部分群 $H$ を群 $G$ の中で左からずらすと、$H$ と同じ大きさの集合ができます。その集合たちは重なるか完全に一致し、群全体を分割します。この単純な事実から、有限群では部分群の位数が群の位数を割り切るという強い制約が生まれます。
加法群 $\mathbb Z$ で $H=3\mathbb Z$ とすれば
$$
0+H=3\mathbb Z,\quad
1+H=\{\ldots,-2,1,4,\ldots\},\quad
2+H=\{\ldots,-1,2,5,\ldots\}.
$$
これは3を法とする余りによる分類です。
$a,b\in G$ に対し、次は同値である。
1から2は、$a=ae\in aH$ なので明らか。
2を仮定し、$x\in aH\cap bH$ を取る。$x=ah_1=bh_2$ となる $h_1,h_2\in H$ があるから
$$
a^{-1}b=h_1h_2^{-1}\in H.
$$
3を仮定する。$a^{-1}b=h_0\in H$、すなわち $b=ah_0$。従って
$$
bH=ah_0H=aH,
$$
なぜなら $h_0H=H$ だからである。□
この命題から、二つの左剰余類は一致するか交わらないかのどちらかです。また任意の $g\in G$ は $g=ge\in gH$ に入るので、左剰余類全体は $G$ の分割を作ります。
写像
$$
H\longrightarrow gH,\qquad h\longmapsto gh
$$
は全単射である。
全射性は $gH$ の定義そのもの。$gh_1=gh_2$ なら左消去律から $h_1=h_2$ なので単射。逆写像は $x\mapsto g^{-1}x$。□
有限集合 $X$ の元の個数を $|X|$ と書きます。有限群 $G$ の位数は $|G|$、部分群 $H$ の指数は左剰余類の個数で
$$[G:H]$$
と書きます。
$G$ を有限群、$H\le G$ とする。このとき
$$
|G|=[G:H]|H|.
$$
特に $|H|$ は $|G|$ を割り切る。
左剰余類は $G$ を互いに交わらない集合へ分割する。各剰余類は直前の命題により $H$ と同じ $|H|$ 個の元をもつ。剰余類が $[G:H]$ 個あるので、全体の元数は
$$
|G|=\underbrace{|H|+\cdots+|H|}_{[G:H]\text{個}}
=[G:H]|H|.
$$
□
有限群 $G$ の任意の元 $g$ について $|g|\mid|G|$。従って $g^{|G|}=e$。
巡回部分群 $\langle g\rangle$ の元数は $|g|$。Lagrangeの定理を $H=\langle g\rangle$ に適用して $|g|\mid|G|$。$|G|=m|g|$ と書けば
$$g^{|G|}=(g^{|g|})^m=e.$$
□
$|G|=p$ が素数なら、$G$ は巡回群である。
$g\ne e$ を取る。$|g|$ は $p$ の約数で1ではないから $p$。従って $\langle g\rangle$ は $p$ 元をもち $G$ 全体に等しい。□
Lagrangeの逆は一般に偽です。$A_4$ は位数12ですが位数6の部分群をもちません。この反例の証明は群作用とSylow理論の後に戻ります。
$S_3$ で $H=\{e,(12)\}$ とします。左剰余類は
$$
H,\qquad (13)H=\{(13),(13)(12)\},
$$
$$
(23)H=\{(23),(23)(12)\}.
$$
互いに交わらず各2元で、$S_3$ の6元を尽くします。したがって $[S_3:H]=3$。
$\gcd(a,n)=1$ なら
$$a^{\varphi(n)}\equiv1\pmod n$$
を、群 $(\mathbb Z/n\mathbb Z)^\times$ にLagrangeの定理を適用して示せ。
$(\mathbb Z/n\mathbb Z)^\times$ は乗法について群で、元数は $\varphi(n)$。$\gcd(a,n)=1$ なら $\bar a$ はこの群の元。元の位数は群の位数を割るため
$$
\bar a^{\,\varphi(n)}=\bar1.
$$
これは所要の合同式である。□
$|G|=15$ とする。任意の $g\in G$ の位数として可能な値を列挙せよ。また $g\ne e$ なら $g^{15}=e$ を示せ。
Lagrangeの定理から $|g|$ は15の正の約数なので
$$1,3,5,15$$
のいずれか。$g\ne e$ なら1を除く。どの場合も $|g|\mid15$ だから
$$g^{15}=(g^{|g|})^{15/|g|}=e.$$
ただしLagrangeの定理だけでは3,5,15が実際にすべて現れるとは限らない。□
Mathpediaは寄付と、参考文献の書籍リンク(Amazonアソシエイト)の紹介料で運営されています。 支援について / 寄付する