以下、$G$ を群、$e$ をその単位元とし、積は $ab$ のように並べて書く。部分集合 $H\subset G$ が、任意の $a,b\in H$ に対して $ab\in H$ を満たすとき、$H$ は $G$ の演算について閉じているという。このとき $G$ の演算を $H\times H$ に制限したものは $H$ 上の二項演算を定める。
群 $G$ の空でない部分集合 $H$ が $G$ の演算について閉じており、制限された演算によって $H$ 自身が群になるとき、$H$ を $G$ の部分群(subgroup)という。
定義について三点を注意する。
第一に、$H$ が空でないことを要求する。空集合は「任意の $a,b$ について」という条件を真空に満たすので $G$ の演算について閉じているが、群は 単位元 をもつ集合なので空集合は群にならない。下の判定条件では、空でないという仮定を落とすと部分群であることとの同値が崩れる。
第二に、$H$ の単位元は $G$ の単位元 $e$ に一致し、$a\in H$ の $H$ における逆元は $G$ における逆元 $a^{-1}$ に一致する。実際、$H$ の単位元を $e_H$ とすると $e_He_H=e_H$ であり、$G$ のなかで両辺に $e_H^{-1}$ を掛けて $e_H=e$ を得る。また $a$ の $H$ における逆元を $b$ とすると $ab=e_H=e$ なので、$G$ における逆元の一意性(逆元)から $b=a^{-1}$ である。したがって「$H$ 自身が群になる」という条件は、$H$ が $e$ を含み逆元をとる操作について閉じていることと同じ内容になる。
第三に、結合律は $G$ から受け継がれるので $H$ について改めて確かめる必要がない。確かめるべきは、閉じていること・単位元・逆元の三点だけである。
群を調べるとき、その内部にある「同じ演算のままで群になっている部分」を取り出すのが部分群である。位相空間における部分空間、ベクトル空間における部分空間と同じ発想であり、外から新しい構造を与えるのではなく、もとの構造をそのまま制限できる部分集合を選び出している。群のふるまいの多くは、どんな部分群をもつか、それらがどう並んでいるかで決まる。
群 $G$ に対し、単位元だけからなる部分集合 $\{e\}$ と $G$ 自身は、いずれも $G$ の部分群である。この二つを $G$ の自明な部分群という。$\{e\}$ は 自明群 と同型である。$G$ の部分群 $H$ が $H\neq\{e\}$ かつ $H\neq G$ を満たすとき、$H$ を自明でない部分群という。
自然数全体 $\mathbb{N}=\{0,1,2,\dots\}$ を加法群 $\mathbb{Z}$ の部分集合とみなす。$\mathbb{N}$ は $0$ を含むので空でなく、和について閉じており、$\mathbb{Z}$ の単位元 $0$ を含む。しかし $1\in\mathbb{N}$ の逆元 $-1$ は $\mathbb{N}$ に属さないので、$\mathbb{N}$ は $\mathbb{Z}$ の部分群ではない。
この $\mathbb{N}$ は性質 $P$「空でなく、演算について閉じており、単位元を含む」を満たし、性質 $Q$「部分群である」を満たさない。したがって含意「空でなく演算について閉じている部分集合は部分群である」は成り立たない。破れているのは定義のうち逆元をとる操作について閉じているという条件である。prop-subgroup-finite のとおり、$H$ が有限集合ならばこの含意は成り立つので、$\mathbb{N}$ が無限集合であることがこの反例の要である。
$G$ を群、$H$ を $G$ の空でない部分集合とする。次の三つは同値である。
(1)$\Rightarrow$(2)。$H$ が部分群ならば定義から演算について閉じており、def-subgroup の直後の注意で見たように $a\in H$ の $H$ における逆元は $a^{-1}$ なので $a^{-1}\in H$ である。
(2)$\Rightarrow$(3)。$a,b\in H$ に対し (2) より $a^{-1}\in H$ であり、$a^{-1}$ と $b$ にふたたび (2) を当てて $a^{-1}b\in H$ を得る。
(3)$\Rightarrow$(1)。$H$ は空でないので $a_0\in H$ が取れる。(3) を $a=b=a_0$ に当てると $e=a_0^{-1}a_0\in H$ である。次に $a\in H$ を任意に取り、(3) を $a$ と $e$ の組に当てると $a^{-1}=a^{-1}e\in H$ である。最後に $a,b\in H$ に対し、いま示した $a^{-1}\in H$ と $b$ の組に (3) を当てると $ab=(a^{-1})^{-1}b\in H$ である。よって $H$ は演算について閉じ、$e$ を含み、逆元をとる操作について閉じている。結合律は $G$ から受け継がれるので、$H$ は制限された演算について群であり、$G$ の部分群である。$\square$
