無限級数の和と収束判定

同義語:sums and convergence tests of infinite series

概要

無限級数の和と収束判定(sums and convergence tests of infinite series)とは、無限個の項の和 $\sum_{n=1}^\infty a_n$ を部分和 $S_n$ の極限として定めたときの、和の求め方と収束の判定法である。等比級数 $\sum ar^n$($a\ne0$)は $|r|<1$ のときに限り収束して和は $\frac a{1-r}$ になる。級数が収束すれば $a_n\to0$ だが逆は成り立たず、調和級数 $\sum\frac1n$ は発散する。項が $0$ 以上の級数は部分和が上に有界なら収束し、比較判定法や、等比級数と比べる比判定法が使える。絶対収束する級数は収束するが、交代調和級数 $1-\frac12+\frac13-\cdots=\log2$ のような条件収束する級数は、項を並べ替えると和が変わりうる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 数列, 数列の極限, 等比数列, 定積分, 対数関数

定積分と対数は、交代調和級数の和の証明(prf-si-log2)だけで使う。それ以外は数列の極限の知識で読める。

高校での出発点:無限個の数を足す

高校では、無限に続く数列の項を順に足した 無限級数 の和を、「$n$ 項までの和(部分和)の極限」として求める。本記事の主題は、無限級数の和の求め方と、和が有限の値に定まるかどうか(収束するかどうか)の判定法である。まず例を 3 つ見る。

0.999… は 1 に等しい

$0.999\cdots=\frac9{10}+\frac9{100}+\frac9{1000}+\cdots$ の $n$ 項までの和は
$$ S_n=\frac9{10}+\frac9{10^2}+\dots+\frac9{10^n}=1-\frac1{10^n} $$
である($n=3$ なら $0.999=1-0.001$)。$n\to\infty$ で $\frac1{10^n}\to0$ なので $S_n\to1$ であり、$0.999\cdots=1$ である。

部分分数で消し合う和

$\frac1{k(k+1)}=\frac1k-\frac1{k+1}$ を使うと
$$ S_n=\sum_{k=1}^n\frac1{k(k+1)}=\Bigl(1-\frac12\Bigr)+\Bigl(\frac12-\frac13\Bigr)+\dots+\Bigl(\frac1n-\frac1{n+1}\Bigr)=1-\frac1{n+1} $$
で、隣どうしが消し合う。$S_n\to1$ なので $\sum_{k=1}^\infty\frac1{k(k+1)}=1$ である。

和が定まらない級数と括弧の罠

$1-1+1-1+\cdots$ の部分和は $S_1=1$、$S_2=0$、$S_3=1$、$S_4=0,\dots$ と $1$ と $0$ をくり返し、極限をもたない。ところが括弧を
$$ (1-1)+(1-1)+\cdots=0+0+\cdots=0,\qquad 1-(1-1)-(1-1)-\cdots=1-0-0-\cdots=1 $$
とつけると、別々の「和」が出てしまう。括弧をつけるのは、部分和の一部(偶数番目だけ、奇数番目だけ)を取り出すことにあたる。

これらの計算は、次の疑問を残す。

  1. 無限個の数の「和」とは正確には何か。→ def-si-series
  2. 項が $0$ に近づけば和は有限か。→ prop-si-harmonic
  3. 部分和が式で書けない級数($\sum\frac1{n^2}$ など)が収束するかどうかを、どう判定するか。→ thm-si-comparison、thm-si-ratio
  4. 足す順番を変えても和は変わらないか。→ prop-si-rearrange
    本記事では、次の対応を示す。
    高校の計算大学の見方
    $n$ 項までの和の極限級数の収束の定義(部分和の数列の収束)
    無限等比級数は $\lvert r\rvert<1$ で収束比較の基準になる級数
    項が $0$ に近づかなければ発散収束の必要条件(十分条件ではない)
    不等式で上から抑える比較判定法、比判定法
    足す順番・括弧のつけ方絶対収束と条件収束

