多重ゼータ値

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多重ゼータ値

$\newcommand{\reg}{\mathrm{reg}}$ $\newcommand{\hof}{\mathfrak{H}}$ $\newcommand{\ep}{\varepsilon}$ $\newcommand{\bk}{\boldsymbol{k}}$ $\newcommand{\bl}{\boldsymbol{l}}$ $\newcommand{\be}{\boldsymbol{e}}$ $\newcommand{\bf}{\boldsymbol{f}}$ $\newcommand{\emp}{\varnothing}$ $\newcommand{\II}{\mathcal{I}}$ $\newcommand{\sh}{\text{ш}}$ $\newcommand{\kak}[1]{\left(#1\right)}$ $\newcommand{\ue}{\uparrow}$ $\newcommand{\hidari}{\leftarrow}$ $\newcommand{\shita}{\downarrow}$ $\newcommand{\QQ}{\mathbb{Q}}$ $\newcommand{\RR}{\mathbb{R}}$ $\newcommand{\dep}{\mathrm{dep}}$ $\newcommand{\wt}{\mathrm{wt}}$












#scite は参照を宣言していません。



















(\mathbb{P}^{1}-\{0,\mu_{N},\infty\})$ - II-1 : Standard algebraic equations of prime weighted multiple harmonic sums and adjoint multiple zeta values |publisher=preprint |url=arXiv:1412.5099v3 }}




















$ |journal=J. Aust. Math. Soc. |volume=110 |pages=260-265 }}














$-有限多重ゼータ値」へ: ただし, $\mathcal{F}=\mathcal{A}$ or $\mathcal{F}=\mathcal{S}$ |journal=第26回整数論サマースクール報告集 }}















多重ゼータ値 (multiple zeta value, MZV) とは、多重級数

$$\zeta(k_1,\ldots,k_r)=\sum_{0 < n_1 < \cdots < n_r} \frac{1}{n_1^{k_1}\cdots n_r^{k_r}}$$

によって定義される実数 $\zeta(k_1,\ldots,k_r)$ のことである。解析的整数論に由来する概念でありながら、量子群や結び目理論、数論幾何との関係など、分野の垣根を超えた奥深い対象として、定義されてからわずか30年の間に膨大な数の研究が積み重ねられている。また、「有限」類似や「対称」類似などさまざまな変種も考察されている。関連する記事の一覧をここに挙げておく:

多重ゼータ値の定義と主予想

インデックスに関する記号と定義

定義 1 (インデックス)

正整数 $N$ に対し

$$ J_N=\underbrace{\mathbb{Z}_{\ge 0}\times\cdots\times\mathbb{Z}_{\ge 0}}_N,\quad I_N=\underbrace{\mathbb{Z}_{\ge 1}\times\cdots\times\mathbb{Z}_{\ge 1}}_N, $$ $$ I'_N=\{(k_1,\dots,k_N)\in I_N \mid k_N\geq 2\} $$ とおき、 $J_0=I_0=I'_0=\{\varnothing\}$ と定めておく。 さらに $$\mathcal{J}_0=\bigsqcup_{N=0}^{\infty}J_N\supset \mathcal{I}_0=\bigsqcup_{N=0}^{\infty}I_N\supset \mathcal{I}_0'=\bigsqcup_{N=0}^{\infty}I'_N, $$ $$ \mathcal{J}=\bigsqcup_{N=1}^{\infty}J_N\supset\mathcal{I}=\bigsqcup_{N=1}^{\infty}I_N\supset \mathcal{I}'=\bigsqcup_{N=1}^{\infty}I'_N$$ とおく。$\mathcal{I}_0$ の元を インデックス と呼び、$\II'_0$ の元を 許容インデックス という。$\bk=(k_1,\ldots,k_r)$ と $\bl=(l_1,\ldots,l_s)$ に対し、インデックス同士が並んだもの $(\bk,\bl)$ は成分をつなげた $(k_1,\ldots,k_r,l_1,\ldots,l_s)$ を意味するものとする。また、$\be,\bf\in J_r$ に対し成分ごとの和を $\be\oplus\bf$ で表すことにする。

同一の成分 $X$ を周期的に $r$ 個繰り返すインデックスを $\{X\}^r$ と書くことにする。例えば \[\{1\}^5=(1,1,1,1,1),\qquad \{1,2\}^3=(1,2,1,2,1,2)\] である。

定義 2 (深さ、重さ、高さ)

$\bk$ をインデックスとする。

  • $\bk$ の成分の個数を $\bk$ の 深さ (depth) といい、$\mathrm{dep}(\bk)$ で表す。
  • $\bk$ の成分の総和を $\bk$ の 重さ (weight) といい、$\mathrm{wt}(\bk)$ で表す。
  • $\bk$ の $2$ 以上の成分の個数を $\bk$ の 高さ (height) といい、$\mathrm{ht}(\bk)$ で表す。
    • $\emp$ は深さ $0$ かつ重さ $0$ のインデックスであるとし、これを空インデックス (empty index) という。
    • 重さ、深さ、高さがそれぞれ $k,r,s$ の許容インデックス全体の集合を $I_0(k,r,s)$ と書く。高さ、深さを指定しない場合しばしば $I_0(k,r),~I_0(k,*,s)$ と書く。
  • 深さ、重さの用語および記号は $\mathcal{J}$ の元に対しても用いることがある。
定義 3 (縮約インデックス)

