冪乗因数をもたない整数

同義語:無k乗数k乗因数をもたない整数k-th power free integer

概要

冪乗因数をもたない整数($k$-th power free integer)とは、整数 $k\ge2$ に対し、$1$ 以外の $k$ 乗因数 $d^k$ をもたない正の整数のことであり、無 $k$ 乗数ともいう。素因数分解の各指数が $k-1$ 以下であることと同値で、$k=2$ の場合が平方因数をもたない整数(squarefree)であり、これは相異なる素数の積、あるいは Möbius 関数が $\mu(n)\ne0$ となる $n$ と同じものである。任意の正の整数は $N=m^ks$($s$ は $k$ 乗因数をもたない)と一意に分解され、$x$ 以下の $k$ 乗因数をもたない整数の個数は $x/\zeta(k)+O(x^{1/k})$ で近似される。特に平方因数をもたない整数の自然密度は $6/\pi^2$ である。

$$\newcommand{AA}[0]{\mathscr{A}} \newcommand{abs}[1]{\left\lvert#1\right\rvert} \newcommand{Arg}[0]{\operatorname{Arg}} \newcommand{BB}[0]{\mathscr{B}} \newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{CC}[0]{\mathscr{C}} \newcommand{floor}[1]{\left\lfloor#1\right\rfloor} \newcommand{ind}[0]{\operatorname{ind}} \newcommand{Ker}[0]{\operatorname{Ker}} \newcommand{mmod}[1]{\ \left(\mathrm{mod}\ #1\right)} \newcommand{Mod}[1]{\ \left(\mathrm{mod}\ #1\right)} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{ord}[0]{\operatorname{ord}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{rank}[0]{\mathrm{rank}} \newcommand{SS}[0]{\mathscr{S}} \newcommand{TT}[0]{\mathscr{T}} \newcommand{UU}[0]{\mathscr{U}} \newcommand{wenvert}[1]{\left\lvert\left\lvert#1\right\rvert\right\rvert} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 整数, 素数, 素因数分解, Möbius関数, Landau記号

定義

冪乗因数と冪乗因数をもたない整数

$d,k,N$ を正の整数とし、$k\ge2$ とする。$d^k\mid N$ であるとき、$d^k$ を $N$ の $k$ 乗因数($k$-th power factor)という。$k=2$ のとき平方因数(square factor)、$k=3$ のとき立方因数ともいう。$k\ge2$ の $k$ 乗因数を総称して冪乗因数という。
正の整数 $N$ が $k$ 乗因数をもたない($k$-th power free)、または無 $k$ 乗数であるとは、$1$ 以外の $k$ 乗因数をもたないこと、すなわち $d^k\mid N$ となる正の整数 $d$ が $d=1$ に限ることをいう。$k=2$ のとき、$N$ は平方因数をもたない(squarefree)、または無平方であるという。
実数 $x\ge1$ に対し、$x$ 以下の $k$ 乗因数をもたない正の整数の個数を $Q_k(x)$ と書く。

Möbius 関数の定義の再掲

本記事で用いる Möbius関数 $\mu$ は、正の整数 $n$ に対し、$n=1$ なら $\mu(1)=1$、$n$ が相異なる $r$ 個の素数の積なら $\mu(n)=(-1)^r$、$n$ が平方因数をもつなら $\mu(n)=0$ で定義される。したがって「$n$ が平方因数をもたない」は「$\mu(n)\ne0$」と同値である。$n=1$ は空積として $r=0$ の場合に含まれ、平方因数をもたない。

直感

$k$ 乗因数をもたない整数とは、素因数分解で各素数が $k-1$ 個までしか現れない数である。平方因数をもたない整数は相異なる素数の積 $p_1p_2\cdots p_r$ にほかならず、Möbius 関数 $\mu$ が消えない整数として数論のいたるところに現れる。任意の正の整数は「$k$ 乗の部分」と「$k$ 乗因数をもたない部分」に一意に分けられ($N=m^ks$)、この分解を通して $k$ 乗因数をもたない整数の個数 $Q_k(x)$ は $x/\zeta(k)$ で近似される。特に平方因数をもたない整数は全体の $6/\pi^2\approx0.608$ を占める。個数の近似の誤差項や、隣り合う平方因数をもたない整数の間隔をどこまで小さくできるかは、Riemannゼータ関数の零点やabc予想と結びついた研究対象である。

