慣性系による電磁場の現れ方の違い

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 2つの慣性系間の座標変換はLorentz変換であるから、それぞれの座標系に関する電磁場 $F$ の成分も2形式の変換規則に従い変換される。具体的には、二つの慣性系 $S,S'$ があり、$S$ のLorentz座標系を $\{x^\mu\}$$S'$ のLorentz座標系を $\{y^\mu\}$ とする。慣性系 $S$ において、電磁場が
$$ \begin{align} F&=F_{\mu\nu}dx^\mu\wedge dx^\nu,\\ &=\frac{E_i}{c}dx^i\wedge dx^0+\sum_{i< j}\sum_k\epsilon_{ijk}B_kdx^i\wedge dx^j \end{align} $$
と表されたとすると、慣性系 $S'$ においては、
$$ \begin{align} F=F_{\mu\nu}\frac{\partial x^\mu}{\partial y^\alpha}\frac{\partial x^\nu}{\partial y^\beta}dy^\alpha\wedge dy^\beta \end{align} $$
となる。
従って電場、磁場という概念は慣性系に依存した概念であることがわかる。
より明示的な表示を得るために、$S'$ 系が $S$ 系の $x^1$ 軸の方向へ速さ $v$ で等速に移動している状況、すなわち
$$ \begin{align} x^0&=\cosh\theta y^0+\sinh\theta y^1,\\ x^1&=\sinh\theta y^0+\cosh\theta y^1,\\ x^2&=y^2,\\ x^3&=y^3,\\ \tanh\theta&=v/c \end{align} $$
が成り立っているとする。
このとき、
$$ \begin{align} F&=\frac{E_1}{c}dx^1\wedge dx^0+\frac{E_2}{c}dx^2\wedge dx^0+\frac{E_3}{c}dx^3\wedge dx^0+B_3dx^1\wedge dx^2+B_2dx^3\wedge dx^1+B_1dx^2\wedge dx^3,\\ &=\frac{E_1}{c}(\sinh\theta dy^0+\cosh\theta dy^1)\wedge(\cosh\theta dy^0+\sinh\theta dy^1) +\frac{E_2}{c}dy^2\wedge (\cosh\theta dy^0+\sinh\theta dy^1)\\ &+\frac{E_3}{c}dy^3\wedge (\cosh\theta dy^0+\sinh\theta dy^1) +B_3(\sinh\theta dy^0+\cosh\theta dy^1)\wedge dy^2 +B_2dy^3\wedge (\sinh\theta dy^0+\cosh\theta dy^1)\\ &+B_1dy^2\wedge dy^3,\\ &=\frac{E_1}{c}dy^1\wedge dy^0 +(\frac{E_2}{c}\cosh\theta-B_3\sinh\theta) dy^2\wedge dy^0 +(\frac{E_3}{c}\cosh\theta+B_2\sinh\theta) dy^3\wedge dy^0\\ &+(-\frac{E_2}{c}\sinh\theta+B_3\cosh\theta) dy^1\wedge dy^2 +(\frac{E_3}{c}\sinh\theta+B_2\cosh\theta) dy^3\wedge dy^1 +B_1dy^2\wedge dy^3 \end{align} $$
となる。
よって
$$ \begin{align} E'_1&=E_1,\\ E'_2&=E_2\cosh\theta-cB_3\sinh\theta=\frac{E_2-B_3v}{\sqrt{1-(v/c)^2}},\\ E'_3&=E_3\cosh\theta+cB_2\sinh\theta=\frac{E_3+B_2v}{\sqrt{1-(v/c)^2}},\\ B'_1&=B_1,\\ B'_2&=\frac{E_3}{c}\sinh\theta+B_2\cosh\theta=\frac{B_2+E_3v/c^2}{\sqrt{1-(v/c)^2}},\\ B'_3&=-\frac{E_2}{c}\sinh\theta+B_3\cosh\theta=\frac{B_3-E_2v/c^2}{\sqrt{1-(v/c)^2}} \end{align} $$
と変換することが分かる。
従って、$S$ 系から見た $S'$ 系の運動方向を $\mathbb{v}$ とすると(この方向を $x^1$ 方向に取ることは常にできるから)、
$$ \begin{align} \mathbb{E}'_{||}&=\mathbb{E}_{||},\\ \mathbb{E}'_{\perp}&=\frac{\mathbb{E}_{\perp}+\mathbb{v}\times\mathbb{B}}{\sqrt{1-(v/c)^2}},\\ \mathbb{B}'_{||}&=\mathbb{B}_{||},\\ \mathbb{B}'_{\perp}&=\frac{\mathbb{E}_{\perp}-\mathbb{v}\times\mathbb{E}/c^2}{\sqrt{1-(v/c)^2}}, \end{align} $$
となる。
ここで、$||,\perp$ はそれぞれ $\mathbb{v}$ に平行な成分と垂直な成分を表す。

具体例として点電荷が静止している系と等速運動している系での電場、磁場の関係を計算する。
$S'$ 系の原点に電荷 $e$ の点電荷が静止していて、この電荷が作り出す電磁場が
$$ \begin{align} F&=\frac{E'_i}{c}dy^i\wedge dy^0,\\ E'_i(y)&=\frac{e}{4\pi\epsilon_0}\frac{y^i}{r'^3},\\ r'&=\sqrt{(y^1)^2+(y^2)^2+(y^3)^2} \end{align} $$
であるとする。
これはCoulombの法則により発生する電場である。
このとき、上の変換式で $\mathbb{E},\mathbb{B}$ の'ありなしを入れ替えて、$\mathbb{v}$$-\mathbb{v}$ にすると、
$$ \begin{align} \mathbb{E}&=\frac{e}{4\pi\epsilon_0}\frac{\mathbb{x}-\mathbb{v}t}{((x^1-vt)^2+(x^2)^2+(x^3)^2)^{3/2}\sqrt{1-(v/c)^2}},\\ \mathbb{B}&=\frac{1}{c^2}\mathbb{v}\times\mathbb{E} \end{align} $$
となる。
第二式は $v=|\mathbb{v}|$ が小さいときは、近似的に電流が作り出す磁場の公式であるBiot-Savartの法則を与える。

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