テキストの構成

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本テキストでは、幾何的なモチベーションを主軸に置き、必要に応じて代数的な道具を紹介する。 理論を説明した後に、あるいはしながら、具体例の計算を促していく。

本テキストの構成は以下の通りである。扱う内容で章を区切っているので、分量の多い章も存在する。適宜休息を挟んで読んでもらいたい。 2023年4月現在でテキストは未完成のため、順番を変更したり内容を追加・削除したりする可能性があります。

2. 二元体上の線型代数

この章では、二元体に親しみがない読者のために速習コースを用意する。 二元体$\mathbb{Z}_2$とは唯二つの要素のみから成る体のことである。二元体は、その計算規則の特異さから、実数体$\mathbb{R}$や複素数体$\mathbb{C}$上の線型代数とは異なる部分を生む。

3. 単体複体

この章では、本テキストを通して扱う幾何的対象である単体複体について、諸々の定義を行う。 単体複体とは、単体と呼ばれる図形のピースを"きっちり"と貼り合わせて作られる組合せ的な図形である。

4. 単体複体から鎖複体へ

単体複体が与えられたとき、その多面体が目に見えるとは限らない。 あるいは目に見えたとしても、その"かたち"を把握することは一般に難しい。 そこで我々は、与えられた単体複体からホモロジーと呼ばれる代数的な量を取り出し、観察することを考える。
この章では、その準備として、単体複体という幾何的対象に対して鎖複体という代数的対象を対応づける。

5. 鎖複体からホモロジーへ

この章では、前章で導入した鎖複体を用いて、遂にホモロジー群を定義する。ホモロジーは単体複体に対して定まるベクトル空間の集まりのことである。

XXX. ホモロジーの基本的性質

この章では、ホモロジー群の持つ基本的な性質を紹介する。主なトピックは以下の三点である。

  • $0$次ホモロジー群の幾何的な意味
  • 錐のホモロジー群
  • 擬多様体のホモロジー群

XXX. 単体複体の対と相対ホモロジー

この章では、単体複体の対というものを考え、そのホモロジー群である相対ホモロジー群について紹介する。 一見取っつきにくい概念かもしれないが、非常に有用な考え方であることが今後明らかとなる。

XXX. 単体写像から鎖写像へ

この章では、単体写像という幾何的写像に対して、鎖写像と呼ばれる代数的写像を導入し、それがホモロジー群の間の写像を誘導することを述べる。

XXX. 蛇の補題

ここまでの内容で、ホモロジー群の取り扱いに際して代数的な大道具は用意しなかった。 この章では、蛇の補題という強力な定理を紹介する。この章のみ、幾何的な議論を排除する。

XXX. ホモロジー長完全列およびMayer-Vietorisの原理

この章では、蛇の補題から従う偉大な系として、ホモロジー長完全列およびMayer-Vietorisの原理を紹介する。得られる連結射の幾何的な解釈についても紹介する。

XXX. ホモロジーの粗さ(1)

色々な単体複体に対してホモロジー群を求めてみると、同じ計算結果を与えるものたちが見つかる。 この章では、単体複体に対する縮約という改変操作を導入し、縮約によってホモロジー群は変化しないことを紹介する。

XXX. ホモロジーの粗さ(2)

二つの単体複体間の単体写像に対して誘導射を求めてみると、同じ計算結果を与えるものたちが見つかる。 この章では、単体写像の間の近接関係という関係を導入し、近接関係にある単体写像は同じ誘導射を与えることを紹介する。

XXX. ホモロジーからコホモロジーへ

これまで、単体複体のホモロジー理論を解説してきた。 この章では、ホモロジーに酷似した、しかしホモロジーよりも豊かな代数的構造を持つコホモロジーと呼ばれる量を導入する。

参考文献

[1]
枡田幹也, 代数的トポロジー, 講座 数学の考え方〈15〉, 朝倉書店, 2002
[2]
Jean-Claude Hausmann, Mod Two Homology and Cohomology, Universitext, Springer, 2015
[3]
中岡稔, 復刊 位相幾何学:ホモロジー論, 共立出版, 1999
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入門テキスト「単体複体の二元体係数ホモロジー」の表紙
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