曲線の凹凸と接線

同義語:曲線の凹凸接線の不等式

概要

曲線の凹凸(convexity of curves)とは、グラフが下に凸か上に凸かという形のことである。区間 $I$ 上の関数 $f$ が下に凸(凸関数)であるとは、$I$ のすべての $x,y$ と $0\le\lambda\le1$ について $f((1-\lambda)x+\lambda y)\le(1-\lambda)f(x)+\lambda f(y)$、すなわちどの弦もグラフより下に来ないことをいう。$I$ で連続で内部で 2 回微分可能な $f$ は、内部で $f''\ge0$ なら下に凸である(平均値の定理で示せる)。開区間で $f''\ge0$ なら、グラフはどの点での接線よりも下に来ない。ここから $e^x\ge1+x$、$x>0$ での $\log x\le x-1$ が従い、$\log$ の弦の中点の不等式は 2 数の相加相乗平均の不等式と同じ内容である。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 導関数, 平均値の定理, 指数関数, 対数関数

高校での出発点:グラフの凹凸

高校の微分では、「2 階導関数 $f''(x)$ が正である区間では、曲線 $y=f(x)$ は下に凸である」と習う。$y=x^2$ や $y=e^x$ のように、お椀を上向きに置いた形が下に凸であり、$y=\log x$ のように、お椀を伏せた形が上に凸である。
しかし、「下に凸」とは式で言うとどういうことか。なぜ $f''$ の符号で判定できるのか。この記事では次の問いに答える。

  • 「下に凸」を式で言うと何か。→ def-ccv-convex
  • なぜ 2 階導関数の符号で判定できるのか。→ thm-ccv-second-derivative
  • 下に凸な関数のグラフと接線は、どちらが上にあるか。→ thm-ccv-tangent
  • これが相加平均・相乗平均とどう関係するか。→ ex-ccv-amgm
    高校の計算この記事の言葉大学での見方
    $f''>0$ の区間で「下に凸」弦の不等式による定義と 2 階導関数による判定凸関数
    増減表で $e^x\ge1+x$ を示す接線の不等式凸関数のグラフを下から支える直線
    $\log$ のグラフは「上に凸」上に凸(凹関数)弦の中点の不等式が 2 数の相加相乗平均の不等式になる
    以下、$\log$ は自然対数を表す。

弦がグラフより上にあること

まず、下に凸な関数のグラフで何が起きているかを数で見る。

y = x^2 の弦とグラフ

$f(x)=x^2$ のグラフ上の 2 点 $(0,0)$ と $(2,4)$ を線分(弦)で結ぶ。

  • 中点:横座標 $\frac{0+2}2=1$ で、弦の高さは $\frac{0+4}2=2$、グラフの高さは $f(1)=1$ である。弦のほうが高い。
  • $0$ と $2$ を $1:3$ に内分する点:横座標 $\frac34\cdot0+\frac14\cdot2=\frac12$ で、弦の高さは $\frac34\cdot0+\frac14\cdot4=1$、グラフの高さは $f\bigl(\frac12\bigr)=\frac14$ である。これも弦のほうが高い。
    どちらの点でも、弦はグラフより上にある。

一般に、$x< y$ のとき、$x$ と $y$ の間の点は $0\le\lambda\le1$ を使って
$$ z=(1-\lambda)x+\lambda y $$
と書ける。$z$ は $x$ と $y$ を $\lambda:(1-\lambda)$ に内分する点であり、$\lambda=0$ で $z=x$、$\lambda=1$ で $z=y$、$\lambda=\frac12$ で中点である。

弦の高さを式で書く

2 点 $(x,f(x))$、$(y,f(y))$($x< y$)を結ぶ直線の、横座標 $z=(1-\lambda)x+\lambda y$ での高さを計算する。この直線の傾きは $\frac{f(y)-f(x)}{y-x}$ であり、$z-x=\lambda(y-x)$ なので、高さは
$$ f(x)+\frac{f(y)-f(x)}{y-x}\cdot\lambda(y-x)=f(x)+\lambda\bigl(f(y)-f(x)\bigr)=(1-\lambda)f(x)+\lambda f(y) $$
である。つまり、弦の上の点の高さは、両端の高さを同じ重み $1-\lambda$、$\lambda$ で平均したものである。
ex-ccv-chord-numeric の 2 つ目の点は $x=0$、$y=2$、$\lambda=\frac14$ の場合で、弦の高さは $\frac34\cdot0+\frac14\cdot4=1$ だった。

