極座標で表された図形の面積

同義語:area in polar coordinates

概要

極座標で表された図形の面積(area in polar coordinates)とは、極方程式 $r=f(\theta)$($f$ は連続で $f\ge0$)の曲線と 2 本の半直線 $\theta=\alpha$、$\theta=\beta$($0<\beta-\alpha\le2\pi$)で囲まれた部分の面積で、$\frac12\int_\alpha^\beta f(\theta)^2\,d\theta$ に等しい。細い部分を 2 つの扇形で挟むと、面積の導関数が $\frac12f(\theta)^2$ になる。カージオイド $r=1+\cos\theta$ の面積は $\frac{3\pi}2$、2 曲線の間は $\frac12\int(f^2-g^2)\,d\theta$ である。1 周を超えたり、$f<0$ の範囲や曲線のない方向まで積分したりすると、面積と一致しない。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 極座標と極方程式, 極方程式, 定積分

高校での出発点:扇形を足し合わせる

数学 C・III では、極方程式 $r=f(\theta)$ で表された曲線と、原点から出る 2 本の半直線 $\theta=\alpha$、$\theta=\beta$ で囲まれた部分の面積を
$$ S=\frac12\int_\alpha^\beta r^2\,d\theta=\frac12\int_\alpha^\beta f(\theta)^2\,d\theta $$
で計算する。出発点は、半径 $\rho$、中心角 $\varphi$(弧度法)の扇形の面積が $\dfrac12\rho^2\varphi$ であることである。中心角が小さい扇形を、半径を変えながら並べていくと考えれば、この形の積分になる。まず 3 つの例で計算してみる。極座標と極方程式の約束($r\ge0$、偏角 $\theta$ は始線から反時計回りに測る)は 極座標と極方程式 のとおりとする。

円 $r=2\cos\theta$ の面積

$r=2\cos\theta$($-\dfrac\pi2\le\theta\le\dfrac\pi2$)は、中心 $(1,0)$、半径 $1$ の円である(極座標と極方程式 の系「原点を通る円の極方程式」)。公式で計算すると
$$ S=\frac12\int_{-\pi/2}^{\pi/2}4\cos^2\theta\,d\theta=\int_{-\pi/2}^{\pi/2}(1+\cos2\theta)\,d\theta=\Bigl[\theta+\frac{\sin2\theta}2\Bigr]_{-\pi/2}^{\pi/2}=\pi $$
である。半径 $1$ の円の面積 $\pi$ と一致する。

カージオイドの面積

カージオイド $r=1+\cos\theta$($0\le\theta\le2\pi$)が囲む部分の面積を求める。$(1+\cos\theta)^2=1+2\cos\theta+\cos^2\theta=1+2\cos\theta+\dfrac{1+\cos2\theta}2$ で、$\displaystyle\int_0^{2\pi}\cos\theta\,d\theta=\int_0^{2\pi}\cos2\theta\,d\theta=0$ なので
$$ S=\frac12\int_0^{2\pi}(1+\cos\theta)^2\,d\theta=\frac12\Bigl(2\pi+0+\pi\Bigr)=\frac{3\pi}2=4.712\ldots $$
である。直交座標の式 $(x^2+y^2-x)^2=x^2+y^2$(極座標と極方程式 の例「螺旋・カージオイド・レムニスケート」)で縦に切って積分するより、ずっと簡単である。

螺旋の 1 周目が掃く部分

Archimedes の螺旋 $r=\theta$ の $0\le\theta\le2\pi$ の部分と、始線の $0\le x\le2\pi$ の部分で囲まれた部分(原点から出た半直線が 1 周するあいだに、原点と螺旋の間を掃く部分)の面積は
$$ S=\frac12\int_0^{2\pi}\theta^2\,d\theta=\frac12\cdot\frac{(2\pi)^3}3=\frac{4\pi^3}3=41.34\ldots $$
である。