二つのインデックス $\bk=(k_1,\ldots,k_r),~\bl=(l_1,\ldots,l_s)$ ($r,s\ge 1$)に対し, $\bk$ と同じ深さのインデックス $I_{\bk,\bl}=(i_1,\ldots,i_r)$ であって、条件

  • $i_1 < \cdots < i_r$
  • $i_r=s$
  • 任意の $j=1,\ldots,r$ に対し $k_j=\sum_{n=1+i_{j-1}}^{i_j} l_n$

を満たすものが存在するとき $\bk$ を $\bl$ の縮約インデックス (contraction index) といい、$\bk\preceq\bl$ と書く。直感的には「縮約インデックスとは元のインデックスの隣り合う成分をいくつか足したもの」であると思うことができ、例えば $(3)\preceq (2,1),(1,2)\preceq (1,1,1)$ が成り立つ。

定義 4 (矢印記法)

インデックス $\bk=(k_1,\ldots,k_r)$ に対し

  • $\bk_{\rightarrow}=(k_1,\ldots,k_r,1)$
  • $\bk_{\ue}=(k_1,\ldots,k_r+1)$
  • $\bk_{\shita}=(k_1,\ldots,k_r-1)$
  • ${}_{\hidari}\bk=(1,k_1,\ldots,k_r)$
  • ${}_{\ue}\bk=(1+k_1,\ldots,k_r)$
  • ${}_{\shita}\bk=(-1+k_1,\ldots,k_r)$

と書く。空インデックスに対しては

  • $\emp_{\rightarrow}={}_{\hidari}\emp=(1)$
  • $\emp_{\ue}=\emp_{\shita}={}_{\ue}\emp={}_{\shita}\emp=\emp$

と定める。また、矢印の冪はその個数分矢印を並べることを表す。

定義 5 (双対インデックス)

$\bk$ を許容インデックス、$s$ をその高さとする。このとき $$\bk=(\{1\}^{a_1-1},b_1+1,\ldots,\{1\}^{a_s-1},b_s+1)$$ を満たす正整数 $a_1,b_1,\ldots,a_s,b_s$ が一意に存在する。これを用いて定まる許容インデックス $$\bk^{\dagger}=(\{1\}^{b_s-1},a_s+1,\ldots,\{1\}^{b_1-1},a_1+1)$$ を $\bk$ の双対インデックス (dual index) という。

定義 6 (逆転インデックス)

インデックス $\bk=(k_1,\ldots,k_r)$ に対し $\overleftarrow{\bk}=(k_r,\ldots,k_1)$ を $\bk$ の逆転インデックス (reverse index) という。

定義 7 (Hoffman双対インデックス)

インデックス $\bk$ に対し $\bk^{\vee}=\overleftarrow{((\bk_{\ue})^{\dagger})_{\shita}}$ を $\bk$ のHoffman双対インデックス (Hoffman dual index) という。

定義 8 (除去インデックス)

インデックス $\bk=(k_1,\ldots,k_r)$ と整数 $0\le i\le r$ に対し

  • $\bk_{[i]}=(k_1,\ldots,k_i)$
  • $\bk^{[i]}=(k_{i+1},\ldots,k_r)$

とおく。ここで $\bk_{[0]}=\bk^{[r]}=\emp$ である。

多重ゼータ値の定義

定義 9 (多重ゼータ値)

許容インデックス $\bk=(k_1,\ldots,k_r)$ に対し

$$\zeta(\bk)=\sum_{0 < n_1 < \cdots < n_r} \frac{1}{n_1^{k_1}\cdots n_r^{k_r}}$$

とおく。$\bk$ が許容的であることからこの級数は収束し、実数 $\zeta(\bk)$ を 多重ゼータ値 (multiple zeta values, MZV) と呼ぶ。

  • 必要ならば $\zeta(\varnothing)=1$ と定める。
  • 変数の順番を逆にした$$\zeta(k_1,\ldots,k_r)=\sum_{n_1>\cdots>n_r>0} \frac{1}{n_1^{k_1}\cdots n_r^{k_r}}$$を定義として採用する流儀もあり、この場合の収束条件は $k_1\ge 2$ である。

反復積分表示

$i=0,1$ に対し $$\omega_0(t)=\frac{1}{t},\qquad\omega_1(t)=\frac{dt}{1-t}$$ とおき、$\varepsilon_1,\ldots,\varepsilon_k\in\{0,1\}$ ($k\ge 1$) に対し $$I(\varepsilon_1,\ldots,\varepsilon_k)=\int_{0<t_1<\cdots<t_k<1} \prod_{i=1}^k \omega_i(t_i)$$ とおく。このとき許容インデックス $(k_1,\ldots,k_r)\in\mathcal{I}'$ に対し $$\zeta(k_1,\ldots,k_r)=I(1,\underbrace{0,\ldots,0}_{k_1-1},\ldots,1,\underbrace{0,\ldots,0}_{k_r-1})$$ が成り立つ。この表示を多重ゼータ値の 反復積分表示 という。

