対称点と折れ線の最短

同義語:Heronの問題reflections and shortest paths

概要

対称点と折れ線の最短(reflections and shortest paths)とは、直線の同じ側にある 2 点 $A$、$B$ を、直線上の 1 点 $P$ を経由して結ぶ折れ線 $AP+PB$ の最小を、$A$ を直線について折り返した対称点 $A'$ を使って求める方法である。直線上のどの点でも $AP=A'P$ なので、$AP+PB\ge A'B$ で、最小になるのは線分 $A'B$ と直線の交点ただ 1 つであり、そこで入射角と反射角が等しい。直線 $ax+by+c=0$ に関する対称点は、$k=\frac{ax_0+by_0+c}{a^2+b^2}$ として $(x_0-2ak,\ y_0-2bk)$ で求まる。2 本の直線に寄る道では折り返しを 2 回、橋を渡る道では平行移動を使う。$A$、$B$ が反対側にあるときは、線分 $AB$ と直線の交点で最小になる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 直線の方程式と点と直線の距離, 三角形の成立条件, グラフの平行移動と対称移動

高校での出発点:川に寄ってから家に帰る

まっすぐな川の岸を直線 $\ell$ とする。$\ell$ の同じ側に家 $A$ と畑 $B$ がある。$A$ を出て川で水をくみ、$B$ に届けたい。川のどこに寄れば、歩く道のり $AP+PB$ がいちばん短くなるだろうか。道は $A$ から $P$、$P$ から $B$ へそれぞれまっすぐ歩くとする。この問題は Heron の問題 とも呼ばれる。
まず座標をとって、いくつかの点で道のりを計算してみる。

川に寄る道のりを計算する

$\ell$ を $x$ 軸とし、$A(1,3)$、$B(5,1)$ とする。$\ell$ 上の点を $P(t,0)$ とすると、2 点間の距離の公式から
$$ f(t)=AP+PB=\sqrt{(t-1)^2+3^2}+\sqrt{(t-5)^2+1^2} $$
である。いくつかの $t$ で計算する。

$t$$AP$$PB$$f(t)$
$1$$3$$\sqrt{17}$$\approx7.123$
$2$$\sqrt{10}$$\sqrt{10}$$\approx6.325$
$3$$\sqrt{13}$$\sqrt5$$\approx5.842$
$4$$3\sqrt2$$\sqrt2$$4\sqrt2\approx5.657$
$5$$5$$1$$6$
$6$$\sqrt{34}$$\sqrt2$$\approx7.245$

表の中では $t=4$ のときがいちばん短く、$f(4)=3\sqrt2+\sqrt2=4\sqrt2$ である。$P(4,0)$ で、$A$ へ向かう向き $\overrightarrow{PA}=(-3,3)$ と $B$ へ向かう向き $\overrightarrow{PB}=(1,1)$ は、どちらも $x$ 軸と $45^\circ$ の角をなしている。

表だけでは、$t=4$ が本当に最小かどうかは分からない。$t=3.9$ や $t=4.1$ ではもっと短いかもしれない。$f(t)$ を微分して調べる方法もあるが、根号が 2 つある式の微分は手間がかかる。
そこで、$A$ を $x$ 軸について折り返した点 $A'(1,-3)$ を考える。$x$ 軸上のどの点 $P$ でも $AP=A'P$ なので、道のり $AP+PB$ は折れ線 $A'\to P\to B$ の長さに等しい。折れ線の長さは両端を結ぶ線分の長さ $A'B$ 以上で、$A'B=\sqrt{4^2+4^2}=4\sqrt2$ である。線分 $A'B$ は直線 $y=x-4$ の一部で、$x$ 軸と $(4,0)$ で交わる。表で見つけた $t=4$ と $4\sqrt2$ が、計算なしで出てくる。
家 A と畑 B は直線 ℓ の同じ側にある。A を ℓ で折り返した点 A' と B を結ぶ線分は ℓ と P で交わり、そこで道のりが最小になる。別の点 Q を通る道は、折れ線 A'QB と同じ長さで、線分 A'B より長い 家 A と畑 B は直線 ℓ の同じ側にある。A を ℓ で折り返した点 A' と B を結ぶ線分は ℓ と P で交わり、そこで道のりが最小になる。別の点 Q を通る道は、折れ線 A'QB と同じ長さで、線分 A'B より長い
川に寄る点 P の x 座標 t と道のり f(t) のグラフ。最小は t=4 で、最小値は 4√2 である 川に寄る点 P の x 座標 t と道のり f(t) のグラフ。最小は t=4 で、最小値は 4√2 である
この記事で答える問いは次の 3 つである。

  1. 直線 $ax+by+c=0$ が斜めでも、折り返した点(対称点)を式で求められるか。→ prop-rsp-formula
  2. 折り返した点と $B$ を結ぶ線分が $\ell$ と交わる点で、いつも最小になるか。最小になる点はほかにないか。→ thm-rsp-main
  3. 最小になる点で、2 本の道が $\ell$ となす角が等しくなるのはなぜか。→ thm-rsp-main の (3)
    高校の計算この記事の言葉大学の言葉
    直線に関して対称な点対称点、折り返し鏡映(長さを変えない変換)
    三角形の 2 辺の和は他の 1 辺より大きい折れ線は両端を結ぶ線分より長い三角不等式
    $AP+PB$ の最小折り返して一直線にのばす最短経路、測地線
    2 本の道が $\ell$ となす角が等しい入射角と反射角Fermat の原理