取り出す構造:級数の和は部分和の極限

級数の和は、数列の極限で定める。前提知識の数列の極限を、ここで使う形で確認しておく(詳しくは極限とε-δの記事)。

数列の収束

数列 $(a_n)$ と実数 $a$ について、どんなに小さい正の数 $\varepsilon$ をとっても、ある番号 $N$ があって、$n\ge N$ のすべての $n$ で $|a_n-a|<\varepsilon$ となるとき、$(a_n)$ は $a$ に 収束する といい、$\lim_{n\to\infty}a_n=a$ または $a_n\to a$ と書く。収束しない数列は 発散する という。

収束と発散の例
  1. $a_n=\frac1n$ は $0$ に収束する。$\varepsilon>0$ に対し、$N$ を $\frac1\varepsilon$ より大きい整数にとると、$n\ge N$ で $\bigl|\frac1n-0\bigr|\le\frac1N<\varepsilon$ である。たとえば $\varepsilon=0.01$ なら $N=101$ でよい。
  2. $a_n=(-1)^n$ は発散する。極限 $a$ があったとすると、$\varepsilon=1$ に対して、ある $N$ から先で $|a_n-a|<1$ となる。$n\ge N$ の偶数と奇数を 1 つずつとると $|1-a|<1$ かつ $|-1-a|<1$ で、$2=|1-(-1)|\le|1-a|+|a-(-1)|<2$ となり矛盾する。

収束する数列の和・差・定数倍の極限は、極限の和・差・定数倍になる($a_n\to a$、$b_n\to b$ なら $a_n+b_n\to a+b$、$ca_n\to ca$)。これは高校で使う極限の性質であり、本記事でもそのまま使う。

級数の収束と和

数列 $(a_n)_{n\ge1}$ に対し、$S_n:=a_1+a_2+\dots+a_n$ を 部分和 という。部分和の数列 $(S_n)$ が実数 $S$ に収束するとき、級数 $\sum_{n=1}^\infty a_n$ は 収束する といい、$S$ をその 和 と呼んで $\sum_{n=1}^\infty a_n=S$ と書く。$(S_n)$ が収束しないとき、級数は 発散する という。特に、どんなに大きい数 $M$ をとっても、ある番号 $N$ があって、$n\ge N$ のすべての $n$ で $S_n>M$ となるとき、級数は $+\infty$ に発散するという。

定義により、級数の和は「無限回の足し算」ではなく、有限の和の極限である。ex-si-start3 で括弧をつけると答えが変わったのは、部分和が収束しない級数に「和」を求めようとしたからである。収束する級数なら、括弧をつけても和は変わらない。

括弧をつけても和は変わらない

級数 $\sum a_n$ が収束して和が $S$ であるとする。項の順番は変えずに、番号 $1\le n_1< n_2< n_3<\cdots$ のところで区切って括弧をつけた級数
$$ (a_1+\dots+a_{n_1})+(a_{n_1+1}+\dots+a_{n_2})+(a_{n_2+1}+\dots+a_{n_3})+\cdots $$
も収束し、和は $S$ である。

部分和の一部を取り出す

方針:括弧をつけた級数の部分和は、元の部分和の一部を取り出した数列になる。それが同じ極限に収束することを、def-si-limit に戻って示す。
段 1(括弧をつけた級数の部分和):括弧をつけた級数の $k$ 番目の項は $a_{n_{k-1}+1}+\dots+a_{n_k}$ である($n_0:=0$ とする)。これを $k$ 個足すと $a_1$ から $a_{n_k}$ までの和になるので、括弧をつけた級数の $k$ 項までの部分和は $S_{n_k}$ である。
段 2($n_k\ge k$):$n_1\ge1$ である。$n_k\ge k$ なら、$n_{k+1}>n_k$ で $n_{k+1}$ は整数なので $n_{k+1}\ge n_k+1\ge k+1$ である。よって帰納法により、すべての $k$ で $n_k\ge k$ である。
段 3(収束):$\varepsilon>0$ をとる。$S_n\to S$ なので、ある $N$ があって、$n\ge N$ で $|S_n-S|<\varepsilon$ である。$k\ge N$ なら段 2 から $n_k\ge k\ge N$ なので $|S_{n_k}-S|<\varepsilon$ である。よって $S_{n_k}\to S$ であり、段 1 から括弧をつけた級数は $S$ に収束する。$\square$

