直積位相(product topology)とは、位相空間の族 $(X_i)_{i\in I}$ の直積集合 $\prod_{i\in I}X_i$ に入れる位相で、すべての射影 $\pi_i$ を連続にする最も粗いものである。有限個の座標だけを開集合に制限した集合 $\prod_i U_i$(有限個の $i$ を除いて $U_i=X_i$)が開基をなす。直積への写像は各成分が連続であるとき、かつそのときに限り連続であり、射影は連続な開写像である。$\mathbb{R}^n$ の通常の位相は $\mathbb{R}$ の直積位相に一致する。無限直積では箱位相より一般に粗く($\mathbb{R}^{\mathbb{N}}$ では真に粗く)、Hausdorff 性は任意個の、第2可算性は可算個の直積に遺伝し、コンパクト性は任意個の直積で保たれる(Tychonoff の定理)。
前提知識: 位相空間, 開集合, 開基, 連続写像, 直積集合
まず因子が有限個の場合を述べる。
$X_1,\dots,X_n$ を位相空間とし、直積集合
$$
X_1\times\cdots\times X_n:=\{(x_1,\dots,x_n)\mid x_k\in X_k\ (k=1,\dots,n)\}
$$
を考える。各 $k$ について $X_k$ の開集合 $U_k$ を選んで得られる部分集合 $U_1\times\cdots\times U_n$ の全体を $\mathcal{B}$ とおく。$\mathcal{B}$ の任意個の元の和集合として表される部分集合の全体を $X_1\times\cdots\times X_n$ 上の直積位相(product topology)または積位相といい、この位相を入れた $X_1\times\cdots\times X_n$ を直積空間(積空間)という。
$\mathcal{B}$ の元の和集合の全体が実際に位相をなし、$\mathcal{B}$ がその開基であることは、下の prop-product-topology-basis を有限な添字集合に適用すれば従う。
$I$ を添字集合、$(X_i)_{i\in I}$ を位相空間の族とし、$X_i$ の開集合系を $\mathcal{O}_i$ と書く。直積集合
$$
X:=\prod_{i\in I}X_i=\Bigl\{x=(x_i)_{i\in I}\ \Bigm|\ x_i\in X_i\ (i\in I)\Bigr\}
$$
は、各 $i\in I$ に $X_i$ の元 $x_i$ を対応させる族(写像 $x\colon I\to\bigcup_{i\in I}X_i$ で $x(i)\in X_i$ を満たすもの)全体の集合である。各 $j\in I$ に対して、射影
$$
\pi_j\colon X\to X_j,\qquad x=(x_i)_{i\in I}\mapsto x_j
$$
が定まる。$I=\emptyset$ のとき $X$ は空な族だけからなる一点集合であり、ある $X_i$ が空集合なら $X=\emptyset$ である。$I$ が無限集合で各 $X_i$ が空でないとき $X\neq\emptyset$ を保証するのは選択公理であるが、以下の定義と証明では、断らない限り選択公理を用いない。
集合 $X$ の部分集合の族 $\mathcal{S}$ に対し、$\mathcal{S}$ を含む $X$ 上の位相のうち最小のもの($\mathcal{S}$ を含む任意の位相に含まれるもの)を、$\mathcal{S}$ が生成する位相という。そのような位相が存在して一意であることは prop-product-topology-basis で示す。一般に、位相 $\mathcal{O}$ の部分族 $\mathcal{S}$ で、その有限個の元の共通部分の全体が $\mathcal{O}$ の開基をなすものを $\mathcal{O}$ の準開基という。
位相空間の族 $(X_i)_{i\in I}$ の直積集合 $X=\prod_{i\in I}X_i$ において、
$$
\mathcal{S}:=\{\pi_i^{-1}(U)\mid i\in I,\ U\in\mathcal{O}_i\}
$$