対称点:直線に関する折り返し

直線に関する対称点

直線 $\ell$ と点 $A$ があるとする。$A$ が $\ell$ の上にないとき、$\ell$ が線分 $AA'$ の垂直二等分線になる点 $A'$ を、$A$ の $\ell$ に関する 対称点 という。$A$ が $\ell$ の上にあるときは、$A'=A$ とする。平面の各点をその対称点に移す対応を、$\ell$ に関する 折り返し(鏡映)という。

$A$ から $\ell$ に垂線を下ろし、足を $H$ とする。対称点 $A'$ は、垂線を $H$ の先へ同じ長さだけのばした点である。

座標軸と直線 $y=x$ に関する対称点
  1. $x$ 軸に関する対称点:$A(1,3)$ から $x$ 軸に下ろした垂線の足は $H(1,0)$ で、$A'$ は $H$ から $A$ と反対向きに $3$ だけ進んだ点 $(1,-3)$ である。一般に $(x,y)$ の対称点は $(x,-y)$ である。
  2. $y$ 軸に関する対称点:$(x,y)$ の対称点は $(-x,y)$ である。たとえば $(3,1)$ の対称点は $(-3,1)$ である。
  3. 直線 $y=x$ に関する対称点:$(x,y)$ の対称点は $(y,x)$ である。たとえば $A(4,1)$ と $A'(1,4)$ の中点 $\left(\dfrac52,\dfrac52\right)$ は直線 $y=x$ の上にあり、$\overrightarrow{AA'}=(-3,3)$ は直線 $y=x$ の向き $(1,1)$ と内積が $-3+3=0$ で垂直である。

関数のグラフを $x$ 軸・$y$ 軸・直線 $y=x$ について対称移動すると $y=-f(x)$、$y=f(-x)$、逆関数のグラフになることは、(1)〜(3) を点ごとに使ったものである(グラフの平行移動と対称移動)。
次の補題が、この記事の論法の出発点である。

直線上の点から対称点までの距離

点 $A$ の直線 $\ell$ に関する対称点を $A'$ とする。$\ell$ 上のどの点 $P$ についても $PA=PA'$ である。

$A$ が $\ell$ の上にあるときは $A'=A$ なので、$PA=PA'$ である。
$A$ が $\ell$ の上にないとき、線分 $AA'$ の中点を $H$ とする。$\ell$ は線分 $AA'$ の垂直二等分線なので、$H$ は $\ell$ の上にあり、$AH=A'H$、$AA'\perp\ell$ である。

  • $P=H$ のとき、$PA=HA=HA'=PA'$ である。
  • $P\ne H$ のとき、三角形 $PHA$ と三角形 $PHA'$ は $H$ の角が直角の直角三角形である。三平方の定理から
    $$ PA^2=PH^2+HA^2=PH^2+HA'^2=PA'^2 $$
    で、$PA>0$、$PA'>0$ なので $PA=PA'$ である。$\square$

直線が斜めのときも、対称点は式で求められる。直線 $ax+by+c=0$ の法線ベクトルが $(a,b)$ であること(直線と垂直な向きであること)を使う(直線の方程式と点と直線の距離)。

直線 $ax+by+c=0$ に関する対称点の公式

$(a,b)\ne(0,0)$ とし、直線 $\ell\colon ax+by+c=0$ と点 $A(x_0,y_0)$ をとる。$g(x,y)=ax+by+c$ とおき、
$$ k=\frac{g(x_0,y_0)}{a^2+b^2}=\frac{ax_0+by_0+c}{a^2+b^2} $$
とする。このとき次が成り立つ。
(1) $A$ の $\ell$ に関する対称点は $A'(x_0-2ak,\ y_0-2bk)$ である。
(2) $g(A')=-g(A)$ である。とくに、$A$ が $\ell$ の上にないとき、$A$ と $A'$ は $\ell$ の反対側にある。

ここで「$\ell$ の同じ側にある」とは $g$ の値が同じ符号であること、「反対側にある」とは $g$ の値が異なる符号であることをいう。直線 $ax+by+c=0$ は平面を $g>0$ の部分と $g<0$ の部分に分ける(不等式の表す領域と線形計画法)。

方針:$A'$ を「$A$ から法線ベクトルの向きに進んだ点」とおき、中点が $\ell$ の上にあるという条件で進む量を決める。
段 1(形を決める)。$\ell$ の上に $A$ がないとき、$AA'\perp\ell$ なので $\overrightarrow{AA'}$ は法線ベクトル $(a,b)$ に平行で、ある数 $s$ を使って $A'=(x_0+sa,\ y_0+sb)$ と書ける。
段 2(中点の条件)。線分 $AA'$ の中点は $M\left(x_0+\dfrac{sa}2,\ y_0+\dfrac{sb}2\right)$ である。$M$ が $\ell$ の上にあるので
$$ a\left(x_0+\frac{sa}2\right)+b\left(y_0+\frac{sb}2\right)+c=0,\qquad\text{つまり}\qquad (ax_0+by_0+c)+\frac s2(a^2+b^2)=0 $$
である。$a^2+b^2>0$ なので $s=-\dfrac{2(ax_0+by_0+c)}{a^2+b^2}=-2k$ である。よって $A'=(x_0-2ak,\ y_0-2bk)$ である。
段 3(逆に、この点が対称点であること)。$A'=(x_0-2ak,\ y_0-2bk)$ とおくと、$\overrightarrow{AA'}=-2k(a,b)$ は法線ベクトルに平行なので $AA'\perp\ell$ であり、段 2 の計算を逆にたどると中点が $\ell$ の上にある。よって $\ell$ は線分 $AA'$ の垂直二等分線で、$A'$ は対称点である。$A$ が $\ell$ の上にあるときは $k=0$ で、公式は $A'=A$ を与え、定義と合う。これで (1) が示せた。
段 4((2) の符号)。$A'$ の座標を $g$ に代入すると
$$ g(A')=a(x_0-2ak)+b(y_0-2bk)+c=\underbrace{(ax_0+by_0+c)}_{g(A)}-2k(a^2+b^2)=g(A)-2g(A)=-g(A) $$
である。$A$ が $\ell$ の上にないとき $g(A)\ne0$ なので、$g(A)$ と $g(A')$ は異なる符号である。$\square$

