Lucas数列について、 LTEの補題 の一般化が成り立つ。
まず、次の補題を示す。
$p$ が $P$ を割り切らないが $D$ を割り切る奇素数で、$p=3$ のときはさらに $p^2$ が $D$ を割り切るならば $p\mid\mid u_p$.
$(2.12)$ より
$$2^{p-1} u_p=\binom{p}{1}P^{p-1}+\binom{p}{3}P^{p-3} D+\cdots +D^{(p-1)/2}$$
である。$p>3$ のとき、$p^2$ は $\binom{p}{3}D$ および $D^2$ を割り切るから
$$2^{p-1} u_p\equiv pP^{p-1}\Mod{p^2}$$
より
$p\mid\mid 2^{p-1} u_p$ となるので $p\mid\mid u_p$ となる。
$p=3$ のとき $p^2\mid D$ だから
$$2^{p-1} u_p=3P^2+D\equiv 3P^2\Mod{3^2}$$
より、やはり$p\mid\mid 2^{p-1} u_p$ となるので $p\mid\mid u_p$ となる。
$p$ は奇素数、$e, m$ は正の整数で $f$ は $0$ 以上の整数とする。
$p^e\mid\mid u_m, p^f\mid\mid k$ のとき $p^{e+f}$ は $u_{km}$ を割り切る。さらに $p$ が $Q$ を割り切らないとき
$$p^{e+f}\mid\mid u_{km}$$
となる。
$g\geq 0$ について
$u_r^{(g)}=u_{rm p^g}/u_{mp^g}$ とおくと $(2.6b)$ より $(u_r^{(g)})_r$ は
$$u_r^{(g+1)}=\frac{u_{rmp^{g+1}}}{u_{mp^{g+1}}}=\frac{u_{rp}^{(g)}}{u_p^{(g)}}=u_r(P_{g+1}, Q_{g+1}),\label{eq41}\tag{4.1}$$
ただし
$$(P_0, Q_0)=(v_m, Q^m), (P_{g+1}, Q_{g+1})=(v_p^{(g)}, Q_g^p)$$
で与えられるLucas数列で、 $(2.4)$ より判別式は
$$D_0=v_m^2-4Q^m=Du_m^2, D_{g+1}=v_p^{(g) 2}-4Q_g^p=D_g u_p^{(g) 2}\label{eq42}\tag{4.2}$$
で与えられる。
$Q_g=Q^{m p^g}$ となることはすぐにわかる。
$p$ が $Q$ を割り切るとする。
このとき $p$ は $Du_m^2+4Q^m=v_m^2$ を割り切るから
$p$ は $P_0=v_m$ も割り切る。
前ページの定理6
より $p$ は $u_p^{(0)}=u_{pm}/u_m$ を割り切る。
$p$ が $u_p^{(g)}$ を割り切るとすると、
$Q_g=Q^{m p^g}$ も $p$ で割り切れるので、$p$ は $D_g u_p^{(g) 2}+4Q_g^m=v_p^{(g) 2}$ も割り切る。
したがって $p$ は $P_{g+1}=v_p^{(g)}$ も割り切るから、
前ページの定理6
より $p$ は $u_p^{(g)}$ を割り切る。
帰納的に、任意の整数 $g\geq 0$ に対して、$p$ は $u_p^{(g)}=u_{m p^{g+1}}/u_{m p^g}$ を割り切る。
よって $p^f\mid k$ ならば
$$p\mid u_{p^{g+1} m}/u_{p^g m}\ (g=0, 1, \ldots)$$
より
$$p^{e+f}\mid u_{p^f m}\mid u_{km}$$
となる。
$p$ が $Q$ を割り切らないとする。
このとき $p$ は $Du_m^2+4Q^m=v_m^2$ を割り切らないから
$p$ は $v_m$ も割り切らない。一方、$(3.3)$ より $p^2$ は $D_0=Du_m^2$ を割り切るので
前ページの定理6
から
$$p\mid u_r^{(0)}\Longleftrightarrow p\mid r$$
となる。さらに $(3.2)$ および
補題1
から
$$p\mid\mid u_p^{(0)}$$
となる。