括弧をつけた和
  1. ex-si-start2 の $\sum_{k=1}^\infty\frac1{k(k+1)}=1$ を 2 項ずつまとめると
    $$ \Bigl(\frac12+\frac16\Bigr)+\Bigl(\frac1{12}+\frac1{20}\Bigr)+\Bigl(\frac1{30}+\frac1{42}\Bigr)+\cdots $$
    で、$m$ 個の括弧までの部分和は元の部分和 $S_{2m}=1-\frac1{2m+1}$ である。$m=1,2,3$ で $\frac23,\ \frac45,\ \frac67$ となり、$1$ に近づく。和は $1$ のまま変わらない。
  2. 逆向きは成り立たない。ex-si-start3 の $1-1+1-1+\cdots$ は、$(1-1)+(1-1)+\cdots$ とまとめると和 $0$ の級数になるが、元の級数は発散する。括弧をつけた級数が収束しても、元の級数が収束するとは限らない。
収束の必要条件

級数 $\sum a_n$ が収束するならば、$a_n\to0$ である。したがって、$a_n$ が $0$ に収束しなければ、$\sum a_n$ は発散する。

隣り合う部分和の差

和を $S$ とする。$n\ge2$ で $a_n=S_n-S_{n-1}$ である。$S_n\to S$ であり、番号を 1 つずらした $S_{n-1}$ も $S$ に収束する。差の極限は極限の差なので、$a_n\to S-S=0$ である。後半は前半の対偶である。$\square$

次の調和級数(調和級数)の例が示すように、この逆は成り立たない。

調和級数は発散する

$a_n=\frac1n\to0$ であるが、$\sum_{n=1}^\infty\frac1n$ は $+\infty$ に発散する。実際、部分和 $H_n:=1+\frac12+\dots+\frac1n$ について、すべての $k\ge0$ で $H_{2^k}\ge1+\frac k2$ である。

2 倍ずつの区切りでまとめる

項を $\frac1{2^{j-1}+1}$ から $\frac1{2^j}$ までの組($j=1,2,\dots,k$)に分ける:
$$ H_{2^k}=1+\frac12+\Bigl(\frac13+\frac14\Bigr)+\Bigl(\frac15+\dots+\frac18\Bigr)+\dots+\Bigl(\frac1{2^{k-1}+1}+\dots+\frac1{2^k}\Bigr). $$
$j$ 番目の組には $2^j-2^{j-1}=2^{j-1}$ 個の項があり、どの項も最後の項 $\frac1{2^j}$ 以上である。よって組の和は $2^{j-1}\cdot\frac1{2^j}=\frac12$ 以上であり、$H_{2^k}\ge1+k\cdot\frac12$ である。部分和は $n$ について増加するので、$n\ge2^k$ なら $H_n\ge H_{2^k}\ge1+\frac k2$ であり、$k$ はいくらでも大きくとれるから $H_n\to+\infty$ である。$\square$

級数と積分が同時に収束・発散する積分判定法は 和と積分の差 で扱う。

調和級数の部分和

$H_1=1$、$H_2=1.5$、$H_4\approx2.083$、$H_8\approx2.718$、$H_{16}\approx3.381$、$H_{32}\approx4.058$、$H_{64}\approx4.744$ である。下からの評価 $1+\frac k2$ は $k=0,\dots,6$ で $1,1.5,2,2.5,3,3.5,4$ で、確かに $H_{2^k}$ 以下である。増え方は非常に遅いが、止まらない。

基準となる級数:無限等比級数

無限等比級数

$a\ne0$ とする。級数 $\sum_{n=0}^\infty ar^n=a+ar+ar^2+\cdots$ は、$|r|<1$ のとき収束して和は $\frac a{1-r}$ であり、$|r|\ge1$ のとき発散する。

