正多面体(regular polyhedron)とは、すべての面が互いに合同な正多角形で、どの頂点にも同じ枚数の面が集まる凸多面体のことである。面が正 $p$ 角形で各頂点に $q$ 枚の面が集まるとき、凸多面体の頂点に集まる面の角の和が $2\pi$ 未満であることから $(p-2)(q-2)<4$ が従い、型 $(p,q)$ は $(3,3),(3,4),(4,3),(3,5),(5,3)$ の 5 通りに限られる。それぞれ正四面体・正八面体・立方体・正二十面体・正十二面体として実際に存在する。たとえば立方体は頂点 8、辺 12、面 6 で、Euler の多面体公式 $V-E+F=2$ を満たす。この公式からも同じ分類が得られる。
サイコロの形をした立方体は、6 枚の合同な正方形でできていて、どの頂点にも正方形がちょうど 3 枚集まっている。頂点は 8 個、辺は 12 本、面は 6 枚で、$8-12+6=2$ である。同じように「合同な正多角形だけでできていて、どの頂点にも同じ枚数の面が集まる」立体を探すと、正三角形を 3 枚・4 枚・5 枚ずつ集めた正四面体・正八面体・正二十面体、正方形を 3 枚ずつ集めた立方体、正五角形を 3 枚ずつ集めた正十二面体が見つかる。ところが正六角形を 3 枚集めると、角の和が $120^\circ\times3=360^\circ$ でちょうど平らになり、とがった頂点ができない。正三角形を 6 枚集めても $60^\circ\times6=360^\circ$ で同じことが起こる。頂点に集まる角の和が $360^\circ$ に届いてはいけない、というこの制約だけで、正多面体が上の 5 種類に限られることが示せる。
以下、立体は 3 次元のEuclid空間 $\mathbb{R}^3$ の中で考える。凸多面体(多面体のうち凸集合であるもの)とは、同一平面上にない有限個の点の凸包のことである。凸多面体 $P$ の基本的な性質として、次のことを以下で断りなく使う。
凸多面体 $P$ が正多面体(regular polyhedron、Platonic solid)であるとは、次の 2 条件を満たすことをいう。
正 $p$ 角形の 1 つの内角は $\left(1-\dfrac{2}{p}\right)\pi$ である($p$ 角形の内角の和 $(p-2)\pi$ を $p$ 等分したもの)。たとえば正三角形は $\pi/3=60^\circ$、正方形は $\pi/2=90^\circ$、正五角形は $3\pi/5=108^\circ$、正六角形は $2\pi/3=120^\circ$ である。
紙で作った正多角形を 1 つの頂点のまわりに貼り合わせて立体の角を作ることを考える。平面に並べたとき、頂点のまわりの角の和が $360^\circ$ より小さければ隙間ができ、その隙間を閉じるように折り曲げると、とがった角(立体角)ができる。和がちょうど $360^\circ$ なら平面のまま閉じてしまい、$360^\circ$ を超えれば重なってしまう。したがって正多面体の頂点では、集まる面の角の和が $360^\circ$ 未満でなければならない。$360^\circ$ との差(不足角)は、その頂点がどれだけとがっているかを表す。5 種類の正多面体の不足角は $180^\circ,120^\circ,90^\circ,60^\circ,36^\circ$ であり、これに頂点の数を掛けるとどれも $720^\circ$ になる(rem-reg-poly-defect)。
次の 5 つが正多面体である。$V,E,F$ はそれぞれ頂点・辺・面の個数、最後の列は 1 つの頂点に集まる面の角の和である。
| 名前 | 型 $(p,q)$ | $V$ | $E$ | $F$ | 頂点での角の和 |
|---|---|---|---|---|---|
| 正四面体 | $(3,3)$ | $4$ | $6$ | $4$ | $180^\circ$ |
| 正八面体 | $(3,4)$ | $6$ | $12$ | $8$ | $240^\circ$ |
| 立方体(正六面体) | $(4,3)$ | $8$ | $12$ | $6$ | $270^\circ$ |
| 正二十面体 | $(3,5)$ | $12$ | $30$ | $20$ | $300^\circ$ |
| 正十二面体 | $(5,3)$ | $20$ | $30$ | $12$ | $324^\circ$ |
どの行でも $V-E+F=2$ が成り立つ。これらが実際に存在することは prop-reg-poly-existence で座標を与えて示す。
合同な 2 つの正四面体を 1 枚の面で貼り合わせた立体(三角両錐)は凸であり、6 枚の面はすべて合同な正三角形である。しかし上下の 2 頂点には面が 3 枚、中央の 3 頂点には面が 4 枚集まる。すなわちこの立体は条件 1 を満たし、条件 2 を満たさないので正多面体でない。「面がすべて合同な正多角形なら正多面体である」という含意はこの例で破れる。
