数論的関数 $f, g$ の接合積 (convolution) $f*g$ を
$$(f*g)(N)=\sum_{d\mid N}f(d)g(N/d)$$
により定める。
明らかに
$$(f*g)=(g*f),$$
$$((f*g)*h)(N)=(f*(g*h))(N)=\sum_{N=d_1 d_2 d_3}f(d_1)g(d_2)h(d_3)$$
が成り立つ。さらに、$\bbe(N)$ を
メビウス関数:定理1
で考察した関数
$$\bbe(N)=\sum_{d\mid N}\mu(d)=\left\{\begin{array}{cl} 1 & (N=1)\\
0 & (N>1)\end{array}\right.$$
と定めると、
$$\bbe *f=f*\bbe =f$$
が成り立つ。すなわち $\bbe$ は、convolutionに関する単位元とみることができる。
$\mathbb{1}(N)$ を、すべての整数に対して $1$ をとる関数とし、多項式 $P(x)$ に対し、$[P]$ を整数 $N$ に対して $P(N)$ を値にとる関数とする(よって $\mathbb{1}=[x^0]$ となる)と、
約数関数
$d_k(N)$ について
$$d_k=\mathbb{1}*[x^k]$$
が成り立つ。とくに
$$d=\mathbb{1}*\mathbb{1}, \sigma=\mathbb{1}*[x]$$
が成り立つ。
つぎの一般的な定理が成り立つ。
$2$つの数論的関数 $f(N), g(N)$ について
$$f*g=e$$
となるとき、
$$f*a=b\Longleftrightarrow a=g*b$$
が成り立つ。
$b=f*a$ ならば
$$g*b=g*(f*a)=(g*f)*a=\bbe *a=a$$
となる。また $a=g*b$ ならば
$$f*a=f*(g*b)=(f*g)*b=\bbe *b=b$$
となる。
また、次の定理も重要である。
$f, g$ が乗法的関数ならば $f*g$ も乗法的関数である。
$N=p_1^{e_1} p_2^{e_2} \cdots p_r^{e_r}$ と素因数分解すると
$$\begin{split}
(f*g)(N)= & \sum_{d\mid N}f(N/d) g(d) \\
= & \sum_{0\leq f_i\leq e_i (1\leq i\leq k)} f(p_1^{e_1-f_1}p_2^{e_2-f_2}\cdots p_k^{e_k-f_k})g(p_1^{f_1}p_2^{f_2}\cdots p_k^{f_k}) \\
= & \sum_{0\leq f_i\leq e_i (1\leq i\leq k)} \prod_{i=1}^k f(p_i^{e_i-f_i})g(p_i^{f_i}) \\
= & \prod_{i=1}^k \sum_{f_i=0}^{e_i} f(p_i^{e_i-f_i})g(p_i^{f_i}) \\
= & \prod_{i=1}^k (f*g)(p_i^{e_i})
\end{split}$$
となるので、$f*g$ も乗法的関数である。
この定理は
加法的関数と乗法的関数:定理4
を含んでいる。実際、すべての整数 $N$ に対して $g(N)=1$ となる関数 $g$ は乗法的関数だから、
$f$ が乗法的関数ならば $h(N)=\sum_{d\mid N}f(N)$ により定義される関数 $h$ も乗法的関数である。