部分和の公式と $r$ の冪の極限

段 1($|r|\ge1$):$|ar^n|=|a|\,|r|^n\ge|a|>0$ なので $ar^n$ は $0$ に収束しない。prop-si-necessary により発散する。
段 2($|r|<1$ のとき $r^n\to0$):$r=0$ なら $n\ge1$ で $r^n=0$ である。$0<|r|<1$ なら $\frac1{|r|}=1+h$($h>0$)と書ける。二項定理で展開して正の項を捨てると $(1+h)^n\ge1+nh$ なので
$$ |r|^n=\frac1{(1+h)^n}\le\frac1{1+nh}<\frac1{nh} $$
である。$\varepsilon>0$ に対し $N>\frac1{\varepsilon h}$ ととれば、$n\ge N$ で $|r^n|<\varepsilon$ となる。
段 3(和):$S_n:=a+ar+\dots+ar^{n-1}$ とおくと $S_n-rS_n=a-ar^n$ なので、$r\ne1$ のとき $S_n=\frac{a(1-r^n)}{1-r}$ である。段 2 から $S_n\to\frac a{1-r}$ である。$\square$

正方形を半分ずつ切って 1/2+1/4+1/8+… を見る 正方形を半分ずつ切って 1/2+1/4+1/8+… を見る
図1 は $r=\frac12$ の場合である。面積 $1$ の正方形から半分、残りの半分、…と切り取ると、$n$ 回切り取ったあと、切り取った面積の合計は $1-\frac1{2^n}$、残りの面積は $\frac1{2^n}$ である。残りは $0$ に近づくので、和は $1$ である。

等比級数の計算
  1. $\sum_{n=1}^\infty\frac1{2^n}=\frac{1/2}{1-1/2}=1$。(2) $1-\frac12+\frac14-\cdots=\sum_{n=0}^\infty\bigl(-\frac12\bigr)^n=\frac1{1+1/2}=\frac23$。(3) ex-si-start1 は $a=\frac9{10}$、$r=\frac1{10}$ で、和は $\frac{9/10}{9/10}=1$。(4) $\sum_{n=0}^\infty(-1)^n$ は $r=-1$ で発散し、ex-si-start3 と一致する。

$\frac1{1-x}=\sum x^n$ に数を代入してよい範囲の話は 母関数に数を代入してよいとき で扱う。

主定理:正の項の級数の収束判定

$\sum\frac1{n^2}$ の部分和は簡単な式で書けない。それでも収束を言うために、実数の次の性質を使う。

単調有界数列の収束

数列 $(S_n)$ が増加($S_1\le S_2\le\cdots$)し、ある定数 $M$ ですべての $n$ について $S_n\le M$ なら、$(S_n)$ は収束し、極限は $M$ 以下である。

この定理の位置づけ

本記事では証明しない。これは実数に「すき間がない」こと(実数の連続性)の言い換えの 1 つで、実数の性質の出発点として認めることが多い(Leb26 Theorem 2.1.10。高校数学カテゴリの極限とε-δの記事にも証明がある)。有理数だけの世界では成り立たない。たとえば $\sqrt2$ の小数展開を途中で切った $1,\ 1.4,\ 1.41,\ 1.414,\dots$ は増加し $2$ 以下だが、有理数の中に極限がない。

項が $0$ 以上なら、部分和は増加する($S_{n+1}=S_n+a_{n+1}\ge S_n$)。そこで次が成り立つ。

正の項の級数と部分和の有界性

すべての $n$ で $a_n\ge0$ とする。$\sum a_n$ が収束することと、部分和 $(S_n)$ が上に有界である(ある $M$ ですべての $S_n\le M$)ことは同値である。有界でないときは $+\infty$ に発散する。

増加数列の二択

$(S_n)$ は増加する。上に有界なら thm-si-monotone により収束する。逆に収束する数列は有界である(極限 $S$ に対し $\varepsilon=1$ ととると、ある $N$ から先は $S_n< S+1$ であり、残りの有限個 $S_1,\dots,S_{N-1}$ の最大値と $S+1$ の大きいほうが上界になる)。有界でないとき、どんな $M$ に対しても $S_N>M$ となる $N$ があり、増加なので $n\ge N$ でも $S_n>M$ である。これは $+\infty$ に発散することである。$\square$