公式で対称点を求める
  1. 直線 $x+2y-6=0$ に関する $A(3,4)$ の対称点。$g(3,4)=3+8-6=5$、$a^2+b^2=1+4=5$ なので $k=1$ で、
    $$ A'=(3-2\cdot1\cdot1,\ 4-2\cdot2\cdot1)=(1,0) $$
    である。確かめ:中点 $(2,2)$ は $2+4-6=0$ で直線の上にあり、$\overrightarrow{AA'}=(-2,-4)$ は法線ベクトル $(1,2)$ の $-2$ 倍である。$g(A')=1+0-6=-5=-g(A)$ である。
  2. 直線 $y=x$、つまり $x-y=0$ の場合も、公式は ex-rsp-axes の (3) の $(y_0,x_0)$ を与える。
    (2) の計算を開く

    $a=1$、$b=-1$、$c=0$ で $k=\dfrac{x_0-y_0}2$ なので $A'=\bigl(x_0-(x_0-y_0),\ y_0+(x_0-y_0)\bigr)=(y_0,x_0)$ である。

主定理:1 本の直線に寄る最短の折れ線

証明のもう 1 つの道具は、「折れ線は両端を結ぶ線分より短くならない」という事実である。等号がいつ成り立つかまで述べておく。

3 点の三角不等式

平面の 3 点 $X$、$Y$、$Z$ について
$$ XY+YZ\ge XZ $$
である。等号が成り立つのは、$Y$ が線分 $XZ$ の上にある(端点でもよい)ときに限る。

要点:3 点が一直線上にないときは三角形の 2 辺の和が残りの 1 辺より大きいこと(三角形の成立条件)から、一直線上にあるときは絶対値の三角不等式(絶対値と三角不等式)から出る。

詳しい証明を開く

場合 1(3 点が一直線上にないとき)。三角形 $XYZ$ ができる。三角形の 2 辺の長さの和は残りの 1 辺の長さより大きいので、$XY+YZ>XZ$ である。このとき $Y$ は線分 $XZ$ の上にないので、主張と合う。

場合 2(3 点が一直線上にあるとき)。その直線に数直線の目盛りをつけ、$X$、$Y$、$Z$ の目盛りを $x$、$y$、$z$ とする。$p=y-x$、$q=z-y$ とおくと、$XY+YZ=\lvert p\rvert+\lvert q\rvert$、$XZ=\lvert p+q\rvert$ である。絶対値の三角不等式 $\lvert p\rvert+\lvert q\rvert\ge\lvert p+q\rvert$ の等号は $pq\ge0$ のときに限る。$pq=(y-x)(z-y)\ge0$ は、$y$ が $x$ と $z$ の間(両端を含む)にあること、つまり $Y$ が線分 $XZ$ の上にあることと同じである。$\square$

1 本の直線に寄る最短の折れ線

直線 $\ell\colon ax+by+c=0$ の同じ側に 2 点 $A$、$B$ があるとする(どちらも $\ell$ の上にはない)。$A$ の $\ell$ に関する対称点を $A'$ とし、$g(x,y)=ax+by+c$ とおく。
(1) 線分 $A'B$ と $\ell$ は、ただ 1 つの点 $P_0$ で交わる。$P_0$ は
$$ P_0=\frac{g(B)\,A'+g(A)\,B}{g(A)+g(B)} $$
($A'$ と $B$ を $g(A):g(B)$ に内分する点)である。
(2) $\ell$ 上のどの点 $P$ についても $AP+PB\ge A'B$ で、等号が成り立つのは $P=P_0$ のときに限る。つまり $AP+PB$ の最小値は $A'B$ で、最小になる点は $P_0$ ただ 1 つである。
(3) $P_0$ で、線分 $P_0A$ と線分 $P_0B$ は $\ell$ と等しい角をなし、$\ell$ に立てた垂線の反対側にある。言いかえると、$P_0$ で $\ell$ に立てた垂線と $P_0A$ のなす角(入射角)と、垂線と $P_0B$ のなす角(反射角)は等しい。

