速度限界と光速不変の原理

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 瞬間の観測者 $V\in T_pM$ と 任意の因果的ベクトル $X\in T_pM$ に対して、
$$ ||X^V||^2=\frac{c^2||X||^2}{g(X,V)^2}+c^2\le c^2 $$
となる。
これは任意の因果的世界線を任意の観測者が観測してもその空間的速さが光速 $c$ を超えないことを意味している。
さらに $X$ が光的であるときは、$||X^V||^2=c^2$ である。
これは実際の実験結果である光速不変の原理を表現している。

Lorentz座標 $\{x^0,x^1,x^2,x^3\}$ を適当に取れば、時空点 $p\in M$ における瞬間の観測者は $V=(\partial_0)_p$ と表される。
このとき、$X=\cosh\theta\partial_0+\sinh\theta\partial_1$ としてよい。
よって、$X^V=c\tanh\theta\partial_x$ を得る。
このことから、$V$ が観測する $X$$x$ 方向の速度(符号付き)を $v$ とすると、$\tanh\theta=\frac{v}{c}$ である。
$V$$X$ の時空でのなす角 $\theta$ が大きいほど、速さは光速 $c$ に近づく。

このように特殊相対性理論とNewton力学との顕著な違いの一つは物理的に意味のある最高速度は光速であり、その世界線は光的測地線となることである。
従って、空間的に離れた時空の任意の2点は因果的に関係することはできない。
Newton力学ではそれが可能な場合もある。

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