完全四辺形

同義語:Gauss–Bodenmillerの定理complete quadrilateralGauss–Bodenmiller theorem

概要

完全四辺形(complete quadrilateral)とは、どの 2 本も平行でなく、どの 3 本も 1 点で交わらない平面の 4 本の直線と、その 6 つの交点(頂点)からなる図形である。同じ直線の上にない 2 つの頂点を結ぶ対角線が 3 本あり、4 本から 3 本を選ぶと三角形が 4 つできる。Gauss–Bodenmiller の定理により、3 本の対角線をそれぞれ直径とする 3 つの円は共通の根軸をもち、4 つの三角形の垂心はすべてその根軸の上にある。根軸は対角線の中点を通る Newton–Gauss 線に垂直である。証明は、垂心から頂点と向かいの辺の上の点へのベクトルの内積が一定であることによる。また、対角線の直線は、残りの 2 本の対角線の直線との交点で調和に分けられる(交点があり中点でないとき)。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 調和点列, Newton–Gauss線, 根軸と根心, 三角形の垂心, ベクトルの内積(高校数学)

高校での出発点:4 本の直線と 3 つの円

平面に 4 本の直線を、どの 2 本も平行でなく、どの 3 本も 1 点で交わらないように引く。交点は $\binom42=6$ 個できる。Newton–Gauss線 では、この図形の 3 本の対角線の中点が一直線上に並ぶことを見た。ここでは、3 本の対角線を直径とする円を描いてみる。
直径の両端が $(x_1,y_1)$、$(x_2,y_2)$ の円の方程式は
$$ (x-x_1)(x-x_2)+(y-y_1)(y-y_2)=0 $$
である。点 $(x,y)$ から両端へのベクトル $(x_1-x,\,y_1-y)$、$(x_2-x,\,y_2-y)$ の内積が $0$、つまり両端を直角に見込む点の集まりだからである(直径に対する円周角)。

4 本の直線がつくる 3 つの円

4 本の直線 $\ell_1:\ y=0$、$\ell_2:\ y=2x$、$\ell_3:\ x+y=6$、$\ell_4:\ x-2y=-2$ を考える。
(1) 交点。$\ell_1$ と $\ell_2$ の交点は $A(0,0)$、$\ell_1$ と $\ell_3$ の交点は $B(6,0)$、$\ell_1$ と $\ell_4$ の交点は $x=-2$ より $E(-2,0)$ である。$\ell_2$ と $\ell_3$ は $x+2x=6$ より $F(2,4)$、$\ell_2$ と $\ell_4$ は $x-4x=-2$ より $D\left(\dfrac23,\dfrac43\right)$、$\ell_3$ と $\ell_4$ は、2 式を引いて $3y=8$ より $C\left(\dfrac{10}3,\dfrac83\right)$ である。
(2) 対角線。四角形 $ABCD$ は凸四角形で、辺 $AB$、$BC$、$CD$、$DA$ は $\ell_1$、$\ell_3$、$\ell_4$、$\ell_2$ の上にある。$E$ は $AB$ と $CD$ の交点、$F$ は $AD$ と $BC$ の交点である。共通の直線の上にない 2 点を結ぶ 3 本の線分 $AC$、$BD$、$EF$ が対角線である。
(3) 3 つの円。対角線を直径とする円は、上の式から
$$ \begin{aligned} \Gamma_1\ (AC):&\quad x\left(x-\frac{10}3\right)+y\left(y-\frac83\right)=x^2+y^2-\frac{10}3x-\frac83y=0\\ \Gamma_2\ (BD):&\quad (x-6)\left(x-\frac23\right)+y\left(y-\frac43\right)=x^2+y^2-\frac{20}3x-\frac43y+4=0\\ \Gamma_3\ (EF):&\quad (x+2)(x-2)+y(y-4)=x^2+y^2-4y-4=0 \end{aligned} $$
である。
(4) 根軸。$\Gamma_1$ と $\Gamma_2$ の式を引くと $\dfrac{10}3x-\dfrac43y-4=0$、$3$ 倍して $2$ で割ると $5x-2y=6$ である。$\Gamma_2$ と $\Gamma_3$ の式を引くと $-\dfrac{20}3x+\dfrac83y+8=0$、$-\dfrac43$ で割るとやはり $5x-2y=6$ である。2 組の根軸(根軸と根心)が同じ直線になった。
(5) 垂心。4 本から 3 本を選ぶと三角形が 4 つできる。$\ell_4$ を除いた三角形 $ABF$ の垂心は、$F$ からの垂線 $x=2$ と、$A$ から $BF$(向き $(-1,1)$)への垂線 $y=x$ の交点 $H_4(2,2)$ である。$5\cdot2-2\cdot2=6$ なので $H_4$ は直線 $5x-2y=6$ の上にある。残りの 3 つの三角形の垂心も、同じ直線の上にある。

