非交和(disjoint union)とは、集合の族 $(X_i)_{i\in I}$ の各元に出どころの添字 $i$ を付けてから集めた集合 $\bigsqcup_iX_i=\{(i,x)\mid i\in I,\ x\in X_i\}$ である。和集合と違って共通の元も区別されるので、有限集合なら元の個数は $\lvert A\sqcup B\rvert=\lvert A\rvert+\lvert B\rvert$ となり、非交和からの写像は各 $X_i$ の上で別々に決められる(集合の圏の余積)。位相空間の族では、各部分が開集合となる直和位相を入れて位相空間の圏の余積になり、空でない部分を 2 つ以上もつ非交和は連結でない。商空間やウェッジ和、胞体の貼り付けなど、空間を貼り合わせる構成の材料になる。
2 つの集合 $A,B$ を 1 つにまとめるとき、和集合 $A\cup B$ では、$A$ と $B$ の両方に属する元が 1 つにまとめられてしまう。$A=\{1,2\}$、$B=\{2,3\}$ なら $A\cup B=\{1,2,3\}$ は 3 元で、「$A$ から来た $2$」と「$B$ から来た $2$」の区別は失われる。非交和は、各元に「どの集合から来たか」という目印を付けてから集めることで、この区別を保つ構成である。$A=\{1,2\}$、$B=\{2,3\}$ の非交和は 4 元の集合になる。目印のおかげで、非交和から別の集合への写像は、各集合の上で別々に決めてよい。この性質(余積の普遍性)のため、非交和は、空間を貼り合わせて新しい空間を作るとき(商空間・ウェッジ和・胞体の貼り付け)の材料になり、また連結でない空間を「いくつかの部分を並べたもの」として記述する言葉になる。
$(X_i)_{i\in I}$ を集合の族とする。集合
$$
\bigsqcup_{i\in I}X_i:=\bigcup_{i\in I}\{i\}\times X_i=\{(i,x)\mid i\in I,\ x\in X_i\}
$$
を族 $(X_i)_{i\in I}$ の非交和(disjoint union)という。各 $j\in I$ について、写像
$$
\iota_j\colon X_j\to\bigsqcup_{i\in I}X_i,\qquad \iota_j(x):=(j,x)
$$
を $j$ 番目の包含という。記号は $\coprod_{i\in I}X_i$ とも書く。2 つの集合 $A,B$ の非交和は、$I=\{0,1\}$、$X_0=A$、$X_1=B$ として
$$
A\sqcup B:=(\{0\}\times A)\cup(\{1\}\times B)
$$
と書き、包含を $\iota_A(a)=(0,a)$、$\iota_B(b)=(1,b)$ と書く。
$(i,x)$ の第 1 成分 $i$ が「どの集合から来たか」の目印である。定義からすぐ次が分かる。
集合 $X$ とその部分集合の族 $(A_i)_{i\in I}$ について、次の 2 条件が成り立つとき、$X$ は $(A_i)_{i\in I}$ の(内部の)非交和であるといい、$X=\bigsqcup_{i\in I}A_i$ と書く。
(R1) $i\ne j$ ならば $A_i\cap A_j=\emptyset$ である。
(R2) $\bigcup_{i\in I}A_i=X$ である。
集合の分割(互いに交わらない空でない部分集合への分解)と違い、内部の非交和では空の $A_i$ も許す。def-disjoint-union-family の非交和を、内部の非交和と区別するときは外部の非交和と呼ぶ。2 つは次の意味で同じものである。
集合 $X$ と部分集合の族 $(A_i)_{i\in I}$ に対し、写像
$$
\varphi\colon\bigsqcup_{i\in I}A_i\to X,\qquad \varphi(i,a):=a
$$
を考える。$\varphi$ が全単射であることと、$X$ が $(A_i)_{i\in I}$ の内部の非交和であることは同値である。とくに外部の非交和 $\bigsqcup_iX_i$ は、部分集合の族 $(\{i\}\times X_i)_{i\in I}$ の内部の非交和である。
$\varphi$ の像は $\bigcup_iA_i$ なので、$\varphi$ が全射であることは条件 (ii) と同値である。
$\varphi$ が単射なら条件 (i) が成り立つ:$i\ne j$ で $a\in A_i\cap A_j$ があれば、$(i,a)\ne(j,a)$ なのに $\varphi(i,a)=a=\varphi(j,a)$ となり、単射でない。逆に条件 (i) が成り立つとき、$\varphi(i,a)=\varphi(j,b)$ なら $a=b$ で、この元は $A_i\cap A_j$ に属するので $i=j$ であり、$(i,a)=(j,b)$ である。よって $\varphi$ は単射である。