3 つの例から、次の問いが出てくる。

  1. なぜ $\dfrac12\displaystyle\int r^2\,d\theta$ が面積になるのか。→ thm-pol-area
  2. 2 つの曲線にはさまれた部分はどう計算するか。→ cor-pol-between
  3. 螺旋を 2 周させたり、$r$ が負になる式を使ったりすると、どうなるか。→ ex-pol-spiral-twice、ex-pol-limacon
  4. $x$、$y$ の重積分とはどう関係するか。→ rem-pol-jacobian
    高校の計算この記事での見方ボックス
    扇形の面積 $\frac12\rho^2\varphi$細い部分を扇形で挟むrem-pol-facts、thm-pol-area
    $\frac12\displaystyle\int r^2\,d\theta$面積を角の関数と見て微分するthm-pol-area
    外側の面積 − 内側の面積$\frac12\displaystyle\int(f^2-g^2)\,d\theta$cor-pol-between
    範囲は 1 周以内、$r\ge0$仮定を外すと重なりや余分な輪が入る反例の表
    面積の要素 $r\,dr\,d\theta$変数変換の Jacobi 行列式rem-pol-jacobian

扇形で挟んで公式を導く

図形と、認めること

極方程式の曲線と 2 本の半直線で囲まれた部分

$\alpha<\beta$、$\beta-\alpha\le2\pi$ とし、$f$ を $[\alpha,\beta]$ で連続で $f(\theta)\ge0$ を満たす関数とする。
$$ D(\alpha,\beta)=\{(r\cos\theta,\ r\sin\theta)\mid\alpha\le\theta\le\beta,\ 0\le r\le f(\theta)\} $$
を、曲線 $r=f(\theta)$ と半直線 $\theta=\alpha$、$\theta=\beta$ で囲まれた部分という。偏角 $\theta$ の方向に、原点から曲線上の点 $\bigl(f(\theta)\cos\theta,f(\theta)\sin\theta\bigr)$ までの線分を引き、$\theta$ を $\alpha$ から $\beta$ まで動かしたときに線分が通る部分である。

$\beta-\alpha\le2\pi$ としたのは、線分が同じ場所を 2 回通らないようにするためである(2 回通るとどうなるかは ex-pol-spiral-twice)。

この記事で認める面積の性質

この記事で扱う図形には面積があるとして、次の性質を認める。

  1. (扇形)半径 $\rho\ge0$、中心角 $\varphi$($0<\varphi\le2\pi$)の扇形の面積は $\dfrac12\rho^2\varphi$ である。
  2. (含む図形)図形 $A$ が図形 $B$ に含まれるなら、$A$ の面積は $B$ の面積以下である。
  3. (加法性)図形が 2 つの部分に分かれ、2 つの共通部分が線分や曲線だけなら、全体の面積は 2 つの面積の和である。
    1 は、円の面積 $\pi\rho^2$ を中心角 $2\pi$ に比例して分けたものである。2 と 3 は 定積分と面積 で認めた性質と同じ種類のものである。
扇形の面積を確かめる
  1. 半径 $2$、中心角 $\dfrac\pi3$ の扇形の面積は $\dfrac12\cdot4\cdot\dfrac\pi3=\dfrac{2\pi}3$ である。円の面積 $4\pi$ の $\dfrac{\pi/3}{2\pi}=\dfrac16$ にあたる。
  2. $f(\theta)=c$(定数 $c>0$)とすると、$D(\alpha,\beta)$ は半径 $c$、中心角 $\beta-\alpha$ の扇形そのものである。後の thm-pol-area の公式は $\dfrac12\displaystyle\int_\alpha^\beta c^2\,d\theta=\dfrac12c^2(\beta-\alpha)$ となり、扇形の公式と一致する。

主定理

極座標で表された図形の面積の公式

def-pol-region の図形 $D(\alpha,\beta)$ の面積は
$$ \frac12\int_\alpha^\beta f(\theta)^2\,d\theta $$
である。