除く直線三角形角の大きさ垂心$5x-2y$
$\ell_1$$FDC$鋭角三角形$H_1\left(\dfrac{22}9,\dfrac{28}9\right)$$6$
$\ell_2$$EBC$$C$ が鈍角(約 $108.4^\circ$)$H_2\left(\dfrac{10}3,\dfrac{16}3\right)$$6$
$\ell_3$$AED$$A$ が鈍角(約 $116.6^\circ$)$H_3\left(\dfrac23,-\dfrac43\right)$$6$
$\ell_4$$ABF$鋭角三角形$H_4(2,2)$$6$
$H_1$、$H_2$、$H_3$ の計算を開く

$H_1$:$DC$ の向きは $\left(\dfrac83,\dfrac43\right)$、つまり $(2,1)$ なので、$F(2,4)$ からの垂線は $2(x-2)+(y-4)=0$、つまり $2x+y=8$ である。$FC$ の向きは $(1,-1)$ なので、$D$ からの垂線は $\left(x-\dfrac23\right)-\left(y-\dfrac43\right)=0$、つまり $x-y=-\dfrac23$ である。2 式を足して $3x=\dfrac{22}3$、$x=\dfrac{22}9$、$y=\dfrac{28}9$ である。

$H_2$:$EB$ は $x$ 軸なので $C$ からの垂線は $x=\dfrac{10}3$、$BC$ の向きは $(-1,1)$ なので $E$ からの垂線は $y=x+2$ で、$H_2\left(\dfrac{10}3,\dfrac{16}3\right)$ である。

$H_3$:$AE$ は $x$ 軸なので $D$ からの垂線は $x=\dfrac23$、$ED$ の向きは $(2,1)$ なので $A$ からの垂線は $2x+y=0$ で、$H_3\left(\dfrac23,-\dfrac43\right)$ である。

4 本の直線 ℓ1〜ℓ4 と 6 つの交点。赤・青・緑の線分が 3 本の対角線 AC、BD、EF 4 本の直線 ℓ1〜ℓ4 と 6 つの交点。赤・青・緑の線分が 3 本の対角線 AC、BD、EF
3 つの円が 1 本の根軸を共有し、4 つの三角形の垂心がすべてその上に並んだ。この記事で答える問いは次の 3 つである。

  1. 3 本の対角線を直径とする 3 つの円は、いつも共通の根軸をもつか。→ thm-cq-main
  2. 4 つの三角形の垂心は、なぜその根軸の上にあるのか。→ lem-cq-orthocenter、thm-cq-main
  3. 3 本の対角線どうしには、ほかにどんな関係があるか。→ prop-cq-harmonic
    高校の計算この記事の言葉大学の言葉
    直径の両端から作る円の方程式直径の円に関する方べき(lem-cq-diameter)内積 $\overrightarrow{PX}\cdot\overrightarrow{PY}$
    2 つの円の方程式を引く共通の根軸(thm-cq-main)共軸円族(円の束)
    垂線の交点4 つの垂心が一直線上(cor-cq-orthocenters)—
    内分点と外分点対角線の調和点列(prop-cq-harmonic)完全四角形の射影幾何

言葉の準備:完全四辺形の頂点・対角線・三角形

定義は Newton–Gauss線 と Miquelの定理 と同じものを使う。

完全四辺形

平面の 4 本の直線で、どの 2 本も平行でなく、どの 3 本も 1 点で交わらないものを 完全四辺形 という。4 本の直線を $\ell_1,\ell_2,\ell_3,\ell_4$ とし、$\ell_i$ と $\ell_j$ の交点を $V_{ij}$ と書く($V_{ij}=V_{ji}$)。6 個の点 $V_{ij}$ を完全四辺形の 頂点 という。
(1) 同じ直線の上にない 2 つの頂点を結ぶ線分を 対角線 という。$\{1,2,3,4\}$ を 2 つずつの組に分ける分け方に応じて、対角線は $V_{12}V_{34}$、$V_{13}V_{24}$、$V_{14}V_{23}$ の 3 本ある。
(2) 4 本から 1 本を除いた 3 本は三角形を作る。$\ell_k$ を除いた三角形を $T_k$ と書き、完全四辺形の 三角形 という。三角形は 4 つある。

どの 3 本も 1 点で交わらないので、6 個の頂点は互いに異なる(たとえば $V_{12}=V_{13}$ なら、$\ell_1$、$\ell_2$、$\ell_3$ がこの点を通ってしまう)。$V_{12}$ と $V_{34}$ は共通の直線の上にない:$V_{12}$ を通る直線は 4 本のうち $\ell_1$、$\ell_2$ だけで、$V_{34}$ を通るのは $\ell_3$、$\ell_4$ だけだからである。一方、$V_{12}$ と $V_{13}$ はどちらも $\ell_1$ の上にあるので、これらを結ぶ線分は対角線ではない。