部分和が有界な例と有界でない例
  1. $\sum_{n=0}^\infty\frac1{n!}=1+1+\frac1{2!}+\frac1{3!}+\cdots$($0!=1$)を考える。$n\ge1$ なら
    $$ n!=1\cdot2\cdot3\cdots n\ge1\cdot2\cdot2\cdots2=2^{n-1} $$
    (2 番目以降の $n-1$ 個の因数はどれも $2$ 以上)なので、$\frac1{n!}\le\frac1{2^{n-1}}$ である。よって $S_n:=\sum_{k=0}^n\frac1{k!}$ は
    $$ S_n\le1+\Bigl(1+\frac12+\frac14+\dots+\frac1{2^{n-1}}\Bigr)=1+2\Bigl(1-\frac1{2^n}\Bigr)<3 $$
    を満たし、上に有界である。項は正なので $S_n$ は増加し、thm-si-monotone と prop-si-positive により収束する。部分和の値は次のとおりで、増えながら $3$ より下に留まっている。
    $n$$0$$1$$2$$3$$4$$5$
    $S_n$$1$$2$$2.5$$2.667$$2.708$$2.717$
  2. 調和級数 $\sum\frac1n$ も項は正だが、prop-si-harmonic で見たとおり $H_{2^k}\ge1+\frac k2$ なので部分和は上に有界でない。prop-si-positive の後半のとおり $+\infty$ に発散する。
比較判定法

ある番号から先のすべての $n$ で $0\le a_n\le b_n$ とする。
(1) $\sum b_n$ が収束すれば、$\sum a_n$ も収束する。
(2) $\sum a_n$ が発散すれば、$\sum b_n$ も発散する。

部分和どうしを比べる

段 1(最初の有限個は影響しない):ある $N$ から先で不等式が成り立つとする。級数から最初の有限個の項を取り除いても、部分和は一定の数だけずれるだけなので、収束・発散は変わらない。よって、すべての $n$ で $0\le a_n\le b_n$ として示せばよい。
段 2((1) の証明):$A_n:=a_1+\dots+a_n$、$B_n:=b_1+\dots+b_n$ とすると、項ごとの不等式を足して $A_n\le B_n$ である。$\sum b_n$ の和を $B$ とすると、$(B_n)$ は増加して $B$ に収束するので、すべての $n$ で $B_n\le B$ である(もし $B_m>B$ となる $m$ があれば、$n\ge m$ で $B_n\ge B_m$ なので極限も $B_m$ 以上になり矛盾)。よって $A_n\le B$ で、prop-si-positive により $\sum a_n$ は収束する。
段 3((2) の証明):(1) の対偶である。$\square$

比較判定法を使う
  1. $\sum_{n=1}^\infty\frac1{n^2}$ は収束する。$n\ge2$ で $\frac1{n^2}\le\frac1{(n-1)n}=\frac1{n-1}-\frac1n$ なので、ex-si-start2 と同じく消し合って
    $$ S_n=1+\sum_{k=2}^n\frac1{k^2}\le1+\Bigl(1-\frac1n\Bigr)=2-\frac1n<2 $$
    である。部分和が $2$ で抑えられるので収束する。和は $\frac{\pi^2}6\approx1.6449$ であることが知られている(Basel問題。本記事では証明しない)。
  2. $\sum_{n=1}^\infty\frac1{\sqrt n}$ は発散する。$\sqrt n\le n$ なので $\frac1{\sqrt n}\ge\frac1n$ であり、prop-si-harmonic の調和級数が発散するので、(2) により発散する。
  3. $\sum_{n=1}^\infty\frac1{2^n+n}$ は収束する。$\frac1{2^n+n}\le\frac1{2^n}$ で、右辺の級数は和 $1$ の等比級数だからである。和は $1$ より小さい(数値計算では約 $0.6973$)。

部分和の増え方:収束する級数と発散する調和級数 部分和の増え方:収束する級数と発散する調和級数
図2 は部分和 $S_n$ を $n=40$ まで描いたものである。$\sum\frac1{2^n}$ はすぐに $1$ に張りつき、$\sum\frac1{n^2}$ はゆっくり $\frac{\pi^2}6$ に近づく。調和級数 $\sum\frac1n$ も増え方はゆるやかで、見た目では止まりそうに見えるが、prop-si-harmonic のとおり限りなく大きくなる(点線は比較のために描いた $1+\log n$ である)。
比較の相手に等比級数を選ぶと、項の比だけで判定できる。