証明

等比級数を順番に計算する。一般形は煩雑になるので一例として $\zeta(2,3)$ の場合を証明する: $$ \begin{aligned} I(1,0,1,0,0)&=\int_{0<t_1<t_2<t_3<t_4<t_5<1} \frac{dt_1}{1-t_1}\frac{dt_2}{t_2}\frac{dt_3}{1-t_3}\frac{dt_4}{t_4}\frac{dt_5}{t_5}\\&=\sum_{0<n_1}\int_{0<t_1<t_2<t_3<t_4<t_5<1} t_1^{n_1-1}\,dt_1\frac{dt_2}{t_2}\frac{dt_3}{1-t_3}\frac{dt_4}{t_4}\frac{dt_5}{t_5}\\&=\sum_{0<n_1}\frac{1}{n_1}\int_{0<t_2<t_3<t_4<t_5<1} t_2^{n_1-1}\,dt_2\frac{dt_3}{1-t_3}\frac{dt_4}{t_4}\frac{dt_5}{t_5}\\&=\sum_{0<n_1}\frac{1}{n_1^2}\int_{0<t_3<t_4<t_5<1} \frac{t_3^{n_1-1}}{1-t_3}\,dt_3\frac{dt_4}{t_4}\frac{dt_5}{t_5}\\&=\sum_{0<n_1}\frac{1}{n_1^2}\sum_{n_1<n_2}\int_{0<t_3<t_4<t_5<1} t_3^{n_2-1}\,dt_3\frac{dt_4}{t_4}\frac{dt_5}{t_5}\\&=\sum_{0<n_1<n_2}\frac{1}{n_1^2n_2}\int_{0<t_4<t_5<1} t_4^{n_2-1}\,dt_4\frac{dt_5}{t_5}\\&=\sum_{0<n_1<n_2}\frac{1}{n_1^2n_2^2}\int_{0<t_5<1} t_5^{n_2-1}\,dt_5\\&=\sum_{0<n_1<n_2}\frac{1}{n_1^2n_2^3}=\zeta(2,3). \end{aligned} $$ 一般の場合もこれと同様に計算される。

空間についての予想

$2$ 以上の整数 $k$ に対し \[\mathcal{Z}_k=\mathrm{span}_{\mathbb{Q}}\{\zeta(\bk)\mid \mathrm{wt}(\bk)=k\}\] とおく。つまり、重さ $k$ の許容インデックスから生成される多重ゼータ値が $\mathbb{Q}$ 上張る空間が $\mathcal{Z}_k$ である。また、便宜上 $\mathcal{Z}_0=\mathbb{Q},~\mathcal{Z}_1=\{0\}$ としておき、 \[\mathcal{Z}=\sum_{k=0}^{\infty}\mathcal{Z}_{k}\] と定める。

予想 10 (Zagierの次元予想)

形式的冪級数としての等式 $$\sum_{k=0}^{\infty} \left(\mathrm{dim}_{\mathbb{Q}}\mathcal{Z}_k\right)t^k=\frac{1}{1-t^2-t^3}$$ が成り立つであろう。

  • これは次のように言い換えられる: 数列 $\{d_k\}_{k\ge 0}$ を$$d_0=1,\qquad d_1=0,\qquad d_2=1, \qquad d_{k+3}=d_{k+1}+d_k\quad(k\ge 0)$$で定めると$$\mathrm{dim}_{\mathbb{Q}}\mathcal{Z}_k=d_k$$であろう。
  • Deligne-Goncharov1、Terasoma2、Goncharov3がモチーフ論を用いることで片側の不等式 $\mathrm{dim}_{\mathbb{Q}}\mathcal{Z}_k\le d_k$ を証明している。
予想 11 (Goncharov1Conjecture 1.1 (a))

$\mathcal{Z}$ の定義の右辺は直和であろう。

予想 12 (Hoffman1Conjecture C)

整数 $k\ge 2$ に対し \[\{\zeta(k_{1},\ldots,k_{r})\mid k_{1},\ldots,k_{r}\in\{2,3\},~1\le r\le k-1\}\] は $\mathcal{Z}_{k}$ の基底となるであろう。

  • ここから独立性を除いて、上の集合の元 (ときおりHoffman基底と呼ばれる) が $\mathbb{Q}$ ベクトル空間として $\mathcal{Z}_{k}$ を生成することはBrown4が示している。

多重ゼータ値の関係式

動機

整数 $k\ge 2$ に対し、重さ $k$ の許容インデックスの個数は $2^{k-2}$ 個ある。これに比べると、Zagierの次元予想における予想的な次元 $d_k$ は一般に極めて小さく、予想が正しければその分だけ多重ゼータ値の間に線型関係式が成り立つということになる。

  • 具体例として、重さ $3$ の許容インデックスは $(3),~(1,2)$ の二つであるが、$d_3=1$ なので、Zagier予想が正しければ $\zeta(3)$ と $\zeta(1,2)$ は有理数倍で写り合うということになる。これはEulerによって $\zeta(3)=\zeta(1,2)$ という等式の形で示されている。

Hoffman代数による定式化

以後Hoffman代数の記号を用いる。

evaluation map

線型写像 $Z:\mathfrak{H}^0\to\mathbb{R}$ を $$Z(1)=1,\qquad Z(yx^{k_1-1}\cdots yx^{k_r-1})=\zeta(k_1,\ldots,k_r)$$ で定める。ここで $(k_1,\ldots,k_r)\in\mathcal{I}'$ である。また、インデックスを変数にとる写像 $\zeta$ をインデックスの線型和に対して $\QQ$ 線型に拡張しておく。

複シャッフル関係式

調和関係式

多重ゼータ値の級数による定義と調和積の定義より、調和関係式 (harmonic relation) が得られる。

定理 13 (調和関係式)

$Z$ は調和積に関して準同型である: 即ち許容インデックス $\bk,\bl$ に対し \[\zeta(\bk\ast\bl)=\zeta(\bk)\zeta(\bl)\] が成り立つ。

