本ページでは、約数に関する数論的関数の基本的な性質について解説する。
$$d^{(k)}(N)=\sum_{d\mid N} d^k, d(N)=d^{(0)}(N), \sigma(N)=d^{(1)}(N)$$
とおくと $d(N)$ は $N$ の約数の個数、$\sigma(N)$ は $N$ の約数の総和となる。
$d^{(k)}(N)$ を約数関数 (divisor function) という。$\sigma(N)$ は約数総和関数 (sum-of-divisors function)ということもある。なお $k$ は負の値や整数以外の実数、複素数の値をとってもよい。約数関数は次のようにして素因数分解から求められる。
$\sigma(N)$ について詳しいことは 約数総和関数 のページも参照。
$$N=p_1^{e_1} p_2^{e_2} \cdots p_r^{e_r}$$
と素因数分解すると
$$d^{(k)}(N)=\prod_{i=1}^r d^{(k)}(p_i^{e_i})=\left\{\begin{array}{cl}\prod_{i=1}^r \frac{p_i^{k(e_i+1)}-1}{p_i^k-1} & (k\geq 1)\\
\prod_{i=1}^r (e_i+1) & (k=0)\end{array}\right.$$
が成り立つ。
素因数分解の一意性
から
$$\begin{split}
d^{(k)}(N)= & \sum_{d\mid N} d^k \\
= & \sum_{0\leq f_i\leq e_i (1\leq i\leq k)} p_1^{kf_1} p_2^{kf_2} \cdots p_r^{kf_r} \\
= & \prod_{i=1}^r \sum_{f_i=0}^{e_i} p_i^{kf_i} \\
\end{split}$$
より
$$d^{(k)}(N)=\left\{\begin{array}{cl}\prod_{i=1}^r \frac{p_i^{k(e_i+1)}-1}{p_i^k-1} & (k\geq 1)\\
\prod_{i=1}^r (e_i+1) & (k=0)\end{array}\right.$$
が成り立つ。
$\gcd(m, n)=1$ ならば $d^{(k)}(mn)=d^{(k)}(m)d^{(k)}(n)$.
$$m=p_1^{e_1} p_2^{e_2} \cdots p_r^{e_r}, n=q_1^{f_1} q_2^{f_2} \cdots q_s^{f_s} (e_1, e_2, \ldots, e_r, f_1, f_2, \ldots, f_s>0)$$
と素因数分解すると、$\gcd(m, n)=1$ ならば $p_1, p_2, \ldots, p_r, q_1, q_2, \ldots, q_s$ は相異なる素数だから
$$\begin{split}d^{(k)}(mn)= & d^{(k)}(p_1^{e_1}p_2^{e_2}\cdots p_r^{e_r}q_1^{f_1} q_2^{f_2} \cdots q_s^{f_s}) \\
= & \prod_{i=1}^r d^{(k)}(p_i^{e_i}) \prod_{j=1}^s d^{(k)}(q_j^{f_j}) \\
= & d^{(k)}(m)d^{(k)}(n).
\end{split}$$
$$N=p_1^{e_1} p_2^{e_2} \cdots p_r^{e_r}$$
と素因数分解すると
$$\frac{d^{(k)}(N)}{N^k}=d^{(-k)}(N)=\prod_{i=1}^r \sum_{g_i=0}^{e_i} p_i^{-kg_i}
=\left\{\begin{array}{cl}\prod_{i=1}^r \frac{1-p_i^{-k(e_i+1)}}{1-p_i^{-k}} & (k\neq 0)\\
\prod_{i=1}^r (e_i+1) & (k=0)\end{array}\right.$$
が成り立つ。
定理1
から
$$\begin{split}
\frac{d^{(k)}(N)}{N}= & \prod_{i=1}^r \frac{\sum_{f_i=0}^{e_i} p_i^{kf_i}}{p_i^{ke_i}} \\
= & \prod_{i=1}^r \sum_{f_i=0}^{e_i} p_i^{k(f_i-e_i)} \\
= & \prod_{i=1}^r \sum_{g_i=0}^{e_i} p_i^{-kg_i} \\
= & d^{(-k)}(N)
\end{split}$$
が成り立つ。
$k$ が実数で $M\mid N$ かつ $M< N$ のとき
$$d^{(k)}(M)< d^{(k)}(N)$$
が成り立つ。
$$M=p_1^{e_1} p_2^{e_2} \cdots p_r^{e_r}, N=p_1^{f_1} p_2^{f_2} \cdots p_r^{f_r}$$
と素因数分解すると、$M\mid N$ より 各 $i$ について $0\leq e_i\leq f_i$ が成り立つ。
また $M< N$ だから $e_j< f_j$ となる $j$ が存在する。よって各 $i$ について
$$1+p_i^k+\cdots +p_i^{ke_i}\leq 1+p_i^k+\cdots +p_i^{kf_i}$$
となり、かつ
$$1+p_j^k+\cdots +p_j^{ke_j}<1+p_j^k+\cdots +p_j^{kf_j}$$
となる。よって
$$d^{(k)}(M)=\prod_{i=1}^r (1+p_i^k+\cdots +p_i^{ke_i})<\prod_{i=1}^r (1+p_i^k+\cdots +p_i^{kf_i})=d^{(k)}(N)$$
が成り立つ。
$k$ が $0$ 以上の整数のとき
$d^{(k)}(N)$ が奇数 $\Longleftrightarrow$ $N$ は平方数か、平方数の$2$倍。
$$N=p_1^{e_1} p_2^{e_2} \cdots p_r^{e_r} (e_1, \ldots, e_r>0)$$
と素因数分解する。$p_i$ が奇数のとき
$$1+p_i^k+\cdots +p_i^{ke_i}\equiv e_i+1 \Mod{2}$$
である。また $p_i=2$ が偶数ならば $1+2^k+\cdots +2^{ke_i}$ は奇数である。
よって、
定理1
より$d^{(k)}(N)$ が奇数 $\Longleftrightarrow$
$1+p_i^k+\cdots +p_i^{ke_i} (i=1, \ldots, r)$ はすべて奇数
$\Longleftrightarrow$ $p_i\neq 2$ のとき $e_i$ は偶数、となることがわかる。
これは $N=2^e M^2$ ($e$ は $0$ 以上の整数で $M$ は奇数)の形にあらわされることを意味する。
つまり $N$ は平方数か、平方数の$2$倍である。
本ページについてはHardy and Wright, Chapter 16 を参照。