ある観測者に対して物体が運動しているとする。
このとき、その観測者の測定するその物体の運動方向への空間的長さは、その物体の静止系で測定される長さに比べて小さいということが結論される。
これをローレンツ収縮 (Lorentz contraction)と呼ぶ。
この現象はMinkowski時空の幾何学として以下のように理解される。
ある観測者 $V\in T_pM$ が $p=(0,0,0,0),\ V=\partial_0$ と表されるようなLorentz座標 $\{x^0,x^1,x^2,x^3\}$ を一つ固定する。
観測者 $V$ のこの瞬間(時空点 $p$)の時間一定面は $\{(0,x^1,x^2,x^3)\in M\}$ である。
一方、$V$ から見て $\partial_1$ 方向へ速さ $v$ で移動する観測者 $V_\theta\in T_pM,\ \tanh\theta=v/c$ のこの瞬間の時間一定面は、
$$
\begin{aligned}
&\{(\sinh\theta x^1,\cosh\theta x^1,x^2,x^3)\in M\},\\
&\sinh\theta=\frac{v/c}{\sqrt{1-(v/c)^2}},\ \cosh\theta=\frac{1}{\sqrt{1-(v/c)^2}}
\end{aligned}
$$
である。
このとき、ある観測者がある時刻に見た物体の空間的な大きさは、その観測者の時刻一定面とその物体がはく時空領域(物体の4次元的領域)の共通部分のことと定義する。
従って、物体の長さも観測者に依存する。
いま、2つの粒子の世界線がそれぞれ $c_1(t)=(ct,0,0,0),\ c_2(t)=(ct,L,0,0)$ であるとする。
ここで $t$ は $V$ の固有時である。
観測者 $V$ から見たこの2つの粒子の空間的な距離は $L$ である。
一方、$V_\theta$ の時刻一定面 $\Pi_\theta$ 上を $p$ から $x^1$ 方向へ距離 $\lambda$ 進んだ点は $(\sinh\theta,\cosh\theta,0,0)\lambda$ であるから、$\Pi_\theta$ と $c_2(t)$ の共有点は、
$$
\begin{aligned}
(\sinh\theta,\cosh\theta,0,0)\lambda=(ct,L,0,0),\\
\therefore\ \lambda=\frac{L}{\cosh\theta}
\end{aligned}
$$
で与えられる。
従って、この瞬間、観測者 $V_\theta$ にとっての $c_1,c_2$ の空間的距離 $L'$ は、
$$
\begin{aligned}
L'=L\sqrt{1-(v/c)^2}\ (< L)
\end{aligned}
$$
である。
このように、相対運動する方向に広がった物体は縮んで見える。
Lorentz収縮の概念図