原始根と指数

$$\newcommand{AA}[0]{\mathscr{A}} \newcommand{abs}[1]{\left\lvert#1\right\rvert} \newcommand{BB}[0]{\mathscr{B}} \newcommand{bbe}[0]{\mathbb{e}} \newcommand{Bu}[0]{\mathbf{u}} \newcommand{Bv}[0]{\mathbf{v}} \newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{CC}[0]{\mathscr{C}} \newcommand{F}[0]{\mathbb{F}} \newcommand{floor}[1]{\left\lfloor#1\right\rfloor} \newcommand{ind}[0]{\operatorname{ind}} \newcommand{K}[0]{\mathbb{K}} \newcommand{LCM}[0]{\mathrm{LCM}} \newcommand{Mod}[1]{\ \left(\mathrm{mod}\ #1\right)} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{nequiv}[0]{\not\equiv} \newcommand{ord}[0]{\operatorname{Ord}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

原始根の存在

$p$ を法とする $a$ の位数が与えられた整数 $d$ に一致するとき、 乗法的位数: 定理1 より、$d$$p-1$ の約数である。さらに、次のことがいえる。

$d$$p-1$ の約数とする。$p$ を法とする剰余系のうち、$p$ を法とする位数が $d$ に一致するものが存在するならば、それらの個数は $\varphi(d)$ に一致する。

$p$ を法とする剰余系のうち、$p$ を法とする位数が $d$ のものが存在するとして、そのひとつを $a$ とすると $x=a^k (k=0, 1, \ldots, d-1)$ は互いに不合同でかつ
$$\label{eq1}x^d-1\equiv 0\Mod{p}\tag{1}$$
の解である。

前ページの定理3 より \eqref{eq1} の互いに不合同な解の個数は $d$ 個以下だから、
$$x^d-1\equiv 0\Mod{p}\Longleftrightarrow x\equiv a^k\Mod{p}$$
となることがわかる。

また $\gcd(k, d)=k_1>1$ のとき
$$(a^k)^{d/\gcd(k, d)}\equiv (a^d)^{k/\gcd(k, d)}\equiv 1\Mod{p}$$
より、$p$ を法とする $a^k$ の位数は $d/\gcd(k, d)$ の約数なので $d$ より小さい。

このことから、$p$ を法とする $b$ の位数が $d$ ならば
$b\equiv a^k\Mod{p}, \gcd(k, d)=1$
とならなければならない。逆に $b$ がこのような形のとき、
$$b^g\equiv 1\Mod{p}\Longleftrightarrow d\mid kg\Longleftrightarrow d\mid g$$
より、$p$ を法とする $b$ の位数は $d$ に一致する。
よって $p$ を法とする剰余系のうち、$p$ を法とする位数が $d$ に一致するものが存在すれば、それらの個数は $\varphi(d)$ に一致する。

$\varphi(d)$ を与える公式は存在するので後に証明するが、この公式を用いずに次のことが成り立つことが示せる。

$\sum_{d\mid n}\varphi(d)=n$.

$d$ の約数に対して
$$S_d=\{k(n/d): 0\leq k\leq d-1, \gcd(k, d)=1\}$$
と定義すると $\# S_d=\varphi(d)$ となる。

また、$0\leq m\leq n-1$ となる整数 $m$ に対して $d=n/\gcd(m, n)$, $k=m/\gcd{m, n}$ とおくと
$$m=k\gcd(m, n)=kn/d\in S_d$$
となるから、$0\leq m\leq n-1$ となる整数 $m$$S_{n/\gcd(m, n)}$ に属する。

一方、$m\in S_d$ ならば $m=kn/d$ とおくと $n/d$$m, n$ の公約数なので、 $m, n$ の最大公約数は $n/d$ の倍数でなければならない。しかし、 $\gcd(m, n)=fn/d$ とおくと $f$$m/(n/d)=k$$n/(n/d)=d$ の公約数なので $f=1$ つまり $\gcd(m, n)=n/d$ あるいは $d=n/\gcd(m, n)$ となる。
よって $0\leq m\leq n-1$ となる整数 $m$$S_{n/\gcd(m, n)}$ にのみ属するので、
$$n=\sum_{d\mid n} \# S_d=\sum_{d\mid n}\varphi(d)$$
が成り立つ。

