前ページにあげた関係式を用いて、Lucas数列の整除性および合同に関する重要な性質が導かれる。
式番号は本章の前ページまでと共通のものを使用する。
$k, m\in\Z$ のとき、 $u_m\mid u_{km}$.
$k, m\in\Z$ で $k$ が奇数のとき、$v_m\mid v_{km}$.
$(2.6b)$ あるいは $(2.11)$ より $u_m\mid u_{km}$ がすぐにわかる。
また $(2.11)$ より $k$ が奇数ならば $v_m\mid v_{km}$ となる。
$p$ が素数ならば
$$v_p\equiv P\Mod{p}. \label{eq31}\tag{3.1}$$
さらに $p$ が奇素数ならば
$$u_{kp}\equiv \left(\frac{D}{p}\right)u_k\Mod{p}.$$
とくに
$$u_{p^e}\equiv \left(\frac{D}{p}\right)^e\Mod{p}.$$
$p$ が奇素数で $0< r< p$ ならば $\binom{p}{r}=p!/(r!(p-r)!)$ は $p$ で割り切れるので、
$(2.13)$ より
$$v_p\equiv\sum_{r=0}^{(p-1)/2} \binom{p}{r}Q^r v_{p-2r}\equiv P^p\equiv P\Mod{p}.$$
また $p=2$ のとき
$$v_2=\alpha^2+\beta^2=P^2-2Q\equiv P^2\equiv P\Mod{p}$$
となるから、$p$ が素数ならば \eqref{eq31} が成り立つ。
再び $p$ が奇素数のとき、 $0< r< p$ ならば $\binom{p}{r}=p!/(r!(p-r)!)$ は $p$ で割り切れるので、$(2.9)$ より
$$D^{(p-1)/2}u_k^p=\sum_{r=0}^{(p-1)/2} \binom{p}{r} (-1)^r Q^{kr} u_{k(p-2r)}\equiv u_{kp}\Mod{p}$$
となるので、
平方剰余:定理2
より $D^{(p-1)/2}\equiv (D/p)\Mod{p}$ だから
$$u_{kp}\equiv\left(\frac{D}{p}\right)u_k^p\Mod{p}$$
となる。とくに
$$u_{p^e}\equiv \left(\frac{D}{p}\right)u_{p^{e-1}}\equiv\cdots\equiv\left(\frac{D}{p}\right)^e\Mod{p}$$
となる。
つぎの定理はFermatの小定理の一般化となっている、重要な定理である。
$p$ が $P, Q, D$ のいずれも割り切らない奇素数ならば $p$ は $u_{p-(D/p)}$ を割り切る。
$p$ が奇素数で $(D/p)=-1$ ならば $(2.12)$ より
$$2^p u_{p+1}=(p+1)P^p +\binom{p+1}{3}P^{p-2}D+\cdots+\binom{p+1}{p}PD^{(p-1)/2}$$
であるが、$2\leq r\leq p-1$ のとき $p$ は $\binom{p+1}{r}$ を割り切るので、
$$2^p u_{p+1}\equiv P^p+PD^{(p-1)/2}\equiv P+P\left(\frac{D}{p}\right)\equiv 0\Mod{p}$$
となる。$p\neq 2$ なので
$$p\mid u_{p+1}=u_{p-(D/p)}$$
となる。
$p$ が奇素数で $(D/p)=1$ とする。
$$\binom{p-1}{r}=\frac{(p-1)\cdots (p-r)}{r!}\equiv (-1)^r\Mod{p}$$
となる。また $p$ は $P^2-D=4Q$ を割り切らないので、
$$\begin{split}
2^{p-2} u_{p-1}= & (p-1)P^{p-2}+\binom{p-1}{3}P^{p-4}D+\cdots+\binom{p-1}{p-2}PD^{(p-3)/2} \\
\equiv & -(P^{p-2}+P^{p-4}D+\cdots PD^{(p-3)/2}) \\
\equiv & -P\times \frac{P^{p-1}-D^{(p-1)/2}}{P^2-D}.