条件 2・条件 3 のそれぞれと、部分群であることとの同値は、「空でない」という仮定を外すと崩れる。空集合は条件 2 と条件 3 を真空に満たすが部分群ではないからである。
$G$ を群、$H$ を $G$ の空でない有限部分集合とし、$H$ が $G$ の演算について閉じているとする。このとき $H$ は $G$ の部分群である。
$a\in H$ を任意に取る。$H$ が演算について閉じているので、写像 $\lambda\colon H\to H$、$\lambda(x)=ax$ が定まる。$G$ のなかで $ax=ay$ の両辺に $a^{-1}$ を掛ければ $x=y$ となるので $\lambda$ は単射であり、$H$ は有限集合なので $\lambda$ は全単射である。
$\lambda$ は全射なので $\lambda(x)=a$ を満たす $x\in H$ があり、$ax=a$ の両辺に $a^{-1}$ を掛けて $x=e$ を得る。よって $e\in H$ である。ふたたび全射性から $\lambda(y)=e$ を満たす $y\in H$ があり、$ay=e$ から $y=a^{-1}$ である。よって $a^{-1}\in H$ である。$a\in H$ は任意だったので thm-subgroup-criterion の条件 2 が成り立ち、$H$ は $G$ の部分群である。$\square$
この証明で有限性が効くのは「単射な自己写像は全射である」という一点だけである。rem-subgroup-counterexample の $\mathbb{N}\subset\mathbb{Z}$ では、$x\mapsto 1+x$ が単射でありながら全射でない。無限集合ではこの一点が壊れる。
$G$ を群、$\{H_\lambda\}_{\lambda\in\Lambda}$ を $G$ の部分群からなる空でない族とする。このとき $\bigcap_{\lambda\in\Lambda}H_\lambda$ は $G$ の部分群である。
$H:=\bigcap_{\lambda\in\Lambda}H_\lambda$ とおく。各 $H_\lambda$ は部分群なので $e\in H_\lambda$ であり、よって $e\in H$、とくに $H$ は空でない。$a,b\in H$ を任意に取ると、各 $\lambda\in\Lambda$ について $a,b\in H_\lambda$ であり、$H_\lambda$ は部分群なので thm-subgroup-criterion より $a^{-1}b\in H_\lambda$ である。$\lambda$ は任意だったので $a^{-1}b\in H$ である。ふたたび thm-subgroup-criterion より $H$ は $G$ の部分群である。$\square$
添字集合 $\Lambda$ が空である場合の共通部分は、慣例により $G$ 自身と読む。この証明は族から元を選び出す操作を含まないので 選択公理 を用いない。
なお、部分群の和集合は部分群になるとは限らない。二つの部分群の和集合がふたたび部分群になるのはどちらかが他方を含むときに限るが、この主張は本記事では扱わない。
群 $G$ の部分集合 $S$ に対し、$S$ を含む $G$ の部分群すべてにわたる共通部分
$$\langle S\rangle:=\bigcap_{S\subset H,\ H\le G}H$$
を、$S$ が生成する部分群という。ここで $H\le G$ は $H$ が $G$ の部分群であることを表す。$G$ 自身が $S$ を含む部分群なので、この共通部分をとる族は空でない。$S=\{g\}$ のときは $\langle g\rangle$ と略記する。
$G$ を群、$S\subset G$ とする。$\langle S\rangle$ は $S$ を含む $G$ の部分群であり、$S$ を含む $G$ の任意の部分群 $H$ に対して $\langle S\rangle\subset H$ が成り立つ。すなわち $\langle S\rangle$ は $S$ を含む最小の部分群である。
$G$ 自身が $S$ を含む部分群なので共通部分をとる族は空でなく、prop-subgroup-intersection より $\langle S\rangle$ は $G$ の部分群である。$S$ は族に属する各部分群に含まれるので $S\subset\langle S\rangle$ である。また $H$ が $S$ を含む部分群であれば $H$ は族の一員なので、共通部分の定義から $\langle S\rangle\subset H$ である。$\square$