例と反例

平方因数をもたない整数

平方因数をもたない正の整数を小さい順に並べると $1,2,3,5,6,7,10,11,13,14,15,17,19,21,22,23,26,29,30,\dots$ である(OEIS5117)。たとえば $30=2\cdot3\cdot5$ は相異なる素数の積なので平方因数をもたず、$\mu(30)=(-1)^3=-1$ である。$1$ は $1$ 以外の約数をもたないので平方因数をもたない。

反例:冪乗因数をもつ整数
  1. $12=2^2\cdot3$ は平方因数 $4=2^2$ をもつので平方因数をもたない整数ではなく、$\mu(12)=0$ である。一方 $12$ は立方因数をもたない($d^3\mid12$ となる $d\ge2$ は存在しない)。「$k$ 乗因数をもたない」は $k$ が大きいほど弱い条件であり、$k$ 乗因数をもたない整数は $k+1$ 乗因数ももたないが、逆は成り立たない。
  2. $8=2^3$ は立方因数 $8$ をもつので立方因数をもたない整数ではない。$16=2^4$ も立方因数 $8$ をもつ。立方因数をもたないことは「立方数でない」こととは異なる($16$ は立方数でないが立方因数をもつ)。
  3. $0$ はすべての $d^k$ で割り切れるので、本記事の定義の対象から除いている。

性質

素因数分解による特徴づけと一意分解

素因数の指数による特徴づけ

正の整数 $N$ を $N=p_1^{e_1}\cdots p_r^{e_r}$($p_i$ は相異なる素数、$e_i\ge1$)と素因数分解する。$N$ が $k$ 乗因数をもたないことと、すべての $i$ について $e_i\le k-1$ であることとは同値である。特に $N$ が平方因数をもたないことは、$N$ が相異なる素数の積であること($N=1$ を含む)と同値であり、また $\mu(N)\ne0$ と同値である。

ある $i$ について $e_i\ge k$ なら $p_i^k$ は $1$ でない $k$ 乗因数である。逆に $d\ge2$ で $d^k\mid N$ とすると、$d$ の素因数 $p$ は $N$ の素因数のいずれか $p_i$ であり、$d^k$ の素因数分解における $p_i$ の指数は $k$ 以上なので、素因数分解の一意性により $e_i\ge k$ である。$k=2$ の場合の言い換えは、指数がすべて $1$ であることが相異なる素数の積であることと同値であること、および rem-powerfree-mobius-definition から従う。$\square$

冪乗部分と冪乗因数をもたない部分への一意分解

$k\ge2$ とする。任意の正の整数 $N$ に対し、
$$N=m^ks$$
となる正の整数 $m$ と $k$ 乗因数をもたない正の整数 $s$ の組 $(m,s)$ がただ一つ存在する。

$N=p_1^{e_1}\cdots p_r^{e_r}$ と素因数分解し、各 $i$ について $e_i$ を $k$ で割って
$$e_i=kf_i+g_i,\qquad 0\le g_i< k$$
となる整数 $f_i\ge0$、$g_i$ をとる(除法の原理)。$m:=p_1^{f_1}\cdots p_r^{f_r}$、$s:=p_1^{g_1}\cdots p_r^{g_r}$ とおくと、$N=m^ks$ であり、$s$ の素因数の指数はすべて $k-1$ 以下なので prop-powerfree-exponents により $s$ は $k$ 乗因数をもたない。
逆に $N=m^ks$、$s$ は $k$ 乗因数をもたないとし、$m=p_1^{f_1'}\cdots p_r^{f_r'}$、$s=p_1^{g_1'}\cdots p_r^{g_r'}$($f_i',g_i'\ge0$)と書く。$m$ と $s$ の素因数は $N$ の素因数なのでこう書ける。素因数分解の一意性により $e_i=kf_i'+g_i'$ であり、prop-powerfree-exponents により $0\le g_i'\le k-1$ である。除法の原理の一意性により $f_i'=f_i$、$g_i'=g_i$ であり、$(m,s)$ は上で構成したものに一致する。$\square$

