二元体とは

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二元体

二元集合 $\{\heartsuit, \clubsuit\}$ 上に、加法 $+$ と乗法 $\cdot$

$+$$\heartsuit$$\clubsuit$
$\heartsuit$$\heartsuit$$\clubsuit$
$\clubsuit$$\clubsuit$$\heartsuit$
$\cdot$$\heartsuit$$\clubsuit$
$\heartsuit$$\heartsuit$$\heartsuit$
$\clubsuit$$\heartsuit$$\clubsuit$

で与えるとき、$\{\heartsuit, \clubsuit\}$$\heartsuit$ を加法単位元、$\clubsuit$ を乗法単位元として体となる。この体を二元体(finite field of order two)*という。

  • 二元集合$\{\heartsuit, \clubsuit\}$を体にするような演算は、上のものしかないことが分かる。
  • デジタル回路に親しみのある読者は、加法が$\mathsf{XOR}$、乗法が$\mathsf{AND}$に見えるかもしれない。実際それは正しいし、デジタル回路には二元体上の線型代数が用いられることがしばしばある。詳しくは誤り訂正符号を参照されたい。
表記について
  • 以降、$\heartsuit = 0, \ \clubsuit = 1$と書き、$\mathbb{Z}_2 = \{0, 1\}$で二元体を表す。二元体はよく $\mathbb{Z} / 2 \mathbb{Z}, \ \mathbb{F}_2, \ \mathrm{GF}(2)$ などとも表される。
  • 二元体においても、$1$$n$回足したものを$n$と表す。したがって、$0 = 2 = 4 = 6 = \cdots$ であるし、$1 = 3 = 5 = 7 = \cdots$である。
  • 二元体においても、$x$の加法逆元を$-x$と表す。したがって、$-1 = 1$ であるし、$3 = -3$でもあるし、$1000 = -1000$でもある。
  • 二元体においても、混乱のない限り、乗法の記号$\cdot$を省略する。

次の計算を実行し、計算結果を$0$または$1$で(必要なら場合分けを用いて)表せ。ただし、$x$$\mathbb{Z}_2$の任意の要素とする。
(1) $3 + 4$
(2) $5 \cdot 7$
(3) $4 \cdot (1 + 2 + 3 + \cdots + 100)$
(4) $x + x$
(5) $x (x + 1)$

解答:
(1) $1$
(2) $1$
(3) $0$
(4) $0$
(5) $0$

参考文献

[1]
枡田幹也, 代数的トポロジー, 講座 数学の考え方〈15〉, 朝倉書店, 2002
[2]
Jean-Claude Hausmann, Mod Two Homology and Cohomology, Universitext, Springer, 2015
[3]
中岡稔, 復刊 位相幾何学:ホモロジー論, 共立出版, 1999
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