頂点と対角線に名前を付ける

ex-cq-start では、$V_{12}=A$、$V_{13}=B$、$V_{14}=E$、$V_{23}=F$、$V_{24}=D$、$V_{34}=C$ である。対角線は $V_{12}V_{34}=AC$、$V_{13}V_{24}=BD$、$V_{14}V_{23}=EF$ で、三角形は $T_1=FDC$、$T_2=EBC$、$T_3=AED$、$T_4=ABF$ である。
三角形 $T_4=ABF$ で見ると、対角線 $AC$ は頂点 $A$ と、$A$ の向かいの辺 $BF$ を含む直線 $\ell_3$ の上の点 $C$ を結ぶ。対角線 $BD$ は頂点 $B$ と、向かいの辺 $AF$ を含む直線 $\ell_2$ の上の点 $D$ を、対角線 $EF$ は頂点 $F$ と、向かいの辺 $AB$ を含む直線 $\ell_1$ の上の点 $E$ を結ぶ。

ex-cq-names で見たことは、どの三角形でも起こる。これが主定理の証明の鍵になる。

対角線は頂点と向かいの辺の直線を結ぶ

完全四辺形のどの三角形 $T_k$ とどの対角線についても、その対角線は、$T_k$ の頂点の 1 つと、その頂点の向かいの辺を含む直線の上の点(その頂点とは異なる点)を結ぶ線分である。

添字で数える

要点:対角線を $V_{ab}V_{cd}$、除く直線を $\ell_d$ とすると、$V_{ab}$ は三角形 $T_d$ の頂点で、その向かいの辺は直線 $\ell_c$ の上にあり、$V_{cd}$ も $\ell_c$ の上にある。

詳しい証明を開く

対角線を $V_{ab}V_{cd}$($\{a,b,c,d\}=\{1,2,3,4\}$)とする。$k$ は $a,b,c,d$ のどれか 1 つなので、必要なら $a,b$ と $c,d$ の組を入れかえ、さらに $c,d$ を入れかえて、$k=d$ としてよい。

段 1(頂点)。$T_d$ は $\ell_a$、$\ell_b$、$\ell_c$ の作る三角形で、$V_{ab}$ はその頂点である。

段 2(向かいの辺)。$T_d$ で頂点 $V_{ab}$ の向かいの辺は、残りの 2 つの頂点 $V_{ac}$、$V_{bc}$ を結ぶ辺で、直線 $\ell_c$ の上にある。

段 3(もう一方の端)。$V_{cd}$ は $\ell_c$ の上にある。$V_{cd}\ne V_{ab}$ である(6 個の頂点は互いに異なる)。よって対角線 $V_{ab}V_{cd}$ は、$T_d$ の頂点 $V_{ab}$ と、向かいの辺を含む直線 $\ell_c$ の上の点 $V_{cd}$ を結ぶ。$\square$

4 点から始める図形と、4 本の直線から始める図形を比べておく。前者は 調和点列 で使った。

完全四角形完全四辺形
与えるものどの 3 点も一直線上にない 4 点どの 3 本も 1 点で交わらない 4 本の直線
作るもの2 点ずつ結ぶ 6 本の直線(辺)2 本ずつの交点 6 個(頂点)
3 つあるもの向かい合う辺の交点(対角点)同じ直線の上にない頂点を結ぶ対角線
調和点列2 つの対角点を結ぶ直線の上(調和点列)対角線の直線の上(prop-cq-harmonic)
中点・垂心—Newton–Gauss 線、共通の根軸(thm-cq-main)

四角形 $ABCD$ の 4 辺を延ばした 4 本の直線は完全四辺形を作り、4 頂点 $A$、$B$、$C$、$D$ は完全四角形を作る。この 2 つは同じ 6 本の直線の一部を共有するが、別の図形である。

補題:直径の円に関する方べきと垂心の内積

主定理の証明には、方べき(方べきの定理(高校数学)、根軸と根心)を内積で書いた 2 つの補題を使う。点 $P$ の円 $\Gamma$(中心 $O$、半径 $r$)に関する方べきを $\operatorname{pow}_\Gamma(P)=OP^2-r^2$ と書く。

直径の円に関する方べき

異なる 2 点 $X$、$Y$ を直径の両端とする円を $\Gamma$ とする。どの点 $P$ についても
$$ \operatorname{pow}_\Gamma(P)=\overrightarrow{PX}\cdot\overrightarrow{PY} $$
である。

中点で分ける

$XY$ の中点を $M$、半径を $r=\dfrac{XY}2$ とする。$\overrightarrow{MY}=-\overrightarrow{MX}$ なので、$\overrightarrow{PX}=\overrightarrow{PM}+\overrightarrow{MX}$、$\overrightarrow{PY}=\overrightarrow{PM}-\overrightarrow{MX}$ である。内積を展開すると
$$ \overrightarrow{PX}\cdot\overrightarrow{PY}=\lvert\overrightarrow{PM}\rvert^2-\lvert\overrightarrow{MX}\rvert^2=PM^2-r^2=\operatorname{pow}_\Gamma(P) $$
である。$\square$

これは 直径に対する円周角 の定理「内積による表示」と同じ式である。冒頭の円の方程式は、$P=(x,y)$ としてこの式の右辺を $0$ とおいたものになっている。