Möbius 関数による特徴づけ

約数にわたる Möbius 関数の和

正の整数 $m$ に対し
$$\sum_{d\mid m}\mu(d)=\begin{cases}1&(m=1)\\0&(m>1)\end{cases}$$
が成り立つ。

$m=1$ のときは $\mu(1)=1$ である。$m>1$ とし、$m$ の相異なる素因数を $p_1,\dots,p_r$($r\ge1$)とする。$\mu(d)\ne0$ となる $m$ の約数 $d$ は $\{p_1,\dots,p_r\}$ の部分集合 $S$ に対する $d=\prod_{p\in S}p$ に限り、そのとき $\mu(d)=(-1)^{|S|}$ である。よって二項定理により
$$\sum_{d\mid m}\mu(d)=\sum_{j=0}^{r}\binom{r}{j}(-1)^j=(1-1)^r=0$$
である。$\square$

k 乗因数をもたない整数の指示関数

$k\ge2$ とする。正の整数 $N$ に対し
$$\sum_{d^k\mid N}\mu(d)=\begin{cases}1&(N\text{ が }k\text{ 乗因数をもたない})\\0&(N\text{ が }k\text{ 乗因数をもつ})\end{cases}$$
が成り立つ。ここで和は $d^k\mid N$ を満たす正の整数 $d$ すべてにわたる。

thm-powerfree-decomposition により $N=m^ks$ と分解し、$N=p_1^{e_1}\cdots p_r^{e_r}$、$m=p_1^{f_1}\cdots p_r^{f_r}$、$e_i=kf_i+g_i$($0\le g_i< k$)とする。まず、正の整数 $d$ について
$$d^k\mid N\iff d\mid m$$
を示す。どちらの条件も $d$ の素因数が $p_1,\dots,p_r$ の中にあることを含意するので、$d=p_1^{h_1}\cdots p_r^{h_r}$($h_i\ge0$)と書ける。$d^k\mid N$ はすべての $i$ について $kh_i\le e_i=kf_i+g_i$ であることと同値であり、$0\le g_i< k$ なので、これは $h_i\le f_i$ と同値である($h_i\le f_i$ なら $kh_i\le kf_i\le e_i$、$h_i\ge f_i+1$ なら $kh_i\ge kf_i+k>e_i$)。そして「すべての $i$ について $h_i\le f_i$」は $d\mid m$ と同値である。
したがって lem-powerfree-mobius-sum により
$$\sum_{d^k\mid N}\mu(d)=\sum_{d\mid m}\mu(d)=\begin{cases}1&(m=1)\\0&(m>1)\end{cases}$$
であり、$m=1$ は $N=s$ が $k$ 乗因数をもたないことと同値である(thm-powerfree-decomposition の一意性)。$\square$

個数の近似と密度

k 乗因数をもたない整数の個数

$k\ge2$ とする。$x\ge1$ に対し
$$Q_k(x)=\frac{x}{\zeta(k)}+O\!\left(x^{1/k}\right)$$
が成り立つ。ここで $\zeta$ は Riemannゼータ関数であり、$O$ は Landau記号 で、含まれる定数は $k$ にのみ依存する。