方針:(1) は $g$ の符号の変化を使う。(2) は lem-rsp-equal で $AP$ を $A'P$ に置きかえ、lem-rsp-triangle を使う。(3) は合同な三角形と対頂角を使う。
段 1(符号をそろえる)。$A$、$B$ は同じ側にあるので、$g(A)$ と $g(B)$ は同じ符号である。直線の式の両辺に $-1$ を掛けても直線は変わらないので、$g(A)>0$、$g(B)>0$ としてよい。prop-rsp-formula の (2) から $g(A')=-g(A)<0$ である。
段 2(線分の上で $g$ は 1 次式)。線分 $A'B$ の上の点は、$0\le s\le1$ を使って $X(s)=(1-s)A'+sB$ と書ける。$A'=(x_1,y_1)$、$B=(x_2,y_2)$ とすると
$$ g(X(s))=a\bigl((1-s)x_1+sx_2\bigr)+b\bigl((1-s)y_1+sy_2\bigr)+\bigl((1-s)+s\bigr)c=(1-s)\,g(A')+s\,g(B) $$
である。これは $s$ の 1 次式で、$s=0$ で負、$s=1$ で正である。1 次式が $0$ になる $s$ はただ 1 つで、
$$ (1-s)\bigl(-g(A)\bigr)+s\,g(B)=0\iff s=\frac{g(A)}{g(A)+g(B)} $$
である。この $s$ は $0< s<1$ を満たす。$X(s)$ が $\ell$ の上にあることは $g(X(s))=0$ と同じなので、線分 $A'B$ と $\ell$ の共有点はただ 1 つで、それは
$$ P_0=\left(1-\frac{g(A)}{g(A)+g(B)}\right)A'+\frac{g(A)}{g(A)+g(B)}B=\frac{g(B)\,A'+g(A)\,B}{g(A)+g(B)} $$
である。これで (1) が示せた。
段 3(下からの評価)。$P$ を $\ell$ 上の点とする。lem-rsp-equal から $AP=A'P$ なので、lem-rsp-triangle を $X=A'$、$Y=P$、$Z=B$ に使うと
$$ AP+PB=A'P+PB\ge A'B $$
である。
段 4(等号の条件)。lem-rsp-triangle により、段 3 で等号が成り立つのは $P$ が線分 $A'B$ の上にあるときに限る。$P$ は $\ell$ の上の点でもあるので、$P$ は線分 $A'B$ と $\ell$ の共有点で、段 2 から $P=P_0$ である。逆に $P=P_0$ なら $P_0$ は線分 $A'B$ の上にあるので等号が成り立つ。これで (2) が示せた。
段 5(角が等しい)。$\ell$ の上で $P_0$ の両側に 1 点ずつ $X_+$、$X_-$ をとる($P_0$ は $X_+$ と $X_-$ の間にある)。$\angle AP_0X_+$ と $\angle AP_0X_-$ の和は $180^\circ$ なので、$\angle AP_0X_+\le90^\circ$ となるように名前をつける。lem-rsp-equal を $P=P_0$ と $P=X_+$ に使うと $P_0A=P_0A'$、$X_+A=X_+A'$ である。$P_0X_+$ は共通なので、3 辺が等しく、三角形 $P_0AX_+$ と三角形 $P_0A'X_+$ は合同である(三角形の合同条件)。よって
$$ \angle AP_0X_+=\angle A'P_0X_+ $$
である。段 2 の $0< s<1$ から、$P_0$ は線分 $A'B$ の $A'$、$B$ 以外の点なので、半直線 $P_0A'$ と半直線 $P_0B$ は反対向きである。半直線 $P_0X_+$ と $P_0X_-$ も反対向きなので、対頂角が等しいことから $\angle A'P_0X_+=\angle BP_0X_-$ である。合わせて
$$ \angle AP_0X_+=\angle BP_0X_- $$
である。$P_0A$ は $\ell$ の $X_+$ の側と、$P_0B$ は $X_-$ の側と、同じ大きさの角をなす。垂線となす角はどちらも $90^\circ$ からこの角を引いたものなので、入射角と反射角も等しい。これで (3) が示せた。$\square$

$A$、$B$ が $\ell$ の反対側にあるときは、折り返す必要はない。線分 $AB$ が $\ell$ と交わる点で最小になる(ex-rsp-cx-opposite)。

斜めの直線に寄る最短の道

$\ell\colon x+2y-6=0$、$A(3,4)$、$B(5,3)$ とする。$g(A)=3+8-6=5$、$g(B)=5+6-6=5$ で、どちらも正なので $A$、$B$ は $\ell$ の同じ側にある。
(1) 対称点:ex-rsp-formula の (1) で求めたとおり $A'(1,0)$ である。
(2) 交点:thm-rsp-main の (1) の式で $g(A)=g(B)=5$ なので、$P_0$ は $A'$ と $B$ の中点
$$ P_0=\frac{5\cdot(1,0)+5\cdot(5,3)}{5+5}=\left(3,\ \frac32\right) $$
である。$3+2\cdot\dfrac32-6=0$ で、たしかに $\ell$ の上にある。
(3) 最小値:$A'B=\sqrt{(5-1)^2+(3-0)^2}=\sqrt{25}=5$ である。実際に $AP_0=\sqrt{0^2+\left(4-\frac32\right)^2}=\dfrac52$、$P_0B=\sqrt{2^2+\left(\frac32\right)^2}=\sqrt{\dfrac{25}4}=\dfrac52$ で、和は $5$ である。$\ell$ 上の別の点では、たとえば $P(2,2)$ で $AP+PB=\sqrt5+\sqrt{10}\approx5.398$、$P(6,0)$ で $5+\sqrt{10}\approx8.162$ で、どちらも $5$ より大きい。
(4) 角:$P_0A$ と $P_0B$ は、$\ell$ の反対向きの半直線と、どちらも約 $63.4^\circ$(余弦が $\dfrac1{\sqrt5}$)の角をなす。