証明は、定積分で表された関数 の定理「積分の上端についての微分」と同じ考え方である。面積を、半直線の角 $\theta$ の関数 $S(\theta)$ と見て、細い部分を 2 つの扇形で挟み、$S'(\theta)=\dfrac12f(\theta)^2$ を示す(図 1)。
!FORMULA[77][1395037366][0] は !FORMULA[78][1242830142][0] から !FORMULA[79][1782773758][0] までの部分(青)の面積。!FORMULA[80][1782773758][0] から !FORMULA[81][-446359679][0] までの細い部分(橙)は、半径 !FORMULA[82][1132606116][0] の扇形(緑の破線)を含み、半径 !FORMULA[83][1103053444][0] の扇形(赤の点線)に含まれることを見る図。 $S(\theta)$ は $\alpha$ から $\theta$ までの部分(青)の面積。$\theta$ から $\theta+h$ までの細い部分(橙)は、半径 $m(h)$ の扇形(緑の破線)を含み、半径 $M(h)$ の扇形(赤の点線)に含まれることを見る図。

細い部分を 2 つの扇形で挟む

方針:$S(\theta)$ を $D(\alpha,\theta)$ の面積とする。$S$ が微分可能で $S'(\theta)=\dfrac12f(\theta)^2$ となることを示し、原始関数の差として $S(\beta)$ を求める。
段 1(面積の関数)。$\alpha\le\theta\le\beta$ について $S(\theta)$ を $D(\alpha,\theta)$ の面積とし、$S(\alpha)=0$ とする($\theta=\alpha$ では $D$ は線分なので)。$\alpha\le\theta<\theta+h\le\beta$ とすると、$D(\alpha,\theta+h)$ は $D(\alpha,\theta)$ と $D(\theta,\theta+h)$ に分かれ、共通部分は偏角 $\theta$ の方向の線分($\beta-\alpha=2\pi$ で $\theta+h=\beta$ のときは、偏角 $\alpha$ の方向の線分も。偏角 $\beta=\alpha+2\pi$ は偏角 $\alpha$ と同じ方向だからである)だけである($\beta-\alpha\le2\pi$ なので、ほかに重なる部分はない)。rem-pol-facts の 3 により
$$ S(\theta+h)-S(\theta)=\bigl(D(\theta,\theta+h)\text{ の面積}\bigr) $$
である。
段 2(2 つの扇形で挟む)。$f$ は $[\theta,\theta+h]$ で連続なので、最小値 $m(h)$ と最大値 $M(h)$ をとる(最大値・最小値の定理。証明しない)。$m(h)=f(c_h)$、$M(h)=f(d_h)$ となる点 $c_h$、$d_h$ を $[\theta,\theta+h]$ からとる。偏角が $\theta$ から $\theta+h$ の方向では $m(h)\le f\le M(h)$ なので、$D(\theta,\theta+h)$ は半径 $m(h)$、中心角 $h$ の扇形を含み、半径 $M(h)$、中心角 $h$ の扇形に含まれる。rem-pol-facts の 1・2 により
$$ \frac12m(h)^2\,h\le S(\theta+h)-S(\theta)\le\frac12M(h)^2\,h $$
である。
段 3(差分商を挟む)。$h>0$ で割ると
$$ \frac12f(c_h)^2\le\frac{S(\theta+h)-S(\theta)}h\le\frac12f(d_h)^2 $$
である。$h<0$ のときは、段 1・段 2 を $\theta+h$ から $\theta$ までの部分で行うと $\dfrac12f(c_h)^2\,|h|\le S(\theta)-S(\theta+h)\le\dfrac12f(d_h)^2\,|h|$ となり($c_h$、$d_h$ は $[\theta+h,\theta]$ の点)、$h$ で割ると同じ不等式を得る。
段 4(極限)。$c_h$、$d_h$ は $\theta$ と $\theta+h$ の間にあるので、$h\to0$ で $c_h\to\theta$、$d_h\to\theta$ であり、$f$ の連続性から $f(c_h)^2\to f(\theta)^2$、$f(d_h)^2\to f(\theta)^2$ である。はさみうちの原理 により
$$ S'(\theta)=\lim_{h\to0}\frac{S(\theta+h)-S(\theta)}h=\frac12f(\theta)^2 $$
である($\theta=\alpha,\beta$ では片側の微分係数)。
段 5(積分で表す)。$\dfrac12f(\theta)^2$ は連続で、段 4 により $S$ はその原始関数である。定積分で表された関数 の系「原始関数で定積分を計算する」により
$$ \frac12\int_\alpha^\beta f(\theta)^2\,d\theta=S(\beta)-S(\alpha)=S(\beta)-0 $$
であり、$S(\beta)$ は $D(\alpha,\beta)$ の面積である。$\square$