とおく。すなわち $\mathcal{S}$ は、一つの因子 $X_i$ の開集合 $U$ の射影による逆像全体の族である。$\mathcal{S}$ が生成する $X$ 上の位相を $(X_i)_{i\in I}$ の直積位相(product topology。積位相、Tychonoff 位相ともいう)といい、$\mathcal{O}_{\mathrm{prod}}$ と書く。直積位相を入れた $X$ を直積空間という。$\mathcal{S}$ を直積位相の標準的な準開基という。
$\pi_i^{-1}(U)$ は「第 $i$ 座標が $U$ に入り、他の座標は何でもよい」点の全体である。$\mathcal{S}$ の元の和集合だけでは位相にならない。たとえば $\mathbb{R}^2=\mathbb{R}\times\mathbb{R}$ で $(0,1)\times(0,1)$ は二つの帯 $\pi_1^{-1}((0,1))$、$\pi_2^{-1}((0,1))$ の共通部分であるが、空でない帯を一つも含まないので帯の和集合ではない。そこで有限個の共通部分をとって開基を作る。
記号は def-product-topology のとおりとし、
$$
\mathcal{B}:=\Bigl\{\prod_{i\in I}U_i\ \Bigm|\ \text{各 }i\text{ について }U_i\in\mathcal{O}_i\text{ であり、有限個の }i\text{ を除いて }U_i=X_i\Bigr\}
$$
とおく。このとき次が成り立つ。
1:$i_1,\dots,i_n\in I$ と $U_k\in\mathcal{O}_{i_k}$($k=1,\dots,n$)に対し
$$
\pi_{i_1}^{-1}(U_1)\cap\cdots\cap\pi_{i_n}^{-1}(U_n)=\prod_{i\in I}V_i,\qquad V_i:=\bigcap_{k\,:\,i_k=i}U_k
$$
である。ここで $i$ がどの $i_k$ とも異なるときは、空な共通部分として $V_i=X_i$ とする。実際、点 $x$ が左辺に属することは「各 $k$ について $x_{i_k}\in U_k$」であり、右辺に属することは「各 $i$ について $x_i\in V_i$」であって、両者は同じ条件である。各 $V_i$ は有限個の開集合の共通部分なので開集合であり、$V_i\neq X_i$ となりうる $i$ は $i_1,\dots,i_n$ に限るので、左辺は $\mathcal{B}$ に属する。$n=0$ のときは $X=\prod_iX_i\in\mathcal{B}$ である。逆に $\prod_iU_i\in\mathcal{B}$ について、$U_i\neq X_i$ となる $i$ を $i_1,\dots,i_n$ とすれば $\prod_iU_i=\pi_{i_1}^{-1}(U_{i_1})\cap\cdots\cap\pi_{i_n}^{-1}(U_{i_n})$ である。
2:位相の三条件を確かめる。$\emptyset$ は空な部分族の和集合であり、$X$ は $\mathcal{B}$ の元なので、ともに $\mathcal{T}$ に属する。$\mathcal{T}$ の元の族 $(W_\lambda)_{\lambda}$ の和集合は、各 $W_\lambda$ を表す $\mathcal{B}$ の部分族をすべて合わせた部分族の和集合なので $\mathcal{T}$ に属する。最後に、$W=\bigcup_{B\in\mathcal{C}}B$、$W'=\bigcup_{B'\in\mathcal{C}'}B'$($\mathcal{C},\mathcal{C}'\subset\mathcal{B}$)に対し
$$
W\cap W'=\bigcup_{B\in\mathcal{C},\ B'\in\mathcal{C}'}(B\cap B')
$$
であり、$B=\prod_iU_i$、$B'=\prod_iU_i'$ なら $B\cap B'=\prod_i(U_i\cap U_i')$ である。各 $U_i\cap U_i'$ は開集合であり、$U_i\cap U_i'\neq X_i$ となる $i$ は「$U_i\neq X_i$ または $U_i'\neq X_i$」となる有限個の $i$ に限るので、$B\cap B'\in\mathcal{B}$ である。よって $W\cap W'\in\mathcal{T}$ である。