比判定法

すべての $n$ で $a_n>0$ とする。
(1) ある $r<1$ と番号 $N$ があって、$n\ge N$ で $\frac{a_{n+1}}{a_n}\le r$ なら、$\sum a_n$ は収束する。
(2) ある番号 $N$ があって、$n\ge N$ で $\frac{a_{n+1}}{a_n}\ge1$ なら、$\sum a_n$ は発散する。
特に、$\frac{a_{n+1}}{a_n}\to L$ のとき、$L<1$ なら収束し、$L>1$ なら発散する。

等比級数と比べる
  1. $n\ge N$ で $a_{n+1}\le ra_n$ なので、くり返し使って $a_{N+k}\le ra_{N+k-1}\le\dots\le r^ka_N$($k\ge0$)である。$0< r<1$ としてよい($r\le0$ なら $a_{N+1}\le ra_N\le0$ となって $a_{N+1}>0$ に反するので、$r>0$ である)。$\sum_{k\ge0}a_Nr^k$ は thm-si-geometric により収束するので、thm-si-comparison (1) により $\sum_{k\ge0}a_{N+k}$ は収束し、最初の $N-1$ 項を加えた $\sum a_n$ も収束する。
  2. $n\ge N$ で $a_{n+1}\ge a_n$ なので $a_n\ge a_N>0$ であり、$a_n$ は $0$ に収束しない。prop-si-necessary により発散する。
    最後の主張:$L<1$ なら $r:=\frac{1+L}2$ とおくと $L< r<1$ である。def-si-limit で $\varepsilon=r-L>0$ ととると、ある $N$ から先で $\frac{a_{n+1}}{a_n}< L+\varepsilon=r$ となり、(1) が使える。$L>1$ なら $\varepsilon=L-1$ ととると、ある $N$ から先で $\frac{a_{n+1}}{a_n}>L-\varepsilon=1$ となり、(2) が使える。$\square$
比判定法を使う
  1. $\sum_{n=1}^\infty\frac n{2^n}$:比は $\frac{n+1}{2^{n+1}}\cdot\frac{2^n}n=\frac{n+1}{2n}\to\frac12<1$ なので収束する。和は次のように求まる。$S_n=\sum_{k=1}^n\frac k{2^k}$ とすると
    $$ S_n-\frac12S_n=\sum_{k=1}^n\frac1{2^k}-\frac n{2^{n+1}}=1-\frac1{2^n}-\frac n{2^{n+1}} . $$
    級数が収束することが分かったので、prop-si-necessary により $\frac n{2^n}\to0$ であり、右辺は $1$ に収束する。よって $\frac12\sum\frac n{2^n}=1$、和は $2$ である。
  2. $\sum_{n=0}^\infty\frac1{n!}$:比は $\frac1{n+1}\to0$ なので収束する。ex-si-positive (1) では同じ級数を部分和の有界性で調べた(和は $e$ である。本記事では証明しない。eはなぜ特別かの記事を参照)。
  3. $\sum_{n=1}^\infty\frac{2^n}{n^2}$:比は $\frac{2n^2}{(n+1)^2}\to2>1$ なので発散する。
比の極限が 1 のときは判定できない

$\sum\frac1n$ も $\sum\frac1{n^2}$ も、比の極限は $\frac n{n+1}\to1$、$\frac{n^2}{(n+1)^2}\to1$ で $L=1$ だが、前者は発散し(prop-si-harmonic)、後者は収束する(ex-si-comparison)。また $\sum\frac1n$ では比 $\frac n{n+1}$ がどの $n$ でも $1$ より小さい。それでも発散するのは、比が $1$ に近づいてしまい、thm-si-ratio (1) の「1 より小さい一定の $r$ で抑える」が満たされないからである。