この証明は、定積分で表された関数 で $\displaystyle\int_a^xf(t)\,dt$ の導関数が $f(x)$ になることを示したときの「細い帯を 2 つの長方形で挟む」を、「細い部分を 2 つの扇形で挟む」に取り替えたものである。長方形の面積 $f\cdot h$ が扇形の面積 $\dfrac12f^2\cdot h$ に替わったので、積分するものが $\dfrac12f^2$ になる。区間を細かく分けて内側と外側の扇形の和で挟む形の証明は、大学向けの記事 極座標 の定理「極座標による面積の公式」にある。

扇形の和が面積に近づく様子

カージオイド $r=1+\cos\theta$ で、$0\le\theta\le2\pi$ を $n$ 等分し、各部分で $f$ の最小値を半径とする扇形(内側の扇形)と、最大値を半径とする扇形(外側の扇形)の面積の和を計算すると、次のようになる。

$n$内側の扇形の和外側の扇形の和
$6$$2.6179\ldots$$6.8067\ldots$
$12$$3.6651\ldots$$5.7595\ldots$
$48$$4.4505\ldots$$4.9741\ldots$

どの $n$ でも $\dfrac{3\pi}2=4.7123\ldots$(ex-pol-start-cardioid)を挟み、$n$ を大きくすると両方が近づいていく。$n=6$ の内側の和を手で確かめる。6 つの部分 $\Bigl[\dfrac{k\pi}3,\dfrac{(k+1)\pi}3\Bigr]$ での $1+\cos\theta$ の最小値は、順に $\dfrac32,\ \dfrac12,\ 0,\ 0,\ \dfrac12,\ \dfrac32$($\cos$ は $[0,\pi]$ で減少、$[\pi,2\pi]$ で増加するので、各部分の端で最小)である。扇形の面積の和は
$$ \frac12\cdot\frac\pi3\Bigl(\frac94+\frac14+0+0+\frac14+\frac94\Bigr)=\frac\pi6\cdot5=\frac{5\pi}6=2.6179\ldots $$
で、表と一致する(図 2 は $n=12$ の内側の扇形)。

カージオイド !FORMULA[184][1023378286][0](面積 !FORMULA[185][-711389768][0])と、!FORMULA[186][1134102672][0] の内側の扇形(橙)。扇形の和は面積より小さく、!FORMULA[187][38042][0] を増やすと面積に近づくことを見る図。 カージオイド $r=1+\cos\theta$(面積 $\frac{3\pi}2$)と、$n=12$ の内側の扇形(橙)。扇形の和は面積より小さく、$n$ を増やすと面積に近づくことを見る図。

公式を使う面積の計算
  1. レムニスケート $r^2=\cos2\theta$。$r\ge0$ で点があるのは $\cos2\theta\ge0$ の方向で、右の輪は $-\dfrac\pi4\le\theta\le\dfrac\pi4$ で $f(\theta)=\sqrt{\cos2\theta}$ である。その面積は
    $$ \frac12\int_{-\pi/4}^{\pi/4}\cos2\theta\,d\theta=\frac12\Bigl[\frac{\sin2\theta}2\Bigr]_{-\pi/4}^{\pi/4}=\frac12\cdot\Bigl(\frac12+\frac12\Bigr)=\frac12 $$
    である。左の輪($\dfrac{3\pi}4\le\theta\le\dfrac{5\pi}4$)も同じく $\dfrac12$ で、2 つの輪を合わせた面積は $1$ である。
  2. 正葉曲線 $r=\cos3\theta$ の 1 枚の花びら。$r\ge0$ の約束では、$\cos3\theta\ge0$ となる $-\dfrac\pi6\le\theta\le\dfrac\pi6$ の部分が 1 枚の花びらで、面積は
    $$ \frac12\int_{-\pi/6}^{\pi/6}\cos^23\theta\,d\theta=\frac14\int_{-\pi/6}^{\pi/6}(1+\cos6\theta)\,d\theta=\frac14\cdot\frac\pi3=\frac\pi{12} $$
    である($\displaystyle\int_{-\pi/6}^{\pi/6}\cos6\theta\,d\theta=\Bigl[\frac{\sin6\theta}6\Bigr]_{-\pi/6}^{\pi/6}=0$)。$\cos3\theta\ge0$ となる $\theta$ の範囲は $0\le\theta<2\pi$ に 3 か所あり、花びらは 3 枚で、合計は $\dfrac\pi4$ である。

