1-1 アフィン空間と多項式の零点集合

$$\newcommand{A}[0]{\mathbb{A}} \newcommand{AA}[0]{\mathscr{A}} \newcommand{abs}[1]{\left\lvert#1\right\rvert} \newcommand{Arg}[0]{\operatorname{Arg}} \newcommand{BB}[0]{\mathscr{B}} \newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{CC}[0]{\mathscr{C}} \newcommand{F}[0]{\mathbb{F}} \newcommand{floor}[1]{\left\lfloor#1\right\rfloor} \newcommand{ind}[0]{\operatorname{ind}} \newcommand{K}[0]{\mathbb{K}} \newcommand{Ker}[0]{\operatorname{Ker}} \newcommand{L}[0]{\mathbb{L}} \newcommand{mmod}[1]{\ \left(\mathrm{mod}\ #1\right)} \newcommand{Mod}[1]{\ \left(\mathrm{mod}\ #1\right)} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{ord}[0]{\operatorname{ord}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{rank}[0]{\mathrm{rank}} \newcommand{SS}[0]{\mathscr{S}} \newcommand{TT}[0]{\mathscr{T}} \newcommand{UU}[0]{\mathscr{U}} \newcommand{wenvert}[1]{\left\lvert\left\lvert#1\right\rvert\right\rvert} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

1 アフィン空間と多項式の評価

$k$ 上のアフィン $n$ 空間を集合 $\mathbf A_k^n=k^n$ と定義する。ここで距離や角度は仮定しない。$a=(a_1,\ldots,a_n)$ に多項式 $f\in k[x_1,\ldots,x_n]$ を代入した値を $f(a)$ と書く。評価写像 $\operatorname{ev}_a:f\mapsto f(a)$ は $1$ と和・積を保つ環準同型である。
多項式と多項式関数は区別する。有限体 $\mathbf F_q$ では $x^q-x$ は零多項式ではないが、全点で0を与える。一方、$k$ が無限体なら、全ての $a\in k^n$ で消える多項式は0である。$n=1$ では零でない次数 $d$ の多項式の根は高々 $d$ 個。$n$ 変数の場合、$f=\sum_jc_j(x_1,\ldots,x_{n-1})x_n^j$ と書く。最初の $n-1$ 座標を任意に固定すると一変数多項式が全 $k$ 上で消えるから全係数 $c_j$ はその点で0。帰納法により全 $c_j=0$ となる。$n=0$ では多項式は定数なので同じ結論である。

2 共通零点集合の演算

多項式集合 $S\subseteq k[x_1,\ldots,x_n]$ に対し
$$V_k(S)=\{a\in\mathbf A_k^n:f(a)=0\ (\forall f\in S)\}$$
を共通零点集合という。$V(x^2+y^2-1)$ は実数上では円、$V(xy-1)$ は双曲線、$V(x,y)$ は原点である。$V(xy)=V(x)\cup V(y)$ は二本の座標軸となる。係数体を替えると同じ式でも解集合が変わる。
$V(0)=\mathbf A^n$、$V(1)=\varnothing$ であり、$S\subseteq T$ なら $V(T)\subseteq V(S)$。族 $S_\lambda$ について
$$V\!\left(\bigcup_\lambda S_\lambda\right)=\bigcap_\lambda V(S_\lambda),\qquad V(ST)=V(S)\cup V(T).\tag{1}$$
前者は全方程式を同時に満たす条件である。後者の逆包含を示すには、$a\in V(ST)$ で $a\notin V(S)$ とし、$f_0\in S$ で $f_0(a)\ne0$ を選ぶ。任意の $g\in T$ について $f_0(a)g(a)=0$ なので、体の整域性から $g(a)=0$。従って $a\in V(T)$。他方の包含は、どちらかの全方程式が0なら全ての積が0となることから従う。
$S$ が生成するイデアルを $(S)$ と書くと $V(S)=V((S))$ である。$a\in V(S)$ なら $(S)$ の任意の元 $\sum_jh_jf_j$ の値は $\sum_jh_j(a)f_j(a)=0$。逆包含は $S\subseteq(S)$ から従う。例えば $V(x,y)=V(x,y,x^2+xy+y^5)$ で、追加した方程式は幾何的な制約を増やさない。式 (1) により零点集合は任意の交わりと有限個の合併に閉じる。これをZariski位相の閉集合とする。