3:$\mathcal{S}$ の元は $1$ 個の元の共通部分なので $\mathcal{S}\subset\mathcal{B}\subset\mathcal{T}$ である。$\mathcal{O}$ を $\mathcal{S}$ を含む任意の位相とする。位相は $X$ を含み有限個の共通部分に閉じているので、1 により $\mathcal{B}\subset\mathcal{O}$ であり、任意個の和集合に閉じているので $\mathcal{T}\subset\mathcal{O}$ である。よって $\mathcal{T}$ は $\mathcal{S}$ を含む最小の位相である。最小の位相が二つあれば互いに含み合って一致するので、生成する位相は一意である。$\mathcal{B}\subset\mathcal{T}$ の各元は開集合であり、$\mathcal{T}$ の各元は $\mathcal{B}$ の元の和集合なので、$\mathcal{B}$ は $\mathcal{T}$ の開基である。$\square$
上の 1 と 3 により、$\mathcal{S}$ は直積位相の準開基である。
添字集合 $I=\{1,\dots,n\}$ が有限なら「有限個の $i$ を除いて $U_i=X_i$」という条件は空であり、$\mathcal{B}$ は $U_1\times\cdots\times U_n$ の形の集合全体に一致する。したがって def-product-topology-finite は def-product-topology の特別な場合であり、$\mathcal{B}$ が位相を生成しその開基となることも上の証明に含まれている。一方 $I$ が無限のときは、すべての座標を同時に制限した $\prod_iU_i$ は一般に直積位相の開集合ではない。このような集合を開基とする位相は箱位相と呼ばれ、直積位相とは一般に異なる(rem-product-topology-box-diagonal)。
各因子の開基が分かっていれば、直積位相の開基はそれから作れる。
各 $i\in I$ について $\mathcal{B}_i$ を $X_i$ の開基とする。このとき
$$
\mathcal{B}':=\Bigl\{\prod_{i\in I}U_i\ \Bigm|\ \text{有限集合 }F\subset I\text{ があり、}i\in F\text{ なら }U_i\in\mathcal{B}_i,\ i\notin F\text{ なら }U_i=X_i\Bigr\}
$$
は直積位相の開基である。
開基の元は開集合なので $\mathcal{B}'\subset\mathcal{B}$ であり、$\mathcal{B}'$ の各元は直積位相の開集合である。$W$ を直積位相の開集合、$x\in W$ とする。prop-product-topology-basis により $x\in\prod_iU_i\subset W$ となる $\prod_iU_i\in\mathcal{B}$ があり、$U_i\neq X_i$ となる $i$ の集合 $F$ は有限集合である。各 $i\in F$ について、$\mathcal{B}_i$ が開基であることから $x_i\in V_i\subset U_i$ となる $V_i\in\mathcal{B}_i$ がとれる(有限回の選択なので選択公理は不要である)。$i\notin F$ では $V_i:=X_i$ とおくと、$\prod_iV_i\in\mathcal{B}'$ かつ $x\in\prod_iV_i\subset\prod_iU_i\subset W$ である。したがって $W$ は、$W$ に含まれる $\mathcal{B}'$ の元すべての和集合に等しく、$\mathcal{B}'$ は開基である。$\square$
直積位相は「射影がすべて連続になる最も粗い位相」として特徴づけられる。集合 $X$ 上の二つの位相 $\mathcal{O},\mathcal{O}'$ について $\mathcal{O}\subset\mathcal{O}'$ であるとき、$\mathcal{O}$ は $\mathcal{O}'$ より粗い(弱い)、$\mathcal{O}'$ は $\mathcal{O}$ より細かい(強い)という。