垂心の内積

三角形 $PQR$ の垂心を $H$ とする(三角形の垂心)。このとき
$$ \overrightarrow{HP}\cdot\overrightarrow{HQ}=\overrightarrow{HQ}\cdot\overrightarrow{HR}=\overrightarrow{HR}\cdot\overrightarrow{HP} $$
である。この共通の値を $s$ とすると、頂点 $P$ の向かいの辺を含む直線 $QR$ の上のどの点 $X$ についても $\overrightarrow{HP}\cdot\overrightarrow{HX}=s$ であり、ほかの 2 つの頂点についても同じことが成り立つ。

垂線と内積

要点:$\overrightarrow{HP}$ は辺 $QR$ に垂直(または $\vec 0$)なので $\overrightarrow{HP}\cdot(\overrightarrow{HQ}-\overrightarrow{HR})=0$ で、3 つの内積は等しい。直線 $QR$ の上の点は $\overrightarrow{HX}=(1-t)\overrightarrow{HQ}+t\,\overrightarrow{HR}$ と書けるので、$\overrightarrow{HP}\cdot\overrightarrow{HX}=(1-t)s+ts=s$ である。

詳しい証明を開く

段 1(3 つの内積が等しい)。$H$ は $P$ からの垂線の上にある($H=P$ のときも含む)ので、$\overrightarrow{HP}$ は $\vec 0$ か、辺 $QR$ に垂直である。どちらの場合も $\overrightarrow{HP}\cdot\overrightarrow{RQ}=0$ である。$\overrightarrow{RQ}=\overrightarrow{HQ}-\overrightarrow{HR}$ を代入すると

$$\overrightarrow{HP}\cdot\overrightarrow{HQ}-\overrightarrow{HP}\cdot\overrightarrow{HR}=0$$

で、$\overrightarrow{HP}\cdot\overrightarrow{HQ}=\overrightarrow{HR}\cdot\overrightarrow{HP}$ である。頂点 $Q$ からの垂線で同じ計算をすると $\overrightarrow{HQ}\cdot\overrightarrow{HR}=\overrightarrow{HP}\cdot\overrightarrow{HQ}$ である。

段 2(向かいの辺の直線の上の点)。$X$ は直線 $QR$ の上にあるので、ある実数 $t$ で $\overrightarrow{QX}=t\overrightarrow{QR}$ と書け、$\overrightarrow{HX}=(1-t)\overrightarrow{HQ}+t\,\overrightarrow{HR}$ である(位置ベクトルと内分点)。内積の分配法則と段 1 から

$$\overrightarrow{HP}\cdot\overrightarrow{HX}=(1-t)\,\overrightarrow{HP}\cdot\overrightarrow{HQ}+t\,\overrightarrow{HP}\cdot\overrightarrow{HR}=(1-t)s+ts=s$$

である。頂点 $Q$、$R$ についても、文字を入れかえて同じ計算をすればよい。$\square$

2 つの補題を合わせると、次のことが分かる。三角形の頂点 $P$ と、向かいの辺を含む直線の上の点 $X$ を結ぶ線分を直径とする円について、垂心 $H$ の方べきは $\overrightarrow{HP}\cdot\overrightarrow{HX}=s$ で、$X$ のとり方によらない。$X$ として $P$ からの垂線の足 $P_1$ をとると、方べきは $\overrightarrow{HP}\cdot\overrightarrow{HP_1}$ で、これは $H$ を通る直線 $PP_1$ と円の 2 つの交点 $P$、$P_1$ を使った方べきの定理(方べきの定理(高校数学))の形である。

垂心の内積を確かめる

ex-cq-start の三角形 $ABF$($A(0,0)$、$B(6,0)$、$F(2,4)$、垂心 $H_4(2,2)$)で確かめる。
(1) 3 つの内積。$\overrightarrow{HA}=(-2,-2)$、$\overrightarrow{HB}=(4,-2)$、$\overrightarrow{HF}=(0,2)$ で、
$$ \overrightarrow{HA}\cdot\overrightarrow{HB}=-8+4=-4,\qquad \overrightarrow{HB}\cdot\overrightarrow{HF}=0-4=-4,\qquad \overrightarrow{HF}\cdot\overrightarrow{HA}=0-4=-4 $$
である。$s=-4$ である。
(2) 頂点 $F$ と、向かいの辺 $AB$ を含む $x$ 軸の上の点 $X(5,0)$、$X'(-1,0)$ をとる。$\overrightarrow{HX}=(3,-2)$、$\overrightarrow{HX'}=(-3,-2)$ で、$\overrightarrow{HF}\cdot\overrightarrow{HX}=0-4=-4$、$\overrightarrow{HF}\cdot\overrightarrow{HX'}=0-4=-4$ である。$FX$、$FX'$ を直径とする 2 つの円に関する $H$ の方べきは、どちらも $-4$ になる。2 つの円は、$F$ から $x$ 軸に下ろした垂線の足 $F_1(2,0)$ を通る($\angle FF_1X=90^\circ$)。
(3) 対角線 $AC$ は頂点 $A$ と直線 $BF$ の上の点 $C$ を結ぶ。$\overrightarrow{HC}=\left(\dfrac43,\dfrac23\right)$ で、$\overrightarrow{HA}\cdot\overrightarrow{HC}=-\dfrac83-\dfrac43=-4$ である。ex-cq-start の $\Gamma_1$ の式に $(2,2)$ を代入しても $4+4-\dfrac{20}3-\dfrac{16}3=-4$ になる。

