曲線の凹凸(convexity of curves)とは、グラフが下に凸か上に凸かという形のことである。区間 $I$ 上の関数 $f$ が下に凸(凸関数)であるとは、$I$ のすべての $x,y$ と $0\le\lambda\le1$ について $f((1-\lambda)x+\lambda y)\le(1-\lambda)f(x)+\lambda f(y)$、すなわちどの弦もグラフより下に来ないことをいう。$I$ で連続で内部で 2 回微分可能な $f$ は、内部で $f''\ge0$ なら下に凸である(平均値の定理で示せる)。開区間で $f''\ge0$ なら、グラフはどの点での接線よりも下に来ない。ここから $e^x\ge1+x$、$x>0$ での $\log x\le x-1$ が従い、$\log$ の弦の中点の不等式は 2 数の相加相乗平均の不等式と同じ内容である。
高校の微分では、「2 階導関数 $f''(x)$ が正である区間では、曲線 $y=f(x)$ は下に凸である」と習う。$y=x^2$ や $y=e^x$ のように、お椀を上向きに置いた形が下に凸であり、$y=\log x$ のように、お椀を伏せた形が上に凸である。
しかし、「下に凸」とは式で言うとどういうことか。なぜ $f''$ の符号で判定できるのか。この記事では次の問いに答える。
| 高校の計算 | この記事の言葉 | 大学での見方 |
|---|---|---|
| $f''>0$ の区間で「下に凸」 | 弦の不等式による定義と 2 階導関数による判定 | 凸関数 |
| 増減表で $e^x\ge1+x$ を示す | 接線の不等式 | 凸関数のグラフを下から支える直線 |
| $\log$ のグラフは「上に凸」 | 上に凸(凹関数) | 弦の中点の不等式が 2 数の相加相乗平均の不等式になる |
まず、下に凸な関数のグラフで何が起きているかを数で見る。
$f(x)=x^2$ のグラフ上の 2 点 $(0,0)$ と $(2,4)$ を線分(弦)で結ぶ。
一般に、$x< y$ のとき、$x$ と $y$ の間の点は $0\le\lambda\le1$ を使って
$$
z=(1-\lambda)x+\lambda y
$$
と書ける。$z$ は $x$ と $y$ を $\lambda:(1-\lambda)$ に内分する点であり、$\lambda=0$ で $z=x$、$\lambda=1$ で $z=y$、$\lambda=\frac12$ で中点である。
2 点 $(x,f(x))$、$(y,f(y))$($x< y$)を結ぶ直線の、横座標 $z=(1-\lambda)x+\lambda y$ での高さを計算する。この直線の傾きは $\frac{f(y)-f(x)}{y-x}$ であり、$z-x=\lambda(y-x)$ なので、高さは
$$
f(x)+\frac{f(y)-f(x)}{y-x}\cdot\lambda(y-x)=f(x)+\lambda\bigl(f(y)-f(x)\bigr)=(1-\lambda)f(x)+\lambda f(y)
$$
である。つまり、弦の上の点の高さは、両端の高さを同じ重み $1-\lambda$、$\lambda$ で平均したものである。
ex-ccv-chord-numeric の 2 つ目の点は $x=0$、$y=2$、$\lambda=\frac14$ の場合で、弦の高さは $\frac34\cdot0+\frac14\cdot4=1$ だった。
「弦がグラフより上にある」ことを、そのまま定義にする。
$I$ を区間とし、$f$ を $I$ で定義された関数とする。
左辺はグラフの高さ、右辺は弦の高さ(rem-ccv-chord-height)である。下に凸とは「どの弦もグラフより下に来ない」ことである。
図1:y=x^2 の弦は、両端の間のどの点でもグラフより上にある
図 1 は $f(x)=x^2$、$x=-1$、$y=2$、$\lambda=\frac13$ でかいてある。
$$
z=\frac23\cdot(-1)+\frac13\cdot2=-\frac23+\frac23=0
$$
が内分点である。弦の高さは rem-ccv-chord-height の式で
$$
\frac23f(-1)+\frac13f(2)=\frac23\cdot1+\frac13\cdot4=\frac23+\frac43=2
$$
であり、グラフの高さは $f(0)=0$ である。弦のほうが $2-0=2$ だけ高い。
定義を直接確かめるのは、$x^2$ のような簡単な関数以外では難しい。そこで、弦の不等式を「傾きの比較」に言い換える。
$f$ を区間 $I$ で定義された関数とし、$x< y$ を $I$ の点、$0<\lambda<1$、$z:=(1-\lambda)x+\lambda y$ とする。このとき、次の 2 つは同値である。