$X=\prod_{i\in I}X_i$ を直積集合とする。
1:$X_j$ の開集合 $U$ に対し $\pi_j^{-1}(U)\in\mathcal{S}\subset\mathcal{O}_{\mathrm{prod}}$ である。
2:各 $\pi_j$ が $(X,\mathcal{O})$ 上で連続なので、$X_j$ の任意の開集合 $U$ に対し $\pi_j^{-1}(U)\in\mathcal{O}$ である。すなわち $\mathcal{S}\subset\mathcal{O}$ であり、$\mathcal{O}_{\mathrm{prod}}$ は $\mathcal{S}$ を含む最小の位相なので $\mathcal{O}_{\mathrm{prod}}\subset\mathcal{O}$ である。
3:1 と 2 から直積位相は最も粗い。$\mathcal{O}$ も同じ性質をもてば、2 により $\mathcal{O}_{\mathrm{prod}}\subset\mathcal{O}$ であり、$\mathcal{O}$ の最小性により $\mathcal{O}\subset\mathcal{O}_{\mathrm{prod}}$ なので、両者は一致する。$\square$
直積位相の開集合は、「有限個の座標にそれぞれ開集合による条件を課し、残りの座標は自由にしておく」集合を貼り合わせたものである。有限個の因子なら各座標を同時に制限してよいが、無限個の因子では一度に制限できる座標は有限個に限られる。この制限は、射影を連続にするのに必要なだけの開集合しか採用しないという定義の帰結である。その見返りとして、「直積への写像は成分ごとに連続なら連続である」という扱いやすさ(thm-product-topology-universal)と、コンパクト空間の直積がコンパクトになるという Tychonoffの定理 が得られる。すべての座標を同時に制限する箱位相はより細かく、無限直積では一般にこの二つの性質を失う。
$\mathbb{R}$ に通常の位相(距離空間としての距離 $|x-y|$ が定める位相)を入れ、$n$ 個の直積 $\mathbb{R}^n=\mathbb{R}\times\cdots\times\mathbb{R}$ に直積位相 $\mathcal{O}_{\mathrm{prod}}$ を入れる。他方、Euclid空間 $\mathbb{R}^n$ には Euclid 距離
$$
d(x,y)=\|x-y\|=\Bigl(\sum_{k=1}^n(x_k-y_k)^2\Bigr)^{1/2}
$$
が定める位相 $\mathcal{O}_d$(開球 $B(x,r)=\{y\mid\|y-x\|< r\}$ の和集合として表される集合の全体)がある。この二つは一致する:$\mathcal{O}_{\mathrm{prod}}=\mathcal{O}_d$。
証明。開区間(区間)の全体は $\mathbb{R}$ の開基なので、prop-product-topology-basis-from-bases により $\mathcal{B}'$ は開基であり、$\mathbb{R}$ は開区間の和集合なので $\mathcal{B}'$ の各元は開直方体 $R=(a_1,b_1)\times\cdots\times(a_n,b_n)$($a_k< b_k$)の和集合である。よって開直方体の全体も $\mathcal{O}_{\mathrm{prod}}$ の開基である。
$\mathcal{O}_{\mathrm{prod}}\subset\mathcal{O}_d$:開直方体 $R$ が $\mathcal{O}_d$ に属することを示せばよい。$x\in R$ に対し $\varepsilon:=\min_k\min\{x_k-a_k,\ b_k-x_k\}>0$ とおく。$\|y-x\|<\varepsilon$ ならば各 $k$ について $|y_k-x_k|\le\|y-x\|<\varepsilon$ なので $a_k< y_k< b_k$、すなわち $B(x,\varepsilon)\subset R$ である。よって $R$ は開球の和集合であり、$\mathcal{O}_d$ に属する。