三角形 ABF の頂点 F と、x 軸の上の 2 点 X、X′ を結ぶ線分を直径とする 2 つの円。どちらも垂線の足 F1 を通り、垂心 H の方べきは等しい 三角形 ABF の頂点 F と、x 軸の上の 2 点 X、X′ を結ぶ線分を直径とする 2 つの円。どちらも垂線の足 F1 を通り、垂心 H の方べきは等しい

主定理:3 つの円の共通の根軸

Gauss–Bodenmiller の定理

完全四辺形の 3 本の対角線を、それぞれ直径とする 3 つの円 $\Gamma_1$、$\Gamma_2$、$\Gamma_3$ を考える。3 つの円の中心は互いに異なり、3 つの円は共通の根軸をもつ。つまり、どの 2 つの円の根軸も同じ 1 本の直線である。さらに、完全四辺形の 4 つの三角形の垂心は、すべてこの根軸の上にある。

垂心は 3 つの円について方べきが等しい

方針:lem-cq-diagonal と 2 つの補題から、各三角形の垂心は 3 つの円に関する方べきが等しいので、どの 2 円の根軸の上にもある。3 本の根軸がすべて同じ直線に垂直なことを使って、1 本にまとまることを示す。
記号は def-cq のとおりとし、$\Gamma_1$、$\Gamma_2$、$\Gamma_3$ をそれぞれ対角線 $V_{12}V_{34}$、$V_{13}V_{24}$、$V_{14}V_{23}$ を直径とする円、その中心(対角線の中点)を $M_1$、$M_2$、$M_3$ とする。三角形 $T_k$ の垂心を $H_k$、lem-cq-orthocenter の共通の値を $s_k$ とする。
段 1(垂心の方べき)。三角形 $T_k$ と円 $\Gamma_j$ をとる。lem-cq-diagonal により、$\Gamma_j$ の直径の対角線は、$T_k$ の頂点 $P$ と、$P$ の向かいの辺を含む直線の上の点 $X$ を結ぶ。lem-cq-diameter と lem-cq-orthocenter により
$$ \operatorname{pow}_{\Gamma_j}(H_k)=\overrightarrow{H_kP}\cdot\overrightarrow{H_kX}=s_k $$
である。右辺は $j$ によらないので、$H_k$ の 3 つの円に関する方べきはすべて $s_k$ に等しい。
段 2(中心は異なる)。$M_1=M_2$ とすると、中点の位置ベクトルが等しいので $\overrightarrow{OV_{12}}+\overrightarrow{OV_{34}}=\overrightarrow{OV_{13}}+\overrightarrow{OV_{24}}$($O$ は原点)、移項して
$$ \overrightarrow{V_{13}V_{12}}=\overrightarrow{V_{34}V_{24}} $$
である。左辺は $\ell_1$ の上の異なる 2 点を結ぶベクトル、右辺は $\ell_4$ の上の 2 点を結ぶベクトルなので、$\ell_1$ と $\ell_4$ は平行か一致する。どちらも完全四辺形の仮定に反する。$M_1=M_3$、$M_2=M_3$ の場合も、同じ計算で 2 本の直線が平行になって矛盾する。よって $M_1$、$M_2$、$M_3$ は互いに異なる。
段 3(中心は一直線上)。$M_1$、$M_2$、$M_3$ は 3 本の対角線の中点なので、Newton–Gauss線 の主定理により一直線上にある。この直線を $n$ とする。
段 4(根軸は 1 本)。中心が異なる 2 つの円の根軸は、中心を結ぶ直線に垂直な 1 本の直線である(根軸と根心 の定理「2 円の根軸」)。段 3 により、$\Gamma_1$ と $\Gamma_2$ の根軸 $r_{12}$、$\Gamma_2$ と $\Gamma_3$ の根軸 $r_{23}$、$\Gamma_1$ と $\Gamma_3$ の根軸 $r_{13}$ は、どれも直線 $n$ に垂直である。段 1 により、$H_1$ はどの 2 円についても方べきが等しいので、3 本の根軸はどれも $H_1$ を通る。同じ直線 $n$ に垂直で同じ点 $H_1$ を通る直線は 1 本しかないので、$r_{12}=r_{23}=r_{13}$ である。
段 5(4 つの垂心)。段 1 により、どの $H_k$ も $\Gamma_1$ と $\Gamma_2$ に関する方べきが等しいので、$H_k$ は根軸 $r_{12}$ の上にある。$\square$

ex-cq-start の完全四辺形で確かめる。4 つの垂心の方べきの値は次のとおりで、どれも 3 つの円について等しい。

垂心$\overrightarrow{HP}\cdot\overrightarrow{HQ}$($s_k$)$\Gamma_1$$\Gamma_2$$\Gamma_3$
$H_1\left(\dfrac{22}9,\dfrac{28}9\right)$$-\dfrac{64}{81}$$-\dfrac{64}{81}$$-\dfrac{64}{81}$$-\dfrac{64}{81}$
$H_2\left(\dfrac{10}3,\dfrac{16}3\right)$$\dfrac{128}9$$\dfrac{128}9$$\dfrac{128}9$$\dfrac{128}9$
$H_3\left(\dfrac23,-\dfrac43\right)$$\dfrac{32}9$$\dfrac{32}9$$\dfrac{32}9$$\dfrac{32}9$
$H_4(2,2)$$-4$$-4$$-4$$-4$
$H_2$ の値の計算を開く