段 1($z$ の位置)。$z-x=(1-\lambda)x+\lambda y-x=\lambda(y-x)$、$y-z=y-(1-\lambda)x-\lambda y=(1-\lambda)(y-x)$ である。$0<\lambda<1$ かつ $x< y$ なので、どちらも正であり、$x< z< y$ である。
段 2(1 を書き直す)。$f(z)=(1-\lambda)f(z)+\lambda f(z)$ なので、1 は
$$
(1-\lambda)f(z)+\lambda f(z)\le(1-\lambda)f(x)+\lambda f(y)
$$
と同じであり、移項すると
$$
(1-\lambda)\bigl(f(z)-f(x)\bigr)\le\lambda\bigl(f(y)-f(z)\bigr)
$$
と同じである。
段 3(割る)。両辺を正の数 $\lambda(1-\lambda)(y-x)$ で割っても不等号の向きは変わらない。左辺は $\frac{f(z)-f(x)}{\lambda(y-x)}=\frac{f(z)-f(x)}{z-x}$、右辺は $\frac{f(y)-f(z)}{(1-\lambda)(y-x)}=\frac{f(y)-f(z)}{y-z}$ になる(段 1)。これは 2 である。段 2・段 3 の変形はどれも逆にたどれるので、1 と 2 は同値である。$<$ の場合も同じ変形で同値である。$\square$
$f(x)=x^2$、$x=0$、$z=1$、$y=3$ とする($\lambda=\frac13$)。左の弦の傾きは $\frac{1-0}{1-0}=1$、右の弦の傾きは $\frac{9-1}{3-1}=4$ で、$1\le4$ である。弦の高さで見ても、$z=1$ での弦の高さは $\frac23\cdot0+\frac13\cdot9=3$、グラフの高さは $1$ で、$1\le3$ である。prop-ccv-slopes のとおり、2 つの見方は同じ結論になる。
左右の弦の傾きは、平均値の定理によって、それぞれの区間の中の点での接線の傾き(微分係数)に等しい。下に凸なグラフでは、右へ行くほど接線の傾きが大きくなるので、右の弦のほうが傾きが大きい。
図2:左の弦と右の弦の傾きは、それぞれ ξ1, ξ2 での接線の傾きに等しい。ξ1<ξ2 なので右の弦のほうが急である
図 2 は ex-ccv-slopes-numeric の場合($f(x)=x^2$、$x=0$、$z=1$、$y=3$)でかいてある。$f'(x)=2x$ である。
証明では、高校で習う次の事実を使う:区間で $g'(x)\ge0$ なら $g$ はその区間で増加し($s< t$ なら $g(s)\le g(t)$)、$g'(x)>0$ なら狭義に増加する($s< t$ なら $g(s)< g(t)$)。これは平均値の定理から従う(Leb26 Proposition 4.2.7・4.2.8)。この記事では、これを前提として使う。
$I$ を区間とし、$f$ を $I$ で連続な関数で、$I$ の端点を除いた部分(内部)で 2 回微分可能であるとする。
方針:prop-ccv-slopes により、左右の弦の傾きを比べればよい。平均値の定理で、弦の傾きを $f'$ の値に置きかえ、$f'$ が増加することを使う。
段 1(示すことを絞る)。$x,y\in I$、$0\le\lambda\le1$ とする。$x=y$ のとき、または $\lambda=0$、$\lambda=1$ のとき、定義の不等式の両辺は $f(x)$ または $f(y)$ で等しい。$x>y$ のときは、$x$ と $y$、$\lambda$ と $1-\lambda$ を入れかえると、$(1-\lambda)x+\lambda y$ も $(1-\lambda)f(x)+\lambda f(y)$ も変わらないので、$x< y$ の場合に帰着する。よって $x< y$、$0<\lambda<1$ の場合を示せばよい。$z:=(1-\lambda)x+\lambda y$ とおくと、$x< z< y$ である。
段 2(平均値の定理)。$f$ は区間 $[x,z]$ で連続、その内部で微分可能なので、平均値の定理により
$$
\frac{f(z)-f(x)}{z-x}=f'(\xi_1)
$$
を満たす $\xi_1$ が $x<\xi_1< z$ の範囲にある。同様に、$[z,y]$ で
$$
\frac{f(y)-f(z)}{y-z}=f'(\xi_2)
$$
を満たす $\xi_2$ が $z<\xi_2< y$ の範囲にある。$\xi_1< z<\xi_2$ なので $\xi_1<\xi_2$ であり、どちらも $I$ の内部の点である。