加法群 $\mathbb{Z}$ の部分群は、整数 $n\ge0$ を用いて $n\mathbb{Z}=\{nk\mid k\in\mathbb{Z}\}$ と書けるものに限る。逆に各 $n\ge0$ について $n\mathbb{Z}$ は $\mathbb{Z}$ の部分群であり、$n$ は部分群によって一意に定まる。
まず $n\ge0$ のとき $n\mathbb{Z}$ が部分群であることを見る。$0=n\cdot0\in n\mathbb{Z}$ なので空でなく、$-(nk)+nk'=n(k'-k)\in n\mathbb{Z}$ なので thm-subgroup-criterion の条件 3 が成り立つ。
逆に $H$ を $\mathbb{Z}$ の部分群とする。$H=\{0\}$ ならば $H=0\mathbb{Z}$ である。$H\neq\{0\}$ とすると、$0$ でない $a\in H$ が取れ、$-a\in H$ でもあるから $H$ は正の整数を含む。$H$ に含まれる正の整数全体は空でない自然数の集合なので最小元をもつ。それを $n$ とおく。$H$ は和と符号反転について閉じているので $n\mathbb{Z}\subset H$ である。逆に $x\in H$ を取り、除法の原理により $x=qn+r$($q,r$ は整数、$0\le r< n$)と書くと $r=x-qn\in H$ である。$0< r< n$ ならば $n$ の最小性に反するので $r=0$、すなわち $x=qn\in n\mathbb{Z}$ である。よって $H=n\mathbb{Z}$ である。
一意性を見る。$n\mathbb{Z}=n'\mathbb{Z}$、$n,n'\ge0$ とする。$n\mathbb{Z}=\{0\}$ となるのは $n=0$ のときに限るので、片方だけが $0$ ということは起こらない。ともに $0$ ならば $n=n'$ である。ともに正ならば、$n$ は $n\mathbb{Z}$ に含まれる最小の正の整数であり $n'$ もまた $n'\mathbb{Z}$ に含まれる最小の正の整数なので、$n=n'$ である。$\square$
この証明で使ったのは自然数の整列性(空でない自然数の集合は最小元をもつ)と除法の原理だけであり、選択公理 は用いていない。
$G$ を群とする。$G$ の部分群 $H$ であって、$H\neq\{e\}$、$H\neq G$ を満たし、かつ $G$ の自明でない部分群がすべて $H$ に含まれるようなものが存在するとする。このとき、ある素数 $p$ とある整数 $\alpha\ge2$ が存在して、$G$ は位数 $p^{\alpha}$ の巡回群になる。
$G$ は一つの元で生成される。 $H\neq G$ なので $g\in G\setminus H$ が取れる。$e\in H$ なので $g\neq e$ であり、$\langle g\rangle\neq\{e\}$ である。もし $\langle g\rangle\neq G$ ならば $\langle g\rangle$ は自明でない部分群となるので仮定より $\langle g\rangle\subset H$、とくに $g\in H$ となり $g$ の取り方に反する。よって $G=\langle g\rangle$ である。
$D:=\{d\in\mathbb{Z}\mid g^{d}\in H\}$ は $\mathbb{Z}$ の部分群であり、$D=d_0\mathbb{Z}$ を満たす整数 $d_0\ge2$ がある。 $g^{0}=e\in H$ なので $0\in D$ であり、$d,d'\in D$ ならば $g^{-d+d'}=(g^{d})^{-1}g^{d'}\in H$ なので $-d+d'\in D$ である。よって thm-subgroup-criterion の条件 3 から $D$ は $\mathbb{Z}$ の部分群であり、prop-subgroup-integers より $D=d_0\mathbb{Z}$($d_0\ge0$)と書ける。$d_0=1$ とすると $1\in D$、すなわち $g\in H$ となり $g$ の取り方に反する。$d_0=0$ とすると $H\cap\langle g\rangle=\{e\}$ であり、$H\subset G=\langle g\rangle$ だから $H=\{e\}$ となって仮定に反する。よって $d_0\ge2$ である。