上下の底面が正三角形で、3 枚の側面が正方形である三角柱を考える。どの頂点にも正三角形 1 枚と正方形 2 枚、合わせて 3 枚の面が集まるので条件 2 は満たされるが、面が正三角形と正方形の 2 種類あり、条件 1 を満たさない。したがって正多面体でない。
正六角形を 3 枚、正方形を 4 枚、正三角形を 6 枚、1 点のまわりに並べると、角の和はそれぞれ $3\cdot120^\circ$、$4\cdot90^\circ$、$6\cdot60^\circ$ でちょうど $360^\circ$ になり、平面に隙間なく敷き詰まる。これらは平面の敷き詰め(蜂の巣、碁盤の目、三角形の格子)を与えるが、凸多面体の頂点にはならない(lem-reg-poly-vertex-angle-sum)。したがって「合同な正多角形を 3 枚以上 1 点のまわりに集めれば、凸多面体の頂点が作れる」という含意はこの例で破れる。破れているのは、頂点に集まる角の和が $360^\circ$ 未満であるという条件である。
正多面体の分類の鍵は、凸多面体の頂点に集まる面の角の和が $2\pi$ 未満であることである。まず、空間の中の角についての三角不等式を用意する。$0$ でないベクトル $x,y\in\mathbb{R}^3$ のなす角を $\angle(x,y)=\arccos\dfrac{\langle x,y\rangle}{\|x\|\,\|y\|}\in[0,\pi]$ と書く($\langle\cdot,\cdot\rangle$ は標準内積)。
$0$ でないベクトル $u,v,w\in\mathbb{R}^3$ について
$$
\angle(u,w)\le\angle(u,v)+\angle(v,w)
$$
が成り立つ。さらに $u,v,w$ が線形独立ならば不等号は真の不等号 $<$ である。
長さで割って $u,v,w$ は単位ベクトルとしてよい。$a:=\angle(u,v)$、$b:=\angle(v,w)$ とおく。
$a+b\ge\pi$ のときは $\angle(u,w)\le\pi\le a+b$ である。ここで等号 $\angle(u,w)=\pi$ が成り立つなら $w=-u$ となり、$u,v,w$ は線形独立でない。
$a=0$ なら $u=v$ で $\angle(u,w)=b=a+b$、$b=0$ なら $w=v$ で同様に等号が成り立ち、どちらも $u,v,w$ は線形独立でない。
残るのは $0< a$、$0< b$、$a+b<\pi$ の場合である。このとき $0< a<\pi$ なので $\sin a>0$ であり、$u':=(u-\cos a\,v)/\sin a$ とおくと $\langle u',v\rangle=0$、$\|u'\|=1$、$u=\cos a\,v+\sin a\,u'$ である($\|u-\cos a\,v\|^2=1-\cos^2a=\sin^2a$)。同様に $w=\cos b\,v+\sin b\,w'$($w'$ は $v$ に直交する単位ベクトル)と書ける。Cauchy–Schwarzの不等式により $\langle u',w'\rangle\ge-1$ なので
$$
\langle u,w\rangle=\cos a\cos b+\sin a\sin b\,\langle u',w'\rangle\ge\cos a\cos b-\sin a\sin b=\cos(a+b)
$$
である。$\arccos$ は $[-1,1]$ 上で狭義単調減少で、$0< a+b<\pi$ なので $\angle(u,w)\le a+b$ が得られる。等号が成り立つのは $\langle u',w'\rangle=-1$、すなわち $w'=-u'$ のときに限り、このとき $u,w$ はどちらも $v,u'$ の張る平面に含まれるので、$u,v,w$ は線形独立でない。$\square$
凸多面体 $P$ の頂点 $x$ に $q$ 枚の面が集まり、それらの面の $x$ における内角を $\alpha_1,\dots,\alpha_q$ とする。このとき
$$
\alpha_1+\alpha_2+\dots+\alpha_q<2\pi
$$
である。
$x$ に集まる辺を、$x$ のまわりに並ぶ順に $e_1,\dots,e_q$ とし、$e_i$ と $e_{i+1}$ にはさまれる面を $F_i$ とする(添字は $q$ を法として読む)。$x$ は凸多面体の頂点なので、$x$ を通り $P\setminus\{x\}$ を一方の側に真に含む平面 $H$ がある。$H$ を $P$ の側へ平行移動した平面 $H'$ を、$H$ と $H'$ の距離が $x$ 以外のどの頂点と $H$ の距離よりも小さくなるようにとる。すると $H'$ は各辺 $e_i$ とその内部の 1 点 $A_i$ で交わる。$P\cap H'$ は $A_1,\dots,A_q$ をこの順に頂点とする凸多角形 $K$ であり、三角形 $xA_iA_{i+1}$ は面 $F_i$ に含まれ、その $x$ における角は $\alpha_i$ である。$K$ の内部の点 $O$ を 1 つとる。