最後の主張は、定義の直後に確かめた 2 つの性質(複製どうしが交わらないことと、和が全体になること)そのものである。$\square$
各 $X_i$ が位相空間のときは、非交和に次の位相を入れる。
$(X_i)_{i\in I}$ を位相空間の族とする。$X:=\bigsqcup_{i\in I}X_i$ の部分集合 $U$ について
$$
U\ \text{が開集合}\quad:\Longleftrightarrow\quad\text{すべての }i\in I\text{ で }\iota_i^{-1}(U)\text{ が }X_i\text{ の開集合}
$$
と定める。これが位相になること(thm-disjoint-union-topology)を認めて、この位相を直和位相といい、直和位相を入れた $X$ を位相空間の族の非交和(位相空間の直和ともいう)という。
$\iota_i^{-1}(U)=\{x\in X_i\mid(i,x)\in U\}$ は「$U$ の $i$ 番目の部分」なので、直和位相の開集合とは、どの部分を見ても開集合になっている集合のことである。各部分は互いに影響しない。たとえば $X_i$ の開集合 $V$ を 1 つとって $\{i\}\times V$ とすると、$i$ 番目の部分は $V$、ほかの部分は空集合なので、$\{i\}\times V$ は開集合である。
すべての $i\in I$ で $X_i=Y$ である族(定数族)の非交和は、定義から集合として
$$
\bigsqcup_{i\in I}Y=\bigcup_{i\in I}\{i\}\times Y=I\times Y
$$
に等しい。たとえば $Y\sqcup Y=\{0,1\}\times Y$ であり、$Y$ が $n$ 元の有限集合なら $Y\sqcup Y$ は $2n$ 元である。$Y$ が位相空間で $I$ に離散位相を入れるとき、直和位相と $I\times Y$ の直積位相は一致する(cor-disjoint-union-discrete-product)。
$0$ 次元の球面 $S^0=\{-1,1\}\subset\mathbb{R}$ は、1 点空間 2 つの非交和と同相である。
集合 $I$ の各元 $i$ に 1 点空間 $\{*\}$ を対応させた族の非交和 $\bigsqcup_{i\in I}\{*\}=I\times\{*\}$ を考える。$U$ が何であっても $\iota_i^{-1}(U)$ は $\{*\}$ か $\emptyset$ で、どちらも $\{*\}$ の開集合だから、すべての部分集合が開集合になる。つまりこの非交和は、$I$ と同じ濃度の離散空間である。逆に、離散空間 $X$ は、その 1 点部分空間の族 $(\{x\})_{x\in X}$ の非交和と同相である(prop-disjoint-union-clopen で各 $\{x\}$ が開であることを使う)。整数全体 $\mathbb{Z}\subset\mathbb{R}$ は相対位相で離散なので、1 点空間の可算個の非交和である。
$\mathbb{R}\setminus\{0\}$ は、部分集合 $(-\infty,0)$ と $(0,\infty)$ の内部の非交和である。どちらも $\mathbb{R}\setminus\{0\}$ の開集合なので、prop-disjoint-union-clopen により、相対位相を入れた $\mathbb{R}\setminus\{0\}$ は 2 つの開区間の非交和と同相である。同じく $\mathbb{R}\setminus\mathbb{Z}$ は、開区間 $(n,n+1)$($n\in\mathbb{Z}$)の可算個の非交和と同相である。
可換環 $A,B$ の直積 $A\times B$ のスペクトルは、スキームとして $\operatorname{Spec}A\sqcup\operatorname{Spec}B$ と同型である(Vak25 5.2.5 Caution、Exercise 3.6.A)。位相空間としては、$A\times B$ の素イデアルは $\mathfrak{p}\times B$($\mathfrak{p}$ は $A$ の素イデアル)と $A\times\mathfrak{q}$($\mathfrak{q}$ は $B$ の素イデアル)の 2 種類に分かれ、それぞれが $\operatorname{Spec}A$、$\operatorname{Spec}B$ の複製になる。
Vak25 5.2.5 はこの同型を使って、2 つの整スキームの非交和が整スキームでないことを注意している。実際、空でない 2 つの空間の非交和は連結でない(cor-disjoint-union-disconnected)ので既約でなく、整スキームの底空間は既約だからである。
非交和からの写像は、各 $X_i$ の上で別々に決めればよい。これが非交和を特徴づける性質である。