「弦がグラフより上にある」ことを、そのまま定義にする。

下に凸な関数(凸関数)

$I$ を区間とし、$f$ を $I$ で定義された関数とする。

  1. $I$ のすべての点 $x,y$ と、$0\le\lambda\le1$ を満たすすべての $\lambda$ について
    $$ f\bigl((1-\lambda)x+\lambda y\bigr)\le(1-\lambda)f(x)+\lambda f(y) $$
    が成り立つとき、$f$ は $I$ で下に凸である、または $I$ 上の凸関数であるという。
  2. さらに、$x\ne y$ かつ $0<\lambda<1$ のときは常に $<$(等号なし)が成り立つとき、$f$ は $I$ で狭義に下に凸である(狭義凸関数である)という。
  3. $-f$ が下に凸(狭義に下に凸)であるとき、$f$ は上に凸(狭義に上に凸)である、または凹関数(狭義凹関数)であるという。上に凸な関数では、1 の不等号の向きが逆になる。

左辺はグラフの高さ、右辺は弦の高さ(rem-ccv-chord-height)である。下に凸とは「どの弦もグラフより下に来ない」ことである。
図1:y=x^2 の弦は、両端の間のどの点でもグラフより上にある 図1:y=x^2 の弦は、両端の間のどの点でもグラフより上にある

図 1 の数値

図 1 は $f(x)=x^2$、$x=-1$、$y=2$、$\lambda=\frac13$ でかいてある。
$$ z=\frac23\cdot(-1)+\frac13\cdot2=-\frac23+\frac23=0 $$
が内分点である。弦の高さは rem-ccv-chord-height の式で
$$ \frac23f(-1)+\frac13f(2)=\frac23\cdot1+\frac13\cdot4=\frac23+\frac43=2 $$
であり、グラフの高さは $f(0)=0$ である。弦のほうが $2-0=2$ だけ高い。

定義から確かめる例
  1. $f(x)=x^2$ は $\mathbb{R}$ で狭義に下に凸である。弦の高さからグラフの高さを引いて整理する。$\bigl((1-\lambda)x+\lambda y\bigr)^2=(1-\lambda)^2x^2+2\lambda(1-\lambda)xy+\lambda^2y^2$ なので
    $$ \begin{aligned} &(1-\lambda)x^2+\lambda y^2-\bigl((1-\lambda)x+\lambda y\bigr)^2\\ &=\bigl((1-\lambda)-(1-\lambda)^2\bigr)x^2-2\lambda(1-\lambda)xy+(\lambda-\lambda^2)y^2\\ &=\lambda(1-\lambda)x^2-2\lambda(1-\lambda)xy+\lambda(1-\lambda)y^2=\lambda(1-\lambda)(x-y)^2 \end{aligned} $$
    である($(1-\lambda)-(1-\lambda)^2=(1-\lambda)\lambda$、$\lambda-\lambda^2=\lambda(1-\lambda)$ を使った)。これは $0$ 以上で、$x\ne y$、$0<\lambda<1$ なら正である。図 1 の場合は $\frac13\cdot\frac23\cdot(-1-2)^2=\frac29\cdot9=2$ で、ex-ccv-fig1-numeric で求めた差 $2$ と一致する。
  2. 1 次関数 $f(x)=px+q$ では、$f\bigl((1-\lambda)x+\lambda y\bigr)=p(1-\lambda)x+p\lambda y+q$ と $(1-\lambda)f(x)+\lambda f(y)=(1-\lambda)(px+q)+\lambda(py+q)=p(1-\lambda)x+p\lambda y+q$ が等しい。よって定義の 1 は常に等号で成り立ち、1 次関数は下に凸かつ上に凸であるが、狭義には下に凸でない。グラフが直線なので、弦はグラフに重なる。
  3. $f(x)=|x|$ は下に凸である。三角不等式 $|s+t|\le|s|+|t|$ を $s=(1-\lambda)x$、$t=\lambda y$ に使うと $|(1-\lambda)x+\lambda y|\le|(1-\lambda)x|+|\lambda y|$ である。$0\le\lambda\le1$ なので $1-\lambda\ge0$、$\lambda\ge0$ であり、$|(1-\lambda)x|=(1-\lambda)|x|$、$|\lambda y|=\lambda|y|$ である。よって $|(1-\lambda)x+\lambda y|\le(1-\lambda)|x|+\lambda|y|$ となり、これは定義の 1 の不等式である。$x=-1$、$y=1$、$\lambda=\frac12$ では左辺 $0$、右辺 $1$ で等号にならないが、$x=1$、$y=2$、$\lambda=\frac12$ では左辺 $\frac32$、右辺 $\frac12+1=\frac32$ で等号になる。よって狭義には下に凸でない。