$G$ は有限群である。 $G$ が無限群であると仮定する。$G=\langle g\rangle$ が無限集合なら、$g^{i}=g^{j}$($i< j$)となる整数の組があると $g^{j-i}=e$ となって $\langle g\rangle$ が有限集合になってしまうので、相異なる整数 $m$ に対する $g^{m}$ はすべて相異なる。とくに $g^{m}=e$ となる整数 $m$ は $m=0$ のみである。ここで $\langle g^{2}\rangle$ と $\langle g^{3}\rangle$ を考える。$g^{2}\neq e$、$g^{3}\neq e$ なのでどちらも $\{e\}$ ではない。また $g\in\langle g^{2}\rangle$ とすると $g=g^{2k}$ を満たす整数 $k$ があり $g^{2k-1}=e$、すなわち $2k-1=0$ となるが、これを満たす整数 $k$ はないので $g\notin\langle g^{2}\rangle$、とくに $\langle g^{2}\rangle\neq G$ である。同様に $3k-1=0$ を満たす整数 $k$ はないので $\langle g^{3}\rangle\neq G$ である。よって $\langle g^{2}\rangle$ と $\langle g^{3}\rangle$ はともに自明でない部分群であり、仮定よりともに $H$ に含まれる。すると $2,3\in D=d_0\mathbb{Z}$ となるので $d_0$ は $2$ と $3$ の公約数、すなわち $d_0=1$ となり、前段に反する。よって $G$ は有限群である。
$g^{m}=e$ となる最小の正の整数は $n:=|G|$ である。 $E:=\{m\in\mathbb{Z}\mid g^{m}=e\}$ は上と同じ議論で $\mathbb{Z}$ の部分群なので、prop-subgroup-integers より $E=n'\mathbb{Z}$($n'\ge0$)と書ける。$n'=0$ とすると $g^{m}$ たちはすべて相異なり $G$ が無限集合になるので $n'\ge1$ である。$G=\langle g\rangle=\{g^{0},g^{1},\dots,g^{n'-1}\}$ であり、$0\le i< j< n'$ で $g^{i}=g^{j}$ なら $g^{j-i}=e$ かつ $0< j-i< n'$ となって $n'$ の最小性に反するので、これら $n'$ 個の元は相異なる。よって $n=n'$ である。
$n$ の約数 $d$($1\le d\le n$)に対し $\langle g^{d}\rangle$ の位数は $n/d$ である。 $g^{dk}=e$ は $n\mid dk$ と同値であり、$d\mid n$ なのでこれは $(n/d)\mid k$ と同値である。よって $g^{d\cdot0},g^{d\cdot1},\dots,g^{d(n/d-1)}$ は相異なり、$\langle g^{d}\rangle$ のすべての元を尽くす。
$n$ は素数の冪である。 $n$ の約数 $d$ が $1< d< n$ を満たすとき、$\langle g^{d}\rangle$ の位数 $n/d$ は $1$ でも $n$ でもないので、$\langle g^{d}\rangle$ は自明でない部分群である。仮定よりこれは $H$ に含まれるので $g^{d}\in H$、すなわち $d\in D=d_0\mathbb{Z}$、つまり $d_0\mid d$ である。いま $n$ が相異なる素数 $p\neq q$ で割り切れると仮定すると、$n\ge pq$ より $1< p< n$ かつ $1< q< n$ であり、$p$ も $q$ も $n$ の約数なので $d_0\mid p$ かつ $d_0\mid q$ となる。$p,q$ は相異なる素数だから $d_0=1$ となり、$d_0\ge2$ に反する。よって $n$ はただ一つの素数 $p$ の冪 $p^{\alpha}$($\alpha\ge1$)である。
$\alpha\ge2$ である。 $\alpha=1$、すなわち $n=p$ と仮定する。$K$ を $G$ の部分群で $K\neq\{e\}$ とすると、$e$ でない $x\in K$ が取れる。$x=g^{c}$ と書くと $x^{p}=(g^{p})^{c}=e$ である。$F:=\{m\in\mathbb{Z}\mid x^{m}=e\}$ は $\mathbb{Z}$ の部分群で $p\in F$ かつ $F\neq\{0\}$ なので、prop-subgroup-integers より $F=m_0\mathbb{Z}$($m_0\ge1$)と書けて $m_0\mid p$ である。$x\neq e$ より $m_0\neq1$ なので $m_0=p$ であり、上と同じ議論で $\langle x\rangle$ は $p$ 個の元をもつ。よって $\langle x\rangle=G$、したがって $K=G$ である。つまり $G$ は自明でない部分群をもたず、$H$ の存在に反する。よって $\alpha\ge2$ である。$\square$