$(X_i)_{i\in I}$ を集合の族とする。任意の集合 $Z$ と写像の族 $f_i\colon X_i\to Z$($i\in I$)に対し、すべての $i$ で $f\circ\iota_i=f_i$ を満たす写像 $f\colon\bigsqcup_iX_i\to Z$ がただ 1 つ存在する。2 つの集合 $A,B$ の場合を図式で書くと次のとおりである。
$$
\xymatrix{
A \ar[r]^-{\iota_A} \ar[dr]_{f_A} & A\sqcup B \ar@{.>}[d]|{f} & B \ar[l]_-{\iota_B} \ar[dl]^{f_B} \\
& Z &
}
$$
図式が可換であるとは、$f\circ\iota_A=f_A$ かつ $f\circ\iota_B=f_B$ ということである。したがって $\bigl(\bigsqcup_iX_i,(\iota_i)_{i\in I}\bigr)$ は集合の圏における族 $(X_i)_{i\in I}$ の余積(圏論)である。
存在:$\bigsqcup_iX_i$ の元は $(i,x)$($i\in I$、$x\in X_i$)の形にただ 1 通りに書けるので、$f(i,x):=f_i(x)$ によって写像 $f$ が定まる。このとき $f(\iota_i(x))=f(i,x)=f_i(x)$ である。
一意性:$g\colon\bigsqcup_iX_i\to Z$ もすべての $i$ で $g\circ\iota_i=f_i$ を満たすとする。任意の元 $(i,x)$ について $g(i,x)=g(\iota_i(x))=f_i(x)=f(i,x)$ なので、$g=f$ である。$\square$
存在の証明で「$(i,x)$ の形にただ 1 通りに書ける」ことを使った。目印を付けずに和集合をとると、ここが崩れる。$A=B=\{*\}$ のとき $A\cup B=\{*\}$ であり、$A$ の点を $0$ へ、$B$ の点を $1$ へ送る写像の組は、$A\cup B$ からの 1 つの写像にまとまらない(余積(圏論) の注意「反例:単なる和集合では区別が失われる」)。
余積は、包含と両立する全単射を除いて 1 つに決まる(余積(圏論) の命題「構造射を保つ一意な同型」)。def-disjoint-union-family の具体的な作り方(目印を前に付けるか後ろに付けるか)によらず、この普遍性をもつものを非交和と考えてよいのはこのためである。prop-disjoint-union-internal-external の $\varphi$ も、内部の非交和が余積であること($f(a):=f_i(a)$、$a\in A_i$ で定める)から得られる、この一意な全単射である。
要点:(i) は $A$ の元に $1,\dots,m$ を、$B$ の元に $m+1,\dots,m+n$ を番号づける全単射を作る。(ii) は基数の和の定義に、互いに交わらない代表 $\{0\}\times A$、$\{1\}\times B$ を使う。
(i):全単射 $\alpha\colon A\to\{1,\dots,m\}$、$\beta\colon B\to\{1,\dots,n\}$ をとり、$h\colon A\sqcup B\to\{1,\dots,m+n\}$ を $h(0,a):=\alpha(a)$、$h(1,b):=m+\beta(b)$ と定める(thm-disjoint-union-universal-set により $h$ は写像として定まる)。$h$ は $\{0\}\times A$ を $\{1,\dots,m\}$ へ、$\{1\}\times B$ を $\{m+1,\dots,m+n\}$ へ全単射に写し、この 2 つの像は交わらず和が $\{1,\dots,m+n\}$ なので、$h$ は全単射である。
(ii):基数の和 $\kappa+\lambda$ は、$\lvert A'\rvert=\kappa$、$\lvert B'\rvert=\lambda$、$A'\cap B'=\emptyset$ となる集合をとって $\lvert A'\cup B'\rvert$ と定められ、値は $A',B'$ の取り方によらない(基数 の命題「基数の算術の基本規則」)。$A':=\{0\}\times A$、$B':=\{1\}\times B$ とすると、$a\mapsto(0,a)$、$b\mapsto(1,b)$ が全単射だから $\lvert A'\rvert=\lvert A\rvert$、$\lvert B'\rvert=\lvert B\rvert$ であり、$A'\cap B'=\emptyset$ である。よって $\lvert A\rvert+\lvert B\rvert=\lvert A'\cup B'\rvert=\lvert A\sqcup B\rvert$ である。