2 階導関数による判定

定義を直接確かめるのは、$x^2$ のような簡単な関数以外では難しい。そこで、弦の不等式を「傾きの比較」に言い換える。

左右の弦の傾きの比較

$f$ を区間 $I$ で定義された関数とし、$x< y$ を $I$ の点、$0<\lambda<1$、$z:=(1-\lambda)x+\lambda y$ とする。このとき、次の 2 つは同値である。

  1. $f(z)\le(1-\lambda)f(x)+\lambda f(y)$($z$ で弦がグラフより下に来ない)
  2. $\dfrac{f(z)-f(x)}{z-x}\le\dfrac{f(y)-f(z)}{y-z}$(左の弦の傾き $\le$ 右の弦の傾き)
    1 と 2 の $\le$ をともに $<$ に変えても同値である。
両辺に正の数を掛けて変形する

段 1($z$ の位置)。$z-x=(1-\lambda)x+\lambda y-x=\lambda(y-x)$、$y-z=y-(1-\lambda)x-\lambda y=(1-\lambda)(y-x)$ である。$0<\lambda<1$ かつ $x< y$ なので、どちらも正であり、$x< z< y$ である。
段 2(1 を書き直す)。$f(z)=(1-\lambda)f(z)+\lambda f(z)$ なので、1 は
$$ (1-\lambda)f(z)+\lambda f(z)\le(1-\lambda)f(x)+\lambda f(y) $$
と同じであり、移項すると
$$ (1-\lambda)\bigl(f(z)-f(x)\bigr)\le\lambda\bigl(f(y)-f(z)\bigr) $$
と同じである。
段 3(割る)。両辺を正の数 $\lambda(1-\lambda)(y-x)$ で割っても不等号の向きは変わらない。左辺は $\frac{f(z)-f(x)}{\lambda(y-x)}=\frac{f(z)-f(x)}{z-x}$、右辺は $\frac{f(y)-f(z)}{(1-\lambda)(y-x)}=\frac{f(y)-f(z)}{y-z}$ になる(段 1)。これは 2 である。段 2・段 3 の変形はどれも逆にたどれるので、1 と 2 は同値である。$<$ の場合も同じ変形で同値である。$\square$

傾きで確かめる

$f(x)=x^2$、$x=0$、$z=1$、$y=3$ とする($\lambda=\frac13$)。左の弦の傾きは $\frac{1-0}{1-0}=1$、右の弦の傾きは $\frac{9-1}{3-1}=4$ で、$1\le4$ である。弦の高さで見ても、$z=1$ での弦の高さは $\frac23\cdot0+\frac13\cdot9=3$、グラフの高さは $1$ で、$1\le3$ である。prop-ccv-slopes のとおり、2 つの見方は同じ結論になる。

左右の弦の傾きは、平均値の定理によって、それぞれの区間の中の点での接線の傾き(微分係数)に等しい。下に凸なグラフでは、右へ行くほど接線の傾きが大きくなるので、右の弦のほうが傾きが大きい。
図2:左の弦と右の弦の傾きは、それぞれ ξ1, ξ2 での接線の傾きに等しい。ξ1<ξ2 なので右の弦のほうが急である 図2:左の弦と右の弦の傾きは、それぞれ ξ1, ξ2 での接線の傾きに等しい。ξ1<ξ2 なので右の弦のほうが急である