$\mathcal{O}_d\subset\mathcal{O}_{\mathrm{prod}}$:開球 $B(x,r)$ が $\mathcal{O}_{\mathrm{prod}}$ に属することを示せばよい。$y\in B(x,r)$ に対し $\delta:=(r-\|y-x\|)/\sqrt{n}>0$ とおき、開直方体 $R_y:=\prod_{k=1}^n(y_k-\delta,\,y_k+\delta)$ を考える。$z\in R_y$ ならば $\|z-y\|^2=\sum_k(z_k-y_k)^2< n\delta^2$ なので $\|z-y\|<\sqrt{n}\,\delta=r-\|y-x\|$ であり、三角不等式により $\|z-x\|\le\|z-y\|+\|y-x\|< r$ である。よって $y\in R_y\subset B(x,r)$ であり、$B(x,r)$ は開直方体の和集合として $\mathcal{O}_{\mathrm{prod}}$ に属する。$\square$
したがって $\mathbb{R}^n$ の通常の位相は、$\mathbb{R}$ の通常の位相だけから直積位相として再構成できる。同じ議論により、距離空間 $(X_1,d_1),\dots,(X_n,d_n)$ の直積位相は、距離 $\max_kd_k(x_k,y_k)$ が定める位相にも $\sum_kd_k(x_k,y_k)$ が定める位相にも一致する。
$X_1,\dots,X_n$ を離散空間(離散位相を入れた集合)とすると、直積空間 $X_1\times\cdots\times X_n$ も離散空間である。実際、一点 $x=(x_1,\dots,x_n)$ に対し $\{x\}=\{x_1\}\times\cdots\times\{x_n\}$ は開集合の直積なので開基の元であり、したがって任意の部分集合は一点集合の和集合として開集合になる。
これに対し、二点離散空間 $\{0,1\}$ の可算無限個の直積 $\{0,1\}^{\mathbb{N}}=\prod_{n\in\mathbb{N}}\{0,1\}$ は離散空間でない。点 $p\in\{0,1\}^{\mathbb{N}}$ を含む開基の元 $\prod_nU_n$ は有限個の $n$ を除いて $U_n=\{0,1\}$ であるから、制限されていない座標 $m$ をとり、$p$ の第 $m$ 座標だけを $1-p_m$ に取り替えた点を考えると、この点は $\prod_nU_n$ に属するが $p$ と異なる。よって $\{p\}$ は開集合でない。この空間は Cantor集合 と同相写像によって同相であることが知られている(Wil04 の Cantor 集合の節)。離散性は有限直積には遺伝するが、無限直積には遺伝しない。
$\mathbb{R}^{\mathbb{N}}=\prod_{n\in\mathbb{N}}\mathbb{R}$($\mathbb{N}=\{0,1,2,\dots\}$)を考え、対角写像
$$
\Delta\colon\mathbb{R}\to\mathbb{R}^{\mathbb{N}},\qquad \Delta(t):=(t,t,t,\dots)
$$
を定める。各座標写像 $\pi_n\circ\Delta$ は $\mathbb{R}$ の恒等写像なので連続であり、したがって値域に直積位相を入れれば $\Delta$ は連続である(thm-product-topology-universal)。
値域に箱位相(各座標の開集合の直積 $\prod_nU_n$ をすべて開基の元とする位相)を入れると事情が変わる。
$$
B:=\prod_{n\in\mathbb{N}}\left(-2^{-n},\,2^{-n}\right)
$$
は箱位相の開集合であるが、
$$
\Delta^{-1}(B)=\{t\in\mathbb{R}\mid\text{すべての }n\text{ について }|t|<2^{-n}\}=\{0\}
$$
であり、一点集合 $\{0\}$ は $\mathbb{R}$ の開集合でない。よって $\Delta$ は箱位相に関しては連続でない。この写像は「各成分が連続である」という性質を満たすが「連続である」という性質を満たさず、「成分ごとに連続ならば連続」という含意が箱位相では破れることを示している。