段 3($f'$ が増加する)。1 の仮定のもとでは、$f'$ の導関数 $f''$ が $I$ の内部で $0$ 以上なので、上で述べた事実を $g=f'$ に使って、$f'$ は $I$ の内部で増加する。よって $f'(\xi_1)\le f'(\xi_2)$ である。2 の仮定のもとでは、同様に $f'$ は狭義に増加し、$f'(\xi_1)< f'(\xi_2)$ である。
段 4(結論)。段 2 と段 3 から、1 の仮定のもとで
$$
\frac{f(z)-f(x)}{z-x}=f'(\xi_1)\le f'(\xi_2)=\frac{f(y)-f(z)}{y-z}
$$
であり、prop-ccv-slopes により $f(z)\le(1-\lambda)f(x)+\lambda f(y)$ である。2 の仮定のもとでは $<$ が成り立つので、同じく $<$ を得る。
上に凸の場合は、$-f$ に 1・2 を使えばよい($(-f)''=-f''$ である)。$\square$
証明で使ったのは「$f'$ が増加する(狭義に増加する)」ことだけである。$f''$ の符号は、そのことを確かめる手段である。
上に凸な関数 $\log$ の弦の不等式を、弦の中点($\lambda=\frac12$)で使うと、2 数の相加平均と相乗平均の不等式になる。
$a,b>0$ とする。$\log$ は $(0,\infty)$ で狭義に上に凸なので(ex-ccv-second-derivative-examples の 2)、定義の不等式を逆向きにして $x=a$、$y=b$、$\lambda=\frac12$ に使うと
$$
\frac{\log a+\log b}2\le\log\frac{a+b}2
$$
である。左辺は $\frac12\log(ab)=\log\sqrt{ab}$ に等しい(対数の性質 $\log a+\log b=\log(ab)$、$\frac12\log c=\log\sqrt c$)。よって $\log\sqrt{ab}\le\log\frac{a+b}2$ である。$\log$ は狭義に増加する関数なので、$\sqrt{ab}\le\frac{a+b}2$ を得る。
等号:$a\ne b$ なら、狭義に上に凸であることから上の不等式は $<$ になり、$\sqrt{ab}<\frac{a+b}2$ である。よって等号は $a=b$ のときに限る。
たとえば $a=1$、$b=9$ では、ex-ccv-second-derivative-examples の数値 $\log3<\log5$ が、そのまま $\sqrt9=3<5=\frac{1+9}2$ を表している。
判定の証明に使う平均値の定理は 平均値の定理による差の評価 で扱う。
下に凸なグラフには、もう 1 つの見方がある。どの点で接線を引いても、グラフは接線より上にある。
$f(x)=x^2$ の $x=1$ での接線は、$f(1)=1$、$f'(1)=2$ より $y=1+2(x-1)=2x-1$ である。グラフと接線の差は
$$
x^2-(2x-1)=x^2-2x+1=(x-1)^2\ge0
$$
であり、$x=1$ 以外では正である。たとえば $x=3$ でグラフの高さは $9$、接線の高さは $5$ である。
$I$ を開区間とし、$f$ を $I$ で 2 回微分可能で、$I$ で常に $f''(x)\ge0$ を満たす関数とする。$m$ を $I$ の点とする。このとき、$I$ のすべての点 $x$ について
$$
f(x)\ge f(m)+f'(m)(x-m)
$$
が成り立つ。つまり、グラフは $x=m$ での接線より下に来ない。
さらに $I$ で常に $f''(x)>0$ ならば、等号は $x=m$ のときに限る。$f''(x)\le0$($f''(x)<0$)ならば、不等号の向きが逆になる。
方針:グラフの高さから接線の高さを引いた関数 $g$ を作り、その最小値が $x=m$ での $0$ であることを増減で示す。
段 1(差の関数)。$g(x):=f(x)-f(m)-f'(m)(x-m)$ とおく。$x=m$ を代入すると $g(m)=f(m)-f(m)-0=0$ である。$f(m)$ と $f'(m)$ は定数なので、微分すると $g'(x)=f'(x)-f'(m)$ である。
段 2($g'$ の符号)。$f''\ge0$ なので、thm-ccv-second-derivative の証明の段 3 と同じ事実により、$f'$ は $I$ で増加する。よって、$x< m$ なら $f'(x)\le f'(m)$ で $g'(x)\le0$、$x>m$ なら $f'(x)\ge f'(m)$ で $g'(x)\ge0$ である。