3 根基と点集合が忘れる情報

可換環 $R$ のイデアル $I$ の根基を $\sqrt I=\{f:f^m\in I\text{ for some }m\ge1\}$ と定める。これはイデアルである。$f^m,g^n\in I$ なら $(f+g)^{m+n}$ の各項で $f$ の指数が少なくとも $m$ か、$g$ の指数が少なくとも $n$ である。従って和が根基に入り、任意の $r\in R$ に対して $(rf)^m=r^mf^m\in I$ だから積にも閉じる。$I\subseteq\sqrt I$ は明らかである。
$$V(I)=V(\sqrt I).\tag{2}$$
包含の一方向は $I\subseteq\sqrt I$。逆に $a\in V(I)$、$f^m\in I$ なら $f(a)^m=0$。体に非零の冪零元はないので $f(a)=0$ となる。例えば $V(x)=V(x^2)$ は同じ直線だが、$k[x,y]/(x^2)$ には平方が0の非零元 $x$ が残る。点集合はこの厚みを記録しない。後のスキームでは商環も保持する。
座標環は $X=V(I)$ に対し $k[X]=k[x_1,\ldots,x_n]/I(X)$ とする。$I(X)$ は $X$ 上で消える全ての多項式のイデアルである。代数閉体上ではHilbert零点定理が $I(V(I))=\sqrt I$ を与えるが、一般の体ではこの等式を無条件には使わない。無限体上の放物線 $X=V(y-x^2)$ では $k[X]\cong k[x]$ で、$y$ を $x^2$ に置き換える計算がこの同型を与える。有限体では点集合の消滅イデアルに $x^q-x$ も入るので、同じ等式を使わない。

4 係数体と曲線の具体例

実数上の円 $x^2+y^2=1$ で $x=a$ を固定すると、$|a|<1$ では $y$ が二値、$|a|=1$ では一値、$|a|>1$ では実点がない。双曲線 $xy=1$ は $x\ne0$ で $y=x^{-1}$ が一意に決まり、集合として $k^\times$ と対応する。節点曲線 $y^2=x^2(x+1)$ の原点での最低次部分は $y^2-x^2=(y-x)(y+x)$ で、標数2以外では二つの接方向を示す。標数2では二方向が重なるため同じ節点判定は使えない。
$x^2+1=0$ は $\mathbf R$ 上で零点を持たず、$\mathbf C$ 上で $\{i,-i\}$、$\mathbf F_2$ 上で $\{1\}$ を与える。従って「真のイデアルなら零点がある」は任意の体上で正しくない。この不足を代数閉体上で埋めるのがHilbert零点定理である。

5 演習と解答

演習1。 $V(x(y-1))=V(x)\cup V(y-1)$ と $V(x,y)\cap V(x-1,y)=\varnothing$ を示せ。
解答。 前者は式 (1)。後者の共通点には $x=0$ と $x=1$ が同時に必要で、体では不可能である。
演習2。 $V(x-y,x^2-y^2,y^3-x^3)=V(x-y)$ を示せ。
解答。 $x^2-y^2=(x-y)(x+y)$、$y^3-x^3=-(x-y)(x^2+xy+y^2)$。三式の生成イデアルは $(x-y)$ に等しい。
演習3。 $\mathbf F_p$ 上で $x^p-x$ は零でない多項式だが零関数であることを示せ。
解答。 最高次係数1で次数 $p$ だから零多項式ではない。Fermatの小定理により全ての $a\in\mathbf F_p$ で $a^p=a$ なので、零点集合は $\mathbf A^1_{\mathbf F_p}$ 全体である。
演習4。 $\sqrt{(x^2,y^3)}=(x,y)$ と零点集合を求めよ。
解答。 $x,y$ はそれぞれ冪を取ると元のイデアルに入る。逆に $f^m\in(x^2,y^3)$ なら原点評価で $f(0,0)^m=0$、よって $f\in(x,y)$。両イデアルの零点は原点のみ。
演習5。 $t\mapsto(t^2,t^3)$ は任意の体 $k$ 上で $V(y^2-x^3)$ への全単射であることを示せ。
解答。 代入で $t^6-t^6=0$。逆に $(a,b)$ が曲線上で $a=0$ なら $b=0$ で $t=0$。$a\ne0$ なら $t=b/a$ とすると $t^2=b^2/a^2=a$、$t^3=b$。この式は $t$ の一意性も示す。

参考文献

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