シャッフル関係式

調和関係式と同様、多重ゼータ値の反復積分表示とシャッフル積の定義から シャッフル関係式 (shuffle relation) が得られる。

定理 14 (シャッフル関係式)

$Z$ はシャッフル積に関して準同型である: 即ち許容インデックス $\bk,\bl$ に対し \[\zeta(\bk\sh\bl)=\zeta(\bk)\zeta(\bl)\] が成り立つ。

有限複シャッフル関係式

調和関係式シャッフル関係式より次の定理が得られる。これを 複シャッフル関係式 (double shuffle relation) という。

定理 15 (複シャッフル関係式)

任意の許容インデックス $\bk,\bl$ に対し \[\zeta(\bk\ast\bl)=\zeta(\bk\sh\bl)\] が成り立つ。

正規化

本節では断りなく $\bullet$ と書けば $\ast,\sh$ を同時に意味するものとする。

正規化多項式

定義 16 (正規化多項式; Ihara-Kaneko-Zagier1Proposition 1)

Hoffman代数: 命題5Hoffman代数: 命題11 によって任意のインデックス $\bk$ に対しある非負整数 $n$ と $\hof^0$ の元 $w_i$ が存在し \[z_{\bk}=\sum_{i=0}^n w^{\bullet}_i\bullet\underbrace{y\bullet\cdots\bullet y}_i\] となる。これを用いて \[\zeta^{\bullet}(\bk;T)=\sum_{i=0}^n Z(w^{\bullet}_i)T^i\] とおき、$\bullet$ に応じて 調和正規化多項式 または シャッフル正規化多項式 と呼ぶ。$T=0$ のときしばしば $\zeta^{\bullet}(\bk)$ と書き、(調和/シャッフル) 正規化多重ゼータ値 と呼ぶ。

  • 対応 $z_{\bk}\mapsto\zeta(\bk;T)$ から定まる $\QQ$ 線形写像 $\hof^1\to\RR[T]$ を $Z^{\bullet}_T$ と書く。
  • 定義より $\zeta^{\bullet}(\bk)=(Z\circ\reg_{\bullet})(z_{\bk})$ が成り立つ。
  • $\zeta^{\bullet}(\bk;T)$ は $\bullet$ に関して準同型となる。言い換えれば任意のインデックス $\bk,\bl$ に対し \[\zeta^{\bullet}(\bk\bullet\bl;T)=\zeta^{\bullet}(\bk;T)\zeta^{\bullet}(\bl;T)\] が成り立つ。
定理 17 (Ihara-Kaneko-Zagier1)

正整数 $M$ とインデックス $\bk=(k_1,\ldots,k_r)$ に対し \[\zeta_{<M}(\bk)=\sum_{0<n_1<\cdots<n_r<M}\frac{1}{n_1^{k_1}\cdots n_r^{k_r}}\] とおくと、任意のインデックス $\bk$ に対しある $J>0$ があり \[\zeta_{<M}(\bk)=\zeta^{\ast}(\bk;\log M+\gamma)+O(M^{-1}\log^J M)\qquad (M\to\infty)\] が成り立つ。ここで $\gamma$ はEuler定数 $\lim_{M\to\infty} (\zeta_{<M}(1)-\log M)$ である。

定理 18 (Ihara-Kaneko-Zagier1)

実数 $z$ とインデックス $\bk=(k_1,\ldots,k_r)$ に対し \[\mathrm{Li}_{\bk}(z)=\sum_{0<n_1<\cdots<n_r}\frac{z^{n_r}}{n_1^{k_1}\cdots n_r^{k_r}}\] とおくと、任意のインデックス $\bk$ に対しある $J>0$ があり \[\mathrm{Li}_{\bk}(z)=\zeta^{\sh}(\bk;-\log(1-z))+O((1-z)\log^J (1-z))\qquad (z\to 1)\] が成り立つ。

注意 19

実数 $z$ と $\ep_1,\ldots,\ep_k\in\{0,1\}$に対し \[I_z(\ep_1,\ldots,\ep_k)=\int_{0<t_1<\cdots<t_k<z} \prod_{i=1}^k (-1)^{\ep_i}\frac{dt_i}{t-\ep_i}\] とおくと、$|z|<1$ の範囲において \[\mathrm{Li}_{\bk}(z)=I_z(1,\underbrace{0,\ldots,0}_{k_1-1},\ldots,1,\underbrace{0,\ldots,0}_{k_r-1})\] が成り立つことから、定理 18 はこの形の反復積分の発散に関する定理ということになる: 即ち、$w_0=x,~w_1=y$ と書けばシャッフル正規化多項式は $w=w_{a_1}\cdots w_{a_k}\in\hof^1$ ($a_1=1$ であり $i\ge 2$ では $a_i\in\{0,1\}$) に対し \[\lim_{z\to 1}(Z^{\sh}_{-\log(1-z)}(w)-I_z(a_1,\ldots,a_k)=0\] を満たすような多項式 $Z^{\sh}_T(w)$ のことであると考えることができる (このとき $Z^{\sh}_T(z_{\bk})=\zeta^{\sh}(\bk;T)$)。一方で、より一般に実数 $z,z'$ に対し \[I_{z,z'}(\ep_1,\ldots,\ep_k)=\int_{z<t_1<\cdots<t_k<z'} \prod_{i=1}^k (-1)^{\ep_i}\frac{dt_i}{t-\ep_i}\] とおき、任意の「$a_1=1$ とは限らない」$w=w_{a_1}\cdots w_{a_k}\in\hof$ に対し \[\lim_{\substack{z\to 0\\z'\to 1}}(Z^{\sh}_{-\log z,-\log(1-z')}(w)-I_{z,z'}(a_1,\ldots,a_k))=0\] を満たすような二変数多項式 $Z^{\sh}_{S,T}(w)$ も考えることができる。これもシャッフル正規化多項式の仲間に入れることにすると一部の理論が上手くいくことが知られており、例えばKZ結合子の係数はこの形の正規化まで含めて考えることで統一的に記述できる。