$p$ が $u_p^{(g)}$ を割り切るとすると、$(3.3)$ より $p^2$ は $D_{g+1}=D_g u_p^{(g) 2}$ を割り切るので
前ページの定理6
から
$$p\mid u_r^{(g+1)}\Longleftrightarrow p\mid r $$
となる。さらに $(3.2)$ および
補題1
から
$$p\mid\mid u_p^{(g+1)}$$
となる。
結局、帰納的に、任意の整数 $g\geq 0$ に対して、
$$p\mid\mid u_p^{(g)}=u_{p^{g+1} m}/u_{p^g m}\ (g=0, 1, \ldots)$$
となることがわかるから $k=p^f s$, $\gcd(s, p)=1$ とおくと
$p^{e+f}\mid\mid u_{p^f m}$ となる。
やはり、帰納的に、
$$p\mid u_r^{(f)}\Longleftrightarrow p\mid r $$
となるから、$p\nmid u_s^{(f)}=u_{km}/u_{p^f m}$ より
$$p^{e+f}\mid\mid u_{km}$$
となる。
$p=2$ で割り切れる回数については、つぎのことがいえる。
$P$ が偶数で $Q$ が奇数のとき、$2^h\mid\mid P$ とおくと、
$2^f\mid\mid k$ ならば
$$2^{f+h-1}\mid\mid u_k$$
となる。
$P, Q$ がともに奇数のとき、$k$ を $3$ の倍数とし(
前ページの定理5
より $u_k$ が偶数ならば $k$ は $3$ の倍数である)、
$2^f\mid\mid k$ となる整数 $k\geq 0$ をとる。
$P^2-Q$ が $4$ の倍数の場合は
$2^h\mid\mid (P^2-Q)$ となる $h\geq 2$ をとると、
$$2^{f+h}\mid\mid u_k$$
となる。
$P, Q$ がともに奇数で $2\mid\mid (P^2-Q)$ のときは
$2^h\mid\mid (P^2-3Q)$ となる $h\geq 2$ をとると
$k$ が $3$ の奇数倍のときは $2\mid\mid u_k$,
$k$ が $3$ の偶数倍で $2^f\mid\mid k$ ならば $f\geq 1$ のとき
$$2^{f+h}\mid\mid u_k$$
となる。
$P$ が偶数で $2^h\mid\mid P$ とする。
$g\geq 1$ で $v_{2^{g-1}}$ が偶数のとき $(2.5a)$ より
$$v_{2^g}=v_{2^{g-1}}^2-2Q^{2^{g-1}}\equiv 2\Mod{4}$$
となるので、$2\mid\mid v_{2^g}$ となる。
$v_1=P$ は偶数だから、結局 $g\geq 1$ ならば $2\mid\mid v_{2^g}$ となる。よって $(2.5a)$ より
$$2^{h+g-1}\mid\mid P\prod_{i=1}^{g-1} v_{2^i}=v_1 v_2 v_4 \cdots v_{2^{g-1}}=u_{2^g}$$
となる。$(2.6b)$ より
$$\frac{u_{n\times 2^g}}{u_{2^g}}=u(v_{2^g}, Q^{2^g})$$
となるが、さきに述べたように $v_{2^g}$ は偶数で、$Q^{2^g}$ は明らかに奇数だから
前ページの定理5
より$u_{n\times 2^g}/u_{2^g}$ の偶奇は $n$ の偶奇と一致する。
$2^f\mid\mid k$ だから $u_k/u_{2^f}=u_{k/2^f}^{(f)}$ は奇数となるので
$$2^{f+h-1}\mid\mid u_k$$
となる。
つぎに $P, Q$ がともに奇数で $k$ は $3$ の倍数とする。
$g$ を $0$ 以上の整数とする。
$$v_{3\times 2^{g+1}}=v_{3\times 2^g}^2-2Q^{3\times 2^g}$$
だから、$v_{3\times 2^g}$ が偶数ならば $2\mid\mid v_{3\times 2^{g+1}}$ となる。
$P, Q$ は奇数だから、$v_3$ は偶数なので