(4) の角を内積で確かめる計算を開く

$\ell$ の向きのベクトル $\vec u=\dfrac1{\sqrt5}(2,-1)$ をとる(法線ベクトル $(1,2)$ と内積が $0$)。$\overrightarrow{P_0A}=\left(0,\dfrac52\right)$ と $-\vec u$ のなす角 $\alpha$、$\overrightarrow{P_0B}=\left(2,\dfrac32\right)$ と $\vec u$ のなす角 $\beta$ は、内積から(ベクトルの内積(高校数学))

$$\cos\alpha=\frac{(-\vec u)\cdot\overrightarrow{P_0A}}{\lvert\overrightarrow{P_0A}\rvert}=\frac{\frac1{\sqrt5}\cdot\frac52}{\frac52}=\frac1{\sqrt5},\qquad\cos\beta=\frac{\vec u\cdot\overrightarrow{P_0B}}{\lvert\overrightarrow{P_0B}\rvert}=\frac{\frac1{\sqrt5}\left(4-\frac32\right)}{\frac52}=\frac1{\sqrt5}$$

で、$\alpha=\beta$ である。

光が鏡で反射するとき、入射角と反射角は等しい。thm-rsp-main の (3) は、光が $A$ から鏡 $\ell$ に寄って $B$ に届く道筋が、$\ell$ に寄る道のうちで最も短い道であることを示している。楕円の焦点から出た光が接線で反射してもう一方の焦点を通ること(2次曲線の接線と光学的性質)も、接線に関して焦点を折り返すこの論法で示せる。

変換を取りかえて同じ論法を使う

thm-rsp-main の証明の要点は 2 つだった。(i) 長さを変えない変換で、道の一部を移す。(ii) 移した後の折れ線を、両端を結ぶ線分と比べる。(i) の変換は折り返しでなくてもよい。長さを変えない変換(合同変換)には、折り返しのほかに平行移動と回転がある(平面の合同変換の分類)。

問題使う変換最小値ボックス
1 本の直線に 1 回寄る折り返し 1 回$A'B$thm-rsp-main
2 本の直線に 1 回ずつ寄る折り返し 2 回($A$ と $B$ を 1 回ずつ)$A_1B_2$ex-rsp-two-lines
川に垂直な橋を渡る平行移動(川の幅だけ)$A^*B+$(川の幅)ex-rsp-bridge
箱の表面を 2 面通る展開図(面を辺のまわりに回して平面に広げる)展開図の線分ex-rsp-box
3 点までの距離の和$60^\circ$ の回転Fermat 点での値Fermat点
2 本の直線に 1 回ずつ寄る道

$\ell_1$ を $x$ 軸、$\ell_2$ を $y$ 軸とし、$A(3,1)$、$B(2,4)$ とする。$A$ を出て、まず $\ell_1$ 上の点 $P$ に、次に $\ell_2$ 上の点 $Q$ に寄って $B$ に着く道 $AP+PQ+QB$ の最小値を求める。
(1) 折り返す。$A$ を $\ell_1$ について折り返した点を $A_1(3,-1)$、$B$ を $\ell_2$ について折り返した点を $B_2(-2,4)$ とする。lem-rsp-equal から $AP=A_1P$、$QB=QB_2$ なので
$$ AP+PQ+QB=A_1P+PQ+QB_2 $$
である。
(2) 下から押さえる。lem-rsp-triangle を 2 回使うと
$$ A_1P+PQ+QB_2\ge A_1Q+QB_2\ge A_1B_2=\sqrt{(-2-3)^2+(4+1)^2}=5\sqrt2 $$
である。
(3) 等号をとる点。線分 $A_1B_2$ は直線 $y=-x+2$ の一部で、$x$ 軸と $P(2,0)$、$y$ 軸と $Q(0,2)$ で交わる。$A_1$ から $B_2$ へ向かうと、$x$ 座標は $3\to2\to0\to-2$ と減るので、4 点は $A_1$、$P$、$Q$、$B_2$ の順に並ぶ。よって (2) の 2 つの不等号はどちらも等号になる。

道の長さを直接確かめる計算を開く

$AP=\sqrt{1^2+1^2}=\sqrt2$、$PQ=\sqrt{2^2+2^2}=2\sqrt2$、$QB=\sqrt{2^2+2^2}=2\sqrt2$ で、和は $5\sqrt2\approx7.071$ である。


最小値は $5\sqrt2$ で、$P(2,0)$、$Q(0,2)$ で最小になる。$P$ でも $Q$ でも、thm-rsp-main の (3) と同じく入射角と反射角が等しい(どちらも $45^\circ$)。部屋の 2 つの壁に 1 回ずつ当ててから的に当てるビリヤードの球の道筋である。

川に垂直な橋を架ける

川を $0\le y\le1$ の帯とし、川の南に $A(0,-2)$、北に $B(3,3)$ がある。川には岸に垂直な($y$ 軸に平行な)橋を 1 本架ける。橋の位置を $x=p$ とすると、道は $A\to X(p,0)\to Y(p,1)\to B$ で、長さは
$$ L(p)=\sqrt{p^2+2^2}+1+\sqrt{(3-p)^2+2^2} $$
である。$L(p)$ を最小にする $p$ を求める。
(1) 平行移動する。$A$ を川の幅だけ北へ平行移動した点を $A^*(0,-1)$ とする。平行移動で線分 $AX$ は線分 $A^*Y$ に移るので、$AX=A^*Y=\sqrt{p^2+2^2}$ である。よって
$$ L(p)=A^*Y+YB+1\ge A^*B+1 $$
である(lem-rsp-triangle)。
(2) 等号をとる点。$A^*B=\sqrt{3^2+4^2}=5$ である。線分 $A^*B$ の上の点は $(3s,\,-1+4s)$($0\le s\le1$)で、$y=1$ になるのは $s=\dfrac12$ のとき、点 $\left(\dfrac32,1\right)$ である。よって $p=\dfrac32$ で等号が成り立ち、最小値は $5+1=6$ である。