thm-powerfree-indicator により、$n\le x$ にわたる和をとって
$$Q_k(x)=\sum_{n\le x}\sum_{d^k\mid n}\mu(d)=\sum_{d^k\le x}\mu(d)\sum_{\substack{n\le x\\ d^k\mid n}}1=\sum_{d\le x^{1/k}}\mu(d)\left\lfloor\frac{x}{d^k}\right\rfloor$$
となる(同じ式は $Q_k(x)$ を包含と除去の原理で数えても得られる)。$\lfloor y\rfloor=y-\{y\}$($0\le\{y\}<1$)と $|\mu(d)|\le1$ により
\begin{align*} Q_k(x)&=x\sum_{d\le x^{1/k}}\frac{\mu(d)}{d^k}-\sum_{d\le x^{1/k}}\mu(d)\left\{\frac{x}{d^k}\right\}\\ &=x\sum_{d=1}^{\infty}\frac{\mu(d)}{d^k}+O\!\left(x\sum_{d>x^{1/k}}\frac{1}{d^k}\right)+O\!\left(x^{1/k}\right) \end{align*}
である。$X:=x^{1/k}$ とおくと
$$\sum_{d>X}\frac{1}{d^k}<\frac{1}{X^k}+\int_X^{\infty}\frac{dt}{t^k}=\frac{1}{x}+\frac{X^{1-k}}{k-1}=O\!\left(x^{-(k-1)/k}\right)$$
なので、中央の誤差項は $O(x^{1/k})$ である。最後に、$k\ge2$ に対し $\sum_{d=1}^{\infty}\mu(d)d^{-k}=1/\zeta(k)$(Dirichlet級数の値)が成り立つ(HW08 Theorem 287)。以上より主張を得る。$\square$

平方因数をもたない整数の密度

$$Q_2(x)=\frac{x}{\zeta(2)}+O(\sqrt{x})=\frac{6}{\pi^2}x+O(\sqrt{x})$$
が成り立つ。したがって、平方因数をもたない整数の自然密度 $\lim_{x\to\infty}Q_2(x)/x$ は $6/\pi^2\approx0.6079$ である。一般に $k$ 乗因数をもたない整数の自然密度は $1/\zeta(k)$ である。

thm-powerfree-count で $k=2$ とし、Euler による $\zeta(2)=\pi^2/6$(HW08 §17.2)を用いればよい。密度の主張は $Q_k(x)/x=1/\zeta(k)+O(x^{1/k-1})$ から従う。$\square$

一定の幅の区間に存在すること

thm-powerfree-count から、十分大きい定数 $c$ をとれば、すべての $x\ge1$ に対して $Q_k(x+cx^{1/k})-Q_k(x)>0$、すなわち区間 $(x,x+cx^{1/k}]$ に $k$ 乗因数をもたない整数が存在することがわかる。実際、thm-powerfree-count の誤差項を $|{\cdot}|\le C_kx^{1/k}$ と書き、$c\ge1$、$h:=cx^{1/k}$ とおくと、$(x+h)^{1/k}\le(1+c)^{1/k}x^{1/k}\le(1+\sqrt{c})x^{1/k}$ なので
$$Q_k(x+h)-Q_k(x)\ge\frac{h}{\zeta(k)}-C_k\bigl((x+h)^{1/k}+x^{1/k}\bigr)\ge x^{1/k}\left(\frac{c}{\zeta(k)}-C_k(2+\sqrt{c})\right)$$
であり、$c$ を十分大きくとれば右辺は正である。平方因数をもたない整数についてはこの幅を thm-powerfree-roth のように $x^{1/3}$ の定数倍まで狭めることができる。

平方因数をもたない整数の分布

$x$ 以下の平方因数をもたない整数の個数 $Q_2(x)$ の誤差項 $O(\sqrt{x})$ は、Riemann ゼータ関数の零点のない領域を用いて改良できる。

誤差項の改良
  1. ある定数 $c>0$ が存在して
    $$Q_2(x)=\frac{x}{\zeta(2)}+O\!\left(\sqrt{x}\exp\!\left(-c\frac{(\log x)^{3/5}}{(\log\log x)^{1/5}}\right)\right)$$
    が成り立つ。
  2. Riemann予想を仮定すると、任意の $\epsilon>0$ に対し
    $$Q_2(x)=\frac{x}{\zeta(2)}+O\!\left(x^{17/54+\epsilon}\right)$$
    が成り立つ。
誤差項の改良の出典

1 は Vinogradov の方法により導かれるゼータ関数の零点のない領域から従う。零点のない領域については Tit86 Chapter 6 および Ivi85 Chapter 6、明示的な定数については For02 を参照。2 は Jia(Jia93)による。この種の結果の概観は Sin06 にもある。いずれも証明は各文献に譲る。

隣り合う平方因数をもたない整数の間隔については、Roth(Rot51)が次の評価を比較的単純な議論で示した。

Roth の定理(短い区間の平方因数をもたない整数)