同時に、$B$ が直積位相の開集合でないことも分かる(直積位相に関して連続な $\Delta$ による逆像が開でないから)。$B$ が直積位相で開でないことは 箱位相 の記事が示す。したがって $\mathbb{R}^{\mathbb{N}}$ では直積位相は箱位相より真に粗い。無限直積で真に粗くなる条件は 箱位相 の記事が扱う。
射影は開写像である(prop-product-topology-projection-open)が、閉写像(閉集合の像(写像)がつねに閉集合になる写像)とは限らない。$\mathbb{R}^2$ の部分集合 $H:=\{(x,y)\mid xy=1\}$ は、連続写像 $(x,y)\mapsto xy$ による一点集合 $\{1\}$ の逆像なので閉集合である($\mathbb{R}$ の一点集合は閉集合であり、$\mathbb{R}^2$ 上の乗法の連続性は実数の基本性質である)。しかし $\pi_1(H)=\mathbb{R}\setminus\{0\}$ は閉集合でない。$0$ を中心とするどの開区間も $\mathbb{R}\setminus\{0\}$ の点を含むので、$0$ は $\pi_1(H)$ の閉包に属するからである。$H$ は「閉集合である」という性質を満たすが、その像 $\pi_1(H)$ は「閉集合である」という性質を満たさず、「閉集合の射影は閉集合である」という含意を破る。
$Y$ を位相空間、$X=\prod_{i\in I}X_i$ を直積空間、$f\colon Y\to X$ を写像とする。$\mathcal{S}$ の任意の元 $\pi_i^{-1}(U)$ に対して逆像 $f^{-1}(\pi_i^{-1}(U))$ が $Y$ の開集合ならば、$f$ は連続である。
$\mathcal{O}':=\{W\subset X\mid f^{-1}(W)\text{ は }Y\text{ の開集合}\}$ とおく。$f^{-1}(\emptyset)=\emptyset$、$f^{-1}(X)=Y$ であり、逆像は和集合と共通部分を保つ($f^{-1}(\bigcup_\lambda W_\lambda)=\bigcup_\lambda f^{-1}(W_\lambda)$、$f^{-1}(W\cap W')=f^{-1}(W)\cap f^{-1}(W')$)ので、$\mathcal{O}'$ は $X$ 上の位相である。仮定により $\mathcal{S}\subset\mathcal{O}'$ であるから、$\mathcal{S}$ が生成する位相の最小性により $\mathcal{O}_{\mathrm{prod}}\subset\mathcal{O}'$ である。これは、直積位相の任意の開集合の $f$ による逆像が開集合であること、すなわち $f$ が連続であることを意味する。$\square$
$Y$ を位相空間、$X=\prod_{i\in I}X_i$ を直積空間とする。
1:$f$ が連続であるとする。$X_i$ の開集合 $U$ に対し $f_i^{-1}(U)=f^{-1}(\pi_i^{-1}(U))$ であり、$\pi_i^{-1}(U)$ は $X$ の開集合(prop-product-topology-coarsest)なので $f_i^{-1}(U)$ は $Y$ の開集合である。よって各 $f_i$ は連続である。逆にすべての $f_i$ が連続であるとすると、$\mathcal{S}$ の元 $\pi_i^{-1}(U)$ に対し $f^{-1}(\pi_i^{-1}(U))=f_i^{-1}(U)$ は開集合なので、lem-product-topology-subbase-continuity により $f$ は連続である。
2:写像 $f\colon Y\to X$ がすべての $i$ について $\pi_i\circ f=f_i$ を満たすことは、各 $y\in Y$ について $f(y)$ の第 $i$ 座標が $f_i(y)$ であること、すなわち $f(y)=(f_i(y))_{i\in I}$ であることと同値である。よってそのような写像は集合の写像としてただ一つ存在し、その連続性は 1 から従う。$\square$