$L(p)$ の値で確かめる計算を開く

$L\left(\dfrac32\right)=\sqrt{\dfrac94+4}+1+\sqrt{\dfrac94+4}=\dfrac52+1+\dfrac52=6$ である。$L(1)=\sqrt5+1+\sqrt8\approx6.064$、$L(0)=2+1+\sqrt{13}\approx6.606$ で、どちらも $6$ より大きい。

A を x 軸で、B を y 軸で折り返すと、道 A→P→Q→B は折れ線 A1→P→Q→B2 と同じ長さになり、一直線になるとき最短になる A を x 軸で、B を y 軸で折り返すと、道 A→P→Q→B は折れ線 A1→P→Q→B2 と同じ長さになり、一直線になるとき最短になる
A を川の幅だけ平行移動した点 A* と B を結ぶ線分が北の岸と交わる点に橋を架けると、道が最短になる A を川の幅だけ平行移動した点 A* と B を結ぶ線分が北の岸と交わる点に橋を架けると、道が最短になる

図 3 は ex-rsp-two-lines、図 4 は ex-rsp-bridge の図である。どちらも、道の一部を長さを変えない変換で移して、1 本の線分にのばしている。

箱の表面を通る道:展開図

縦 $3$、横 $2$、高さ $1$ の箱(直方体)の 1 つの頂点 $O$ から、最も遠い頂点 $G$ まで、箱の表面を歩く。ここでは、隣り合う 2 つの面だけを通る道(面の境目の辺を 1 回だけ横切る道)を考える。
2 つの面を境目の辺のまわりに開いて平面に広げる(展開図)と、道は展開図の上の折れ線になり、長さは変わらない。展開図の上で $O$ と $G$ を結ぶ線分が 2 つの面の中を通れば、それが最短である(lem-rsp-triangle)。横切る辺の向きで、展開図は 3 通りある。

横切る辺展開図の長方形$O$ と $G$ を結ぶ線分の長さ
長さ $3$ の辺$3\times(2+1)$$\sqrt{3^2+3^2}=3\sqrt2\approx4.243$
長さ $2$ の辺$2\times(3+1)$$\sqrt{2^2+4^2}=2\sqrt5\approx4.472$
長さ $1$ の辺$1\times(3+2)$$\sqrt{1^2+5^2}=\sqrt{26}\approx5.099$

どの場合も、線分は境目の辺を辺の途中で横切る。たとえば 1 行目では、展開図で $O(0,0)$、$G(3,3)$、境目の辺は $y=1$、$0\le x\le3$ で、線分 $y=x$ は $(1,1)$ で横切る。よって 2 つの面を通る道の最短は $3\sqrt2$ で、いちばん長い辺を横切る道である。3 つ以上の面を通る道を含めても最短が $3\sqrt2$ であることは、この記事では証明しない。

縦 3、横 2、高さ 1 の箱で、長さ 3 の辺を横切る展開図(左)と長さ 1 の辺を横切る展開図(右)。O と G を結ぶ線分の長さは 3√2 と √26 である 縦 3、横 2、高さ 1 の箱で、長さ 3 の辺を横切る展開図(左)と長さ 1 の辺を横切る展開図(右)。O と G を結ぶ線分の長さは 3√2 と √26 である
回転を使う例は Fermat点 にある。三角形の 1 つの頂点のまわりに $60^\circ$ 回転すると、3 点までの距離の和が 1 本の折れ線の長さになり、この記事と同じく線分と比べて最小値が求まる。

例と反例

thm-rsp-main の仮定や手順を変えると、何が崩れるかを並べる。

外す条件反例成り立たなくなること
$A$、$B$ が $\ell$ の同じ側にある$A(1,3)$、$B(5,-1)$、$\ell$ は $x$ 軸最小値が $A'B$ である
$P$ が直線 $\ell$ 全体を動く$P$ が線分 $0\le x\le3$ の上だけを動く最小になる点が $P_0$ である
折り返した 2 点を結ぶ線分が、寄る順に 2 本の直線と交わるex-rsp-two-lines で $\ell_2$、$\ell_1$ の順に寄る最小値が折り返した 2 点の距離である
反例:$A$、$B$ が反対側にある

$\ell$ を $x$ 軸、$A(1,3)$、$B(5,-1)$ とする。$A$ と $B$ は $x$ 軸の反対側にある。
(1) 折り返さないで考える。lem-rsp-triangle から、どの $P$ でも $AP+PB\ge AB=\sqrt{4^2+4^2}=4\sqrt2$ で、線分 $AB$(直線 $y=-x+4$ の一部)は $x$ 軸と $(4,0)$ で交わるので、そこで最小値 $4\sqrt2$ をとる。
(2) 仮定を無視して $A$ を折り返すと、$A'(1,-3)$ と $B$ の距離は $A'B=\sqrt{4^2+2^2}=2\sqrt5\approx4.472$ で、最小値 $4\sqrt2\approx5.657$ とは違う。$AP+PB=A'P+PB\ge A'B$ という不等式そのものは正しいが、$A'$ と $B$ がどちらも $x$ 軸の下にあるので、線分 $A'B$ は $x$ 軸と交わらず、等号がとれない。外した条件:同じ側にあること。成り立たなくなること:最小値が $A'B$ であること。