三角形 $T_2=EBC$ で、$\overrightarrow{H_2E}=\left(-\dfrac{16}3,-\dfrac{16}3\right)$、$\overrightarrow{H_2B}=\left(\dfrac83,-\dfrac{16}3\right)$ なので $\overrightarrow{H_2E}\cdot\overrightarrow{H_2B}=-\dfrac{128}9+\dfrac{256}9=\dfrac{128}9$ である。$\Gamma_3$ の式 $x^2+y^2-4y-4$ に $\left(\dfrac{10}3,\dfrac{16}3\right)$ を代入すると $\dfrac{100}9+\dfrac{256}9-\dfrac{64}3-4=\dfrac{100+256-192-36}9=\dfrac{128}9$ である。

3 本の対角線を直径とする赤・青・緑の 3 つの円は、橙の直線を共通の根軸にもつ。4 つの垂心 H1〜H4 はこの直線の上にあり、灰色の破線(3 つの中心を通る Newton–Gauss 線)に垂直である 3 本の対角線を直径とする赤・青・緑の 3 つの円は、橙の直線を共通の根軸にもつ。4 つの垂心 H1〜H4 はこの直線の上にあり、灰色の破線(3 つの中心を通る Newton–Gauss 線)に垂直である
図 3 では、$H_1$ と $H_4$ の方べき $-\dfrac{64}{81}$、$-4$ が負なので、この 2 点は 3 つの円の内部にある。根軸は $\Gamma_1$ の内部の点 $H_1$ を通るので、$\Gamma_1$ と 2 点で交わる。その 2 点では $\Gamma_1$ に関する方べきが $0$ で、根軸の上の点なので $\Gamma_2$、$\Gamma_3$ に関する方べきも $0$ である。つまり 3 つの円は、根軸の上の同じ 2 点で交わっている。

4 つの垂心の直線

完全四辺形の 4 つの三角形の垂心は一直線上にある。その直線は、3 本の対角線の中点を通る Newton–Gauss 線に垂直である。

thm-cq-main により、4 つの垂心は共通の根軸の上にある。prf-cq-main の段 4 で見たとおり、根軸は中心 $M_1$、$M_2$、$M_3$ を通る直線、つまり Newton–Gauss 線に垂直である。$\square$

ex-cq-start では、中心は $M_1\left(\dfrac53,\dfrac43\right)$、$M_2\left(\dfrac{10}3,\dfrac23\right)$、$M_3(0,2)$ で、Newton–Gauss 線の傾きは $\dfrac{\frac23-\frac43}{\frac{10}3-\frac53}=-\dfrac25$ である。根軸 $5x-2y=6$ の傾きは $\dfrac52$ で、積は $-1$ である。
4 つの垂心が一直線上にあることは、Miquelの定理 の系(共通の Simson 線と Steiner 線)でも示されている。そこでは、4 つの三角形の外接円が共有する Miquel 点の Steiner 線が、4 つの垂心を通った。4 つの垂心のうち 2 つが異なる点なら、2 点を通る直線は 1 本なので、Miquel 点の Steiner 線とこの記事の根軸は同じ直線である。ex-cq-start では 4 つの垂心は互いに異なる。

3 本の対角線は互いを調和に分ける

中点と垂心は長さと角を使う性質だった。対角線には、直線を引くだけで分かる性質もある。調和点列 の主定理(完全四角形による作図)を使う。

対角線の上の調和点列

完全四辺形の対角線 $V_{14}V_{23}$ を含む直線を $m$ とする。対角線 $V_{12}V_{34}$ を含む直線が $m$ と点 $G$ で交わり、$G$ は線分 $V_{14}V_{23}$ の中点でないとする。このとき、対角線 $V_{13}V_{24}$ を含む直線も $m$ とただ 1 点 $K$ で交わり、$K$ は $V_{14}$、$V_{23}$ に関して $G$ の調和共役である。ほかの 2 本の対角線についても、添字を入れかえて同じことが成り立つ。

調和点列の主定理に当てはめる

方針:調和点列 の主定理「完全四角形による調和共役の作図」を、直線 $m$ の上の 3 点 $V_{14}$、$V_{23}$、$G$ と、$m$ の外の点 $V_{12}$、直線 $V_{12}G$ の上の点 $V_{34}$ に当てはめる。
段 1(仮定の確認)。$V_{12}$ は $m$ の上にない。$V_{34}$ は直線 $V_{12}G$ の上にあり、$V_{12}$、$G$ と異なる。$V_{14}$、$V_{23}$、$G$ は異なる 3 点である。