正規化定理

$\RR$-線形写像 $\rho\colon\RR[T]\to\RR[T]$ を \[\exp(TX)\Gamma_0(-X)=\sum_{n=0}^{\infty}\rho(T^n)\frac{X^n}{n!}\] によって定める。ここで $\Gamma_0$ は形式的冪級数 \[\Gamma_0(X)=\exp\left(\sum_{k=2}^{\infty}\frac{\zeta(k)}{k}X^k\right)\] とした ($\Gamma$ という記号を用いたが、実際にガンマ関数と本質的に一致する $\Gamma_0(X)=\exp(-\gamma X)\Gamma(1-X)$ ことがわかる)。

定理 20 (正規化定理; Ihara-Kaneko-Zagier1Theorem 1)

任意のインデックス $\bk$ に対し \[\zeta^{\sh}(\bk;T)=\rho(\zeta^{\ast}(\bk;T))\] が成り立つ。

定理 21 (正規化複シャッフル関係式; Ihara-Kaneko-Zagier1Theorem 2)

任意のインデックス $\bk$ と許容インデックス $\bl$ に対し \[\zeta^{\bullet}(\bk\ast\bl)=\zeta^{\bullet}(\bk\sh\bl)\] が成り立つ。

予想 22 (Ihara-Kaneko-Zagier1Theorem 1)

多重ゼータ値の間に成り立つすべての $\QQ$ 線形関係式は正規化複シャッフル関係式から従うであろう。

  • 関係式族が正規化複シャッフル関係式から導かれるという多くの結果(たとえばOhno-Zagierの定理(定理 )、導分関係式(定理 )、和公式(定理 ))があるが、双対性が含まれているかどうかは有名な未解決問題である。

正規化多項式の性質

命題 23 (Ihara-Kaneko-Zagier1Proposition 10)

任意の許容インデックス $\bk$ と非負整数 $n$ に対し \[\zeta^{\bullet}(\bk,\{1\}^n;T)=\sum_{i=0}^n \zeta^{\bullet}(\bk,\{1\}^{n-i})\frac{T^i}{i!}\] が成り立つ。

証明

Hoffman代数: 命題6 (resp. Hoffman代数: 命題13) に写像 $Z^{\ast}$ (resp. $Z^{\sh}$) を適用すればわかる。

調和正規化多重ゼータ値は定義より調和関係式を満たすため、Hoffman代数での対称和公式より \[\sum_{\sigma\in S_r}\zeta^{\ast}(k_{\sigma(1)},\ldots,k_{\sigma(r)})=\sum_{B_1,\ldots,B_l}(-1)^{r-l}\prod_{i=1}^l(|B_i|-1)!\zeta^{\ast}\left(\sum_{j\in B_i}k_j\right)\] を満たす ($B_1,\ldots,B_l$ は $\{1,\ldots,r\}$ の分割を渡る)。 一方で、一般には調和関係式を満たさない $\zeta^{\sh}$ に対してもMachideが対称和公式の類似物を発見している。

定理 24 (Machide1Theorem 1.2)

インデックス $\bk=(k_1,\ldots,k_r)$ に対し \[\sum_{\sigma\in S_r}\zeta^{\sh}(k_{\sigma(1)},\ldots,k_{\sigma(r)})=\sum_{B_1,\ldots,B_l}(-1)^{r-l}\prod_{i=1}^l\chi(\bk;B_i)(|B_i|-1)!\zeta^{\sh}\left(\sum_{j\in B_i}k_j\right)\] が成り立つ。ここで $B_1,\ldots,B_l$ は $\{1,\ldots,r\}$ の分割全体を渡り、 \[\chi(\bk;B_i)=\begin{cases} 0 & (|B_i|>1,~j\in B_i\implies k_j=1)\\ 1 & (\text{otherwise})\end{cases}\] とおいた。

Kawashima関係式

定義 25 (Kawashima関数)

$\bk\in\II$ に対しKawashima関数 $F_{\bk}(z)$ を $$F_{\bk}(z)=\sum_{n=1}^{\infty} (-1)^{n-1}\kak{\sum_{0<n_1\le\cdots\le n_s\le n} \frac{1}{n_1^{l_1}\cdots n_r^{l_s}}}\binom{z}{n}$$ と定める。ここで $\binom{z}{n}=z\cdots(z+n-1)/n!$ は二項係数であり $(l_1,\ldots,l_s)$ は $\bk$ のHoffman双対インデックスとした。

定理 26 (Kawashima関係式; Kawashima1Theorem 5.3)

$\bk,\bl\in\II$ に対し $$F_{\bk\bar{\ast}\bl}(z)=F_{\bk}(z)F_{\bl}(z)$$ が成り立つ。ここで $\bar{\ast}$ は多重ゼータスター値に対する調和積である。

和公式

詳細は 和公式(多重ゼータ値) を参照。

定理 27 (和公式; Granville1Proposition, Zagier)