図 2 の数値

図 2 は ex-ccv-slopes-numeric の場合($f(x)=x^2$、$x=0$、$z=1$、$y=3$)でかいてある。$f'(x)=2x$ である。

  • 左の弦の傾きは $1$ である。$f'(\xi_1)=1$ となるのは $2\xi_1=1$、つまり $\xi_1=\frac12$ で、確かに $0<\frac12<1$ である。
  • 右の弦の傾きは $4$ である。$f'(\xi_2)=4$ となるのは $2\xi_2=4$、つまり $\xi_2=2$ で、確かに $1<2<3$ である。
    $\xi_1=\frac12<2=\xi_2$ であり、傾き $f'(\xi_1)=1$ は $f'(\xi_2)=4$ より小さい。

証明では、高校で習う次の事実を使う:区間で $g'(x)\ge0$ なら $g$ はその区間で増加し($s< t$ なら $g(s)\le g(t)$)、$g'(x)>0$ なら狭義に増加する($s< t$ なら $g(s)< g(t)$)。これは平均値の定理から従う(Leb26 Proposition 4.2.7・4.2.8)。この記事では、これを前提として使う。

2 階導関数による凸性の判定

$I$ を区間とし、$f$ を $I$ で連続な関数で、$I$ の端点を除いた部分(内部)で 2 回微分可能であるとする。

  1. $I$ の内部で常に $f''(x)\ge0$ ならば、$f$ は $I$ で下に凸である。
  2. $I$ の内部で常に $f''(x)>0$ ならば、$f$ は $I$ で狭義に下に凸である。
    $f''(x)\le0$($f''(x)<0$)ならば、同じく上に凸(狭義に上に凸)である。
平均値の定理で弦の傾きを接線の傾きに置きかえる

方針:prop-ccv-slopes により、左右の弦の傾きを比べればよい。平均値の定理で、弦の傾きを $f'$ の値に置きかえ、$f'$ が増加することを使う。
段 1(示すことを絞る)。$x,y\in I$、$0\le\lambda\le1$ とする。$x=y$ のとき、または $\lambda=0$、$\lambda=1$ のとき、定義の不等式の両辺は $f(x)$ または $f(y)$ で等しい。$x>y$ のときは、$x$ と $y$、$\lambda$ と $1-\lambda$ を入れかえると、$(1-\lambda)x+\lambda y$ も $(1-\lambda)f(x)+\lambda f(y)$ も変わらないので、$x< y$ の場合に帰着する。よって $x< y$、$0<\lambda<1$ の場合を示せばよい。$z:=(1-\lambda)x+\lambda y$ とおくと、$x< z< y$ である。
段 2(平均値の定理)。$f$ は区間 $[x,z]$ で連続、その内部で微分可能なので、平均値の定理により
$$ \frac{f(z)-f(x)}{z-x}=f'(\xi_1) $$
を満たす $\xi_1$ が $x<\xi_1< z$ の範囲にある。同様に、$[z,y]$ で
$$ \frac{f(y)-f(z)}{y-z}=f'(\xi_2) $$
を満たす $\xi_2$ が $z<\xi_2< y$ の範囲にある。$\xi_1< z<\xi_2$ なので $\xi_1<\xi_2$ であり、どちらも $I$ の内部の点である。
段 3($f'$ が増加する)。1 の仮定のもとでは、$f'$ の導関数 $f''$ が $I$ の内部で $0$ 以上なので、上で述べた事実を $g=f'$ に使って、$f'$ は $I$ の内部で増加する。よって $f'(\xi_1)\le f'(\xi_2)$ である。2 の仮定のもとでは、同様に $f'$ は狭義に増加し、$f'(\xi_1)< f'(\xi_2)$ である。
段 4(結論)。段 2 と段 3 から、1 の仮定のもとで
$$ \frac{f(z)-f(x)}{z-x}=f'(\xi_1)\le f'(\xi_2)=\frac{f(y)-f(z)}{y-z} $$
であり、prop-ccv-slopes により $f(z)\le(1-\lambda)f(x)+\lambda f(y)$ である。2 の仮定のもとでは $<$ が成り立つので、同じく $<$ を得る。
上に凸の場合は、$-f$ に 1・2 を使えばよい($(-f)''=-f''$ である)。$\square$

