\pi$ の部分と、始線の $0\le x\le2\pi$ の部分で囲まれた部分(原点から出た半直線が 1 周するあいだに、原点と螺旋の間を掃く部分)の面積は
$$
S=\frac12\int_0^{2\pi}\theta^2\,d\theta=\frac12\cdot\frac{(2\pi)^3}3=\frac{4\pi^3}3=41.34\ldots
$$
である。
3 つの例から、次の問いが出てくる。
| 高校の計算 | この記事での見方 | ボックス |
|---|---|---|
| 扇形の面積 $\frac12\rho^2\varphi$ | 細い部分を扇形で挟む | rem-pol-facts、thm-pol-area |
| $\frac12\displaystyle\int r^2\,d\theta$ | 面積を角の関数と見て微分する | thm-pol-area |
| 外側の面積 − 内側の面積 | $\frac12\displaystyle\int(f^2-g^2)\,d\theta$ | cor-pol-between |
| 範囲は 1 周以内、$r\ge0$ | 仮定を外すと重なりや余分な輪が入る | 反例の表 |
| 面積の要素 $r\,dr\,d\theta$ | 変数変換の Jacobi 行列式 | rem-pol-jacobian |
$\alpha<\beta$、$\beta-\alpha\le2\pi$ とし、$f$ を $[\alpha,\beta]$ で連続で $f(\theta)\ge0$ を満たす関数とする。
$$
D(\alpha,\beta)=\{(r\cos\theta,\ r\sin\theta)\mid\alpha\le\theta\le\beta,\ 0\le r\le f(\theta)\}
$$
を、曲線 $r=f(\theta)$ と半直線 $\theta=\alpha$、$\theta=\beta$ で囲まれた部分という。偏角 $\theta$ の方向に、原点から曲線上の点 $\bigl(f(\theta)\cos\theta,f(\theta)\sin\theta\bigr)$ までの線分を引き、$\theta$ を $\alpha$ から $\beta$ まで動かしたときに線分が通る部分である。
$\beta-\alpha\le2\pi$ としたのは、線分が同じ場所を 2 回通らないようにするためである(2 回通るとどうなるかは ex-pol-spiral-twice)。
この記事で扱う図形には面積があるとして、次の性質を認める。
def-pol-region の図形 $D(\alpha,\beta)$ の面積は
$$
\frac12\int_\alpha^\beta f(\theta)^2\,d\theta
$$
である。
証明は、定積分で表された関数 の定理「積分の上端についての微分」と同じ考え方である。面積を、半直線の角 $\theta$ の関数 $S(\theta)$ と見て、細い部分を 2 つの扇形で挟み、$S'(\theta)=\dfrac12f(\theta)^2$ を示す(図 1)。
$S(\theta)$ は $\alpha$ から $\theta$ までの部分(青)の面積。$\theta$ から $\theta+h$ までの細い部分(橙)は、半径 $m(h)$ の扇形(緑の破線)を含み、半径 $M(h)$ の扇形(赤の点線)に含まれることを見る図。
方針:$S(\theta)$ を $D(\alpha,\theta)$ の面積とする。$S$ が微分可能で $S'(\theta)=\dfrac12f(\theta)^2$ となることを示し、原始関数の差として $S(\beta)$ を求める。
段 1(面積の関数)。$\alpha\le\theta\le\beta$ について $S(\theta)$ を $D(\alpha,\theta)$ の面積とし、$S(\alpha)=0$ とする($\theta=\alpha$ では $D$ は線分なので)。$\alpha\le\theta<\theta+h\le\beta$ とすると、$D(\alpha,\theta+h)$ は $D(\alpha,\theta)$ と $D(\theta,\theta+h)$ に分かれ、共通部分は偏角 $\theta$ の方向の線分($\beta-\alpha=2\pi$ で $\theta+h=\beta$ のときは、偏角 $\alpha$ の方向の線分も。偏角 $\beta=\alpha+2\pi$ は偏角 $\alpha$ と同じ方向だからである)だけである($\beta-\alpha\le2\pi$ なので、ほかに重なる部分はない)。rem-pol-facts の 3 により