定理2とあわせると、命題1より強く、$d$$p-1$ の約数ならば、実際に $p$ を法とする位数が $d$ のものが存在することがわかる。

$d$$p-1$ の約数とする。$1, 2, \ldots, p-1$ のうち、$p$ を法とする位数が $d$ のものの個数は $\varphi(d)$ に一致する。

$1, 2, \ldots, p-1$ のうち、$p$ を法とする位数が $d$ のものの個数を $a_d$ とおくと 命題1 より $a_d\leq \varphi(d)$ となる。
一方、$p$ を法とする位数は $p-1$ の約数だから
$$p-1\leq \sum_{d\mid p-1} a_d$$
となる。$a_d<\varphi(d)$ となる $d$ があるとすれば、 定理2 より
$$p-1<\sum_{d\mid p-1} \varphi(d)=p-1$$
となって矛盾する。よって、$p-1$ のどの約数 $d$ に対しても $a_d=\varphi(d)$ が成り立つ。

とくに $p$ が素数のとき $p$ を法とする位数が $p-1$ となる整数 $a$ が存在する。そのような整数 $a$ あるいは剰余類 $a\Mod{p}$$p$ を法とする原始根という。

実際に原始根を得るには、次のような方法がある。

定理3の別証明

整数 $1, \ldots, p-1$ からひとつ整数 $a$ をとり、その $p$ を法とする位数を $s$ とおく。
$s=p-1$ のとき $a$$p$ を法とする原始根。
$s< p-1$ のとき
$$x^s-1\equiv 0\Mod{p}, 1\leq x\leq p-1$$
となる整数 $x$ の個数は $s$ 以下なので、$p-1$ より少ない。よって
$$b^s\not\equiv 1\Mod{p}, 1\leq b\leq p-1$$
となる整数 $b$ がとれる。$b$$p$ を法とする位数を $t$ とおくと、$t$$s$ を割り切らない。

$$s=p_1^{e_1} p_2^{e_2} \cdots, p_k^{e_k}, t=p_1^{f_1} p_2^{f_2} \cdots p_k^{f_k}$$
と素因数分解し、$u=\prod_{e_i\geq f_i}p_i^{e_i}, v=\prod_{e_i< f_i} p_i^{f_i}$ とおくと
$u\mid s, v\mid t, \gcd(u, v)=1$ かつ
$$uv=\prod_{i=1}^k p_i^{\max\{e_i, f_i\}}=\LCM[s, t]$$
が成り立つ。
$a_1=a^{s/u}, b_1=b^{t/v}$ とおくと $a_1, b_1$$p$ を法とする位数はそれぞれ $u, v$ である。

$p$ を法とする $a_1 b_1$ の位数を $k$ とすると、
$$b_1^{ku}\equiv (a_1 b_1)^{ku}\equiv 1\Mod{p}$$
より $v\mid ku$ だが $\gcd(u, v)=1$ より $v\mid k$ となる。
同様に
$$a_1^{kv}\equiv (a_1 b_1)^{kv}\equiv 1\Mod{p}$$
より $u\mid kv$ だが $\gcd(u, v)=1$ より $u\mid k$ となる。
よって $k$$u, v$ 両方で割り切れるから $\LCM[u, v]=uv=\LCM[s, t]$ で割り切れる。
$t$$s$ を割り切らないので
$$k\geq \LCM[s, t]>s$$
となり、$a_1 b_1$ の位数は $s$ より大きい。
$a$ のかわりに $a_1 b_1$ をとり、同様の議論を繰り返すと、位数は次第に増加していくから、最終的に原始根を得る。

与えられた素数 $p$ について、$p$ を法とする原始根が存在することはこのようにして示せるが、逆に与えられた整数 $a$ を原始根とする法 $p$ が存在するかは自明ではない。与えられた整数 $a$、たとえば $2$ を原始根とする素数 $p$ が存在するかどうかは未だに解決されていない。