各 $i$ について、$A_i$ から $x$、$A_{i-1}$、$A_{i+1}$ へ向かうベクトルをそれぞれ $s,t,r$ とする。$t,r$ は平面 $H'$ に平行で、$K$ の内角は $\pi$ より小さいので線形独立であり、$x\notin H'$ なので $s$ はそれらの張る平面に含まれない。よって $s,t,r$ は線形独立であり、lem-reg-poly-angle-triangle により
$$
\angle A_{i-1}A_iA_{i+1}<\angle A_{i-1}A_ix+\angle xA_iA_{i+1}
$$
である。一方 $O$ は凸多角形 $K$ の内部にあるので、$\angle A_{i-1}A_iA_{i+1}=\angle A_{i-1}A_iO+\angle OA_iA_{i+1}$ である。これらを $i=1,\dots,q$ について足し合わせる。右辺の和は、$q$ 個の三角形 $xA_iA_{i+1}$ の $x$ 以外の 2 つの角をすべて足したものなので、三角形の内角の和が $\pi$ であることから $q\pi-(\alpha_1+\dots+\alpha_q)$ に等しい。左辺の和は、$q$ 個の三角形 $OA_iA_{i+1}$ の $O$ 以外の 2 つの角をすべて足したものであり、$O$ のまわりの角 $\angle A_iOA_{i+1}$ の和が $2\pi$ なので $q\pi-2\pi$ に等しい。したがって
$$
q\pi-2\pi< q\pi-(\alpha_1+\dots+\alpha_q),
$$
すなわち $\alpha_1+\dots+\alpha_q<2\pi$ である。$\square$
これは Euclid『原論』第 XI 巻 命題 21 の内容である(Heath の英訳第 3 巻 p. 508 で、第 XIII 巻 命題 18 の後半の議論がこの命題を引いている Hea08)。
正多面体の型 $(p,q)$ は
$$
(3,3),\quad(3,4),\quad(4,3),\quad(3,5),\quad(5,3)
$$
の 5 通りに限られる。逆に、この 5 通りのそれぞれについて、その型の正多面体が存在する(正四面体、正八面体、立方体、正二十面体、正十二面体)。
$P$ を型 $(p,q)$ の正多面体とする。1 つの頂点には正 $p$ 角形が $q$ 枚集まり、それぞれの内角は $(1-2/p)\pi$ なので、lem-reg-poly-vertex-angle-sum により
$$
q\left(1-\frac{2}{p}\right)\pi<2\pi
$$
である。両辺に $p/\pi>0$ を掛けて $q(p-2)<2p$、すなわち $pq-2p-2q<0$ となり、両辺に $4$ を足して
$$
(p-2)(q-2)<4
$$
を得る。$p,q\ge3$ なので $p-2,q-2$ は正の整数であり、積が $4$ 未満になる組は $(p-2,q-2)=(1,1),(1,2),(2,1),(1,3),(3,1)$ だけである。これが $(p,q)=(3,3),(3,4),(4,3),(3,5),(5,3)$ に当たる。
存在は次の prop-reg-poly-existence で示す。$\square$
以下 $\varphi=\dfrac{1+\sqrt5}{2}$ は黄金比で、$\varphi^2=\varphi+1$、$1/\varphi=\varphi-1$ を満たす。
次の点の凸包は、それぞれ型 $(4,3)$、$(3,3)$、$(3,4)$、$(3,5)$、$(5,3)$ の正多面体である。
有限個の点の集合 $X$ の凸包を $P$ とする。凸包の面は、ある 1 次式 $\langle n,y\rangle$ の $P$ 上の最大値をとる点全体(支持平面との共通部分)として現れる。逆に、$\langle n,y\rangle$ の $P$ 上の最大値をとる点全体は、$X$ のうち最大値をとる点の凸包であり、それらが同一直線上にない $3$ 点以上なら、この凸包は $P$ の面である。各場合にそのような $n$ を示す。