$$
S(\theta+h)-S(\theta)=\bigl(D(\theta,\theta+h)\text{ の面積}\bigr)
$$
である。
段 2(2 つの扇形で挟む)。$f$ は $[\theta,\theta+h]$ で連続なので、最小値 $m(h)$ と最大値 $M(h)$ をとる(最大値・最小値の定理。証明しない)。$m(h)=f(c_h)$、$M(h)=f(d_h)$ となる点 $c_h$、$d_h$ を $[\theta,\theta+h]$ からとる。偏角が $\theta$ から $\theta+h$ の方向では $m(h)\le f\le M(h)$ なので、$D(\theta,\theta+h)$ は半径 $m(h)$、中心角 $h$ の扇形を含み、半径 $M(h)$、中心角 $h$ の扇形に含まれる。rem-pol-facts の 1・2 により
$$
\frac12m(h)^2\,h\le S(\theta+h)-S(\theta)\le\frac12M(h)^2\,h
$$
である。
段 3(差分商を挟む)。$h>0$ で割ると
$$
\frac12f(c_h)^2\le\frac{S(\theta+h)-S(\theta)}h\le\frac12f(d_h)^2
$$
である。$h<0$ のときは、段 1・段 2 を $\theta+h$ から $\theta$ までの部分で行うと $\dfrac12f(c_h)^2\,|h|\le S(\theta)-S(\theta+h)\le\dfrac12f(d_h)^2\,|h|$ となり($c_h$、$d_h$ は $[\theta+h,\theta]$ の点)、$h$ で割ると同じ不等式を得る。
段 4(極限)。$c_h$、$d_h$ は $\theta$ と $\theta+h$ の間にあるので、$h\to0$ で $c_h\to\theta$、$d_h\to\theta$ であり、$f$ の連続性から $f(c_h)^2\to f(\theta)^2$、$f(d_h)^2\to f(\theta)^2$ である。はさみうちの原理 により
$$
S'(\theta)=\lim_{h\to0}\frac{S(\theta+h)-S(\theta)}h=\frac12f(\theta)^2
$$
である($\theta=\alpha,\beta$ では片側の微分係数)。
段 5(積分で表す)。$\dfrac12f(\theta)^2$ は連続で、段 4 により $S$ はその原始関数である。定積分で表された関数 の系「原始関数で定積分を計算する」により
$$
\frac12\int_\alpha^\beta f(\theta)^2\,d\theta=S(\beta)-S(\alpha)=S(\beta)-0
$$
であり、$S(\beta)$ は $D(\alpha,\beta)$ の面積である。$\square$
この証明は、定積分で表された関数 で $\displaystyle\int_a^xf(t)\,dt$ の導関数が $f(x)$ になることを示したときの「細い帯を 2 つの長方形で挟む」を、「細い部分を 2 つの扇形で挟む」に取り替えたものである。長方形の面積 $f\cdot h$ が扇形の面積 $\dfrac12f^2\cdot h$ に替わったので、積分するものが $\dfrac12f^2$ になる。区間を細かく分けて内側と外側の扇形の和で挟む形の証明は、大学向けの記事 極座標 の定理「極座標による面積の公式」にある。
カージオイド $r=1+\cos\theta$ で、$0\le\theta\le2\pi$ を $n$ 等分し、各部分で $f$ の最小値を半径とする扇形(内側の扇形)と、最大値を半径とする扇形(外側の扇形)の面積の和を計算すると、次のようになる。
| $n$ | 内側の扇形の和 | 外側の扇形の和 |
|---|---|---|
| $6$ | $2.6179\ldots$ | $6.8067\ldots$ |
| $12$ | $3.6651\ldots$ | $5.7595\ldots$ |
| $48$ | $4.4505\ldots$ | $4.9741\ldots$ |