$x\ge1$、$1< c< x^{1/6}$ ならば
$$Q_2\!\left(x+cx^{1/3}\right)-Q_2(x)=\frac{cx^{1/3}}{\zeta(2)}+O^{*}\!\left(2x^{1/3}+2c+1\right)$$
が成り立つ。ここで $O^{*}(f)$ は絶対値が $f$ を超えない量を表す。

$h:=cx^{1/3}$ とおく。thm-powerfree-indicator($k=2$)により、区間 $(x,x+h]$ の整数 $n$ を $n=d^2m$ と書いて
$$Q_2(x+h)-Q_2(x)=\sum_{x< d^2m\le x+h}\mu(d)=\sum_{d\le x^{1/3}}\mu(d)\left(\left\lfloor\frac{x+h}{d^2}\right\rfloor-\left\lfloor\frac{x}{d^2}\right\rfloor\right)+\sum_{\substack{d>x^{1/3}\\ x< d^2m\le x+h}}\mu(d)$$
が成り立つ。
第 2 の和を評価する。$S:=\{(d,m)\mid d>x^{1/3},\ x< d^2m\le x+h\}$ とおくと、第 2 の和の絶対値は $\#S$ 以下である。$(d,m)\in S$ ならば、$d^2m>x$ と $2dm\ge d\sqrt{m}$($m\ge1$)により
$$(d+1)^2m>d^2m+2dm\ge d^2m+\sqrt{d^2m}>x+\sqrt{x}>x+cx^{1/3}$$
となる(最後は $c< x^{1/6}$ による)。よって $d'>d$ ならば $d'^2m\ge(d+1)^2m>x+h$ であり、$(d',m)\notin S$ である。すなわち各 $m$ に対し $(d,m)\in S$ となる $d$ は高々一つである。また $(d,m)\in S$ ならば
$$m\le\frac{x+h}{d^2}<\frac{x+cx^{1/3}}{x^{2/3}}=x^{1/3}+cx^{-1/3}< x^{1/3}+1$$
である($c< x^{1/6}\le x^{1/3}$)。よって $\#S\le x^{1/3}+1$ であり、
$$Q_2(x+h)-Q_2(x)=\sum_{d\le x^{1/3}}\mu(d)\left(\left\lfloor\frac{x+h}{d^2}\right\rfloor-\left\lfloor\frac{x}{d^2}\right\rfloor\right)+O^{*}\!\left(x^{1/3}+1\right)$$
を得る。
第 1 の和を評価する。実数 $y,z$ に対し $\lfloor y+z\rfloor-\lfloor y\rfloor$ と $z$ の差の絶対値は $1$ 未満なので、各項は $h/d^2+O^{*}(1)$ であり、$d\le x^{1/3}$ なる $d$ は $x^{1/3}$ 個以下だから
$$\sum_{d\le x^{1/3}}\mu(d)\left(\left\lfloor\frac{x+h}{d^2}\right\rfloor-\left\lfloor\frac{x}{d^2}\right\rfloor\right)=h\sum_{d\le x^{1/3}}\frac{\mu(d)}{d^2}+O^{*}\!\left(x^{1/3}\right)$$
である。$X:=x^{1/3}$ とおくと
$$\left|\sum_{d>X}\frac{\mu(d)}{d^2}\right|\le\sum_{d\ge\lfloor X\rfloor+1}\frac{1}{d^2}\le\frac{1}{(\lfloor X\rfloor+1)^2}+\int_{\lfloor X\rfloor+1}^{\infty}\frac{dt}{t^2}<\frac{1}{X}+\frac{1}{X}=\frac{2}{X}$$
であり、$\sum_{d=1}^{\infty}\mu(d)d^{-2}=1/\zeta(2)$(HW08 Theorem 287)なので
$$h\sum_{d\le X}\frac{\mu(d)}{d^2}=\frac{h}{\zeta(2)}+O^{*}\!\left(\frac{2h}{X}\right)=\frac{cx^{1/3}}{\zeta(2)}+O^{*}(2c)$$
である。以上を合わせて
$$Q_2(x+cx^{1/3})-Q_2(x)=\frac{cx^{1/3}}{\zeta(2)}+O^{*}\!\left(2x^{1/3}+2c+1\right)$$
を得る。$\square$