正整数 $k,~r$ ($k>r$) に対し $$\sum_{\bk\in I_0(k,r)}\zeta(\bk)=\zeta(k)$$ である。

巡回和公式

定理 28 (巡回和公式; Hoffman-Ohno1Cyclic sum theorem)

いずれかの成分が $2$ 以上であるインデックス $\bk$ に対し $$\sum_{i=1}^r\zeta(\bk^{[i]},\bk_{[i-1]},k_i+1)=\sum_{i=1}^r\sum_{j=0}^{k_i-2}\zeta(j+1,\bk^{[i]},\bk_{[i]},k_i-j)$$ が成り立つ。右辺の内側の和は $k_i=1$ のとき $0$ とみなす。

双対性

定理 29 (双対性)

任意の許容インデックス $\bk$ に対し $$\zeta(\bk)=\zeta(\bk^{\dagger})$$ が成り立つ。

  • Hoffman代数を用いれば、双対性は任意の $w\in\hof^0$ に対し $\tau(w)-w\in\mathrm{Ker}~Z$ であるということができる。ここで $\tau$ は $x,y$ を入れ替える $\hof$ 上の反自己同型である。

Ohno関係式

定理 30 (Ohno関係式; Ohno1Theorem 1)

非負整数 $h$ と許容インデックス $\bk$ に対し $$\sum_{\substack{\be\in\mathbb{Z}_{\ge 0}^{\mathrm{dep}(\bk)}\\\mathrm{wt}(\be)=h}}\zeta(\bk\oplus\be)=\sum_{\substack{\bf\in\mathbb{Z}_{\ge 0}^{\mathrm{dep}(\bk^{\dagger})}\\\mathrm{wt}(\bf)=h}}\zeta(\bk^{\dagger}\oplus\bf)$$ が成り立つ。

定理 31 (Ohno型関係式; Horikawa-Murahara-Oyama1Theorem 2.5)

非負整数 $h$ とインデックス $\bk=(k_1,\ldots,k_r)$ に対し $$\sum_{\substack{\be\in\mathbb{Z}_{\ge 0}^{\mathrm{dep}(\bk)}\\\mathrm{wt}(\be)=h}}\zeta((\bk+\be)_{\ue})=\sum_{\substack{\bf\in\mathbb{Z}_{\ge 0}^{\mathrm{dep}(\bk^{\vee})}\\\mathrm{wt}(\bf)=h}}\zeta(((\bk^{\vee}+\bf)^{\vee})_{\ue})$$ が成り立つ。

定理 32 (スターOhno型関係式; Hirose-Imatomi-Murahara-Saito1Theorem 1.5)

非負整数 $h$ と許容インデックス $\bk=(k_1,\ldots,k_r)$ に対し $$\sum_{\substack{\be\in\mathbb{Z}_{\ge 0}^{\mathrm{dep}(\bk)}\\\mathrm{wt}(\be)=h}}b_1(\bk;\be)\zeta^{\star}(\bk\oplus\be)=\sum_{\substack{\bf\in \mathbb{Z}_{\ge 0}^{\mathrm{dep}(\bk^{\dagger})}\\\mathrm{wt}(\bf)=h}}\zeta((\bk^{\dagger}\oplus\bf)^{\dagger})$$ が成り立つ。ここで $$b_1(k_1,\ldots,k_r;e_1,\ldots,e_r)=\prod_{i=1}^r\binom{k_i+e_i+\delta_{i,1}-2}{e_i}$$ とおいた。

定理 33 (二重Ohno関係式; Hirose-Murahara-Onozuka-Sato1Theorem 1.4)

非負整数 $d,n_0,\ldots,n_{2d}$ に対し $$\bk=(\{2\}^{n_0},1,\{2\}^{n_1},3,\ldots,\{2\}^{n_{2d-2}},1,\{2\}^{n_{2d-1}},3,\{2\}^{n_{2d}})$$ とおくと、非負整数 $h_1,h_2$ に対し $$\sum_{\substack{\be_1,\be_2\in \mathbb{Z}_{\ge 0}^{\mathrm{dep}(\bk)}\\\mathrm{wt}(\be_1)=h_1\\\mathrm{wt}(\be_2)=h_2}}\zeta(\bk\oplus\be_1\oplus\be_2)=\sum_{\substack{\bf_1,\bf_2\in \mathbb{Z}_{\ge 0}^{\mathrm{dep}(\bk^{\dagger})}\\\mathrm{wt}(\bf_1)=h_1\\\mathrm{wt}(\bf_2)=h_2}}\zeta(\bk^{\dagger}\oplus\bf_1\oplus\bf_2)$$ が成り立つ。

定理 34 (導分関係式; Ihara-Kaneko-Zagier1Corollary 6)

正整数 $h$ に対し $\mathfrak{H}$ の導分 $\partial_h$ を $$\partial_h(x)=y(y+x)^{h-1}x,\qquad\partial_h(y)=-y(y+x)^{h-1}x$$ とおくと、任意の $w\in\mathfrak{H}^0$ に対し $$(Z\circ\partial_h)(w)=0$$ となる。

  • Ohno関係式の右辺に双対性を適用することで \[\sum_{\substack{\be\in\mathbb{Z}_{\ge 0}^{\mathrm{dep}(\bk)}\\\mathrm{wt}(\be)=h}}\zeta(\bk\oplus\be)=\sum_{\substack{\bf\in\mathbb{Z}_{\ge 0}^{\mathrm{dep}(\bk^{\dagger})}\\\mathrm{wt}(\bf)=h}}\zeta((\bk^{\dagger}\oplus\bf)^{\dagger})\] という等式が得られるが、これと導分関係式、Ohno型関係式はいずれも同値であることが知られている。