2 つの曲線にはさまれた部分

2 つの極方程式の曲線にはさまれた部分の面積

$\alpha<\beta$、$\beta-\alpha\le2\pi$ とし、$f$、$g$ を $[\alpha,\beta]$ で連続で $0\le g(\theta)\le f(\theta)$ を満たす関数とする。
$$ E=\{(r\cos\theta,\ r\sin\theta)\mid\alpha\le\theta\le\beta,\ g(\theta)\le r\le f(\theta)\} $$
の面積は
$$ \frac12\int_\alpha^\beta\bigl(f(\theta)^2-g(\theta)^2\bigr)\,d\theta $$
である。

外側の部分から内側の部分を除く

方針:$f$ で作った部分を、$g$ で作った部分と $E$ に分け、thm-pol-area を 2 回使う。
段 1(分ける)。$f$ で作った $D_f=\{0\le r\le f(\theta)\}$ の点は、$r\le g(\theta)$ なら $g$ で作った $D_g=\{0\le r\le g(\theta)\}$ に、$r\ge g(\theta)$ なら $E$ に入る。$D_g$ と $E$ の共通部分は曲線 $r=g(\theta)$ の上の点だけなので、rem-pol-facts の 3 により
$$ (D_f\text{ の面積})=(D_g\text{ の面積})+(E\text{ の面積}) $$
である。
段 2(公式を使う)。thm-pol-area により $D_f$、$D_g$ の面積はそれぞれ $\dfrac12\displaystyle\int_\alpha^\beta f^2\,d\theta$、$\dfrac12\displaystyle\int_\alpha^\beta g^2\,d\theta$ である。段 1 の式から $E$ の面積はその差であり、積分の線形性から $\dfrac12\displaystyle\int_\alpha^\beta(f^2-g^2)\,d\theta$ となる。$\square$

円とカージオイド、2 つの円
  1. カージオイド $r=1+\cos\theta$ の内側で、円 $r=1$ の外側にある部分。$1\le1+\cos\theta$ となるのは $\cos\theta\ge0$、すなわち $-\dfrac\pi2\le\theta\le\dfrac\pi2$ の方向である。cor-pol-between により
    $$ \frac12\int_{-\pi/2}^{\pi/2}\bigl((1+\cos\theta)^2-1\bigr)\,d\theta=\frac12\int_{-\pi/2}^{\pi/2}\bigl(2\cos\theta+\cos^2\theta\bigr)\,d\theta=\frac12\Bigl(4+\frac\pi2\Bigr)=2+\frac\pi4 $$
    である。$\displaystyle\int_{-\pi/2}^{\pi/2}\cos\theta\,d\theta=2$、$\displaystyle\int_{-\pi/2}^{\pi/2}\cos^2\theta\,d\theta=\frac\pi2$ を使った。
  2. 円 $r=2\cos\theta$ の内側で、円 $r=1$ の外側にある部分(三日月形)。2 つの円は $2\cos\theta=1$、すなわち $\theta=\pm\dfrac\pi3$ の方向で交わる。
    $$ \frac12\int_{-\pi/3}^{\pi/3}\bigl(4\cos^2\theta-1\bigr)\,d\theta=\frac12\int_{-\pi/3}^{\pi/3}\bigl(1+2\cos2\theta\bigr)\,d\theta=\frac12\Bigl[\theta+\sin2\theta\Bigr]_{-\pi/3}^{\pi/3}=\frac12\Bigl(\frac{2\pi}3+\sqrt3\Bigr)=\frac\pi3+\frac{\sqrt3}2 $$
    である($4\cos^2\theta-1=2(1+\cos2\theta)-1$)。数値では $1.9132\ldots$ である。