指数

$p$ を法とする原始根 $a$ をひとつとると、$a^k\Mod{p} (k=0, 1, \ldots, p-2)$$p$ を法とするすべての剰余類をとり、かつ
$$a^k\equiv a^\ell\Mod{p}\Longleftrightarrow k\equiv \ell\Mod{p-1}$$
となる。よって、$0$ 以外の剰余類 $b\Mod{p}$ に対して
$$b\equiv a^k\Mod{p}$$
となる $k\Mod{p-1}$ が一意的に定まる。そのような最小の正の整数 $k$$p$ を法とする $b$ の、底 $a$ に対する指数 (index) といい、
$$\ind_a b\Mod{p}\equiv k\Mod{p-1}$$
であらわす。

$p$ を法とする、底 $a$ に対する指数について、次の事実が成り立つ。

  1. $\ind_a (mn)\equiv \ind_a m+\ind_a n\Mod{p-1}$.
  2. $b\Mod{p}$ が原始根であるとき $(\ind_a b)(\ind_b c)\equiv \ind_a c\Mod{p-1}$.
  1. $\ind_a m\equiv g\Mod{p-1}, \ind_a n\equiv h\Mod{p-1}$ ならば
    $m\equiv a^g\Mod{p}, n\equiv a^h\Mod{p}$ なので $mn\equiv a^{g+h}\Mod{p}$ つまり $\ind_a (mn)\equiv g+h\Mod{p-1}$.
  2. $\ind_a b\equiv g\Mod{p-1}, \ind_b c\equiv h\Mod{p-1}$ ならば
    $b\equiv a^g\Mod{p}, c\equiv b^h\Mod{p}$ なので $c\equiv (a^g)^h\equiv a^{gh} \Mod{p}$ つまり $\ind_a c\equiv gh\Mod{p-1}$.

このように、指数は対数関数と類似した性質をもっていることから、''離散対数''とも呼ばれる。

$p$ を法とする原始根が存在することは、$\Z/p\Z$ の乗法群 $(\Z/p\Z)^*$ が位数 $p-1$ の巡回群であることを意味しており、原始根は $(\Z/p\Z)^*$ の生成元である。

法が大きいとき、与えられた原始根を底とする指数を計算する高速なアルゴリズムは現在知られていない(量子コンピューターにおいては、理論的には多項式時間で計算可能なアルゴリズムが存在するが、実用化はされていない)。指数/離散対数の概念は他の巡回群、たとえば、$p$ を法とする楕円曲線の点のなす加法群の部分群にも拡張されるが、やはり法 $p$ が大きい場合、指数を計算することは難しい。離散対数暗号はこの原理を応用したものである。

参考文献

[1]
G. H. Hardy and E. M. Wright, revised by D. R. Heath-Brown and J. H. Silverman, An Introduction to the Theory of Numbers, 6th Ed., Oxford University Press, 2008
[2]
G. H. Hardy and E. M. Wright, 訳: 示野 信一、矢神 毅, 数論入門I 原書6版, 数学クラシックス, 丸善出版, 2022
[3]
G. H. Hardy and E. M. Wright, 訳: 示野 信一、矢神 毅, 数論入門II 原書6版, 数学クラシックス, 丸善出版, 2022
[5]
D. P. Parent, Exercises in Number Theory, Springer-Verlag, 1984
[6]
Trygve Nagell, Introduction to Number Theory, Reprint Edition, American Mathematical Society (original: John Wiler & Sons, Inc.), 2001
[7]
Paulo Ribenboim, The New Book of Prime Number Records (3rd ed. pbk.), Springer, 2013
[9]
Edouard Lucas, Théorie des nombres, Gauthier-Villars, 1891
[11]
D. P. Parent, Exercices des théorie des nombres, BORDAS, 1978
[12]
H. C. Pocklington, The determination of the prime or composite nature of large numbers by Fermat's theorem, Proc. Cambridge Phil. Soc., 1914, 29
[15]
F. Proth, Théorèmes sur les nombres premiers, C. R. Acad. Sci., 87, 926
Mathpediaを支援する

現在のページ

原始根と指数
前のページへ
22 / 38
次のページへ
前ページへ
初等整数論の表紙
次ページへ