積分級数等式

2色半順序集合

有限半順序集合 $(X,\prec)$ に対し写像 $\delta:X\to\{0,1\}$ を labeling map といい、組 $(X,\prec,\delta)$ を 2色半順序集合 (2-labeled partially oredered set, 2-poset) という。

Yamamoto積分

2-poset $(X,\prec,\delta)$ に付随した積分を $$I(X)=\int_{\Delta(X)} \prod_{x\in X}\omega_{\delta(x)}(t_x)$$ で定める。ここで $$\Delta(X)=\{(t_1,\ldots,t_{|X|}\in(0,1)^{|X|}\mid x\prec y\Rightarrow t_x<t_y\}$$ である。

Yamamoto積分の基本操作

  • 半順序集合 $X$ の比較不可能な元 $a,b$ に対し、$a\prec b$ を追加した新たな半順序集合を $X_a^b$ と書くことにすると、任意の比較不可能な $X$ の元の対 $a,b$ に対し$$I(X)=I(X_a^b)+I(X_b^a)$$である。
  • 2-poset $X$ に対し、新しい半順序 $x\prec^{\dagger}y\Leftrightarrow y\prec x$ と新しいlabeling map $\delta^{\dagger}(x)=1-\delta(x)$ を備えた2-poset $(X,\prec^{\dagger},\delta^{\dagger})$ を $X^{\dagger}$ と書くと、$$I(X)=I(X^{\dagger})$$ である。

Kaneko-Yamamotoの積分級数等式

インデックス $\bk=(k_1,\ldots,k_r),~\bl=(l_1,\ldots,l_s)$ に対し2-poset $X_{\bk;\bl}$ を次で定める:

  • 台集合は $X=\{x_i\mid 1\le i\le k\}\cup\{y_{i,k_j}\mid 1\le j\le s,~1\le i\le k_j\}$ である。ここで $\bk$ の重さを $k$ とした。
  • 半順序 $\prec$ を次の要件を満たすよう定める:
    • 任意の $1\le i\le k-1$ に対し $x_i\prec x_{i+1}$
    • $x_k\prec y_{1,l_s}$
    • 任意の $1\le j\le s$ と $1\le i\le l_j-1$ に対し $y_{i,l_j}\prec y_{i+1,l_j}$
    • 任意の $1\le j\le s-1$ に対し $y_{1,l_j}\prec y_{l_{j+1},l_{j+1}}$
  • labeling mapを次の要件を満たすよう定める:
    • $1\le i\le k$ に対し $\displaystyle\delta(x_i)=\begin{cases}1 & (i\in \{1,k_1+1,\ldots,k_{r-1}+1\})\\0 & (i\notin \{1,k_1+1,\ldots,k_{r-1}+1\})\end{cases}$
    • $1\le j\le s$ と $1\le i\le k_j$ に対し $\displaystyle\delta(y_{i,l_j})=\begin{cases}1 & (i=1)\\0 & (i\neq 1)\end{cases}$

以上の条件のもと、インデックス $\bk=(k_1,\ldots,k_r),~\bl=(l_1,\ldots,l_s)$ に対し $$\zeta((k_1,\ldots,k_{r-1})\ast(l_1,\ldots,l_{s-1}),k_r+l_s)=I(X_{\bk;\bl})$$ が成り立つ。この等式を 積分級数等式 (integral-series identity) という5(Theorem 4.1)。

その他の関係式・特殊値

定理 35 (Euler)

正整数 $k$ に対し \[\zeta(2k)=\frac{(-1)^{k+1}(2\pi)^{2k}B_{2k}}{2(2k)!}\] が成り立つ。

定理 36 (Li-Qin1Theorem 3.15 (3.26))

正整数 $k,r$ に対し \[\zeta(\{2k\}^r)=(-1)^{rk+r}\sum_{\substack{n_1,\ldots,n_k\ge 0\\ n_1+\cdots+n_k=rk}}\left(\prod_{j=1}^k\frac{\exp(2\pi\sqrt{-1}jn_j/k)}{(2n_i+1)!}\right)\pi^{2rk}\] が成り立つ。

  • とくに $k=1$, $k=2$ として

\[\zeta(\{2\}^r)=\frac{\pi^{2r}}{(2r+1)!},\qquad \zeta(\{4\}^r)=\frac{2^{2r+1}\pi^{4r}}{(4r+2)!}\] である。Bowman-Bradley6には、後者の式は とともにZagier7が予想しBroadhurstが解いたとある。


定理 37 (Ohno-Zagier1Theorem 1)

冪級数の等式 \[\sum_{k,r,s\ge 0}\left(\sum_{\bk\in I_{0}(k,r,s)}\zeta(\bk)\right)x^{k-r-s}y^{r-s}z^{s-1}=\frac{1}{xy-z}\left(1-\frac{\Gamma_0(x)\Gamma_0(y)}{\Gamma_0(\alpha)\Gamma_0(\beta)}\right)\] が成り立つ。ここで $\alpha,\beta$ は \[\alpha+\beta=x+y,\qquad \alpha\beta=z\] から決まる値である。


定理 38 (Le-Murakamiの関係式; Le-Murakami1(2))