左はカージオイド !FORMULA[251][1023378286][0] の内側で円 !FORMULA[252][36703106][0] の外側の部分(面積 !FORMULA[253][-420921448][0])、右は円 !FORMULA[254][1250722260][0] の内側で円 !FORMULA[255][36703106][0] の外側の部分(面積 !FORMULA[256][1330849056][0])。どちらも原点から見て外側の曲線と内側の曲線にはさまれていることを見る図。 左はカージオイド $r=1+\cos\theta$ の内側で円 $r=1$ の外側の部分(面積 $2+\frac\pi4$)、右は円 $r=2\cos\theta$ の内側で円 $r=1$ の外側の部分(面積 $\frac\pi3+\frac{\sqrt3}2$)。どちらも原点から見て外側の曲線と内側の曲線にはさまれていることを見る図。
媒介変数表示の曲線が囲む面積の公式 $\dfrac12\displaystyle\int(xy'-yx')\,dt$ に、$x=f(\theta)\cos\theta$、$y=f(\theta)\sin\theta$ を入れると、$xy'-yx'=f(\theta)^2$ となって thm-pol-area の式が出る(媒介変数表示の曲線が囲む面積 の例「極方程式の曲線に当てはめる」)。どちらの公式も、原点から曲線を見込む細い部分を足し合わせている。極座標の公式は、その細い部分を扇形として直接数えたものである。

例と反例

thm-pol-area の仮定を 1 つ外したり、曲線のない方向まで積分したりすると、$\dfrac12\displaystyle\int r^2\,d\theta$ は面積と一致しなくなる。

外した仮定崩れる主張ボックス
$\beta-\alpha\le2\pi$(1 周以内)公式の値が図形の面積ex-pol-spiral-twice
$f(\theta)\ge0$公式の値が曲線の囲む部分の面積ex-pol-limacon
曲線に点がある方向だけで積分する公式の値が面積ex-pol-lemniscate-range
反例:螺旋を 2 周させる

螺旋 $r=\theta$ を $0\le\theta\le4\pi$ で考え、原点から螺旋上の点までの線分が通る部分
$$ D=\{(r\cos\theta,\ r\sin\theta)\mid0\le\theta\le4\pi,\ 0\le r\le\theta\} $$
の面積を求める。公式をそのまま使うと $\dfrac12\displaystyle\int_0^{4\pi}\theta^2\,d\theta=\dfrac{32\pi^3}3$ となる。
実際の $D$ を調べる。偏角 $\varphi$($0<\varphi<2\pi$)の方向の点は、$\theta=\varphi$ のときの線分(長さ $\varphi$)と、$\theta=\varphi+2\pi$ のときの線分(長さ $\varphi+2\pi$)で通られる。同じ方向の線分なので長いほうが短いほうを含み、$D$ のこの方向の部分は長さ $\varphi+2\pi$ の線分である。始線の方向($\varphi=0$)では $\theta=0,2\pi,4\pi$ の線分(長さ $0$、$2\pi$、$4\pi$)が通り、いちばん長いのは $\theta=4\pi$ のものである。つまり $D$ は $2\pi\le\theta\le4\pi$ の 1 周分だけで作った部分と同じで、thm-pol-area により面積は
$$ \frac12\int_{2\pi}^{4\pi}\theta^2\,d\theta=\frac12\cdot\frac{(4\pi)^3-(2\pi)^3}3=\frac{28\pi^3}3 $$
である。公式をそのまま使った値との差 $\dfrac{4\pi^3}3$ は、1 周目の部分(ex-pol-start-spiral)の面積で、2 回数えられた(図 4 の左)。
満たす性質:$f(\theta)=\theta$ は連続で $0$ 以上。満たさない性質:$\beta-\alpha\le2\pi$。破る主張:thm-pol-area の「公式の値が $D$ の面積」。証明の段 1 で、重なりがないことを使っていた。

