Minkowski時空

$$$$

特殊相対性理論の舞台となるのはNewton時空ではなく、Minkowski時空である。Minkowski時空の基本的な幾何学的性質や定義を述べる。

Minkowski時空

微分多様体 $\mathbb{R}^{4}$ の標準的な直交座標 $\{x^0,x^1,x^2,x^3\}$ に関して、
$$ \begin{aligned} g=-(dx^0)^2+(dx^1)^2+(dx^2)^2+(dx^3)^2 \end{aligned} $$
で与えられる擬リーマン計量を備えた擬リーマン多様体 $(\mathbb{R}^4,g)$$\mathbb{E}^{(1,3)}$ と表す。Minkowski時空(Minkowski spacetime)とは $\mathbb{E}^{(1,3)}$ と等長同型なローレンツ多様体 $M$ のことである。あるいは単連結完備平坦Lorentz多様体と定義してもよい。以下特に断らない限り $M$ でMinkowski時空を表す。

Minkowski時空の物理において重要なのが次の慣性座標系である。

Minkowski時空 $M$Lorentz座標または慣性座標(inertial coordinate)とは、等長写像 $\varphi:M\rightarrow \mathbb{E}^{(1,3)}(\simeq\mathbb{R}^4)$ のことである。

Newton時空でも慣性座標という言葉は使うことがあるので、ここでは誤解を避けるためLorentz座標という言葉を使う。

$\mathbb{E}^{(1,3)}$ の等長変換群はPoincare群と呼ばれる。$\mathbb{E}^{(1,3)}$ の正規直交座標系 $\{x^0,x^1,x^2,x^3\}$ を一つ任意に固定すると、Poincare群の元は $x^i\mapsto \Lambda^i_{\ j}x^j+a^i$ と表される。
ここで、$\Lambda=(\Lambda^i_{\ j})$$O(1,3):=\{\Lambda\in GL(4,\mathbb{R});\ {}^t\Lambda\mathbb{I}_{(1,3)}\Lambda=\mathbb{I}_{(1,3)}\}$ の元であり、$a={}^t(a^0,a^1,a^2,a^3)\in\mathbb{R}^4$ である。
ただし、
$$ \begin{align} \mathbb{I}_{(1,3)}=\begin{pmatrix} -1 & 0 & 0 & 0 \\ 0 & 1 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & 1 & 0 \\ 0 & 0 & 0 & 1 \\ \end{pmatrix} \end{align} $$
である。$O(1,3)$Lorentz群と呼ばれる。2つのLorentz座標系 $\varphi_i:M\rightarrow\mathbb{E}^{(1,3)},\ (i=1,2)$ に対して、この2つの座標系の間の座標変換 $\varphi_1^{-1}\circ\varphi_2$ は、明らかに $\mathbb{E}^{(1,3)}$ の等長変換である。

Minkowski時空の接ベクトルにはその因果的特性に応じて以下の名前がある。

Minkowski時空の接ベクトル $X$$||X||^2<0$ のとき時間的(timelike)$||X||^2>0$ のとき空間的(spacelike)$||X||^2=0$ のとき光的(null,lightlike)という。また空間的でないものを因果的(causal, non-spacelike)という。またLorentz座標 $\varphi$を一つ固定するとき、因果的な接ベクトル $X$ は、$-g(X,\partial_0)>0$ のとき未来向き(future-directed)といい、$-g(X,\partial_0)<0$ のとき過去向き(past-directed)であるという。

Lorentz座標 $\varphi$$M$ の接ベクトルに時間的向きを定義する。これを$\varphi$が誘導時間的向きと呼ぶ。以降は $M$ の時間的向きを一つ固定して議論する。

粒子の世界線は次のように定義される。

有質量粒子(massive particle)の世界線とは、timelikeな未来向きの区分的滑らかな曲線のことである。

無質量粒子(massless particle)の世界線とは、未来向きの区分的滑らかな光的測地線のことである。

慣性系の存在に関する基本的な性質は以下である。

任意の $p\in M$$T_pM$の任意の正規直交基底 $\{e_i\}$ に対して、Lorentz座標 $\{x^0,x^1,x^2,x^3\}$$\partial_i|_p=e_i,\ (0\le i\le 3)$ となるものがただ一つ存在する。

$\{e_i\}$ が定義する正規座標 $\xi$ は求める性質を持つ。同じ性質を持つLorentz座標 $\eta$ があれば、$\xi\circ\eta^{-1}$$\mathbb{R}^{(1,3)}$ の等長変換で、かつある正規直交基底を固定する。従って、$\xi=\eta$ である。

Mathpediaを支援する

現在のページ

Minkowski時空
前のページへ
7 / 15
次のページへ
前ページへ
特殊相対性理論の表紙
次ページへ