証明で使ったのは「$f'$ が増加する(狭義に増加する)」ことだけである。$f''$ の符号は、そのことを確かめる手段である。

2 階導関数で判定する
  1. $f(x)=e^x$:$f'(x)=e^x$、$f''(x)=e^x>0$ なので、$\mathbb{R}$ で狭義に下に凸である。
  2. $f(x)=\log x$($x>0$):$f'(x)=\frac1x$、$f''(x)=-\frac1{x^2}<0$ なので、$(0,\infty)$ で狭義に上に凸である。
  3. $f(x)=\frac1{\sqrt x}=x^{-\frac12}$($x>0$):$f'(x)=-\frac12x^{-\frac32}$、$f''(x)=\frac34x^{-\frac52}>0$ なので、$(0,\infty)$ で狭義に下に凸である。
  4. $f(x)=\sqrt x=x^{\frac12}$($x\ge0$):$f'(x)=\frac12x^{-\frac12}$、$f''(x)=-\frac14x^{-\frac32}<0$($x>0$)であり、$f$ は $[0,\infty)$ で連続なので、端点 $0$ を含めて $[0,\infty)$ で狭義に上に凸である。
  5. $f(x)=\sin x$($0\le x\le\pi$):$f''(x)=-\sin x$ は $0< x<\pi$ で負であり、$f$ は $[0,\pi]$ で連続なので、$[0,\pi]$ で狭義に上に凸である。
    数で確かめる:2 で $x=1$、$y=9$、$\lambda=\frac12$ とすると、グラフの高さは $\log5=1.609\ldots$、弦の高さは $\frac{\log1+\log9}2=\log3=1.098\ldots$ で、上に凸のとおりグラフのほうが高い。

上に凸な関数 $\log$ の弦の不等式を、弦の中点($\lambda=\frac12$)で使うと、2 数の相加平均と相乗平均の不等式になる。

相加相乗平均の不等式を対数の凹性から導く

$a,b>0$ とする。$\log$ は $(0,\infty)$ で狭義に上に凸なので(ex-ccv-second-derivative-examples の 2)、定義の不等式を逆向きにして $x=a$、$y=b$、$\lambda=\frac12$ に使うと
$$ \frac{\log a+\log b}2\le\log\frac{a+b}2 $$
である。左辺は $\frac12\log(ab)=\log\sqrt{ab}$ に等しい(対数の性質 $\log a+\log b=\log(ab)$、$\frac12\log c=\log\sqrt c$)。よって $\log\sqrt{ab}\le\log\frac{a+b}2$ である。$\log$ は狭義に増加する関数なので、$\sqrt{ab}\le\frac{a+b}2$ を得る。
等号:$a\ne b$ なら、狭義に上に凸であることから上の不等式は $<$ になり、$\sqrt{ab}<\frac{a+b}2$ である。よって等号は $a=b$ のときに限る。
たとえば $a=1$、$b=9$ では、ex-ccv-second-derivative-examples の数値 $\log3<\log5$ が、そのまま $\sqrt9=3<5=\frac{1+9}2$ を表している。

判定の証明に使う平均値の定理は 平均値の定理による差の評価 で扱う。

接線はグラフの下にある

下に凸なグラフには、もう 1 つの見方がある。どの点で接線を引いても、グラフは接線より上にある。

接線とグラフの差を計算する

$f(x)=x^2$ の $x=1$ での接線は、$f(1)=1$、$f'(1)=2$ より $y=1+2(x-1)=2x-1$ である。グラフと接線の差は
$$ x^2-(2x-1)=x^2-2x+1=(x-1)^2\ge0 $$
であり、$x=1$ 以外では正である。たとえば $x=3$ でグラフの高さは $9$、接線の高さは $5$ である。

接線の不等式

$I$ を開区間とし、$f$ を $I$ で 2 回微分可能で、$I$ で常に $f''(x)\ge0$ を満たす関数とする。$m$ を $I$ の点とする。このとき、$I$ のすべての点 $x$ について
$$ f(x)\ge f(m)+f'(m)(x-m) $$
が成り立つ。つまり、グラフは $x=m$ での接線より下に来ない。
さらに $I$ で常に $f''(x)>0$ ならば、等号は $x=m$ のときに限る。$f''(x)\le0$($f''(x)<0$)ならば、不等号の向きが逆になる。