負の項を含む級数:絶対収束と条件収束

項の符号が混ざると、正の項の級数の判定法はそのままでは使えない。そこで絶対値をとった級数を調べる。

絶対収束と条件収束

$\sum|a_n|$ が収束するとき、$\sum a_n$ は 絶対収束する という。$\sum a_n$ は収束するが $\sum|a_n|$ が発散するとき、$\sum a_n$ は 条件収束する という。

絶対収束する級数は収束する

$\sum|a_n|$ が収束すれば、$\sum a_n$ も収束する。

0 以上の級数に直す

$b_n:=a_n+|a_n|$ とおく。$a_n\ge0$ なら $b_n=2|a_n|$、$a_n<0$ なら $b_n=0$ なので、$0\le b_n\le2|a_n|$ である。$\sum2|a_n|$ は部分和が $\sum|a_n|$ の部分和の 2 倍なので収束し、thm-si-comparison (1) により $\sum b_n$ も収束する。$a_n=b_n-|a_n|$ なので、$\sum a_n$ の部分和は、収束する 2 つの部分和の数列の差であり、収束する。$\square$

絶対収束の例

$1-\frac14+\frac19-\frac1{16}+\cdots=\sum_{n=1}^\infty\frac{(-1)^{n-1}}{n^2}$ は、絶対値をとると ex-si-comparison (1) の $\sum\frac1{n^2}$ になり収束するので、thm-si-abs により収束する。$\sum_{n=0}^\infty\bigl(-\frac12\bigr)^n=\frac23$ も絶対収束する(絶対値の級数の和は $2$)。

絶対収束しないのに収束する級数の代表が、次の交代調和級数である。

交代調和級数の和

$\sum_{n=1}^\infty\frac{(-1)^{n-1}}n=1-\frac12+\frac13-\frac14+\cdots$ は収束し、和は $\log2$ である。より詳しく、部分和 $S_n$ について $|S_n-\log2|\le\frac1{n+1}$ である。この級数は条件収束する。

等比数列の和を積分する

方針:$\frac1k=\int_0^1t^{k-1}\,dt$ を使って、部分和を 1 つの積分にまとめる。
段 1:$t\ge0$ で、公比 $-t$ の等比数列の和の公式から
$$ 1-t+t^2-\dots+(-t)^{n-1}=\frac{1-(-t)^n}{1+t} $$
である。両辺を $0$ から $1$ まで積分すると、左辺は $\int_0^1(-t)^{k-1}dt=\frac{(-1)^{k-1}}k$ の和なので $S_n$ になり、
$$ S_n=\int_0^1\frac{dt}{1+t}-(-1)^n\int_0^1\frac{t^n}{1+t}\,dt=\log2-(-1)^n\int_0^1\frac{t^n}{1+t}\,dt $$
である($\int_0^1\frac{dt}{1+t}=\bigl[\log(1+t)\bigr]_0^1=\log2$)。
段 2:$0\le t\le1$ で $0\le\frac{t^n}{1+t}\le t^n$ なので
$$ |S_n-\log2|=\int_0^1\frac{t^n}{1+t}\,dt\le\int_0^1t^n\,dt=\frac1{n+1} $$
であり、$n\to\infty$ で $S_n\to\log2$ である。
段 3:絶対値をとった級数は調和級数で、prop-si-harmonic により発散する。よって条件収束である。$\square$

交代級数の打ち切り誤差を使って円周率を計算する例は Machinの公式 で扱う。

交代調和級数の部分和

$S_1=1$、$S_2=0.5$、$S_3\approx0.833$、$S_4\approx0.583$、$S_5\approx0.783$、$S_6\approx0.617$ と、$\log2\approx0.6931$ の上下を交互に行き来しながら近づく。$n=6$ では $|S_6-\log2|\approx0.076\le\frac17\approx0.143$ で、prop-si-log2 の評価のとおりである。

有限個の数の和は、足す順番を変えても変わらない。無限級数では、これが条件収束のときに崩れる。

並べ替えると和が変わる例

交代調和級数の項を「正の項 1 つ、負の項 2 つ」の順に並べ替えた級数
$$ 1-\frac12-\frac14+\frac13-\frac16-\frac18+\frac15-\frac1{10}-\frac1{12}+\cdots $$
は収束し、和は $\frac12\log2$ である。これは元の和 $\log2$ と異なる。