Euclid『原論』第 XIII 巻は、命題 13 から 17 で与えられた球に内接する正四面体・正八面体・立方体・正二十面体・正十二面体を順に作図し、命題 18 の後半でこれ以外の正多面体が無いことを、頂点での角の和が 4 直角より小さいこと(第 XI 巻 命題 21)から論じている(Heath の英訳第 3 巻 pp. 467–508 Hea08)。上の 5 の座標は、立方体の各面の上に「屋根」をのせる Euclid 第 XIII 巻 命題 17 の作図と同じ形をしている。
凸多面体の頂点と辺は連結なグラフをなし、面の 1 つを外側の面として、辺が交わらないように平面に描ける(立体を球面に中心から投影し、1 つの面に穴を開けて平面に広げればよい。Levin の PDF 版の §2.3.4、印刷頁 p. 135 Lev)。このとき多面体の面は描いた平面グラフの面に 1 対 1 に対応するので、平面グラフの記事の定理「Eulerの公式」により、凸多面体の頂点・辺・面の個数 $V,E,F$ は
$$
V-E+F=2
$$
を満たす。この式を使うと、角度を使わずに分類定理の前半が示せ、同時に $V,E,F$ が型だけで決まることも分かる。
型 $(p,q)$ の正多面体の頂点・辺・面の個数は
$$
E=\frac{2pq}{2p+2q-pq},\qquad V=\frac{2E}{q},\qquad F=\frac{2E}{p}
$$
で与えられる。特に $\dfrac1p+\dfrac1q>\dfrac12$ であり、$(p,q)$ は thm-reg-poly-classification の 5 通りに限られる。
各面は $p$ 本の辺をもち、各辺はちょうど 2 枚の面に共有されるので、面ごとに辺を数えると $pF=2E$ である。各頂点からは $q$ 本の辺が出て、各辺は 2 つの頂点を結ぶので、頂点ごとに辺を数えると $qV=2E$ である。これを $V-E+F=2$ に代入すると
$$
\frac{2E}{q}-E+\frac{2E}{p}=2,\qquad\text{すなわち}\qquad \frac1p+\frac1q=\frac12+\frac1E
$$
である。$E>0$ なので $1/p+1/q>1/2$ であり、両辺に $2pq$ を掛けると $2q+2p>pq$、すなわち $(p-2)(q-2)<4$ となる。以下は prf-reg-poly-classification と同じ議論で $(p,q)$ が 5 通りに限られる。また $\dfrac1E=\dfrac{2p+2q-pq}{2pq}$ から $E$ の式が、$qV=2E$、$pF=2E$ から $V,F$ の式が得られる。$\square$
たとえば型 $(5,3)$ では $E=30/(10+6-15)=30$、$V=20$、$F=12$ であり、ex-reg-poly-five の表と一致する。Euler の公式と辺の 2 通りの数え上げによる別の形の証明(面の形で場合分けし、各場合に頂点に集まる面の数を絞るもの)は Levin の PDF 版の §2.3.4、Theorem 2.3.4(印刷頁 pp. 136–137)にある Lev。
正多面体の各面の中心を頂点とし、隣り合う面の中心を結んでできる立体を、もとの正多面体の双対という。型 $(p,q)$ の正多面体の双対は型 $(q,p)$ の正多面体であり、$V$ と $F$ が入れ替わる。たとえば立方体 $[-1,1]^3$ の 6 枚の面の中心は $\pm e_1,\pm e_2,\pm e_3$ で、これは prop-reg-poly-existence の正八面体の頂点である。逆に正八面体の面 $\varepsilon_1y_1+\varepsilon_2y_2+\varepsilon_3y_3=1$ の中心は $(\varepsilon_1,\varepsilon_2,\varepsilon_3)/3$ で、立方体の頂点を $1/3$ 倍したものである。同様に正十二面体と正二十面体は互いに双対であり、正四面体の双対は正四面体である。
型 $(p,q)$ の正多面体の 1 つの頂点での不足角 $\delta=2\pi-q(1-2/p)\pi$ を頂点の個数 $V$ だけ足すと、$qV=2E$、$pF=2E$ を使って
$$
V\delta=2\pi V-\pi qV+\frac{2\pi qV}{p}=2\pi V-2\pi E+2\pi F=2\pi(V-E+F)=4\pi
$$
となる。$4\pi$ は $720^\circ$ であり、ex-reg-poly-five の 5 つについて $4\cdot180^\circ=6\cdot120^\circ=8\cdot90^\circ=12\cdot60^\circ=20\cdot36^\circ=720^\circ$ と確かめられる。この計算は、Euler の公式 $V-E+F=2$ が正多面体では「不足角の総和が $720^\circ$」と言い換えられることを示している。
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