詳細

$V_{12}$ が $m$ の上にあるとすると、$m$ は $\ell_1$ の上の異なる 2 点 $V_{12}$、$V_{14}$ を通るので $m=\ell_1$ となり、$V_{23}$ が $\ell_1$ の上にあることになる。すると $\ell_1$、$\ell_2$、$\ell_3$ が $V_{23}$ を通り、仮定に反する。$V_{34}=G$ とすると、$V_{34}$ が $m$ の上にあり、$m$ は $\ell_4$ の上の 2 点 $V_{14}$、$V_{34}$ を通るので $m=\ell_4$、$V_{23}$ が $\ell_4$ の上にあることになって、$\ell_2$、$\ell_3$、$\ell_4$ が 1 点で交わり矛盾する。$G=V_{14}$ とすると、$V_{14}$ が直線 $V_{12}V_{34}$ の上にあり、この直線は $\ell_1$ の上の 2 点 $V_{12}$、$V_{14}$ を通るので $\ell_1$ に等しく、$V_{34}$ が $\ell_1$ の上にあって矛盾する。$G=V_{23}$ も同じである。


段 2(交点の確認)。主定理の記号で「$A$、$B$、$C$、$O$、$R$」にあたるのは $V_{14}$、$V_{23}$、$G$、$V_{12}$、$V_{34}$ である。主定理の「直線 $AR$ と直線 $OB$ の交点 $P$」は、直線 $V_{14}V_{34}=\ell_4$ と直線 $V_{12}V_{23}=\ell_2$ の交点 $V_{24}$ である。「直線 $BR$ と直線 $OA$ の交点 $Q$」は、直線 $V_{23}V_{34}=\ell_3$ と直線 $V_{12}V_{14}=\ell_1$ の交点 $V_{13}$ である。
段 3(結論)。主定理により、直線 $PQ$、つまり直線 $V_{24}V_{13}$ は $m$ とただ 1 点で交わり、その点は $V_{14}$、$V_{23}$ に関して $G$ の調和共役である。$\square$

対角線 $EF$ の上の調和点列

ex-cq-start で、対角線 $EF$ を含む直線 $m$ は $E(-2,0)$、$F(2,4)$ を通る $y=x+2$ である。
(1) 直線 $AC$ は $y=\dfrac45x$ で、$m$ との交点は $x+2=\dfrac45x$ より $G(-10,-8)$ である。
(2) 直線 $BD$ は $B(6,0)$、$D\left(\dfrac23,\dfrac43\right)$ を通るので傾きは $\dfrac{\frac43}{\frac23-6}=-\dfrac14$、式は $y=-\dfrac14(x-6)$ である。$m$ との交点は $x+2=-\dfrac14x+\dfrac32$、$\dfrac54x=-\dfrac12$ より $K\left(-\dfrac25,\dfrac85\right)$ である。
(3) $m$ の上の点を $x$ 座標で表す(直線の上の符号つきの比は、$x$ 座標の比で計算できる)。$E=-2$、$F=2$、$G=-10$、$K=-\dfrac25$ で、$EF$ の中点は $0$、半分の長さにあたる値は $2$ である。調和点列 の言いかえ「中点からの積」で確かめると
$$ (-10-0)\cdot\left(-\frac25-0\right)=4=2^2 $$
なので、$G$ と $K$ は $E$、$F$ に関して調和共役である。

対角線 EF の直線(緑)は、直線 AC との交点 G と直線 BD との交点 K で調和に分けられる。W は直線 AC と BD の交点 対角線 EF の直線(緑)は、直線 AC との交点 G と直線 BD との交点 K で調和に分けられる。W は直線 AC と BD の交点
同じように、直線 $AC$ の上では $A$、$C$ が、直線 $EF$ との交点 $G$ と直線 $BD$ との交点 $W\left(\dfrac{10}7,\dfrac87\right)$ によって調和に分けられる(prop-cq-harmonic を対角線 $AC$ の直線に当てたもの)。3 本の対角線を含む直線は、どれも残りの 2 本によって調和に分けられる。

例と反例

def-cq の仮定と thm-cq-main の円の選び方を外すと、何が崩れるかを並べる。

外す条件反例成り立たなくなること
どの 2 本も平行でない$y=0$、$y=4$、$x=0$、$x+y=6$頂点が 6 個、対角線が 3 本、三角形が 4 つそろう
どの 3 本も 1 点で交わらない$y=0$、$x=0$、$y=x$、$x+y=6$三角形が 4 つでき、対角線が図の直線の上にない
円の直径が対角線ex-cq-start の辺 $AB$ を直径とする円各垂心の方べきが円によらず等しい
平行な 2 本を含む 4 本の直線では交点が 5 個しかなく、対角線は 2 本になる 平行な 2 本を含む 4 本の直線では交点が 5 個しかなく、対角線は 2 本になる
3 本が原点で交わる 4 本の直線では交点が 4 個しかなく、三角形の 1 つが点につぶれる 3 本が原点で交わる 4 本の直線では交点が 4 個しかなく、三角形の 1 つが点につぶれる
反例:2 本が平行