(iii):写像は thm-disjoint-union-universal-set で $A\to A\cup B$、$B\to A\cup B$ の包含から得られ、像は $A\cup B$ 全体である。有限集合の式は和集合 の命題「二集合の包除原理」である。$A\cap B=\emptyset$ なら $A\sqcup B\to A\cup B$ は prop-disjoint-union-internal-external により全単射であり、逆に $\lvert A\cup B\rvert=\lvert A\rvert+\lvert B\rvert=\lvert A\sqcup B\rvert$ なら包除原理の式から $\lvert A\cap B\rvert=0$ である。$\square$
無限個の族についても、基数の族 $(\kappa_i)_{i\in I}$ の和 $\sum_{i\in I}\kappa_i$ を、$\lvert X_i\rvert=\kappa_i$ となる集合の族の非交和の濃度 $\bigl\lvert\bigsqcup_iX_i\bigr\rvert$ として定める。値が $X_i$ の取り方によらないことを示すには、各 $i$ で全単射 $X_i\to X_i'$ を 1 つずつ選んで並べる必要があり、$I$ が無限集合のときはここで選択公理を使う。
$(X_i)_{i\in I}$ を位相空間の族とし、$X:=\bigsqcup_iX_i$ とする。
(R1) def-disjoint-union-topology の開集合の全体 $\tau$ は $X$ の位相であり、各包含 $\iota_i$ は連続である。
(R2) $\tau$ は、すべての $\iota_i$ を連続にする $X$ の位相のうちで最も細かい。すなわち、$X$ の位相 $\sigma$ ですべての $\iota_i$ が連続なら $\sigma\subset\tau$ である。
(R3) 位相空間 $Z$ への写像 $f\colon X\to Z$ が連続であることと、すべての $i$ で $f\circ\iota_i\colon X_i\to Z$ が連続であることは同値である。したがって、連続写像の族 $f_i\colon X_i\to Z$ に対し、$f\circ\iota_i=f_i$ を満たす連続写像 $f\colon X\to Z$ がただ 1 つ存在する。
(R4) 各 $\{i\}\times X_i=\iota_i(X_i)$ は $X$ の開集合かつ閉集合であり、$\iota_i$ は $X_i$ から部分空間 $\{i\}\times X_i$ への同相写像である。
(i):逆像は和と共通部分を保つので、$\iota_i^{-1}\bigl(\bigcup_kU_k\bigr)=\bigcup_k\iota_i^{-1}(U_k)$、$\iota_i^{-1}(U\cap V)=\iota_i^{-1}(U)\cap\iota_i^{-1}(V)$ である。$U_k,U,V\in\tau$ なら右辺は $X_i$ の開集合の和・共通部分で開集合だから、$\tau$ は任意の和と有限個の共通部分で閉じている。$\iota_i^{-1}(\emptyset)=\emptyset$、$\iota_i^{-1}(X)=X_i$ なので $\emptyset,X\in\tau$ である。よって $\tau$ は位相である。$U\in\tau$ なら $\iota_i^{-1}(U)$ は開集合なので、$\iota_i$ は連続である。
(ii):$\sigma$ ですべての $\iota_i$ が連続なら、$U\in\sigma$ に対してすべての $i$ で $\iota_i^{-1}(U)$ は開集合であり、$\tau$ の定義から $U\in\tau$ である。
(iii):$f$ が連続なら、連続写像の合成 $f\circ\iota_i$ は連続である。逆に、すべての $f\circ\iota_i$ が連続とし、$W$ を $Z$ の開集合とする。各 $i$ で $\iota_i^{-1}\bigl(f^{-1}(W)\bigr)=(f\circ\iota_i)^{-1}(W)$ は $X_i$ の開集合だから、$f^{-1}(W)\in\tau$ である。よって $f$ は連続である。後半は、thm-disjoint-union-universal-set で得られる写像 $f$ が前半により連続になることと、一意性が集合の段階ですでに成り立つことから従う。
(iv):$\iota_j^{-1}(\{i\}\times X_i)$ は $j=i$ なら $X_i$、$j\ne i$ なら $\emptyset$ であり、どちらも開集合なので $\{i\}\times X_i$ は開集合である。その補集合 $\bigcup_{j\ne i}\{j\}\times X_j$ は開集合の和で開集合だから、$\{i\}\times X_i$ は閉集合でもある。$\iota_i\colon X_i\to\{i\}\times X_i$ は全単射で、(i) により連続である。$V$ を $X_i$ の開集合とすると、$\iota_i(V)=\{i\}\times V$ は、定義の直後に見たとおり $X$ の開集合であり、とくに部分空間 $\{i\}\times X_i$ の開集合である。よって $\iota_i$ の逆写像も連続で、$\iota_i$ は同相写像である。$\square$