段 3($g$ の増減)。段 2 から、$g$ は $x\le m$ の範囲で減少し、$x\ge m$ の範囲で増加する(導関数が $0$ 以下なら減少、$0$ 以上なら増加)。よって、$x< m$ なら $g(x)\ge g(m)=0$、$x>m$ なら $g(m)\le g(x)$ で $g(x)\ge0$ である。これで $f(x)\ge f(m)+f'(m)(x-m)$ が示された。
段 4(等号の条件)。$f''>0$ なら $f'$ は狭義に増加するので、段 2 の不等号はすべて $<$、$>$ になり、$g$ は $x\le m$ で狭義に減少、$x\ge m$ で狭義に増加する。よって $x\ne m$ なら $g(x)>0$ である。
上に凸の場合は $-f$ に使えばよい。$\square$
$e^t\ge1+t$ を使って $e^{-x^2}$ を上下から挟む応用は Gauss積分(高校数学) で扱う。
図3:y=e^x は x=0 での接線 y=1+x より上にあり、y=log x は x=1 での接線 y=x-1 より下にある
接線・法線の方程式と変曲点は 接線・法線と曲線の凹凸 で扱う。
判定の定理と接線の不等式の仮定を外すと、何が崩れるかをまとめる。
| 外した条件 | 崩れること | ボックス |
|---|---|---|
| 区間全体で $f''\ge0$ | 下に凸であること、接線の不等式 | ex-ccv-cubic |
| $f''>0$(狭義) | 接線との等号が $x=m$ だけであること | ex-ccv-linear |
| (逆向き)判定条件の必要性 | 「狭義に下に凸なら $f''>0$」「接線との等号が接点だけなら $f''>0$」は成り立たない | ex-ccv-quartic |
$f(x)=x^3$ では $f''(x)=6x$ であり、$x<0$ で負になる。実数全体では $f''\ge0$ が成り立たない。
弦の不等式が崩れる:$x=-2$、$y=0$、$\lambda=\frac12$ とすると、グラフの高さは $f(-1)=-1$、弦の高さは $\frac{-8+0}2=-4$ であり、$-1\le-4$ は成り立たない。この部分では弦がグラフより下にある。
接線の不等式も崩れる:$x=1$ での接線は $f(1)=1$、$f'(1)=3$ より $y=3x-2$ である。$x^3-(3x-2)=(x-1)^2(x+2)$ なので、$x<-2$ では差が負になる。たとえば $x=-3$ でグラフの高さは $-27$、接線の高さは $-11$ で、グラフが接線より下にある。
ただし $[0,\infty)$ では $f''(x)=6x\ge0$ なので、$x^3$ はそこでは下に凸である。凸かどうかは、考える区間とセットで決まる。
$f(x)=2x+1$ は $f''=0$ なので $f''\ge0$ を満たし、thm-ccv-tangent の不等式は成り立つ。しかし、どの点 $m$ での接線もグラフそのもの $y=2x+1$ であり、すべての $x$ で等号になる。等号が $x=m$ に限るという結論は、$f''\ge0$ だけからは出てこない。thm-ccv-tangent ではそのために「常に $f''>0$」を仮定している。ただし、これは等号が $x=m$ に限るための十分条件であって、必要条件ではない(ex-ccv-quartic)。
$f(x)=x^4$ では $f''(x)=12x^2$ であり、$x=0$ で $f''(0)=0$ となる。したがって thm-ccv-second-derivative の 2 の仮定「常に $f''>0$」は満たされない。
それでも $x^4$ は $\mathbb{R}$ で狭義に下に凸である。prf-thm-ccv-second-derivative で使ったのは「$f'$ が狭義に増加する」ことだけであり、$f'(x)=4x^3$ は狭義に増加する($s< t$ なら $s^3< t^3$)からである。つまり $f''>0$ は狭義凸であるための十分条件であって、必要条件ではない。数値:$x=-1$、$y=1$、$\lambda=\frac12$ でグラフの高さ $0$、弦の高さ $1$ である。
接線との等号についても同じことが言える。$m=0$ での接線は $f(0)=0$、$f'(0)=0$ より $y=0$ であり、$x\ne0$ なら $x^4>0$ なので、等号は $x=0$ のときだけである。$m=1$ での接線は $f(1)=1$、$f'(1)=4$ より $y=4x-3$ であり、
$$
x^4-(4x-3)=(x-1)^2(x^2+2x+3)
$$
である。$x^2+2x+3=(x+1)^2+2>0$ なので、等号は $x=1$ のときだけである。「常に $f''>0$」が成り立たなくても、等号は接点だけで成り立つ。
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