$g\geq 1$ のとき $2\mid\mid v_{3\times 2^g}$ となる。
$(2.6b)$ より
$$\frac{u_{3n\times 2^g}}{u_{3\times 2^g}}=u(v_{3\times 2^g}, Q^{3\times 2^g})$$
となるが、さきに述べたように $v_{3\times 2^g}$ は偶数で、$Q^{3\times 2^g}$ は明らかに奇数だから
前ページの定理5
より$u_{3n\times 2^g}/u_{3\times 2^g}$ の偶奇は $n$ の偶奇と一致する。
$2^f\mid\mid k$ だから $u_k$ は偶数で $u_k/u_{3\times 2^f}$ は奇数となる。
$2^h\mid P^2-Q=u_3$ のとき
$$v_3=P(P^2-3Q)=P(u_3-2Q)\equiv 2\Mod{4}$$
より、$2\mid\mid v_3$ となるから、
$$2^f\mid\mid v_3 v_6 \cdots v_{3\times 2^{f-1}}=\frac{u_{3\times 2^f}}{u_3}$$
となる。よって $2^f\mid\mid k$ ならば
$$2^{f+h}\mid\mid u_k$$
となる。
$u_3=P^2-Q\equiv 2\Mod{4}$ のとき
$P^2-3Q=(P^2-Q)-2Q$ は $4$ の倍数である。よって
$2^h\mid\mid P^2-3Q$ となる整数 $h\geq 2$ がとれる。
$P$ は奇数なので $2^h\mid\mid P(P^2-3Q)=v_3$ となるから、$f\geq 1$ のとき
$$2^{f+h-1}\mid\mid v_3 v_6 \cdots v_{3\times 2^{f-1}}\frac{u_{3\times 2^f}}{u_3}$$
より、
$$2^{f+h}\mid\mid u_{3\times 2^f}$$
となる。よって $2^f\mid\mid k, f\geq 1$ ならば
$$2^{f+h}\mid\mid u_k$$
となる。また、さきに述べたことから $u_{3n}/u_3$ の偶奇は $n$ の偶奇と一致するから $k$ が奇数ならば
$$2\mid\mid u_k$$
となる。
このことから、$2$ で割り切れる階数について、つぎのような合同式:合成数を法とする合同式#補題3.1(LTE)|LTEの補題の一般化が成り立つ。
$e, m$ は正の整数で $f, k$ は $0$ 以上の整数で、
$$2^e\mid\mid u_m, 2^f\mid\mid k$$
となるとする。このとき $2^{e+f}$ は $u_{km}$ を割り切る。
さらに $Q$ が奇数のとき、
$(2.4)$ より
$$v_m^2=Du_m^2+4Q^m$$
だから $u_m$ が偶数なので $v_m=u_{2m}/u_m$ も偶数である。同様にして
$u_{2^{g+1} m}/u_{2^g m} (g=0, 1, \ldots)$ も偶数だから、$2^f\mid\mid k$ ならば
$2^{e+f}$ は $u_{km}$ を割り切る。
$P$ が偶数で $Q$ が奇数のとき
$$2^g\mid\mid m, 2^h\mid\mid P$$
となる $g, h$ をとると $2^{f+g}\mid\mid km$ なので
定理3
より
$$2^{g+h-1}\mid\mid u_m, 2^{f+g+h-1}\mid\mid u_{km}$$
となるから $e=g+h-1$ より
$2^{e+f-1}\mid\mid u_{km}$
となる。
$P, Q$ がともに奇数で $2^h\mid P^2-Q=u_3, h\geq 2$ のとき
$2^g\mid\mid m$ となる $g$ をとると $2^{f+g}\mid\mid mk$ なので
定理3
より
$$2^{g+h-1}\mid\mid u_m, 2^{f+g+h-1}\mid\mid u_{km}$$
となるから $2^{e+f-1}\mid\mid u_{km}$ となる。
$P, Q$ がともに奇数で $2^h\mid P^2-3Q$ のとき
$2^2\mid u_m$ ならば
定理3
より $m$ は偶数である。