(iii) を図式で書けば、集合の場合の図式の各写像を連続写像に替えたものになる。つまり位相空間の非交和は、位相空間と連続写像の圏における余積である(Rie16 Proposition 3.6.2 は、位相空間の余積をこの位相を入れた非交和として構成している)。(ii) は、直積位相が射影を連続にする最も粗い位相であること(直積位相 の命題「射影を連続にする最も粗い位相」)と向きが逆の関係にある。直積は「への写像」を成分ごとに判定させ、非交和は「からの写像」を成分ごとに判定させる。また、各 $X_i$ の開基 $\mathcal{B}_i$ を 1 つずつとると、$\{\{i\}\times V\mid i\in I,\ V\in\mathcal{B}_i\}$ は直和位相の開基になる。
$\{i\}\times V$ は開集合である(定義の直後の注意)。開集合 $U$ は $U=\bigcup_i\{i\}\times\iota_i^{-1}(U)$ と書け、各 $\iota_i^{-1}(U)$ は $\mathcal{B}_i$ の元の和なので、$U$ は $\{i\}\times V$($V\in\mathcal{B}_i$)の形の集合の和である。
(iv) の逆にあたるのが次の命題である。空間を互いに交わらない部分集合に分けても、各部分が開集合でなければ非交和にはならない。
位相空間 $X$ が部分集合の族 $(A_i)_{i\in I}$ の内部の非交和であるとし、各 $A_i$ に相対位相($X$ の開集合との共通部分を開集合とする位相)を入れる。prop-disjoint-union-internal-external の全単射 $\varphi\colon\bigsqcup_iA_i\to X$、$\varphi(i,a)=a$ が同相写像であるための必要十分条件は、すべての $A_i$ が $X$ の開集合であることである。このとき各 $A_i$ は閉集合でもある。とくに、$X$ の部分集合 $A$ について、$X$ が部分空間の非交和 $A\sqcup(X\setminus A)$ と($\varphi$ によって)同相であることと、$A$ が開かつ閉集合であることは同値である。
要点:$\varphi$ はいつも連続である(成分ごとには包含写像)。各 $A_i$ が開なら、$A_i$ の相対開集合は $X$ の開集合なので $\varphi$ は開写像になる。逆に $\varphi$ が同相なら、$A_i$ は開集合 $\{i\}\times A_i$ の像なので開である。
$\varphi\circ\iota_i\colon A_i\to X$ は包含写像で連続だから、thm-disjoint-union-topology の (iii) により $\varphi$ は連続である。
すべての $A_i$ が開集合であるとする。$U$ を $\bigsqcup_iA_i$ の開集合とすると、$\varphi(U)=\bigcup_i\iota_i^{-1}(U)$ である。各 $\iota_i^{-1}(U)$ は $A_i$ の相対位相で開集合なので、$X$ の開集合 $V_i$ で $\iota_i^{-1}(U)=V_i\cap A_i$ となるものがある。$A_i$ も開集合だから $V_i\cap A_i$ は $X$ の開集合であり、$\varphi(U)$ は開集合の和で開集合である。よって $\varphi$ は開写像でもあり、同相写像である。
逆に $\varphi$ が同相写像なら、$A_i=\varphi(\{i\}\times A_i)$ は、thm-disjoint-union-topology の (iv) により開集合の同相写像による像なので開集合である。
各 $A_i$ の補集合は $\bigcup_{j\ne i}A_j$ で開集合の和だから、$A_i$ は閉集合でもある。最後の主張は、2 つの部分集合 $A$、$X\setminus A$ に前半を当てはめたもので、「$A$ と $X\setminus A$ がともに開集合」は「$A$ が開かつ閉」と同じことである。$\square$
位相空間 $X$ が連結空間でないことと、空でない 2 つの位相空間 $A,B$ があって $X$ が $A\sqcup B$ と同相であることは同値である。とくに、空でない空間を 2 つ以上含む族の非交和は連結でない。
$X$ が連結でないとする。連結空間 の定義により、空でなく交わらない開集合 $A,B$ で $X=A\cup B$ となるものがある。$X$ は $(A,B)$ の内部の非交和で $A,B$ は開集合なので、prop-disjoint-union-clopen により $X$ は部分空間の非交和 $A\sqcup B$ と同相である。