\end{split}$$
$(D/p)=1$ だから
$$C^2\equiv D\Mod{p}$$
となる $C\in\Z$ が存在する。$p$ は $D$ を割り切らないから $C$ も割り切らないので
$$2^{p-2} u_{p-1}\equiv -P\times \frac{P^{p-1}-C^{p-1}}{P^2-C^2}\equiv 0\Mod{p}$$
となる。
$a\not\equiv 0, \pm 1\Mod{p}$ となる整数 $a$ について $P=a+1, Q=a$ のとき $D=(a-1)^2$ となるので、 $(D/p)=1$ となる。
定義と例: 例3
にあるように $u_n(P, Q)=(a^n-1)/(a-1)$ なのでこの定理は、
$$\frac{a^{p-1}-1}{a-1}\equiv 0\Mod{p}$$
となり、通常のFermatの定理と一致する。
残るのは $p=2$ の場合と、$p$ が $P, Q, D$ のいずれかを割り切る場合だが、先につぎの合同式を示す。
$n\geq 1$ のとき
$$u_n\equiv v_{n-1}\Mod{Q}$$
かつ
$$v_n\equiv P^n\Mod{Q}$$
が成り立つ。
$n\geq 1$ のとき $(2.11)$ より
$$u_n=v_{n-1}+Q v_{n-3}+\cdots\equiv v_{n-1}|Mod{Q}$$
となり、$n>0$ のとき $(2.13)$ より
$$P^n\equiv v_n+nQv_{n-2}+\cdots\equiv v_n\Mod{Q}$$
となる。
$u_n, v_n$ が $p=2$ で割れるかどうか、つまり $u_n, v_n$ の偶奇はつぎのようにしてわかる。
$p$ が $P, Q, D$ のいずれかの素因数の場合、$u_n, v_n$ が $p$ の倍数となる場合はつぎのようにしてわかる。
$n\mid u_k$ となる正の整数 $k$ が存在するとき、$n\mid u_k$ となる最小の正の整数 $k$ を $\rho(n)$ とおく。
定理3
および
定理6
より $p$ が $2Q$ を割り切らないとき $\rho(p)$ が存在することがわかる。
$\rho(n)$ は 乗法的位数 と類似した性質をもっている。たとえば、次の定理が成り立つ。
$n\mid u_k$ となる正の整数 $k$ が存在し、$\gcd(n, 2Q)=1$ かつ $m\geq 0$ のとき
$$n\mid u_m\Longleftrightarrow \rho(n)\mid m.$$
定理1 より $\rho(n)\mid m$ かつ $m\geq 0$ ならば $u_m$ は $n$ で割り切れることはすぐにわかる。
$m\geq 0$ で $u_m$ が $n$ で割り切れるとし、
$$m=q\rho(n)+r, 0\leq r<\rho(n)$$
となる $q, r$ をとると
$$u_m=\frac{u_{q\rho(n)} v_r+u_r v_{q\rho(n)}}{2}$$
より $u_r v_{q\rho(n)}$ は $n$ で割り切れる。
$(2.4)$ より
$$v_{q\rho(n)}^2=Du_{q\rho(n)}^2+4Q^n$$
だから $p$ が $n$ の素因数で $v_{q\rho(n)}$ を割り切るとき
$p$ は $4Q^n=v_{q\rho(n)}^2-Du_{q\rho(n)}^2$ を割り切る。しかし、これは $\gcd(n, 2Q)=1$ に矛盾する。
よって、$\gcd(v_{q\rho(n)}, n)=1$ なので $u_r$ も $n$ で割り切れるが、$0\leq r<\rho(n)$ より
$r=0$ である。つまり $\rho(n)$ は $m$ を割り切る。
$p$ が $2Q$ を割り切らない素数とすると、