4 本の直線 $y=0$、$y=4$、$x=0$、$x+y=6$ では、$y=0$ と $y=4$ が交わらないので、交点は $(0,0)$、$(6,0)$、$(0,4)$、$(2,4)$ と、$x=0$ と $x+y=6$ の交点 $(0,6)$ の 5 個である。$(0,6)$ はほかの 4 点のどれとも共通の直線の上にある。同じ直線の上にない 2 点の組は $(0,0)$ と $(2,4)$、$(6,0)$ と $(0,4)$ の 2 組だけで、3 本目の対角線($y=0$ と $y=4$ の交点を使うもの)ができない。3 本から作る三角形も、平行な 2 本を含む組では三角形にならず、2 つしかない。主定理の「3 つの円」がそろわない。

反例:3 本が 1 点で交わる

$\ell_1:\ y=0$、$\ell_2:\ x=0$、$\ell_3:\ y=x$、$\ell_4:\ x+y=6$ では、$\ell_1$、$\ell_2$、$\ell_3$ が原点を通るので $V_{12}=V_{13}=V_{23}=(0,0)$ で、交点は $(0,0)$、$(6,0)$、$(0,6)$、$(3,3)$ の 4 個しかない。$\ell_4$ を除いた 3 本は 1 点で交わって三角形を作らず、垂心がない。また、$V_{13}V_{24}$ は $(0,0)$ と $(0,6)$ を結ぶ線分で、直線 $\ell_2$ の上にあるので、def-cq の意味の対角線にならない。

反例:辺を直径とする円

ex-cq-start の $\Gamma_1$、$\Gamma_2$ の代わりに、辺 $AB$($A(0,0)$、$B(6,0)$)を直径とする円 $x(x-6)+y^2=x^2+y^2-6x=0$ を考える。4 つの垂心を代入すると
$$ H_1:\ \frac{80}{81},\qquad H_2:\ \frac{176}9,\qquad H_3:\ -\frac{16}9,\qquad H_4:\ -4 $$
である。$H_4$ では $s_4=-4$ に等しい($AB$ は三角形 $ABF$ の辺で、lem-cq-orthocenter の $X=B$ の場合にあたる)が、$H_1$ では $\dfrac{80}{81}\ne-\dfrac{64}{81}$ である。$AB$ は三角形 $FDC$ の「頂点と向かいの辺の直線の上の点」を結ぶ線分ではないので、lem-cq-orthocenter が使えない。この円は $\Gamma_1$ と共通の根軸をもつ円の仲間に入らない。

大学数学で見る:共軸円族と、点と直線の双対

共通の根軸をもつ円の族

thm-cq-main の 3 つの円のように、どの 2 つも同じ根軸をもつ円の集まりを 共軸円族 という。2 つの円 $f_1=0$、$f_2=0$($x^2$、$y^2$ の係数が $1$)から、円の束
$$ (1-t)f_1+tf_2=0\qquad(t\text{ は実数}) $$
を作ると、これらの円はどの 2 つも同じ根軸をもつ(根軸と根心 の円の束の節)。ex-cq-start では、$\Gamma_3$ の式は
$$ x^2+y^2-4y-4=2\left(x^2+y^2-\frac{10}3x-\frac83y\right)-\left(x^2+y^2-\frac{20}3x-\frac43y+4\right) $$
と書ける(右辺の $x$ の係数は $-\dfrac{20}3+\dfrac{20}3=0$、$y$ の係数は $-\dfrac{16}3+\dfrac43=-4$、定数は $-4$)。つまり $\Gamma_3$ は $\Gamma_1$、$\Gamma_2$ の束の $t=-1$ の円である。

完全四角形と完全四辺形の双対を開く

射影幾何では、「点」と「直線」、「2 点を結ぶ直線」と「2 直線の交点」を入れかえても、結び方だけで述べた定理は正しいままである(双対の原理)。4 点と 6 本の直線からなる完全四角形を入れかえると、4 本の直線と 6 つの点からなる完全四辺形になる。完全四角形の「2 つの対角点を結ぶ直線は、残りの 2 辺との交点で調和に分けられる」(調和点列)を入れかえると、1 点を通る 4 本の直線についての「調和」の命題(調和線束)が得られる。この記事ではそれを扱わない。一方、中点・垂心・円は長さや角を使う概念なので、thm-cq-main と Newton–Gauss 線には双対の原理をそのまま当てはめることはできない。この記事では双対の原理そのものは証明しない(射影空間)。

さらに先へ

  • 3 本の対角線の中点が一直線上にあることは Newton–Gauss線 で、4 つの三角形の外接円が 1 点を共有することは Miquelの定理 で扱う。完全四辺形の 3 本の直線(Newton–Gauss 線、共通の根軸、Miquel 点の Simson 線)を合わせて見ると、根軸は Newton–Gauss 線に垂直で、Steiner 線と一致する。
  • 定理の名前と主張は Wei26a に、完全四辺形のほかの性質の一覧は Wei26b にある。
  • 円の弦を 4 点と 6 本の直線で見る 蝶の定理 では、2 次曲線の束が現れる。

関連項目

参考文献

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