反例:$r$ が負になる式(リマソン)

$r=1+2\cos\theta$ を考える。$1+2\cos\theta\ge0$ となるのは $\cos\theta\ge-\dfrac12$、すなわち $-\dfrac{2\pi}3\le\theta\le\dfrac{2\pi}3$ の方向なので、$r\ge0$ の約束では、曲線はこの方向の部分だけで、1 つの閉じた曲線になる(図 4 の右の実線)。囲む部分の面積は、$(1+2\cos\theta)^2=3+4\cos\theta+2\cos2\theta$ を使って
$$ \frac12\int_{-2\pi/3}^{2\pi/3}\bigl(3+4\cos\theta+2\cos2\theta\bigr)\,d\theta=\frac12\Bigl(4\pi+4\sqrt3-\sqrt3\Bigr)=2\pi+\frac{3\sqrt3}2=8.881\ldots $$
である($\displaystyle\int_{-2\pi/3}^{2\pi/3}\cos\theta\,d\theta=2\sin\frac{2\pi}3=\sqrt3$、$\displaystyle\int_{-2\pi/3}^{2\pi/3}\cos2\theta\,d\theta=\sin\frac{4\pi}3=-\frac{\sqrt3}2$)。
ところが、$\theta$ の範囲を気にせずに $0\le\theta\le2\pi$ で積分すると $\dfrac12\displaystyle\int_0^{2\pi}(1+2\cos\theta)^2\,d\theta=\dfrac12(6\pi+0+0)=3\pi=9.424\ldots$ となり、値が違う。$\dfrac{2\pi}3<\theta<\dfrac{4\pi}3$ では $1+2\cos\theta<0$ だが、2 乗すると正になるので、その分 $\dfrac12\displaystyle\int_{2\pi/3}^{4\pi/3}(1+2\cos\theta)^2\,d\theta=\pi-\dfrac{3\sqrt3}2=0.543\ldots$ が余分に足された。$r<0$ も許す流儀(極座標と極方程式 の反例「r<0 も許すと図形が変わる」)では、この部分は外側の曲線の内部にもう 1 つの輪(図 4 の右の破線)を描き、余分な値はその輪の面積にあたる。輪の部分は外側の曲線の囲む部分に含まれているので、2 回数えたことになる。
満たさない性質:$f(\theta)\ge0$。破る主張:thm-pol-area の「公式の値が囲まれた部分の面積」。

左は螺旋 !FORMULA[309][-267538285][0] の 1 周目(赤)と 2 周目(青)。!FORMULA[310][-1282162503][0] で公式を使うと、赤の部分を 2 回数える。右はリマソン !FORMULA[311][-1119141586][0]。!FORMULA[312][942248352][0] の部分(緑)だけが曲線で、!FORMULA[313][36702114][0] を許すと内側の輪(破線)が加わることを見る図。 左は螺旋 $r=\theta$ の 1 周目(赤)と 2 周目(青)。$0\le\theta\le4\pi$ で公式を使うと、赤の部分を 2 回数える。右はリマソン $r=1+2\cos\theta$。$r\ge0$ の部分(緑)だけが曲線で、$r<0$ を許すと内側の輪(破線)が加わることを見る図。

反例:曲線のない方向まで積分する(レムニスケート)