短い区間に平方因数をもたない整数が存在すること

$c>2\zeta(2)$ を定数とすると、$x>\max\{c^6,\ ((2c+1)/(c/\zeta(2)-2))^3\}$ を満たすすべての $x$ に対し、区間 $(x,x+cx^{1/3}]$ に平方因数をもたない整数が存在する。

$x>c^6$ より $1< c< x^{1/6}$ なので thm-powerfree-roth が適用でき、
$$Q_2(x+cx^{1/3})-Q_2(x)\ge\left(\frac{c}{\zeta(2)}-2\right)x^{1/3}-(2c+1)$$
である。$c/\zeta(2)-2>0$ であり、$x^{1/3}>(2c+1)/(c/\zeta(2)-2)$ なので右辺は正である。$\square$

平方因数をもたない整数の列の増大と間隔

平方因数をもたない正の整数を小さい順に $1=q_1< q_2< q_3<\cdots$ とおく。このとき
$$q_n=\zeta(2)n+O(\sqrt{n}),\qquad q_{n+1}-q_n=O\!\left(n^{1/3}\right)$$
が成り立つ。

$Q_2(q_n)=n$ なので cor-powerfree-squarefree-density により $n=q_n/\zeta(2)+O(\sqrt{q_n})$、すなわち $q_n=\zeta(2)n+O(\sqrt{q_n})$ である。これから $q_n\le2\zeta(2)n$ が十分大きい $n$ で成り立ち、$O(\sqrt{q_n})=O(\sqrt{n})$ となる。間隔については、cor-powerfree-roth-gap により、定数 $c>2\zeta(2)$ に対し十分大きい $x$ で区間 $(x,x+cx^{1/3}]$ に平方因数をもたない整数があるので、$x=q_n$ とすれば $q_{n+1}\le q_n+cq_n^{1/3}$、すなわち十分大きい $n$ で $q_{n+1}-q_n\le cq_n^{1/3}=O(n^{1/3})$ である。有限個の $n$ を除けば定数を大きくとって全 $n$ で成り立たせることができる。$\square$

間隔の評価の改良

$q_n$ を上の通りとする。

  1. 任意の $\epsilon>0$ に対し $q_{n+1}-q_n=O(n^{1/4+\epsilon})$ である。さらに $q_{n+1}-q_n=O(n^{3/13}(\log n)^{4/13})$ である。
  2. $q_{n+1}-q_n=O(n^{1/5}\log n)$ である。
  3. abc 予想を仮定すると、任意の $\epsilon>0$ に対し $q_{n+1}-q_n=O(n^{\epsilon})$ である。
間隔の評価の出典

1 は Roth(Rot51)による。前半は初等的な方法で、後半は指数和に関するvan der Corputの定理を用いて示された。2 は Filaseta–Trifonov(FT92)が初等的な方法で示した。3 は Granville(Gra98)による。いずれも証明は各論文に譲る。

補足

平方因数をもたない整数は、Möbius 関数の台であること、有限体上や整数環における「被約」な元に当たることから、数論の多くの場面に現れる。$Q_2(x)=6x/\pi^2+O(\sqrt{x})$ は HW08 §18.6(Theorem 333)にあり、邦訳は HWJ22 にある。平方数と平方因数をもたない整数は、thm-powerfree-decomposition($k=2$)により、任意の正の整数を一意に $N=m^2s$ と分解する二つの側面である(平方数)。

関連項目

参考文献

[1]
G. H. Hardy and E. M. Wright, revised by D. R. Heath-Brown and J. H. Silverman, An Introduction to the Theory of Numbers, 6th ed., Oxford University Press, 2008, §17.2($\zeta(2)=\pi^2/6$)、§17.5(Theorem 287、$\sum\mu(n)n^{-s}=1/\zeta(s)$)、§18.6(Theorem 333、平方因数をもたない整数の個数)
[7]
Kaneenika Sinha, Average orders of certain arithmetical functions, J. Ramanujan Math. Soc., 2006, 267--277

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