$2^g\mid\mid m$ となる $g$ をとると $g\geq 1$ かつ $2^{f+g}\mid\mid mk$ なので
定理3
より
$$2^{g+h-1}\mid\mid u_m, 2^{f+g+h-1}\mid\mid u_{km}$$
となるから $2^{e+f-1}\mid\mid u_{km}$ となる。
結局、つぎのことがいえる。
$p$ が素数、$e, m$ は正の整数で $f$ は $0$ 以上の整数とする。
$p^e\mid\mid u_m, p^f\mid\mid k$ のとき $p^{e+f}$ は $u_{km}$ を割り切る。
さらに $p$ が $Q$ を割り切らないとき、$p^e=2$ で $P$ が奇数の場合を除き
$$p^{e+f}\mid\mid u_{km}$$
となる。
整数 $P, Q$ に対して、数論的関数 $\psi(n)=\psi_{P, Q}(n)$ を
$$\psi(2)=\left\{\begin{array}{cl}1 & \ (2\mid Q), \\
2 & \ (2\nmid Q, 2\mid P), \\
3 & \ (2\nmid PQ),
\end{array}\right.$$
$p$ が奇素数のとき
$$\psi(p)=p-\left(\frac{D}{p}\right),$$
$p$ が素数で $e$ が正の整数のときは
$$\psi(p^e)=p^{e-1}\psi(p)$$
により定め、一般の正の整数 $n=p_1^{e_1} \cdots p_r^{e_r}$ については
$$\psi(n)=\prod_{k=1}^r \psi(p_k^{e_k})$$
により定める。
さらに数論的関数 $\lambda(n)=\lambda_{P, Q}(n)$ を
$p$ が素数で $e$ が正の整数のときは $\lambda(p^e)=\psi(p^e)$ とし
一般の正の整数 $n=p_1^{e_1} \cdots p_r^{e_r}$ については
$$\lambda(n)=\LCM[\psi(p_1^{e_1}), \psi(p_2^{e_2}), \ldots, \psi(p_r^{e_r})]$$
により定める。
$n$ が $Q$ と互いに素な素数のとき $n\mid u_{\lambda(n)}$.
まず $n=2^e$ が $2$ の累乗とする。仮定より $Q$ は奇数である。
$P$ が偶数のとき、
前ページの定理5
より $u_2$ は偶数、
$P$ が奇数のとき、
前ページの定理5
より $u_3$ は偶数である。
いずれの場合も $u_{\psi(2)}$ は偶数で、
$$\psi(n)=2^{e-1}\psi(2)$$
なので
定理5
より
$$2^e\mid u_{2^{e-1}\psi(2)}=u_{\psi(n)}$$
となる。
つぎに $p$ が奇素数で $n=p^e$ が $p$ の累乗とする。
$p\mid D$ ならば $\psi(p)=p$ で
前ページの定理5
より $p\mid u_p$,
$p\nmid D$ ならば $\psi(p)=p-(D/p)$ で
前ページの定理5
より $p\mid u_{p-(D/p)}$ だから
いずれの場合も
$$p\mid u_{\psi(p)}$$
かつ
$$\psi(n)=p^{e-1}\psi(p)$$
なので
定理5
より
$$p^e\mid u_{p^{e-1}\psi(p)}=u_{\psi(n)}$$
となる。
よって、$n$ が素数の累乗ならば $n\mid u_{\psi(n)}=u_{\lambda(n)}$ となる。
一般の正の整数 $n$ に対しては、 $n=p_1^{e_1} \cdots p_r^{e_r}$ と素因数分解すると、
各 $k=1, 2, \ldots, r$ に対して
前ページの定理1
より
$$p_k^{e_k}\mid u_{\lambda(p_k^{e_k})}\mid u_{\lambda(n)}$$
となるから、$n$ は $u_{\lambda(n)}$ を割り切る。
前ページの定理7
より
$$\rho(n)\mid \lambda(n)\mid \psi(n)$$
となることがわかる。