乗法的位数

$$\newcommand{AA}[0]{\mathscr{A}} \newcommand{abs}[1]{\left\lvert#1\right\rvert} \newcommand{BB}[0]{\mathscr{B}} \newcommand{bbe}[0]{\mathbb{e}} \newcommand{Bu}[0]{\mathbf{u}} \newcommand{Bv}[0]{\mathbf{v}} \newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{CC}[0]{\mathscr{C}} \newcommand{F}[0]{\mathbb{F}} \newcommand{floor}[1]{\left\lfloor#1\right\rfloor} \newcommand{ind}[0]{\operatorname{ind}} \newcommand{K}[0]{\mathbb{K}} \newcommand{LCM}[0]{\mathrm{LCM}} \newcommand{Mod}[1]{\ \left(\mathrm{mod}\ #1\right)} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{nequiv}[0]{\not\equiv} \newcommand{ord}[0]{\operatorname{Ord}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

乗法的位数

前々ページの定理2 (9) から、$a^e\equiv 1\Mod{n}$ となる整数 $e$ 全体は 倍数と約数: 定理3 の条件を満足するので、
次のことがわかる。

$$a^g\equiv 1\Mod{n}$$
となる最小の正の整数 $g$ をとると、
$$a^e\equiv 1\Mod{n}\Longleftrightarrow g\mid e$$
が成り立つ。この整数 $g$$n$ を法とする $a$乗法的位数 (multiplicative order) あるいは単に位数という。$\ord_n(a)$ とかく場合もあるが、この記号は 付値 をあらわす場合もあるので注意が必要である。

Fermatの小定理 および Eulerの定理 より、次のことがすぐにわかる。

$n$ を法とする $a$ の位数は $\varphi(n)$ を割り切る。

このことから、次のような定理を示すことができる。

$n$ が整数で $p$$n^2+1$ の素因数ならば、$p=2$ または $p\equiv 1\Mod{4}$.

$n^2+1\equiv 0\Mod{p}$ ならば
$$n^4-1\equiv (n^2+1)(n^2-1)\equiv 0\Mod{p}$$
となる。よって $p$ を法とする $n$ の位数は $4$ の約数である。$n^2-1\equiv 0\Mod{p}$ ならば
$p\mid (n^2+1)-(n^2-1)=2$ より、$p=2$ である。よって $p$ が奇数ならば $p$ を法とする $n$ の位数は $4$ に一致するので
定理1 より $4$$p-1$ を割り切る。

$4n+1$ の形の素数は無数に存在する。

実数 $X>0$ を任意にとり、$P$$X$ より小さいすべての素数の積とする。$P^2+1$ の素因数 $q$ をひとつとる。

$q$$P$ を割り切らない。実際 $q\mid P$ ならば $q\mid 1=(P^2+1)-P^2$ となり、矛盾する。
一方 $P$$2$ で割り切れるから、$q$ は奇数なので、 定理4.2 より $q\equiv 1\Mod{4}$ となる。
よって $q$$X$ より大きい $4n+1$ の形の素数である。$X$ は任意にとれるから $4n+1$ の形の素数は無限に多く存在する。

$x^n\equiv 1\Mod{p}\Longleftrightarrow$ $x\Mod{p}$ の位数が $\gcd(n, p-1)$ を割り切る
$\Longleftrightarrow x^{\gcd(n, p-1)}\equiv 1\Mod{p}$.

$x^n\equiv 1\Mod{p}$ ならば $x$ の位数は $n$ の約数、かつ位数が $p-1$ の約数でもあるので 倍数と約数:命題3 より位数は $\gcd(n, p-1)$ の約数となるので
$$x^{\gcd(n, p-1)}\equiv 1\Mod{p}$$
となる。
このことは $x^n\equiv 1\Mod{p}$ ならば、 Bezoutの補題 より $an+b(p-1)=\gcd(n, p-1)$ となる $a, b$ がとれるので
$$x^{\gcd(n, p-1)}\equiv x^{an}x^{b(p-1)}\equiv 1\Mod{p}$$
となることからもわかる。

逆に $x^{\gcd(n, p-1)}\equiv 1\Mod{p}$ ならば明らかに $x^n\equiv 1\Mod{p}$ となる。

参考文献

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G. H. Hardy and E. M. Wright, revised by D. R. Heath-Brown and J. H. Silverman, An Introduction to the Theory of Numbers, 6th Ed., Oxford University Press, 2008
[2]
G. H. Hardy and E. M. Wright, 訳: 示野 信一、矢神 毅, 数論入門I 原書6版, 数学クラシックス, 丸善出版, 2022
[3]
G. H. Hardy and E. M. Wright, 訳: 示野 信一、矢神 毅, 数論入門II 原書6版, 数学クラシックス, 丸善出版, 2022
[5]
D. P. Parent, Exercises in Number Theory, Springer-Verlag, 1984
[6]
Trygve Nagell, Introduction to Number Theory, Reprint Edition, American Mathematical Society (original: John Wiler & Sons, Inc.), 2001
[7]
Paulo Ribenboim, The New Book of Prime Number Records (3rd ed. pbk.), Springer, 2013
[9]
Edouard Lucas, Théorie des nombres, Gauthier-Villars, 1891
[11]
D. P. Parent, Exercices des théorie des nombres, BORDAS, 1978
[12]
H. C. Pocklington, The determination of the prime or composite nature of large numbers by Fermat's theorem, Proc. Cambridge Phil. Soc., 1914, 29
[15]
F. Proth, Théorèmes sur les nombres premiers, C. R. Acad. Sci., 87, 926
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