加法的関数と乗法的関数

$$\newcommand{AA}[0]{\mathscr{A}} \newcommand{abs}[1]{\left\lvert#1\right\rvert} \newcommand{BB}[0]{\mathscr{B}} \newcommand{bbe}[0]{\mathbb{e}} \newcommand{Bu}[0]{\mathbf{u}} \newcommand{Bv}[0]{\mathbf{v}} \newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{CC}[0]{\mathscr{C}} \newcommand{F}[0]{\mathbb{F}} \newcommand{floor}[1]{\left\lfloor#1\right\rfloor} \newcommand{ind}[0]{\operatorname{ind}} \newcommand{K}[0]{\mathbb{K}} \newcommand{LCM}[0]{\mathrm{LCM}} \newcommand{Mod}[1]{\ \left(\mathrm{mod}\ #1\right)} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{nequiv}[0]{\not\equiv} \newcommand{ord}[0]{\operatorname{Ord}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

このページでは、数論的関数のなかでも、重要な類について解説する。

加法的関数と乗法的関数

$\gcd(M, N)=1$ のとき $f(MN)=f(M)+f(N)$ となる数論的関数 $f(N)$加法的 (additive) であるといい、
正の整数 $M, N$ に対してつねに $f(MN)=f(M)+f(N)$ となる数論的関数 $f(N)$完全加法的 (completely additive) であるという。

たとえば $\omega(N)$ は加法的関数、$\Omega(N)$ は完全加法的関数である。

これに対し、$\gcd(M, N)=1$ のとき $f(MN)=f(M)f(N)$ となる数論的関数 $f(N)$乗法的 (multiplicative) であるといい、
正の整数 $M, N$ に対してつねに $f(MN)=f(M)f(N)$ となる数論的関数 $f(N)$完全乗法的 (complitely multiplicative) であるという。

たとえば $d^{(k)}(N) (k=0, 1, \ldots)$ および $\varphi(n)$ は乗法的関数である。

一般的には、次のようなことが成り立つ。

$k$$0, \pm 1$ ではない実数とし、$f(N), F(N)$$F(N)=k^{f(N)}$ となる数論的関数とする。
ただし $k$ が負のときは $f(N)$ は整数値をとるとする。このとき

  • $f(N)$ が加法的関数 $\Longleftrightarrow$ $F(N)$ は乗法的関数
  • $f(N)$ が完全加法的関数 $\Longleftrightarrow$ $F(N)$ は完全乗法的関数

$f(N)$ が加法的ならば $\gcd(M, N)=1$ のとき(完全加法的ならば任意の正の整数 $M, N$ について)
$$F(MN)=k^{f(MN)}=k^{f(M)+f(N)}=k^{f(M)}\times k^{f(N)}=f(M)f(N).$$
$F(N)$ が乗法的ならば $\gcd(M, N)=1$ のとき(完全乗法的ならば任意の正の整数 $M, N$ について)
$$k^{f(MN)}=F(MN)=F(M)F(N)=k^{f(M)}\times k^{f(N)}=k^{f(M)+f(N)}$$
となるが、$k\neq 0, \pm 1$ より
$$f(MN)=f(M)+f(N)$$
となる。

正の整数に対して定義された関数 $f(N)$ が乗法的関数である必要十分条件は $N=p_1^{e_1} p_2^{e_2} \cdots p_r^{e_r}$ と素因数分解すると
$f(N)=\prod_{i=1}^r f(p_i^{e_i})$ となることである。

$N=p_1^{e_1} p_2^{e_2} \cdots p_r^{e_r}$ と素因数分解すると
$f(N)=\prod_{i=1}^r f(p_i^{e_i})$
となるとする。このとき $\gcd(M, N)=1$ ならば
$$M=p_1^{e_1} p_2^{e_2} \cdots p_r^{e_r}, N=p_{r+1}^{e_{r+1}} p_{r+2}^{e_{r+2}} \cdots p_s^{e_s}$$
と素因数分解され、
$$f(MN)=\prod_{i=1}^s f(p_i^{e_i})=\left(\prod_{i=1}^r f(p_i^{e_i})\right)\left(\prod_{i=r+1}^s f(p_i^{e_i})\right)=f(M)f(N)$$
となり、$f(N)$ は乗法的関数であることがわかる。