逆に $h\colon A\sqcup B\to X$ が同相写像で $A,B$ が空でないとする。thm-disjoint-union-topology の (iv) により $\{0\}\times A$ と $\{1\}\times B$ は空でなく、交わらず、和が全体の開集合である。その $h$ による像は $X$ の空でなく交わらない開集合で、和が $X$ だから、$X$ は連結でない。
後半:空でない $X_{i_0},X_{i_1}$($i_0\ne i_1$)があれば、$\{i_0\}\times X_{i_0}$ とその補集合は空でなく交わらない開集合で、和が全体である。$\square$
集合 $X$ と集合の族 $(Y_i)_{i\in I}$ について、
$$
\Phi\colon\bigsqcup_{i\in I}(X\times Y_i)\to X\times\bigsqcup_{i\in I}Y_i,\qquad \Phi\bigl(i,(x,y)\bigr):=\bigl(x,(i,y)\bigr)
$$
は全単射である。$X$ と各 $Y_i$ が位相空間で、左辺に直和位相(各 $X\times Y_i$ には直積位相)、右辺に直積位相($\bigsqcup_iY_i$ には直和位相)を入れると、$\Phi$ は同相写像である。
要点:逆写像は $\bigl(x,(i,y)\bigr)\mapsto\bigl(i,(x,y)\bigr)$ である。連続性は非交和の普遍性(成分ごとの判定)で、開写像であることは開基 $\{i\}\times(U\times V)$ の像 $U\times(\{i\}\times V)$ が開集合であることで確かめる。
集合として:$\Psi\bigl(x,(i,y)\bigr):=\bigl(i,(x,y)\bigr)$ が $\Phi$ の逆写像である。
連続性:$\Phi\circ\iota_i\colon X\times Y_i\to X\times\bigsqcup_jY_j$ は $(x,y)\mapsto(x,\iota_i(y))$ であり、その 2 つの成分は射影 $(x,y)\mapsto x$ と、射影と $\iota_i$ の合成 $(x,y)\mapsto\iota_i(y)$ で、どちらも連続である。直積位相 の定理「直積位相の普遍性」により $\Phi\circ\iota_i$ は連続であり、thm-disjoint-union-topology の (iii) により $\Phi$ は連続である。
開写像であること:$W$ を左辺の開集合とする。各 $i$ で $W_i:=\iota_i^{-1}(W)$ は $X\times Y_i$ の開集合なので、$X$ の開集合 $U$ と $Y_i$ の開集合 $V$ の積 $U\times V$ の和に書ける(直積位相 の命題「直積位相の開基」)。$W=\bigcup_i\{i\}\times W_i$ だから、$\Phi(W)$ は $\Phi\bigl(\{i\}\times(U\times V)\bigr)=U\times(\{i\}\times V)$ の形の集合の和である。$\{i\}\times V$ は $\bigsqcup_jY_j$ の開集合(thm-disjoint-union-topology の (iv) の証明)なので、$U\times(\{i\}\times V)$ は右辺の開集合であり、$\Phi(W)$ も開集合である。よって $\Phi$ は同相写像である。$\square$
位相空間 $Y$ と、離散位相を入れた集合 $I$ について、直積空間 $I\times Y$ は、定数族の非交和 $\bigsqcup_{i\in I}Y$ に(恒等写像 $(i,y)\mapsto(i,y)$ で)等しい。
要点:離散空間 $I$ を 1 点空間の非交和とみて、prop-disjoint-union-distributive を当てはめる。
ex-disjoint-union-discrete により $I=\bigsqcup_{i\in I}\{*\}$ である。prop-disjoint-union-distributive を $X=Y$、$Y_i=\{*\}$ に当てはめると、$\bigsqcup_i(Y\times\{*\})\to Y\times\bigsqcup_i\{*\}$、$(i,(y,*))\mapsto(y,(i,*))$ は同相写像である。$Y\times\{*\}\cong Y$ と成分の順序の入れ替え(どちらも同相写像)を合成すると、$(i,y)\mapsto(i,y)$ が $\bigsqcup_iY\to I\times Y$ の同相写像になる。$\square$
各部分が互いに影響しないので、1 点の近くだけで決まる性質は非交和に受け継がれる。空間全体にかかわる性質は、部分の個数によって変わる。
| 性質 | 各 $X_i$ がもつとき $\bigsqcup_iX_i$ は | 理由 |
|---|---|---|