正整数 $k,s$ に対し \[I_0(k,-,s)=\{\bk\in\II'_0\mid\wt(\bk)=k,~\mathrm{ht}(\bk)=s\}\] とおくと $1\le s\le k$ に対し \[\sum_{\bk\in I_0(2k,-,s)}(-1)^{\dep(\bk)}\zeta(\bk)=\frac{(-1)^k}{(2k+1)!}\sum_{i=0}^{k-s}\binom{2k+1}{2i}(2-2^{2i})B_{2i}\pi^{2k}\] が成り立つ。


定理 39 (Bowman-Bradley1Corollary 5.1)

非負整数の組 $(k_1,k_2)\neq 0$ に対し \begin{align} \sum_{\substack{n_1,\ldots,n_{2k_1+1}\ge 0\\ n_1+\cdots+n_{2k_1+1}=k_2}}\zeta(\{2\}^{n_1},1,\{2\}^{n_2},3,\ldots,\{2\}^{n_{2k_1-1}},1,\{2\}^{n_{2k_1}},3,\{2\}^{n_{2k_1+1}})=\binom{2k_1+k_2}{k_2}\frac{\pi^{4k_1+2k_2}}{(2k_1+1)(4k_1+2k_2+1)!} \end{align} が成り立つ。


40 (Borwein-Bradley-Broadhurst-Lisonek1Theorem 1)

正整数 $r$ に対し \[\zeta(\{1,3\}^r)=\frac{2\pi^{4r}}{(4r+2)!}\] が成り立つ。


定理 41 (Bowman-Bradley1Theorem 1)

正整数 $r$ に対し \[\zeta(\{3,1\}^{r},3)=\sum_{i=0}^r \left(-\frac{1}{4}\right)^i\zeta(4i+3)\zeta(\{1,3\}^{r-i})\] が成り立つ。


定理 42 (Bowman-Bradley1Theorem 2)

正整数 $r$ に対し \[\zeta(\{3,1\}^{r},2)=\frac{1}{4^r}\sum_{i=0}^r(-1)^i\zeta(\{4\}^{r-i})\left((4i+1)\zeta(4i+2)-4\sum_{j=1}^i\zeta(4j-1)\zeta(4i-4j+3)\right)\] が成り立つ。


定理 43 (Zagier1Theorem 1)

非負整数 $k_1$, $k_2$ に対し \[\zeta(\{2\}^{k_1},3,\{2\}^{k_2})=2\sum_{i=1}^{k_1+k_2+1}(-1)^i\left(\binom{2i}{2k_1+2}-\left(1-\frac{1}{2^{2i}}\right)\binom{2i}{2k_2+1}\right)\zeta(\{2\}^{k_1+k_2-i+1})\zeta(2i+1)\] が成り立つ。

  • これが正規化複シャッフル関係式 (定理 21) から従うかどうかは未解決問題である8(Conjecture 3.34)。


定理 44 (Zagier1Proposition 7)

正の奇数 $k$ と和が $k$ になる正整数 $k_1$, $k_2$ ($k_2\ge 2$) に対し \[\zeta(k_1,k_2)=(-1)^{k_1}\sum_{i=0}^{\frac{k-3}{2}}\left(\binom{k-2i-1}{k_1-1}+\binom{k-2i-1}{k_2-1}-\delta_{k_2,2i}+(-1)^{k_1}\delta_{i,0}\right)\zeta(2i)\zeta(k-2i)\] が成り立つ。ここで $\zeta(0)=-1/2$ であるとした。


定理 45 (Hirose-Sato1Theorem 1)

非負整数 $m,n,s$ に対し \[\zeta(\{2\}^m,3,\{2\}^n,1,\{2\}^{s+1})=\zeta(\{2\}^{m+n+s+3})+\zeta(\{2\}^s,3,\{2\}^m,3,\{2\}^n)+\zeta(\{2\}^m,3,\{2\}^s,3,\{2\}^n)\] が成り立つ。


予想 46 (Borwein-Bradley-Broadhurst1(18))

非負整数 $k_1,k_2$ に対し \[\zeta(\{\{2\}^{k_1},1,\{2\}^{k_1},3\}^{k_2},\{2\}^{k_1})=\frac{\pi^{4k_1k_2+2k_1+4k_2}}{(2k_2+1)(4k_1k_2+2k_1+4k_2+1)!}\] が成り立つ。

  • この予想はHirose-Sato9block shuffle identity というものの帰結として証明を宣言している (未出版)。

情報源

  1. ^  P. Deligne and A. B. Goncharov. (2005) "Groupes fondamentaux motiviques de Tate mixte". Ann, Sci. École Norm. Sup. 38 : 1-56.
  2. ^  T. Terasoma. (2002) "Mixed Tate motives and multiple zeta values". Invent. Math. 149 : 339-369.
  3. ^  "Periods and mixed motives". preprint (2002) <[arXiv:math/0202154 arXiv:math/0202154]> Accessed: {{{accessed}}}
  4. ^  F. C. S. Brown. (2012) "Mixed Tate motives over $\mathbb{Z}$". Ann. of Math. 175 : 949-976.
  5. ^  M. Kaneko and S. Yamamoto. (2018) "A new integral-series identity of multiple zeta values and regularizations". Selecta Math. (N. S. ) 24 : 2499-2521.
  6. ^  D. Bowman and D. M. Bradley. (2003) "Resolution of some open problems concerning multiple zeta evaluations of arbitrary depth". Compos. Math. 139 : 85-100.
  7. ^  D. Zagier. (1994) "Values of zeta functions and their applications". Progr. Math. 120 : 497-512.
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  9. ^ hs21