Brunの最初の篩により、双子素数の個数の上からの評価を得ることができる。
$a, b$ が互いに素な整数とする。
$\pi_2(a, b; x)$ を $ap+b$ も素数となる、素数 $p\leq x$ の個数とおくと
$$\pi_2(a, b; x)<\frac{ab CX (\log\log X)^2}{\varphi(ab) \log^2 X}$$
となる絶対定数 $C$ が存在する。
$$A_p=\{n\in A: (p\mid n)\lor(an+b\equiv 0\Mod{p})\}$$
と定める。
このとき $p$ が $a$ を割り切るとき、$p$ は $b$ を割り切らないので $\rho(p)=1$、
$p$ が $b$ を割り切るとき、$p$ は $a$ を割り切らないので、やはり $\rho(p)=1$
となり、$ab$ を割り切らない素数 $p$ について、
$au\equiv b\Mod{p}$ となる $k$ を $u(p)$ とおくと
$$A_p=\#\{n: M< n\leq M+X, (n\equiv 0\Mod{p})\lor(n\equiv u(p)\Mod{p})\}$$
より $\rho(p)=2$ となる。よって
Mertensの第3定理
より
$$\begin{split}
\prod_{p< z}\left(1-\frac{\rho(p)}{p}\right)
= & \prod_{p< z, p\mid ab}\left(1-\frac{1}{p}\right)\prod_{p< z, p\nmid ab}\left(1-\frac{2}{p}\right) \\
< & \prod_{p< z, p\mid ab}\left(1-\frac{1}{p}\right)^{-1}\prod_{p< z}\left(1-\frac{1}{p}\right)^2 \\
< & \left(\prod_{p< z, p\mid ab}\left(1-\frac{1}{p}\right)^{-1}\right) \frac{C_1}{\log^2 z} \\
= & \frac{ab C_1}{\varphi(ab) \log^2 z}
\end{split}$$
となる。また、
「初等整数論」素数の分布(初等的理論): x 以下の素数の個数:定理1の系
および
「初等整数論」素数の分布(初等的理論):Chebyshev関数の初等的評価の定理2
から、$\pi(z)< C_2 z/\log z$ となる定数 $C_2$ が存在するので、
$$1+\sum_{p< z}\rho(p)<1+2\pi(z)<\frac{C_3 z}{\log z}$$
となる。
これらのことから、$m$ が $2e(2\log\log z+C_4)$ より大きい偶数のとき、
$$\# S(A, z)<\frac{ab C_1 X}{\varphi(ab) \log^2 z}+\frac{X}{2^m}+\left(\frac{C_3 z}{\log z}\right)^m \ \ (1.9)$$
であることがわかる。定数 $c$ を $2e$ より大きく選び、
$$z=X^{1/(3c\log\log X)}, m=2\floor{c\log\log X}$$
とおくと、$X$ が大きいとき、
$$m>2(c\log\log X-1)>2e(2\log\log X+C_4)>2e(2\log\log z+C_4)$$
より、$m$ は $2e(2\log\log z+C_4)$ より大きい偶数なので、$(1.9)$ が成り立つ。$X$ が大きいとき、$z$ も大きくなるので
$$\begin{split}
\# S(A, z)< & \frac{ab C_1 X}{\varphi(ab) \log^2 z}+\frac{X}{2^m}+z^m \\
< & \frac{9ab C_1 c^2 X (\log\log X)^2}{\varphi(ab) \log^2 X}+\frac{4X}{\log^{2c\log 2} X}+X^{2/3}
\end{split}$$
となる。
さて、$p, ap+b$ がともに素数で $p\geq z$ ならば、$p, ap+b$ はいずれも $z$ より小さい素因数をもたないから $p$ は $S(A, z)$ に含まれる。よって
$$\begin{split}
\pi_2(a, b; x)\leq & \# S(A, z)+\pi(z) \\
< & \frac{9ab C_1 c^2 X (\log\log X)^2}{\varphi(ab) \log^2 X}+\frac{4X}{\log^{2c\log 2} X}+X^{2/3}+z
\end{split}$$
となるから、定理が成り立つ。
このことから、$ap+b$ も素数となる素数 $p$ の逆数の和が収束することがわかる。とくに、$p+2$ も素数となる素数 $p$ の逆数の和は収束する。よって双子素数 $p, p+2$ の逆数の和
$$\sum_{p, p+2: \textrm{prime}}\left(\frac{1}{p}+\frac{1}{p+2}\right)
=\left(\frac{1}{3}+\frac{1}{5}\right)+\left(\frac{1}{5}+\frac{1}{7}\right)+\left(\frac{1}{11}+\frac{1}{13}\right)+\cdots$$
は収束する。この逆数の和をBrun定数 (Brun's constant) という。