| Hausdorff空間 | もつ | 下の「詳細」 |
| 距離化可能 | もつ | 下の「詳細」 |
| 離散 | もつ | ex-disjoint-union-discrete と同じ |
| コンパクト | 空でない $X_i$ が有限個のときに限りもつ | prop-disjoint-union-compact |
| 連結 | 空でない $X_i$ が 1 個以下のときに限りもつ | cor-disjoint-union-disconnected |
Hausdorff 性は、異なる部分にある 2 点を部分そのもので分け、同じ部分にある 2 点をその部分の中で分けて示す。距離化可能性は、各部分の距離を $1$ で頭打ちにし、異なる部分の点の距離を $1$ と定めた距離で示す。
Hausdorff 性:2 点 $(i,x)\ne(j,y)$ について、$i\ne j$ なら $\{i\}\times X_i$ と $\{j\}\times X_j$ が交わらない開近傍である。$i=j$ なら $X_i$ の中で $x,y$ を分ける交わらない開集合 $V,V'$ をとり、$\{i\}\times V$、$\{i\}\times V'$ とすればよい。
距離化可能性:各 $X_i$ の位相を与える距離 $d_i$ をとり、$(i,x)$ と $(j,y)$ の距離を、$i=j$ なら $\min\{d_i(x,y),1\}$、$i\ne j$ なら $1$ と定める。これは距離であり(三角不等式は、3 点が同じ部分にあるときは $\min\{d_i,1\}$ の三角不等式、そうでなければ右辺の 2 項のどちらかが $1$ で左辺が $1$ 以下であることから従う)、半径 $1$ 未満の球は 1 つの部分 $\{i\}\times X_i$ に含まれて $X_i$ の球 $\{d_i< r\}$ の複製になる。よってこの距離の定める位相の開集合は、各部分が開集合である集合、すなわち直和位相の開集合と一致する。
位相空間の族 $(X_i)_{i\in I}$ の非交和 $\bigsqcup_iX_i$ がコンパクト空間であるための必要十分条件は、各 $X_i$ がコンパクトで、空でない $X_i$ が有限個しかないことである。
要点:十分性は、空でない各部分で有限部分被覆をとって合わせる。必要性は、部分そのものからなる開被覆 $\{\{i\}\times X_i\}$ に有限部分被覆があることから空でない部分が有限個と分かり、各部分は閉部分集合としてコンパクトになる。
条件が十分であること:$\mathcal{U}$ を $\bigsqcup_iX_i$ の開被覆とし、空でない $X_i$ を $X_{i_1},\dots,X_{i_m}$ とする。各 $k$ について $\{\iota_{i_k}^{-1}(U)\mid U\in\mathcal{U}\}$ は $X_{i_k}$ の開被覆なので、有限個の $U\in\mathcal{U}$ で $\{i_k\}\times X_{i_k}$ が覆われる。これらを $k=1,\dots,m$ について合わせた有限個が全体を覆う。
条件が必要であること:$\{\{i\}\times X_i\mid i\in I\}$ は開被覆である(thm-disjoint-union-topology の (iv))。有限部分被覆をとると、その外にある $\{i\}\times X_i$ はほかの部分と交わらないので覆われず、空でなければならない。よって空でない $X_i$ は有限個である。また $\{i\}\times X_i$ はコンパクト空間の閉部分集合なのでコンパクトであり(コンパクト空間 の命題「保存と閉性」の 1)、$X_i$ はそれと同相だからコンパクトである。$\square$
def-disjoint-union-family の目印と、def-disjoint-union-topology の「各部分が開」という条件は、どちらも外せない。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 部分が互いに交わらないこと | $A=B=\{*\}$ の和集合 $A\cup B$ | 濃度の和 $\lvert A\rvert+\lvert B\rvert$、余積の普遍性 |
| 各部分が開集合であること | $[0,2]=[0,1)\cup[1,2]$ | 部分空間の非交和と同相であること |
| 同上 | $\mathbb{Q}$ をその連結成分(1 点)に分けたもの | 部分空間の非交和と同相であること |
| 空でない部分が有限個 | 1 点空間の可算個の非交和 $\mathbb{N}$ | コンパクト性 |
| 集合・位相空間の圏で考えること | 群 $\mathbb{Z}$ と $\mathbb{Z}$ | 余積の台集合が非交和であること |