どの $n$ でも $\dfrac{3\pi}2=4.7123\ldots$(ex-pol-start-cardioid)を挟み、$n$ を大きくすると両方が近づいていく。$n=6$ の内側の和を手で確かめる。6 つの部分 $\Bigl[\dfrac{k\pi}3,\dfrac{(k+1)\pi}3\Bigr]$ での $1+\cos\theta$ の最小値は、順に $\dfrac32,\ \dfrac12,\ 0,\ 0,\ \dfrac12,\ \dfrac32$($\cos$ は $[0,\pi]$ で減少、$[\pi,2\pi]$ で増加するので、各部分の端で最小)である。扇形の面積の和は
$$
\frac12\cdot\frac\pi3\Bigl(\frac94+\frac14+0+0+\frac14+\frac94\Bigr)=\frac\pi6\cdot5=\frac{5\pi}6=2.6179\ldots
$$
で、表と一致する(図 2 は $n=12$ の内側の扇形)。
カージオイド $r=1+\cos\theta$(面積 $\frac{3\pi}2$)と、$n=12$ の内側の扇形(橙)。扇形の和は面積より小さく、$n$ を増やすと面積に近づくことを見る図。
$\alpha<\beta$、$\beta-\alpha\le2\pi$ とし、$f$、$g$ を $[\alpha,\beta]$ で連続で $0\le g(\theta)\le f(\theta)$ を満たす関数とする。
$$
E=\{(r\cos\theta,\ r\sin\theta)\mid\alpha\le\theta\le\beta,\ g(\theta)\le r\le f(\theta)\}
$$
の面積は
$$
\frac12\int_\alpha^\beta\bigl(f(\theta)^2-g(\theta)^2\bigr)\,d\theta
$$
である。
方針:$f$ で作った部分を、$g$ で作った部分と $E$ に分け、thm-pol-area を 2 回使う。
段 1(分ける)。$f$ で作った $D_f=\{0\le r\le f(\theta)\}$ の点は、$r\le g(\theta)$ なら $g$ で作った $D_g=\{0\le r\le g(\theta)\}$ に、$r\ge g(\theta)$ なら $E$ に入る。$D_g$ と $E$ の共通部分は曲線 $r=g(\theta)$ の上の点だけなので、rem-pol-facts の 3 により
$$
(D_f\text{ の面積})=(D_g\text{ の面積})+(E\text{ の面積})
$$
である。
段 2(公式を使う)。thm-pol-area により $D_f$、$D_g$ の面積はそれぞれ $\dfrac12\displaystyle\int_\alpha^\beta f^2\,d\theta$、$\dfrac12\displaystyle\int_\alpha^\beta g^2\,d\theta$ である。段 1 の式から $E$ の面積はその差であり、積分の線形性から $\dfrac12\displaystyle\int_\alpha^\beta(f^2-g^2)\,d\theta$ となる。$\square$
左はカージオイド $r=1+\cos\theta$ の内側で円 $r=1$ の外側の部分(面積 $2+\frac\pi4$)、右は円 $r=2\cos\theta$ の内側で円 $r=1$ の外側の部分(面積 $\frac\pi3+\frac{\sqrt3}2$)。どちらも原点から見て外側の曲線と内側の曲線にはさまれていることを見る図。
媒介変数表示の曲線が囲む面積の公式 $\dfrac12\displaystyle\int(xy'-yx')\,dt$ に、$x=f(\theta)\cos\theta$、$y=f(\theta)\sin\theta$ を入れると、$xy'-yx'=f(\theta)^2$ となって thm-pol-area の式が出る(媒介変数表示の曲線が囲む面積 の例「極方程式の曲線に当てはめる」)。どちらの公式も、原点から曲線を見込む細い部分を足し合わせている。極座標の公式は、その細い部分を扇形として直接数えたものである。
thm-pol-area の仮定を 1 つ外したり、曲線のない方向まで積分したりすると、$\dfrac12\displaystyle\int r^2\,d\theta$ は面積と一致しなくなる。
| 外した仮定 | 崩れる主張 | ボックス |
|---|---|---|