差の関数の増減を調べる

方針:グラフの高さから接線の高さを引いた関数 $g$ を作り、その最小値が $x=m$ での $0$ であることを増減で示す。
段 1(差の関数)。$g(x):=f(x)-f(m)-f'(m)(x-m)$ とおく。$x=m$ を代入すると $g(m)=f(m)-f(m)-0=0$ である。$f(m)$ と $f'(m)$ は定数なので、微分すると $g'(x)=f'(x)-f'(m)$ である。
段 2($g'$ の符号)。$f''\ge0$ なので、thm-ccv-second-derivative の証明の段 3 と同じ事実により、$f'$ は $I$ で増加する。よって、$x< m$ なら $f'(x)\le f'(m)$ で $g'(x)\le0$、$x>m$ なら $f'(x)\ge f'(m)$ で $g'(x)\ge0$ である。
段 3($g$ の増減)。段 2 から、$g$ は $x\le m$ の範囲で減少し、$x\ge m$ の範囲で増加する(導関数が $0$ 以下なら減少、$0$ 以上なら増加)。よって、$x< m$ なら $g(x)\ge g(m)=0$、$x>m$ なら $g(m)\le g(x)$ で $g(x)\ge0$ である。これで $f(x)\ge f(m)+f'(m)(x-m)$ が示された。
段 4(等号の条件)。$f''>0$ なら $f'$ は狭義に増加するので、段 2 の不等号はすべて $<$、$>$ になり、$g$ は $x\le m$ で狭義に減少、$x\ge m$ で狭義に増加する。よって $x\ne m$ なら $g(x)>0$ である。
上に凸の場合は $-f$ に使えばよい。$\square$

$e^t\ge1+t$ を使って $e^{-x^2}$ を上下から挟む応用は Gauss積分(高校数学) で扱う。
図3:y=e^x は x=0 での接線 y=1+x より上にあり、y=log x は x=1 での接線 y=x-1 より下にある 図3:y=e^x は x=0 での接線 y=1+x より上にあり、y=log x は x=1 での接線 y=x-1 より下にある

接線の不等式から出る有名な不等式
  1. $e^x\ge1+x$(すべての実数 $x$)。$f(x)=e^x$ は $f''>0$ で、$x=0$ での接線は $f(0)=1$、$f'(0)=1$ より $y=1+x$ である。thm-ccv-tangent より $e^x\ge1+x$ で、等号は $x=0$ のときに限る。数値:$x=1$ で $e=2.718\ldots\ge2$、$x=-1$ で $e^{-1}=0.367\ldots\ge0$、$x=2$ で $e^2=7.389\ldots\ge3$。
  2. $\log x\le x-1$($x>0$)。$f(x)=\log x$ は $f''<0$ で、$x=1$ での接線は $f(1)=0$、$f'(1)=1$ より $y=x-1$ である。不等号を逆向きにして $\log x\le x-1$ で、等号は $x=1$ のときに限る。数値:$x=2$ で $0.693\ldots\le1$、$x=\frac12$ で $-0.693\ldots\le-0.5$、$x=e$ で $1\le1.718\ldots$。
  3. $\sqrt x\le\frac{x+1}2$($x>0$)。$f(x)=\sqrt x$ は $x>0$ で $f''<0$ で、$x=1$ での接線は $f(1)=1$、$f'(1)=\frac12$ より $y=1+\frac12(x-1)=\frac{x+1}2$ である。よって $\sqrt x\le\frac{x+1}2$ で、等号は $x=1$ のときに限る。これは $a=x$、$b=1$ の相加相乗平均の不等式 $\sqrt{x\cdot1}\le\frac{x+1}2$ である。数値:$x=4$ で $2\le2.5$、$x=9$ で $3\le5$。

