時空上に時空全体での積分が有限となるような測度を導入して、その測度に関する時空の部分領域の体積を考えることができる。
これを利用すると特定の時空では時間関数を構成することができる。
時空 $(M,g)$ において、Borel測度 $\mu$ で $\mu(M)<\infty$ となるもの任意に一つ取り、固定する。
このとき、$\mu$ に付随する過去体積関数(past volume function) $t^-:M\rightarrow\mathbb{R}_{\geq0}$、未来体積関数(future volume function) $t^+:M\rightarrow\mathbb{R}_{\le0}$ を次で定義する。
$$
\begin{align}
t^-(p)&:=\mu(I^-(p)),\\
t^+(p)&:=-\mu(I^+(p))
\end{align}
$$
上の定義で用いた時空 $(M,g)$ 上のBorel測度 $\mu$ は例えば次のようにして構成できる。
$g$ から定まるリーマン測度を $\omega$ とし、$M$ の開被覆 $\{U_i\}_{i\in\mathbb{N}}$ で $\mu(U_i)<1$ となるものを取る。
開被覆 $\{U_i\}_{i\in\mathbb{N}}$ に付随する1の分割を $\{\rho_i\}$ とする。
このとき、$\mu:=\sum_i2^{-i}\rho_i\omega$ は望みの性質を満たす。
$t^-$ (resp. $t^+$) は下 (resp. 上) 半連続である。
$p\in M$ に対して、$p$ に収束する点列 $\{p_i\},\ p_i\rightarrow p (i\rightarrow\infty)$ を任意に取る。任意の $\epsilon>0$ に対して、ある $N\in\mathbb{N}$ があり、$n>N$ ならば、$t^-(p_n)>t^-(p)-\epsilon,\ t^+(p_n)< t^+(p)+\epsilon$ であることを示せばよい。
コンパクト集合 $K\subset I^-(p)$ で $\mu(K)>I^-(p)-\epsilon$ となるものが存在し、さらに $I^-$ の内側連続性より、ある $N\in\mathbb{N}$ があり、$n>N$ ならば、$K\subset I^-(p_n)$ である。
よって、$t^-(p_n)>\mu(K)>I^-(p)-\epsilon$ となる。
同様に、コンパクト集合 $K\subset I^+(p)$ で $\mu(K)>-I^+(p)-\epsilon$ となるものが存在し、さらに $I^+$ の内側連続性より、ある $N\in\mathbb{N}$ があり、$n>N$ ならば、$K\subset I^+(p_n)$ である。
よって、$t^+(p_n)>\mu(K)< I^+(p)+\epsilon$ となる。
$p<< q$ ならば、$I^-(p)\subset I^-(q)$ であるから、$t^-(p)\le t^-(q)$ である。従って、$t^-$ は任意のtimelike曲線に沿って広義単調増加である。
$t^+$ も同様の理由から任意のtimelike曲線に沿って広義単調増加である。
しかし一般には狭義単調増加になるとは限らない。
また連続であることも一般には成り立たない。
従って、一般には $t^\pm$ は一般化time functionですらない。