満たす性質:$A\cup B$ は $A$ と $B$ を含む集合で、包含 $A\to A\cup B$、$B\to A\cup B$ がある。満たさない性質:$\lvert A\cup B\rvert=\lvert A\rvert+\lvert B\rvert$ と余積の普遍性。$A=B=\{*\}$ なら $\lvert A\cup B\rvert=1<2=\lvert A\sqcup B\rvert$ であり、普遍性が破れることはthm-disjoint-union-universal-set の後で見た。破れる含意は「$A,B$ を含む集合をとれば、$A,B$ からの写像の組はそこからの写像にまとまる」である。交わりがなければ和集合は非交和と全単射で結ばれる(prop-disjoint-union-internal-external)。
$X=[0,2]\subset\mathbb{R}$ は、部分集合 $A=[0,1)$ と $B=[1,2]$ の内部の非交和である。満たす性質:$A,B$ は交わらず、和が $X$ である。満たさない性質:$A$ は $X$ の開集合だが閉集合でない(点 $1\notin A$ に $A$ の点 $1-1/n$ が収束する)。したがって prop-disjoint-union-clopen により、全単射 $\varphi\colon A\sqcup B\to X$ は連続だが同相写像でない。実際、$X=[0,2]$ は区間なので連結であり(連結空間 の定理「実数直線の連結部分集合」)、$A\sqcup B$ は cor-disjoint-union-disconnected により連結でない。破れる含意は「空間が互いに交わらない部分集合に分かれれば、空間は部分空間の非交和である」である。
$\mathbb{Q}\subset\mathbb{R}$ の連結成分は 1 点集合であり、$\mathbb{Q}$ は 1 点集合の族の内部の非交和である。しかし 1 点集合 $\{q\}$ は $\mathbb{Q}$ の開集合でない(連結空間 の注意「反例:連結成分は開とは限らない」)。よって prop-disjoint-union-clopen により、$\mathbb{Q}$ は連結成分を部分空間とする非交和と同相でない。部分空間の非交和は 1 点空間の非交和で離散空間になる(ex-disjoint-union-discrete)が、$\mathbb{Q}$ は離散でない。連結成分への分解が非交和への分解になるのは、連結成分がすべて開集合のとき(たとえば局所連結空間)である。
1 点空間はコンパクトだが、その可算個の非交和は離散空間 $\mathbb{N}$ であり、開被覆 $\{\{n\}\mid n\in\mathbb{N}\}$ は有限部分被覆をもたないのでコンパクトでない。破れる含意は「各部分がコンパクトなら非交和もコンパクト」であり、prop-disjoint-union-compact の「有限個」という条件は外せない。
群の圏にも余積があり、群 $G,H$ の余積は自由積 $G\ast H$ である(自由積 の命題「自由積は群の圏の余積」)。これは非交和ではない。$G=H=\mathbb{Z}$ とし、2 つの準同型 $\iota_1,\iota_2\colon\mathbb{Z}\to\mathbb{Z}\ast\mathbb{Z}$ を考えると、単位元 $0$ はどちらでも単位元に写るので $\iota_1(\mathbb{Z})\cap\iota_2(\mathbb{Z})\ne\emptyset$ であり、また生成元の像の積 $\iota_1(1)\iota_2(1)$ は、長さ $2$ の簡約語であり、長さ $1$ 以下の簡約語で表される $\iota_1(\mathbb{Z})\cup\iota_2(\mathbb{Z})$ の元とは異なる(自由積 の定義「自由積」は元を簡約語として定める)。破れる含意は「余積の台集合は台集合の非交和である」であり、集合と位相空間の圏では成り立つが、群の圏では成り立たない。アーベル群・加群の圏の余積は直和で、これも非交和ではない。
位相空間の多くの構成は、非交和をとってから商空間(位相)をとる形をしている。ウェッジ和は基点付き空間の非交和で基点を 1 点に同一視したもの、写像 $f\colon X\to Y$ の写像柱は $(X\times[0,1])\sqcup Y$ で $(x,1)$ と $f(x)$ を同一視したもの(Hat02 Chapter 0, p. 2)である。胞体複体は、空間 $X^{n-1}$ と $n$ 次元円板の族の非交和 $X^{n-1}\sqcup\bigsqcup_\alpha D^n_\alpha$ で、各円板の境界を $X^{n-1}$ に貼り付けて $X^n$ を作ることを繰り返して得られる(Hat02 Chapter 0, p. 5)。どの場合も、非交和からの連続写像が成分ごとに決められること(thm-disjoint-union-topology の (iii))が、商空間からの連続写像を作るときの出発点になる。
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