rem-product-topology-box-diagonal は、箱位相がこの性質をもたないことの具体例である。圏論の言葉では、直積空間は位相空間の圏における積(圏論)であり、thm-product-topology-universal の 2 がその普遍性にあたる。
直積空間 $X=\prod_{i\in I}X_i$ の各射影 $\pi_j\colon X\to X_j$ は連続かつ開写像である。すなわち、$X$ の任意の開集合 $W$ に対し像 $\pi_j(W)$ は $X_j$ の開集合である。
連続性は prop-product-topology-coarsest で示した。$W$ を開集合とすると、prop-product-topology-basis により $W=\bigcup_{B\in\mathcal{C}}B$($\mathcal{C}\subset\mathcal{B}$)と書け、像は和集合を保つので $\pi_j(W)=\bigcup_{B\in\mathcal{C}}\pi_j(B)$ である。よって $\mathcal{B}$ の各元 $B=\prod_iU_i$ について $\pi_j(B)$ が開集合であることを示せば十分である。$B=\emptyset$ なら $\pi_j(B)=\emptyset$ は開集合である。$B\neq\emptyset$ なら一点 $c\in B$ をとる。$\pi_j(B)\subset U_j$ は明らかである。逆に $u\in U_j$ に対し、点 $y\in X$ を $y_j:=u$、$y_i:=c_i$($i\neq j$)で定めると、$y\in B$ かつ $\pi_j(y)=u$ である。よって $\pi_j(B)=U_j$ であり、これは開集合である。$\square$
$X=\prod_{i\in I}X_i$ を直積空間とする。
1:$x\neq y$ を $X$ の相異なる二点とすると、ある $j\in I$ について $x_j\neq y_j$ である。$X_j$ が Hausdorff なので、$x_j\in U$、$y_j\in V$、$U\cap V=\emptyset$ となる $X_j$ の開集合 $U,V$ がある。$\pi_j^{-1}(U)$ と $\pi_j^{-1}(V)$ は $X$ の開集合であり、それぞれ $x$、$y$ を含み、$\pi_j^{-1}(U)\cap\pi_j^{-1}(V)=\pi_j^{-1}(U\cap V)=\emptyset$ である。
2:各 $i$ について $X_i$ の可算な開基 $\mathcal{B}_i$ をとる。prop-product-topology-basis-from-bases の $\mathcal{B}'$ は直積位相の開基である。$\mathcal{B}'$ の元は、$I$ の有限部分集合 $F$ と族 $(U_i)_{i\in F}\in\prod_{i\in F}\mathcal{B}_i$ の組から定まる。$I$ が可算なので $I$ の有限部分集合の全体は可算であり、各 $F$ について $\prod_{i\in F}\mathcal{B}_i$ は有限個の可算集合の直積として可算である。よって $\mathcal{B}'$ は可算個の可算集合の和集合の像であり、可算である。$\square$
可算性の仮定を外すと 2 は成り立たない。次の命題は、非可算個の直積が第2可算公理どころか第1可算公理も満たさないことを示す。
$p\in\{0,1\}^I$ とし、$p$ が可算な基本近傍系 $(N_k)_{k\in\mathbb{N}}$ をもつと仮定して矛盾を導く。各 $k$ について、$p\in B_k\subset N_k$ となる開基の元 $B_k=\prod_iU^{(k)}_i\in\mathcal{B}$ を(可算選択公理により)選び、$U^{(k)}_i\neq X_i$ となる $i$ の有限集合を $F_k$ とする。$F:=\bigcup_{k\in\mathbb{N}}F_k$ は可算個の有限集合の和集合なので可算であり、$I$ は非可算なので $j\in I\setminus F$ がとれる。$\{p_j\}$ は離散空間 $X_j$ の開集合なので、$V:=\pi_j^{-1}(\{p_j\})$ は $p$ を含む $X$ の開集合である。$p$ の第 $j$ 座標だけを $1-p_j$ に取り替えた点を $q$ とすると、各 $k$ について $j\notin F_k$ なので $q\in B_k\subset N_k$ であるが、$q\notin V$ である。よってどの $k$ についても $N_k\not\subset V$ であり、$(N_k)_{k}$ が基本近傍系であることに反する。
