電磁場

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 Minkowski時空 $M$ において、ベクトルポテンシャル (vector potential) は1形式 $A$ として与えられる。
ベクトルポテンシャルはゲージ場の一種であるが、ここではゲージ理論については深入りしない。
さらに''電磁場'' (Electromagnetic field) は、2形式
$$ F=dA $$
として定義される。

物理的に意味があるのは電磁場である。
任意の関数 $f\in C^\infty(M)$ に対して、ベクトルポテンシャルを
$$ A'=A+df $$
と変換しても、$F'=dA'=d(A+df)=dA=F$ となり、この変換で電磁場は不変である。
従って、このベクトルポテンシャルの変換は物理的な意味は持たない。
この変換はゲージ変換 (Gauge transformation) と呼ばれる。
これはゲージ理論における一般のゲージ変換のゲージ群を可換群にした特別な場合のものである。

観測者 $V\in T_pM$ に対して、$\{x^0,x^1,x^2,x^3\}$$\partial_0|_p=V$ となるLorentz座標を一つとる。
1形式 $E,B$
$$ \begin{align} E&:=-c\partial_0\lrcorner F,\\ B&:=\partial_0\lrcorner(\ast F) \end{align} $$
と定義する。
ここで、$\lrcorner$ は内部積であり、体積要素は $dx^0\wedge dx^1\wedge dx^2\wedge dx^3=4!dx^{[1}\otimes dx^2\otimes dx^3\otimes dx^{4]}$ とする。
$E,B\in \Omega^1(M)$$V$ が観測する電場 (Electric field)、磁場 (Magnetic field)という。
$E,B$ の計量双対を取りベクトル場 ${}^\sharp E,{}^\sharp B\in \mathcal{X}(M)$ を電場、磁場と呼ぶこともあり、文脈に依存する。

電磁場 $F$ は Yang-Mills 方程式
$$ \delta F=\mu_0J $$
を満たすことが要請される。
ここで $\delta$$d$ に対する余外微分、$J\in \Omega^1(M)$ は電流密度と呼ばれ物理的には電磁場を作り出す源となる。
また $J$ の係数は物理的な次元や符号を合わせるためのもので数学的には本質的ではない。
ただし、電流密度が0の領域でも電磁波のように非自明な解は存在する。
また電流密度を作り出す物質と電磁場も相互作用するので、実際には物質場の方程式と連立しなければならない。
しかしここでは、電流密度は外場とみなし(つまり、電磁場からの作用を受けない)、電磁場のみについて述べる。
特に、$J=0$ のときはこれらの事情を考える必要は普通ない。

一般的にはYang-Mills方程式はゲージ理論におけるゲージ場が従う方程式であり、先に述べたことは、電磁場の場合に制限したものであるが、形式的には同じである。
またYang-Mills方程式 $\delta F=J$ とBianchi恒等式 $dF=ddA=0$ を合わせて、Maxwell方程式と呼ぶ。

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