| $\beta-\alpha\le2\pi$(1 周以内) | 公式の値が図形の面積 | ex-pol-spiral-twice |
| $f(\theta)\ge0$ | 公式の値が曲線の囲む部分の面積 | ex-pol-limacon |
| 曲線に点がある方向だけで積分する | 公式の値が面積 | ex-pol-lemniscate-range |
螺旋 $r=\theta$ を $0\le\theta\le4\pi$ で考え、原点から螺旋上の点までの線分が通る部分
$$
D=\{(r\cos\theta,\ r\sin\theta)\mid0\le\theta\le4\pi,\ 0\le r\le\theta\}
$$
の面積を求める。公式をそのまま使うと $\dfrac12\displaystyle\int_0^{4\pi}\theta^2\,d\theta=\dfrac{32\pi^3}3$ となる。
実際の $D$ を調べる。偏角 $\varphi$($0<\varphi<2\pi$)の方向の点は、$\theta=\varphi$ のときの線分(長さ $\varphi$)と、$\theta=\varphi+2\pi$ のときの線分(長さ $\varphi+2\pi$)で通られる。同じ方向の線分なので長いほうが短いほうを含み、$D$ のこの方向の部分は長さ $\varphi+2\pi$ の線分である。始線の方向($\varphi=0$)では $\theta=0,2\pi,4\pi$ の線分(長さ $0$、$2\pi$、$4\pi$)が通り、いちばん長いのは $\theta=4\pi$ のものである。つまり $D$ は $2\pi\le\theta\le4\pi$ の 1 周分だけで作った部分と同じで、thm-pol-area により面積は
$$
\frac12\int_{2\pi}^{4\pi}\theta^2\,d\theta=\frac12\cdot\frac{(4\pi)^3-(2\pi)^3}3=\frac{28\pi^3}3
$$
である。公式をそのまま使った値との差 $\dfrac{4\pi^3}3$ は、1 周目の部分(ex-pol-start-spiral)の面積で、2 回数えられた(図 4 の左)。
満たす性質:$f(\theta)=\theta$ は連続で $0$ 以上。満たさない性質:$\beta-\alpha\le2\pi$。破る主張:thm-pol-area の「公式の値が $D$ の面積」。証明の段 1 で、重なりがないことを使っていた。
$r=1+2\cos\theta$ を考える。$1+2\cos\theta\ge0$ となるのは $\cos\theta\ge-\dfrac12$、すなわち $-\dfrac{2\pi}3\le\theta\le\dfrac{2\pi}3$ の方向なので、$r\ge0$ の約束では、曲線はこの方向の部分だけで、1 つの閉じた曲線になる(図 4 の右の実線)。囲む部分の面積は、$(1+2\cos\theta)^2=3+4\cos\theta+2\cos2\theta$ を使って
$$
\frac12\int_{-2\pi/3}^{2\pi/3}\bigl(3+4\cos\theta+2\cos2\theta\bigr)\,d\theta=\frac12\Bigl(4\pi+4\sqrt3-\sqrt3\Bigr)=2\pi+\frac{3\sqrt3}2=8.881\ldots
$$
である($\displaystyle\int_{-2\pi/3}^{2\pi/3}\cos\theta\,d\theta=2\sin\frac{2\pi}3=\sqrt3$、$\displaystyle\int_{-2\pi/3}^{2\pi/3}\cos2\theta\,d\theta=\sin\frac{4\pi}3=-\frac{\sqrt3}2$)。
ところが、$\theta$ の範囲を気にせずに $0\le\theta\le2\pi$ で積分すると $\dfrac12\displaystyle\int_0^{2\pi}(1+2\cos\theta)^2\,d\theta=\dfrac12(6\pi+0+0)=3\pi=9.424\ldots$ となり、値が違う。$\dfrac{2\pi}3<\theta<\dfrac{4\pi}3$ では $1+2\cos\theta<0$ だが、2 乗すると正になるので、その分 $\dfrac12\displaystyle\int_{2\pi/3}^{4\pi/3}(1+2\cos\theta)^2\,d\theta=\pi-\dfrac{3\sqrt3}2=0.543\ldots$ が余分に足された。$r<0$ も許す流儀(極座標と極方程式 の反例「r<0 も許すと図形が変わる」)では、この部分は外側の曲線の内部にもう 1 つの輪(図 4 の右の破線)を描き、余分な値はその輪の面積にあたる。輪の部分は外側の曲線の囲む部分に含まれているので、2 回数えたことになる。