第2可算公理を満たす空間は第1可算公理を満たし、距離空間は第1可算公理を満たす(各点で半径 $1/(n+1)$、$n\in\mathbb{N}$ の開球の全体が可算な基本近傍系をなす)ので、残りの主張が従う。$\square$
この直積は、各因子が「第1可算公理を満たす」という性質(有限離散空間なので満たす)をもつが、全体は「第1可算公理を満たす」という性質を満たさず、「任意個の直積で第1可算性が遺伝する」という含意を破る反例である。
$(X_i)_{i\in I}$ をコンパクト空間の族とすると、直積空間 $\prod_{i\in I}X_i$ はコンパクトである。
この定理は Tychonoff の定理と呼ばれ、証明は Tychonoffの定理 の記事に譲る(Mun00 §37 Theorem 37.3、Eng89)。$I$ が有限のときは選択公理なしに証明できるが、任意個の直積に対する主張は選択公理と同値である(Kelley、1950 年。Tychonoffの定理 の記事の Kelley の定理を参照)。箱位相ではこの定理は成り立たない。たとえば $[0,1]^{\mathbb{N}}$ に箱位相を入れるとコンパクトでない(箱位相)。直積位相が「有限個の座標しか制限しない」ように定められていることが、この定理の成立に本質的である。
「直積位相」「積位相」「Tychonoff 位相」は同じ位相を指し、日本語の教科書では「積空間」「積位相」の語も広く使われる(Mat68 第4章)。有限個の因子の直積空間は $X\times Y$、$X_1\times\cdots\times X_n$ と書き、族の直積空間は $\prod_{i\in I}X_i$ と書く。すべての因子が同じ空間 $X$ のときは $X^I$、$X^n$ と書き、$\mathbb{R}^{\mathbb{N}}$ は $\mathbb{R}^\omega$ とも書かれる(Mun00 §19)。「直積位相」は位相そのものを、「直積空間」はそれを入れた空間を指すが、両者を区別せずに用いることも多い。
prop-product-topology-coarsest は、直積位相が射影の族 $(\pi_i)_{i\in I}$ に関する始位相(写像の族をすべて連続にする最も粗い位相)であることを述べている。部分空間の相対位相も包含写像に関する始位相であり、thm-product-topology-universal にあたる連続性の判定は始位相一般について成り立つ。有限直積の結合性と可換性、すなわち $X\times(Y\times Z)$ と $X\times Y\times Z$、$X\times Y$ と $Y\times X$ が座標の並べ替えで同相であることは、thm-product-topology-universal を用いて、並べ替えの写像とその逆写像がともに連続であることを成分ごとに確かめれば従う。
各 $i$ について $A_i\subset X_i$ を部分空間とすると、$\prod_iA_i$ に入る直積位相は、直積空間 $\prod_iX_i$ の部分空間としての相対位相に一致する(Mun00 §19 Theorem 19.3)。
可算個の距離化可能空間の直積空間は距離化可能である。特に $\mathbb{R}^{\mathbb{N}}$ に直積位相を入れた空間は距離化可能であり、$\bar d(a,b):=\min\{|a-b|,1\}$ とおいて
$$
D(x,y):=\sup_{n\in\mathbb{N}}\frac{\bar d(x_n,y_n)}{n+1}
$$
と定めた距離 $D$ が直積位相を定める(Mun00 §20 Theorem 20.5。一般の可算直積については Eng89)。一方、非可算個の直積では prop-product-topology-uncountable のように第1可算性が失われうるので、距離化可能性は非可算直積には遺伝しない。
Mathpediaは寄付と、参考文献の書籍リンク(Amazonアソシエイト)の紹介料で運営されています。 支援について / 寄付する