反例:両端のある道

ex-rsp-start の $A(1,3)$、$B(5,1)$ で、寄る点 $P(t,0)$ が線分 $0\le t\le3$ の上しか動けないとする(川岸の一部にしか近づけない)。直線全体での最小の点 $P_0(4,0)$ はこの範囲の外にある。
このとき最小になるのは、$P_0$ に近い方の端点 $E(3,0)$ で、最小値は $f(3)=\sqrt{13}+\sqrt5\approx5.842$ である。$4\sqrt2\approx5.657$ には届かない。ex-rsp-start の表の値に $f(0)=\sqrt{10}+\sqrt{26}$ を加えて並べると、$f(0)\approx8.261$、$f(1)\approx7.123$、$f(2)\approx6.325$、$f(3)\approx5.842$ と、$t$ が $3$ に近づくほど小さくなっている。外した条件:$P$ が直線全体を動くこと。成り立たなくなること:最小になる点が $P_0$ であること。
$0\le t<3$ で $f(t)>f(3)$ となることは、次の補題を $P=(t,0)$、$E=(3,0)$ に使えば分かる($E$ は $P$ と $P_0$ の間にある)。

交点に近づくほど短くなる

thm-rsp-main の状況で、$P$ を $\ell$ 上の $P_0$ 以外の点とし、$E$ を線分 $PP_0$ の上の $P$ 以外の点とする。このとき $AE+EB< AP+PB$ である。

要点:$E=(1-\lambda)P+\lambda P_0$($0<\lambda\le1$)と書き、距離をベクトルの大きさで書いて三角不等式を使う。

詳しい証明を開く

段 1(ベクトルの三角不等式)。ベクトル $\vec x$、$\vec y$ について $\lvert\vec x+\vec y\rvert\le\lvert\vec x\rvert+\lvert\vec y\rvert$ である(lem-rsp-triangle を 3 点 $O$、$O+\vec x$、$O+\vec x+\vec y$ に使う)。

段 2(距離を分ける)。$E=(1-\lambda)P+\lambda P_0$ なので $\overrightarrow{EA'}=(1-\lambda)\overrightarrow{PA'}+\lambda\overrightarrow{P_0A'}$ で、段 1 から $A'E\le(1-\lambda)A'P+\lambda A'P_0$ である。同じく $EB\le(1-\lambda)PB+\lambda P_0B$ である。足すと

$$A'E+EB\le(1-\lambda)(A'P+PB)+\lambda(A'P_0+P_0B).$$

段 3(比べる)。thm-rsp-main の (2) から $A'P_0+P_0B=A'B< A'P+PB$($P\ne P_0$)である。$\lambda>0$ なので、段 2 の右辺は $(1-\lambda)(A'P+PB)+\lambda(A'P+PB)=A'P+PB$ より小さい。$E$、$P$ は $\ell$ の上にあるので、lem-rsp-equal から $AE=A'E$、$AP=A'P$ で、$AE+EB< AP+PB$ である。$\square$

反例:寄る順を逆にする

ex-rsp-two-lines と同じ $A(3,1)$、$B(2,4)$ で、今度はまず $\ell_2$($y$ 軸)上の $Q$、次に $\ell_1$($x$ 軸)上の $P$ に寄る道 $AQ+QP+PB$ を考える。
(1) 寄る順に合わせて折り返す。$A$ を $\ell_2$ で折り返した $A_2(-3,1)$、$B$ を $\ell_1$ で折り返した $B_1(2,-4)$ をとると、ex-rsp-two-lines と同じ議論で $AQ+QP+PB=A_2Q+QP+PB_1\ge A_2B_1=\sqrt{5^2+5^2}=5\sqrt2$ である。
(2) 等号はとれない。等号には、$P$ が線分 $A_2B_1$ の上にあり、$Q$ が線分 $A_2P$ の上にあることが必要である(lem-rsp-triangle を 2 回使ったときの等号の条件)。線分 $A_2B_1$(直線 $y=-x-2$ の一部)は、$A_2$ から進むと先に $x$ 軸と $(-2,0)$ で、次に $y$ 軸と $(0,-2)$ で交わり、寄る順(先に $y$ 軸)と逆である。線分 $A_2B_1$ と $x$ 軸の交点は $P=(-2,0)$ だけである。線分 $A_2P$ の点の $x$ 座標は $-3$ から $-2$ までで、$y$ 軸($x=0$)の点を含まない。よって等号は成り立たず、どの道も $5\sqrt2$ より長い。
(3) この順の道の最小は、数値計算では約 $7.634$ で、ex-rsp-two-lines の $5\sqrt2\approx7.071$ より長い。

(3) の数値計算を開く

$Q=(0,q)$、$P=(p,0)$ を $-1\le p,q\le6$ の範囲の $0.005$ きざみの格子点で動かして $AQ+QP+PB$ を計算すると、最小は $P=Q=(0,0)$、つまり角の点を通る道 $AO+OB=\sqrt{10}+\sqrt{20}\approx7.634$ のときだった。この値が最小であることは、数値計算で確かめただけで証明しない。


外した条件:寄る順に合わせて折り返した 2 点を結ぶ線分が、寄る順に 2 本の直線と交わること(ex-rsp-two-lines の (3) で確かめた条件)。成り立たなくなること:最小値が折り返した 2 点の距離に等しいこと。

A と B が ℓ の反対側にあるときは、線分 AB が ℓ と交わる点で最短になり、A を折り返した A' と B の線分は ℓ と交わらない A と B が ℓ の反対側にあるときは、線分 AB が ℓ と交わる点で最短になり、A を折り返した A' と B の線分は ℓ と交わらない
寄れる範囲が線分 0≦x≦3 のとき、道のり f(t) はこの範囲では右端 t=3 で最小になる 寄れる範囲が線分 0≦x≦3 のとき、道のり f(t) はこの範囲では右端 t=3 で最小になる