満たさない性質:$f(\theta)\ge0$。破る主張:thm-pol-area の「公式の値が囲まれた部分の面積」。
左は螺旋 $r=\theta$ の 1 周目(赤)と 2 周目(青)。$0\le\theta\le4\pi$ で公式を使うと、赤の部分を 2 回数える。右はリマソン $r=1+2\cos\theta$。$r\ge0$ の部分(緑)だけが曲線で、$r<0$ を許すと内側の輪(破線)が加わることを見る図。
レムニスケート $r^2=\cos2\theta$ の面積は $1$ である(ex-pol-basic の 1)。$r^2$ の式がそのまま分かっているからといって、$0\le\theta\le2\pi$ で $\dfrac12\displaystyle\int r^2\,d\theta$ を計算すると
$$
\frac12\int_0^{2\pi}\cos2\theta\,d\theta=\frac12\Bigl[\frac{\sin2\theta}2\Bigr]_0^{2\pi}=0
$$
となる。$\cos2\theta<0$ の方向(たとえば $\theta=\dfrac\pi2$)には $r^2=\cos2\theta$ を満たす $r\ge0$ がなく、曲線の点がない。そこで負の値を積分したので、2 つの輪の面積 $1$ がちょうど打ち消された。
満たさない性質:$[\alpha,\beta]$ のすべての方向で $f(\theta)$ が定まること(def-pol-region の仮定)。破る主張:公式の値が面積であること。極方程式の図形の面積を求めるときは、まず曲線に点がある $\theta$ の範囲を調べる。
大学では、平面の図形 $D$ の面積を 2 重積分 $\displaystyle\iint_D1\,dx\,dy$ で表す。極座標 $x=r\cos\theta$、$y=r\sin\theta$ に変数を取り替えると、$dx\,dy$ は $r\,dr\,d\theta$ に替わる。$r$ は、写像 $(r,\theta)\mapsto(r\cos\theta,r\sin\theta)$ の Jacobi 行列式(Jacobi行列 の行列式)で、極座標の細かい目盛りの「ほぼ長方形」の面積 $\Delta r\cdot r\Delta\theta$ の $r$ にあたる(極座標と極方程式 の注意「大学数学で見ると:面積の要素 r dr dθ」)。def-pol-region の図形では
$$
\iint_D1\,dx\,dy=\int_\alpha^\beta\Bigl(\int_0^{f(\theta)}r\,dr\Bigr)d\theta=\int_\alpha^\beta\frac12f(\theta)^2\,d\theta
$$
となり、thm-pol-area と同じ式が出る。変数変換の公式と Jacobi 行列式の計算は、大学向けの記事 極座標 の節「変数変換の Jacobi 行列式」にある(本記事では証明しない)。
変数変換 $dx\,dy=r\,dr\,d\theta$ は、$\displaystyle\int_{-\infty}^\infty e^{-x^2}\,dx=\sqrt\pi$ の有名な計算にも使われる。この積分を 2 乗して $\displaystyle\iint e^{-(x^2+y^2)}\,dx\,dy$ とし、極座標に直すと $\displaystyle\int_0^{2\pi}\int_0^\infty e^{-r^2}r\,dr\,d\theta=2\pi\cdot\frac12=\pi$ となる。$e^{-r^2}r$ は $-\dfrac12e^{-r^2}$ の導関数なので、$x$ だけでは原始関数が書けない $e^{-x^2}$ が、$r$ を掛けたおかげで積分できるようになる(無限に広がる範囲の 2 重積分を扱う細部は 極座標 の定理「Gauss積分」を参照)。高校数学の範囲では、Wallis 積分と比べて同じ値を求める方法を Gauss積分(高校数学) で扱う。
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