なお、$G\neq\{e\}$ であり、$G$ の部分群が $\{e\}$ と $G$ だけである場合、$G$ は素数位数の巡回群である(極大部分群 の補題「真の部分群を持たない群」とその証明)。
群の単射準同型 $i\colon X\to Y$ があるとき、「$i$ に沿って $X$ を $Y$ の部分群とみなす」という言い方がされることがある。しかし単射な準同型は包含写像とは限らないので、この言い方は像との同一視を含む。
最も基本的な例を挙げる。整数の加法群を二つ用意し、区別のためだけに $\mathbb{Z}^{(1)}$、$\mathbb{Z}^{(2)}$ と書く(どちらも同じ群 $\mathbb{Z}$ である)。$2$ 倍写像 $[2]\colon\mathbb{Z}^{(1)}\to\mathbb{Z}^{(2)}$、$[2](x)=2x$ は単射な準同型であるが、$[2]$ に沿って $\mathbb{Z}^{(1)}$ を「$\mathbb{Z}^{(2)}$ の部分群である」と本当に思うことはできない。$[2]$ の像は $2\mathbb{Z}$ であって $\mathbb{Z}^{(2)}$ の真部分集合であり、これを $\mathbb{Z}^{(1)}$ 自身と同一視するのは記号の濫用にすぎないからである。正確には、$X$ は像 $i(X)$ と同型であり、その像が $Y$ の部分群になる、と述べるべきである(準同型の像が部分群になることは 群準同型 の基本事項であり、本記事では引用にとどめる)。
このような言い換えは議論の煩雑さを下げるために慣習的に行われるが、微妙な文脈では区別を明示する必要がある。同じ注意は群に限らず、環・加群・ベクトル空間など他の代数的構造についても当てはまる。
部分群は、群を調べるための基本的な道具としてさまざまな形で現れる。$G$ の部分群 $H$ に対する左剰余類 $gH$ の個数を指数といい、有限群では位数との関係が Lagrangeの定理 で与えられる。共役で不変な部分群は 正規部分群、すべての自己同型で不変な部分群は 特性部分群 と呼ばれ、包含について極大な真部分群は 極大部分群、それらすべての共通部分は Frattini部分群 と呼ばれる。$G$ のすべての元と可換な元の全体は 群の中心 という部分群をなす。群 $G$ の部分群の有限列 $\{e\}=G_0\le G_1\le\cdots\le G_r=G$ で、各 $i$($0\le i< r$)について $G_i$ が $G_{i+1}$ の正規部分群となるものを 正規列 という。商因子がすべて可換群となる正規列の存在は 可解群 の定義に用いられる。正規性を弱めた概念として 副正規部分群 や 準正規部分群 がある。
一つの元が生成する部分群 $\langle g\rangle$ の位数は $g$ の位数と呼ばれ(元の位数)、群全体が一つの元で生成されるとき 巡回群 という。巡回群の部分群がふたたび巡回群になることや、位数 $n$ の巡回群が各約数に対応する部分群をちょうど一つもつことは 巡回群 が扱う。
巡回群は可換群である。
$G=\langle g\rangle$ とする。
任意の $x\in G$ は整数 $m$ を用いて $x=g^m$ と書ける。
任意の $y\in G$ は整数 $n$ を用いて $y=g^n$ と書ける。
指数法則と整数の加法の可換性から $xy=g^{m+n}=g^{n+m}=yx$ である。$\square$
有限群の任意の元の位数は有限である。
有限群 $G$ の元 $g$ に対し、$\langle g\rangle$ は有限集合 $G$ の部分集合なので有限である。
$g$ の位数は $\langle g\rangle$ の位数だから有限である。$\square$
可換群 $G$ の元 $a$ の位数が有限であるとする。
$G$ の元 $b$ の位数も有限であるとする。
このとき $ab$ の位数は有限である。
$\langle a\rangle$ が有限なので、非負整数の冪の列に同じ値が現れ、消去律から $a^m=e$ となる正の整数 $m$ が存在する。
同様に $b^n=e$ となる正の整数 $n$ が存在する。
可換性により $(ab)^{mn}=a^{mn}b^{mn}=(a^m)^n(b^n)^m=e$ である。
任意の整数 $k$ を $k=qmn+r$、$0\le r< mn$ と書けば $(ab)^k=(ab)^r$ となる。
したがって $\langle ab\rangle$ は有限集合 $\{e,ab,\dots,(ab)^{mn-1}\}$ に含まれ、$ab$ の位数は有限である。$\square$
本記事に置いた証明はいずれも 選択公理 を用いていない。全体を通じた記述はおおむね DF04 に従う。
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