$\pi(x)$ を $x$ 以下の素数の個数とする。
素数
のページで示したように、素数の個数は無限であるから
$$\lim_{x\rightarrow +\infty}\pi(x)=+\infty$$
である。より正確に素数定理 (prime number theorem)
$$\pi(x)\sim \frac{x}{\log x}$$
が成り立つことが知られている。
この章では、素数の個数に関する初等的な結果を証明する。
$$\theta(x)=\sum_{p\leq x}\log p$$
で定義される関数を第一Chebyshev関数 (first Chebyshev function) という。
またvon Mangoldt関数 (von Mangoldt function) $\Lambda(n)$ を $n=p^k$ となる素数 $p$ が存在するとき $\log p$, それ以外のとき $0$ をとる関数と定義し、
$$\psi(x)=\sum_{p^k\leq x}\log p=\sum_{n\leq x}\Lambda(n)$$
で定義される関数を第二Chebyshev関数 (second Chebyshev function) という。
$\pi(x), \theta(x), \psi(x)$ の値は次のように関連付けられる。
つぎの関係式が成り立つ。
$$\psi(x)=\sum_{k=1}^{\infty}\theta(x^{1/k})=\sum_{k=1}^{\floor{\log_2 x}}\theta(x^{1/k}), \label{eq11}\tag{1}$$
$$\psi(x)=\sum_{k=1}^n \theta(x^{1/k})+O(x^{1/(n+1)}\log x), \label{eq12}\tag{2}$$
$$\theta(x)\leq \pi(x)\log x, \label{eq13}\tag{3}$$
$$\pi(x)=\frac{\theta(x)}{\log x}+\int_2^x\frac{\theta(t)dt}{t\log^2 t}, \label{eq14}\tag{4}$$
$$\theta(x)=\pi(x)\log x-\int_2^x\frac{\pi(t) dt}{t}. \label{eq15}\tag{5}$$
\eqref{eq11} の証明。
$$\psi(x)=\sum_{p^k\leq x}\log p=\sum_{k=1}^\infty \sum_{p\leq x^{1/k}}\log p=\sum_{k=1}^\infty\theta(x^{1/k})$$
となるが、$x^{1/k}<2$ のとき、$\theta(x^{1/k})=\sum_{p\leq x^{1/k}}\log p$ は空和となるので
$$\psi(x)=\sum_{k=1}^{\floor{\log_2 x}}\theta(x^{1/k})$$
となる。
\eqref{eq12} の証明。\eqref{eq11} より
$$\psi(x)\geq \sum_{k=1}^n \theta(x^{1/k})$$
が成り立つ。また $y\geq 1$ のとき $\theta(y)\leq y\log y$ となるから
$$\begin{split}
\psi(x)-\sum_{k=1}^n \theta(x^{1/k})
= & \sum_{k=n+1}^{\floor{\log_2 x}} \theta(x^{1/k}) \\
\leq & \sum_{k=n+1}^{\floor{\log_2 x}} x^{1/k}\log x \\
< & x^{1/(n+1)}\log x+(\log_2 x) x^{1/(n+2)}\log x
\end{split}$$
となる。
\eqref{eq13} の証明。定義より
$$\theta(x)\leq\sum_{p\leq x}\log x=\pi(x)\log x.$$
\eqref{eq14} の証明。$x_0=1$ とし、$a_n (n\geq 2)$ を $n$ が素数のとき $\log n$, それ以外のとき $0$ とし、$f(x)=1/\log x$ とおいて
Abelの総和公式
を適用すると
$$\pi(x)=\frac{\theta(x)}{\log x}+\int_2^x \theta(t)f^\prime(t) dt=\frac{\theta(x)}{\log x}+\int_2^x\frac{\theta(t)dt}{t\log^2 t}.$$
\eqref{eq15} の証明。$x_0=1$ とし、$a_n (n\geq 2)$ を $n$ が素数のとき $1$, それ以外のとき $0$ とし、$f(x)=\log x$ とおくと Abelの総和公式 から明らか。
$$\pi(x)<\frac{(K+o(1))x}{\log x}\Longleftrightarrow \theta(x)<(K+o(1))x\Longleftrightarrow \psi(x)<(K+o(1))x$$
かつ
$$\theta(x)>(K+o(1))x\Longleftrightarrow \psi(x)>(K+o(1))x\Rightarrow \pi(x)>\frac{(K+o(1))x}{\log x}$$
が成り立つ。また
$$\pi(x)=o(x)$$
が成り立つときは最後の矢印の逆も成り立つ。
とくに素数定理は
$$\theta(x)\sim x$$
および
$$\psi(x)\sim x$$
と同値となる。
$(2)$ より
$$\psi(x)=\theta(x)+O(x^{1/2}\log x)$$
なので
$$\theta(x)<(K+o(1))x\Longleftrightarrow \psi(x)<(K+o(1))x$$
および
$$\theta(x)>(K+o(1))x\Longleftrightarrow \psi(x)>(K+o(1))x$$
はすぐにわかる。
$\pi(x)<(K+o(1))x/\log x$ のとき $(3)$ より $\theta(x)<\pi(x)\log x<(K+o(1))x$ となる。
$\theta(x)<(K+o(1))x$ が成り立つとする。とくに $\theta(x)/x$ は上に有界だから \eqref{eq14} より
$$\pi(x)<(K+o(1))x+O\left(\int_2^x\frac{dt}{t\log^2 t}\right)$$
となるが、右辺の$O$記号内の積分は $x\rightarrow\infty$ のとき収束するから、
$$\pi(x)<(K+o(1))x$$
が成り立つ。
$\theta(x)>(K+o(1))x$ のとき $(3)$ より $\pi(x)>\theta(x)/\log x>(K+o(1))x/\log x$ となる。
$\pi(x)>(K+o(1))x/\log x$ かつ $\pi(x)=o(x)$ が成り立つとき \eqref{eq15} より
$$\theta(x)=\pi(x)\log x-\int_2^{\sqrt{x}}\frac{\pi(t) dt}{t}-\int_{\sqrt{x}}^x\frac{\pi(t) dt}{t}$$
となるが、$\pi(t)/t\leq 1$ かつ $\pi(t)/t\rightarrow 0 (t\rightarrow +\infty)$ だから
$$\theta(x)>(K+o(1))x-\sqrt{x}-o(x)=(K+o(1))x$$
となる。