接線・法線の方程式と変曲点は 接線・法線と曲線の凹凸 で扱う。

例と反例

判定の定理と接線の不等式の仮定を外すと、何が崩れるかをまとめる。

外した条件崩れることボックス
区間全体で $f''\ge0$下に凸であること、接線の不等式ex-ccv-cubic
$f''>0$(狭義)接線との等号が $x=m$ だけであることex-ccv-linear
(逆向き)判定条件の必要性「狭義に下に凸なら $f''>0$」「接線との等号が接点だけなら $f''>0$」は成り立たないex-ccv-quartic
反例:x^3 は実数全体では下に凸でない

$f(x)=x^3$ では $f''(x)=6x$ であり、$x<0$ で負になる。実数全体では $f''\ge0$ が成り立たない。
弦の不等式が崩れる:$x=-2$、$y=0$、$\lambda=\frac12$ とすると、グラフの高さは $f(-1)=-1$、弦の高さは $\frac{-8+0}2=-4$ であり、$-1\le-4$ は成り立たない。この部分では弦がグラフより下にある。
接線の不等式も崩れる:$x=1$ での接線は $f(1)=1$、$f'(1)=3$ より $y=3x-2$ である。$x^3-(3x-2)=(x-1)^2(x+2)$ なので、$x<-2$ では差が負になる。たとえば $x=-3$ でグラフの高さは $-27$、接線の高さは $-11$ で、グラフが接線より下にある。
ただし $[0,\infty)$ では $f''(x)=6x\ge0$ なので、$x^3$ はそこでは下に凸である。凸かどうかは、考える区間とセットで決まる。

反例:1 次関数では接線との等号がどこでも成り立つ

$f(x)=2x+1$ は $f''=0$ なので $f''\ge0$ を満たし、thm-ccv-tangent の不等式は成り立つ。しかし、どの点 $m$ での接線もグラフそのもの $y=2x+1$ であり、すべての $x$ で等号になる。等号が $x=m$ に限るという結論は、$f''\ge0$ だけからは出てこない。thm-ccv-tangent ではそのために「常に $f''>0$」を仮定している。ただし、これは等号が $x=m$ に限るための十分条件であって、必要条件ではない(ex-ccv-quartic)。

0 とは限らない data-type=ex>
0 とは限らない>反例:狭義に下に凸でも f'' > 0 とは限らない

$f(x)=x^4$ では $f''(x)=12x^2$ であり、$x=0$ で $f''(0)=0$ となる。したがって thm-ccv-second-derivative の 2 の仮定「常に $f''>0$」は満たされない。
それでも $x^4$ は $\mathbb{R}$ で狭義に下に凸である。prf-thm-ccv-second-derivative で使ったのは「$f'$ が狭義に増加する」ことだけであり、$f'(x)=4x^3$ は狭義に増加する($s< t$ なら $s^3< t^3$)からである。つまり $f''>0$ は狭義凸であるための十分条件であって、必要条件ではない。数値:$x=-1$、$y=1$、$\lambda=\frac12$ でグラフの高さ $0$、弦の高さ $1$ である。
接線との等号についても同じことが言える。$m=0$ での接線は $f(0)=0$、$f'(0)=0$ より $y=0$ であり、$x\ne0$ なら $x^4>0$ なので、等号は $x=0$ のときだけである。$m=1$ での接線は $f(1)=1$、$f'(1)=4$ より $y=4x-3$ であり、
$$ x^4-(4x-3)=(x-1)^2(x^2+2x+3) $$
である。$x^2+2x+3=(x+1)^2+2>0$ なので、等号は $x=1$ のときだけである。「常に $f''>0$」が成り立たなくても、等号は接点だけで成り立つ。

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  • 点を増やす:定義の不等式は 2 点の重み付き平均についての不等式である。これを $n$ 点の重み付き平均に広げたものが Jensenの不等式(高校数学) である。接線の不等式は、その短い証明にも使われる。
  • 凸関数の一般論:2 回微分できない凸関数($|x|$ など)も含めた性質(開区間での連続性、片側微分の存在、局所的な最小が全体の最小になることなど)は 凸関数 で扱う。
  • 多変数:2 変数以上の関数では、2 階導関数の代わりに 2 階偏導関数を並べた Hesse 行列を使って凸性を判定する(この記事では扱わない)。

関連項目

参考文献

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