レムニスケート $r^2=\cos2\theta$ の面積は $1$ である(ex-pol-basic の 1)。$r^2$ の式がそのまま分かっているからといって、$0\le\theta\le2\pi$ で $\dfrac12\displaystyle\int r^2\,d\theta$ を計算すると
$$ \frac12\int_0^{2\pi}\cos2\theta\,d\theta=\frac12\Bigl[\frac{\sin2\theta}2\Bigr]_0^{2\pi}=0 $$
となる。$\cos2\theta<0$ の方向(たとえば $\theta=\dfrac\pi2$)には $r^2=\cos2\theta$ を満たす $r\ge0$ がなく、曲線の点がない。そこで負の値を積分したので、2 つの輪の面積 $1$ がちょうど打ち消された。
満たさない性質:$[\alpha,\beta]$ のすべての方向で $f(\theta)$ が定まること(def-pol-region の仮定)。破る主張:公式の値が面積であること。極方程式の図形の面積を求めるときは、まず曲線に点がある $\theta$ の範囲を調べる。

大学数学で見る

大学数学で見ると:面積の要素 $r\,dr\,d\theta$

大学では、平面の図形 $D$ の面積を 2 重積分 $\displaystyle\iint_D1\,dx\,dy$ で表す。極座標 $x=r\cos\theta$、$y=r\sin\theta$ に変数を取り替えると、$dx\,dy$ は $r\,dr\,d\theta$ に替わる。$r$ は、写像 $(r,\theta)\mapsto(r\cos\theta,r\sin\theta)$ の Jacobi 行列式(Jacobi行列 の行列式)で、極座標の細かい目盛りの「ほぼ長方形」の面積 $\Delta r\cdot r\Delta\theta$ の $r$ にあたる(極座標と極方程式 の注意「大学数学で見ると:面積の要素 r dr dθ」)。def-pol-region の図形では
$$ \iint_D1\,dx\,dy=\int_\alpha^\beta\Bigl(\int_0^{f(\theta)}r\,dr\Bigr)d\theta=\int_\alpha^\beta\frac12f(\theta)^2\,d\theta $$
となり、thm-pol-area と同じ式が出る。変数変換の公式と Jacobi 行列式の計算は、大学向けの記事 極座標 の節「変数変換の Jacobi 行列式」にある(本記事では証明しない)。

大学数学で見ると:Gauss 積分

変数変換 $dx\,dy=r\,dr\,d\theta$ は、$\displaystyle\int_{-\infty}^\infty e^{-x^2}\,dx=\sqrt\pi$ の有名な計算にも使われる。この積分を 2 乗して $\displaystyle\iint e^{-(x^2+y^2)}\,dx\,dy$ とし、極座標に直すと $\displaystyle\int_0^{2\pi}\int_0^\infty e^{-r^2}r\,dr\,d\theta=2\pi\cdot\frac12=\pi$ となる。$e^{-r^2}r$ は $-\dfrac12e^{-r^2}$ の導関数なので、$x$ だけでは原始関数が書けない $e^{-x^2}$ が、$r$ を掛けたおかげで積分できるようになる(無限に広がる範囲の 2 重積分を扱う細部は 極座標 の定理「Gauss積分」を参照)。高校数学の範囲では、Wallis 積分と比べて同じ値を求める方法を Gauss積分(高校数学) で扱う。

さらに先へ

  • 長さ:極方程式 $r=f(\theta)$ の曲線の長さは $\displaystyle\int_\alpha^\beta\sqrt{f(\theta)^2+f'(\theta)^2}\,d\theta$ で、媒介変数表示 $x=f(\theta)\cos\theta$、$y=f(\theta)\sin\theta$ に 媒介変数表示と曲線の長さ の公式を使うと得られる($x'^2+y'^2=f^2+f'^2$)。カージオイド $r=1+\cos\theta$ では $f^2+f'^2=2+2\cos\theta=4\cos^2\dfrac\theta2$ なので、長さは $\displaystyle\int_0^{2\pi}2\Bigl|\cos\frac\theta2\Bigr|\,d\theta=8$ である。
  • 空間:空間の球座標では、体積の要素が $r^2\sin\phi\,dr\,d\phi\,d\theta$ になる($\phi$ は $z$ 軸から測った角)。球の体積 $\dfrac43\pi a^3$ も、この要素を積分して求められる(極座標 の節「空間の円柱座標と球座標」)。
  • 教科書での公式の述べ方と、正葉曲線・2 曲線の間の例は SH16 §7.4 にある(Theorem 7.6)。

関連項目

参考文献

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