Mannの定理

和集合のSchnirelmann密度については、Schnirelmannの定理より強いMannの定理が成り立つ。

Mann, 1942

A,B がともに 0 を含む自然数列ならば、
σ(A+B)min{1,σA+σB}
が成り立つ。

すなわち、和集合は N0 に一致するか、Schnirelmann密度が元の2 つの集合のSchnirelmann密度の和以上となる。

本節ではHalberstam-Roth HR, Chapter I の方法によりこの定理を証明する。この定理は次の定理から容易に従う。

Halberstam-Roth HR, Chapter I, Theorem 3

η0<η1 の範囲にある実数とし、n を正の整数とする。
また、A,B がともに 0 を含む自然数列とし、C=A+B とする。
(1)A(m)+B(m)ηm(m=1,2,,n)
が成り立つならば
(2)C(m)ηm(m=1,2,,n)
が成り立つ。

この定理は
[A(m)+B(m)ηm(m=1,2,n)][C(m)ηm(m=1,2,n)]
が成り立つといっているのであって、
[A(m)+B(m)ηmC(m)ηm](m=1,2,n)
が成り立つということではない(実際、後者は一般には成立しない)。

定理2 から 定理1 はすぐに従う。実際、η=min{1,σA+σB} とおくと、m=1,2,,n に対して
A(m)+B(m)(σA)m+(σB)mηm
から(1)はすぐに従うので、定理2のもとでは(2)が成立する。n は任意の整数をとれるから、結局 C(n)ηn が任意の正の整数 n について成り立つので、 定理1 が成り立つ。

(1)が成り立つが(2)が成り立たない n が存在すると仮定し、そのような最小の n をとる。
そのうえで、(1)が成り立つが(2)が成り立たない自然数列 A,B のうち、 B(n) が最小のものをとる。
また、A,Bn 以下の整数のみを含んでいるとしてもよい。というのは A,B から n より大きな要素を取り除いても、(1)および(2)が成立するかどうかには関係しないからである。

B(n)=0 のときは、B0 しか含まないから、C=A+B=A となるので、m=1,2,,n に対して
C(m)=A(m)=A(m)+B(m)
となって、(1)が成り立つなら(2)も成り立ってしまう。よって B(n)>0 となって、B は正の要素を含むことがわかる。

a+BA が成り立たないような aA が存在することは容易に確かめられる。実際、B は正の要素を含むので、ar,bsA,B の最大の要素とおくと、ar+bsar より大きいから、これは A に含まれない。

さて、
(a)A(m)+B(m)ηm (m=1,2,n),
(b)A+BA+B,
(c)B(n)<B(n)
が成り立つように自然数列 A,B を構成する。

まず、a+BA が成り立たないような、最小の aAa とおいて
B={bB,a+bA},B=BB={bB,a+bA}
とおくと、aA より B0 を含む。また、a+BA が成り立たないのだから、B に含まれる要素が存在する。よって(c)が成り立つ。
A=A((a+B)[0,n])
とおくと、bB,bB に対して
(a+b)+b=(a+b)+bA+B
となるから、(b)が成り立つ。

a=0 の場合、
B=AB,A=AB=A(BA)
なので、
A(n)+B(n)=A(n)+(B(n)B(n))+B(n)=A(n)+B(n)
となるので、(a)が成り立つ。

そこで、a>0 の場合に(a)を示す。まず m=1,2,,n を任意にとる。B の定義から、a+B の要素は A には含まれないので
(3)A(m)=A(m)+B(ma)
となる。
Bma<bm となる要素を含まないとき、B(ma)=B(m) なので、
A(m)+B(m)=A(m)+B(m)+B(m)=A(m)+B(m)
となる。
そこで、Bma<bm となる要素を含むとし、そのような最小の要素を b1 とおく。
m=b1+r とおくと、 0r<a となるから、r 以下の A の要素 a について
a+BA
が成り立つ。よって
(4)(A[0,r])+BA
とくに
(A[0,r])+b1A
となる。つまり 0araA の要素ならば、b1+aA の要素である。
よって
A(b1+r)A(b11)A(r)+1
となる。

一方、仮定より(1)m=1,2,,r について成り立つが、r<n であるから、n のとり方より(2)m=1,2,,r については成り立つ。とくに C(r)ηr となる。(4)より
C[0,r]A
となるから、A(r)C(r) となり、
A(b1+r)A(b11)C(r)+1η(r+1)
となる。
また、(1)m=1,2,,n について成り立つので
A(b11)+B(b11)η(b11)
が成り立つ。よって
A(b1+r)+B(b11)η(b1+r)=ηm
となる。b1ma<bm となる B の最小の要素だから、B(b11)=B(ma) となる。よって(3)より
A(m)+B(m)A(m)+B(ma)=A(m)+B(b11)ηm
となる。

このようにして、a>0 の場合に(a)が成り立つことが示された。しかし、C=A+B とおくと、(a)より m=1,2,,n に対して
A(m)+B(m)ηm
が成り立つが(b)より C(n)C(n) となるため C(n)ηm は成り立たない。つまり A,B,C をそれぞれ A,B,C に置き換えると(1)は成り立つが(2)は成り立たない。一方で(c)より B(n)<B(n) となる。しかし、これは B(n) が、(1)が成り立つが(2)が成り立たない A,B の中では最小となるという選び方に反する。

この矛盾から、(1)が成り立つならば(2)も成り立つことが示された。

参考文献

[1]
H. Halberstam and K. F. Roth, Sequences (reprinted version), Springer-Verlag New York, 1983
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