演習

直線 $y=x$ に寄る道

$A(4,1)$、$B(5,3)$ とする。直線 $y=x$ 上の点 $P$ について、$AP+PB$ の最小値と、そのときの $P$ を求めよ。

解答を開く

$A$、$B$ はどちらも $y< x$ の側にある。$A$ の対称点は $A'(1,4)$ である(ex-rsp-axes の (3))。線分 $A'B$ の上の点は $(1+4s,\ 4-s)$($0\le s\le1$)で、$1+4s=4-s$ から $s=\dfrac35$、交点は $P\left(\dfrac{17}5,\dfrac{17}5\right)$ である。最小値は $A'B=\sqrt{4^2+1^2}=\sqrt{17}$ である(thm-rsp-main)。確かめ:$AP=\sqrt{\left(\frac35\right)^2+\left(\frac{12}5\right)^2}=\dfrac{\sqrt{153}}5=\dfrac{3\sqrt{17}}5$、$PB=\sqrt{\left(\frac85\right)^2+\left(\frac25\right)^2}=\dfrac{\sqrt{68}}5=\dfrac{2\sqrt{17}}5$ で、和は $\sqrt{17}$ である。

直線 $2x-y+1=0$ に寄る道

$A(3,2)$、$B(1,1)$ とする。直線 $\ell\colon 2x-y+1=0$ 上の点 $P$ について、$AP+PB$ の最小値と、そのときの $P$ を求めよ。

解答を開く

$g(x,y)=2x-y+1$ とおくと $g(A)=5$、$g(B)=2$ で、同じ側にある。prop-rsp-formula で $k=\dfrac5{2^2+1^2}=1$ なので $A'=(3-2\cdot2\cdot1,\ 2-2\cdot(-1)\cdot1)=(-1,4)$ である(中点 $(1,3)$ は $2-3+1=0$ で $\ell$ の上)。thm-rsp-main の (1) の式で

$$P_0=\frac{g(B)A'+g(A)B}{g(A)+g(B)}=\frac{2\cdot(-1,4)+5\cdot(1,1)}{7}=\left(\frac37,\ \frac{13}7\right)$$

で、$2\cdot\dfrac37-\dfrac{13}7+1=0$ である。最小値は $A'B=\sqrt{2^2+3^2}=\sqrt{13}$ である。

大学数学で見る:光の道と鏡映

Fermat の原理

光は、通る時間が最も短い道を進む(Fermat の原理)。1 つの物質の中では光の速さは一定なので、時間が最短の道は長さが最短の道である。鏡 $\ell$ で 1 回反射して $A$ から $B$ に届く光を考えると、thm-rsp-main により最短の道はただ 1 つで、そこでは入射角と反射角が等しい。反射の法則は、Fermat の原理と thm-rsp-main から導かれる。

速さが変わる場合(屈折)を開く

光が空気から水に入るように、境目の両側で速さ $v_1$、$v_2$ が違うときは、時間 $\dfrac{AP}{v_1}+\dfrac{PB}{v_2}$ を最小にする道を考える。この場合は長さの和の最小ではないので、折り返しの論法はそのままでは使えない。時間の最小の条件から、境目の垂線と光のなす角 $\theta_1$、$\theta_2$ について $\dfrac{\sin\theta_1}{v_1}=\dfrac{\sin\theta_2}{v_2}$(Snell の法則)が出てくる。この記事では証明しない。

ビリヤードと鏡映の群

長方形の台の上で、壁に当たりながら進む球の道筋を考える。壁に当たるたびに台そのものを壁で折り返した「鏡の中の台」を描き足すと、球の道筋は鏡の中の台を突き抜ける 1 本の直線になる。ex-rsp-two-lines は、2 つの壁に 1 回ずつ当たる場合である。

折り返しの合成と群を開く

2 本の直線に関する折り返しを続けて行うと、2 本が平行なら平行移動、交わるなら交点のまわりの回転になる(Hit18 Theorem 3.1.17)。ex-rsp-two-lines の $x$ 軸と $y$ 軸なら、続けて折り返すと原点のまわりの $180^\circ$ の回転である。折り返しを何回も組み合わせてできる変換の集まりは、合成について閉じていて、群をなす(回転・鏡映と行列の群)。多角形の台での球の道筋は、この群を使って調べられる。

曲面の上の最短の道

ex-rsp-box の展開図は、箱の表面の道を平面の道に移す操作で、面の中では長さを変えない。曲面の上の曲線で、曲線の上の十分近い 2 点の間の部分が、曲面の上でその 2 点を結ぶ最も短い道になっているものを 測地線 という(ここでは大まかな説明にとどめる)。平面では測地線は直線(線分)であり、2 点を結ぶ折れ線の中で最も短いのは線分である(Axl24 6.17 の前の注意)。球面では大円の弧が測地線になる。紹介にとどめ、この記事では扱わない。

さらに先へ

  • 鋭角三角形の 3 辺の上に 1 つずつ頂点をもつ三角形のうち、周が最も短いものを求める問題も、辺で折り返して一直線にのばす論法で解ける。次に読む Fagnanoの問題 で扱う。
  • 途中に分岐点を置いてよい道路網の最短は Steiner木 で扱う。1 点で道が分かれる場合が Fermat点 である。
  • 楕円・双曲線・放物線の接線が光を反射する性質は、焦点を接線で折り返して示せる(2次曲線の接線と光学的性質)。
  • 長さを変えない平面の変換は、折り返し・平行移動・回転・すべり鏡映の 4 種類に分かれる(平面の合同変換の分類)。

関連項目

参考文献

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