逆に $f(N)$ が乗法的関数ならば $N=p_1^{e_1} p_2^{e_2} \cdots p_r^{e_r}$ と素因数分解すると
$$f(N)=f(p_1^{e_1} p_2^{e_2} \cdots p_r^{e_r})=f(p_1^{e_1} p_2^{e_2} \cdots p_{r-1}^{e_{r-1}})f(p_r^{e_r})$$
となるから、$r$ あるいは $N$ に関する帰納法により
$$f(N)=f(p_r^{e_r})\prod_{i=1}^{r-1} f(p_i^{e_i})=\prod_{i=1}^r f(p_i^{e_i})$$
であることがわかる。

正の整数に対して定義された関数 $f(N)$ が加法的関数である必要十分条件は $N=p_1^{e_1} p_2^{e_2} \cdots p_r^{e_r}$ と素因数分解すると $f(N)=\sum_{i=1}^r f(p_i^{e_i})$ となることである。

定理4.1 より $f(N)$ が加法的関数 $\Longleftrightarrow$ $2^{f(N)}$ は乗法的関数だから、
定理4.2 より従う。

正の整数 $N$ に対して定義された関数 $f(N)$ が乗法的関数ならば
$$g(N)=\sum_{d\mid N}f(d)$$
により定義される関数 $g(N)$ も乗法的関数で、
$$N=p_1^{e_1}p_2^{e_2}\cdots p_r^{e_r}$$
と素因数分解すると
$$\label{eq1}g(N)=\prod_{i=1}^r \sum_{g_i=0}^{e_i}f(p_i^{g_i})\tag{*}$$
とあらわされる。

$$N=p_1^{e_1}p_2^{e_2}\cdots p_r^{e_r}$$
と素因数分解する。
$r=0$ のときは $g(1)=f(1)$ となるので \eqref{eq1} が成り立つ。$r=1$ のとき明らかに
$$g(N)=\sum_{d\mid N}f(d)=\sum_{g=0}^{e_1} f(p_1^g)$$
となるので、やはり \eqref{eq1} は成り立つ。

$\omega(N)=k$ のとき \eqref{eq1} が正しいとし、$r=k+1$ とする。
$$N_1=p_1^{e_1}p_2^{e_2}\cdots p_k^{e_k}$$
とおくと $N=N_1 p_{k+1}^{e_{k+1}}$ なので
$$\begin{split} g(N)= & \sum_{d\mid N}f(d) \\ = & \sum_{d_1\mid N_1, d_2\mid p_{k+1}^{e_{k+1}}} f(d_1 d_2) \\ = & \left(\sum_{d_1\mid N_1} f(d_1)\right)\left(\sum_{d_2\mid p_{k+1}^{e_{k+1}}} f(d_2)\right) = & g(N_1)g(p_{k+1}^{e_{k+1}}) \\ = & \prod_{i=1}^{k+1} \sum_{g_i=0}^{e_i}f(p_i^{g_i}) \end{split}$$
となるので、$r=k+1$ のときも \eqref{eq1} は成り立つ。

よって数学的帰納法より \eqref{eq1} はすべての正の整数 $N$ に対して成り立つ。

参考文献

本ページについてはHardy and Wright, Chapter 16 を参照。

参考文献

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G. H. Hardy and E. M. Wright, 訳: 示野 信一、矢神 毅, 数論入門I 原書6版, 数学クラシックス, 丸善出版, 2022
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G. H. Hardy and E. M. Wright, 訳: 示野 信一、矢神 毅, 数論入門II 原書6版, 数学クラシックス, 丸善出版, 2022
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Trygve Nagell, Introduction to Number Theory, Reprint Edition, American Mathematical Society (original: John Wiler & Sons, Inc.), 2001
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Paulo Ribenboim, The New Book of Prime Number Records (3rd ed. pbk.), Springer, 2013
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Edouard Lucas, Théorie des nombres, Gauthier-Villars, 1891
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F. Proth, Théorèmes sur les nombres premiers, C. R. Acad. Sci., 87, 926
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