3 項ずつまとめる

段 1(並べ替えであること):$k$ 番目のまとまりは $\frac1{2k-1}-\frac1{4k-2}-\frac1{4k}$ である。奇数の分母 $2k-1$ はすべて 1 回ずつ現れる。偶数の分母は $4$ で割って $2$ 余るもの($4k-2$)と割り切れるもの($4k$)に分かれ、どちらも 1 回ずつ現れる。よって元の級数の項がちょうど 1 回ずつ現れる。
段 2($3k$ 項までの和):並べ替えた級数の部分和を $T_n$ とする。$\frac1{2k-1}-\frac1{4k-2}=\frac1{4k-2}$ なので
$$ \frac1{2k-1}-\frac1{4k-2}-\frac1{4k}=\frac1{4k-2}-\frac1{4k}=\frac12\Bigl(\frac1{2k-1}-\frac1{2k}\Bigr) $$
であり、$k=1,\dots,m$ について足すと $T_{3m}=\frac12S_{2m}$ である。prop-si-log2 により $T_{3m}\to\frac12\log2$ である。
段 3(残りの番号):$T_{3m+1}=T_{3m}+\frac1{2m+1}$、$T_{3m+2}=T_{3m+1}-\frac1{4m+2}$ であり、加えた項は $0$ に収束する。よって $T_n$ は $n$ を $3$ で割った余りによらず $\frac12\log2$ に収束する。$\log2>0$ なので $\frac12\log2\ne\log2$ である。$\square$

交代調和級数と、その並べ替えの部分和 交代調和級数と、その並べ替えの部分和
図3 は、元の順序の部分和(青)が $\log2\approx0.693$ に、並べ替えた部分和(橙)が $\frac12\log2\approx0.347$ に近づく様子である。足している数の集まりは同じだが、負の項を早めに使う並べ替えでは、部分和が低い位置に落ち着く。絶対収束する級数ではこのようなことは起こらず、どう並べ替えても和は同じである(Leb26 Proposition 2.6.3。本記事では証明しない)。

例と反例:どの仮定が効いているか

外した仮定崩れる主張ボックス
級数が収束すること括弧のつけ方によらず和が決まるex-si-start3
部分和が上に有界であること(prop-si-positive)正の項の級数が収束する(項が $0$ に近づいていても崩れる)prop-si-harmonic
項が $0$ 以上であること比較判定法ex-si-negative
比を 1 未満の一定の $r$ で抑えること比が $1$ より小さければ収束するrem-si-ratio1
絶対収束すること並べ替えても和は同じprop-si-rearrange
負の項があると比較判定法は使えない

$a_n=-1$、$b_n=\frac1{n^2}$ とすると、すべての $n$ で $a_n\le b_n$ であり、$\sum b_n$ は収束する。しかし $\sum a_n$ の部分和は $-n$ で、$-\infty$ に発散する。thm-si-comparison の仮定 $0\le a_n$ が破れている。下からも $0$ で抑えられていないので、部分和の増加(prop-si-positive)が使えない。

さらに先へ

  • 根判定法:$\sqrt[n]{|a_n|}\to L$ のとき、$L<1$ なら絶対収束し、$L>1$ なら発散する(Leb26 Proposition 2.6.1)。証明は比判定法と同じく等比級数との比較である。
  • $p$ 級数:$\sum\frac1{n^p}$ は $p>1$ で収束し、$p\le1$ で発散する(Leb26 Proposition 2.5.17)。prop-si-harmonic と同じ「2 倍ずつまとめる」考え方で示せる。
  • Riemann の再配列定理:条件収束する級数は、並べ替えによって和を任意の実数にできる(Leb26 Example 2.6.4、Exercise 2.6.3。本記事では証明しない)。
  • 冪級数:$\sum c_nx^n$ の形の級数は、比判定法・根判定法で収束する $x$ の範囲(収束半径)が決まり、指数関数や三角関数の定義に使われる(冪級数)。

関連項目

参考文献

Mathpediaは寄付と、参考文献の書籍リンク(Amazonアソシエイト)の紹介料で運営されています。 支援について / 寄付する