アフィン代数的集合の定義

$$\newcommand{A}[0]{\mathbb{A}} \newcommand{AA}[0]{\mathscr{A}} \newcommand{abs}[1]{\left\lvert#1\right\rvert} \newcommand{Arg}[0]{\operatorname{Arg}} \newcommand{BB}[0]{\mathscr{B}} \newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{CC}[0]{\mathscr{C}} \newcommand{F}[0]{\mathbb{F}} \newcommand{floor}[1]{\left\lfloor#1\right\rfloor} \newcommand{ind}[0]{\operatorname{ind}} \newcommand{K}[0]{\mathbb{K}} \newcommand{Ker}[0]{\operatorname{Ker}} \newcommand{L}[0]{\mathbb{L}} \newcommand{mmod}[1]{\ \left(\mathrm{mod}\ #1\right)} \newcommand{Mod}[1]{\ \left(\mathrm{mod}\ #1\right)} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{ord}[0]{\operatorname{ord}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{rank}[0]{\mathrm{rank}} \newcommand{SS}[0]{\mathscr{S}} \newcommand{TT}[0]{\mathscr{T}} \newcommand{UU}[0]{\mathscr{U}} \newcommand{wenvert}[1]{\left\lvert\left\lvert#1\right\rvert\right\rvert} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

アフィン空間

$\K$ を任意の体とする。$\K$$n$ 個の直積
$$\A^n(\K)=\{(a_1, a_2, \ldots, a_n): a_1, a_2, \ldots, a_n\in\K\}$$
$\K$ 上の $n$ 次元アフィン空間 ($n$-dimensional affine space) という(もちろん集合としては、$\A^n(\K)$$\K$$n$ 個の直積 $\K^n$ と同一である)。

アフィン代数的集合

$\K[X_1, X_2, \ldots, X_n]$$\K$ 上の $n$ 変数多項式環とする。
$\K$ 上の $n$ 変数多項式 $F\in \K[X_1, X_2, \ldots, X_n]$ と、$n$ 次元アフィン空間 $\A^n(\K)$ 上の点 $P=(a_1, a_2, \ldots, a_n)$ について、$F(a_1, a_2, \ldots, a_n)$ を点 $P$ における $F$ の値と定め、これを単に $F(P)$ であらわす。$F(P)=0$ となる 点 $P$$F$零点 (zero) という。

$F$ の零点全体の集合を
$$V(F)=\{(a_1, a_2, \ldots, a_n): a_1, a_2, \ldots, a_n\in\K, F(a_1, a_2, \ldots, a_n)=0\}$$
によりあらわし、$F$ により定まるアフィン超曲面 (affine hypersurface) という。とくに $n=3$$F(X, Y, Z)$ が定数でないときはアフィン曲面 (affine surface) という。$n=2$$F(X, Y)$ が定数でない場合、$V(F)$アフィン平面代数曲線 (affine plane algebraic curve) という。
$F$$1$次式のとき、$V(F)$$\A^n(\K)$ における超平面 (hyperplane) といい、とくに $n=3$ のときは平面 (plane)、$n=2$ のときは直線 (line) という。

さらに一般に、$\K$ 上の $n$ 変数多項式からなる集合 $S\subset \K[X_1, X_2, \ldots, X_n]$ について、
$S$ の多項式すべての零点となる点全体の集合
$$V(S)=\bigcap_{F\in S}V(F)=\{(a_1, a_2, \ldots, a_n): a_1, a_2, \ldots, a_n\in\K, \forall F\in S[F(a_1, a_2, \ldots, a_n)=0]\}$$
$S$ により定まるアフィン代数的集合 (affine algebraic set) という。また、本書ではアフィン代数的集合を単に代数的集合 (algebraic set)という。

正の整数 $n\geq 1$ について、$F_n(X, Y)=X^n+Y^n-1$ とすると、$V(F_n)$ はアフィン平面代数曲線を与える。

以下、$V=V(S)$$S$ により定まるアフィン代数的集合であるとき、これを $\K$ の部分集合 $L\subset \K$ に制限したものを
$$V(L)=V(S/L)=V\cap L^n=\{(a_1, a_2, \ldots, a_n): a_1, a_2, \ldots, a_n\in L, \forall F\in S[F(a_1, a_2, \ldots, a_n)=0]\}$$
とかくことにすると、$V(F_1/\R)$ は直線 $Y=1-X$ に一致し、$V(F_2/\R)$ は原点を中心とする半径 $1$ の円となる。
また、Fermatの最終定理は、
$n$$3$ 以上の奇数のとき $V(F_n/\Q)=\{(1, 0), (0, 1)\}$ に、$n$$4$ 以上の偶数のとき $V(F_n/\Q)=\{(\pm 1, 0), (0, \pm 1)\}$
に一致すると言い換えることができる。

正の整数 $n\geq 1$ について、$F_n(X, Y, Z)=X^n+Y^n-Z^n$ とすると、$V(F_n)$$\A^3(\K)$ におけるアフィン代数曲面を与える。
$V(F_1/\R)$ は平面 $Z=1-X-Y$ に一致し、$V(F_2/\R)$ は円錐面 $X^2+Y^2-Z^2=0$ をあたえる。
また、Fermatの最終定理は、$n\geq 3$ のとき
$$V(F_n/\Z)=\begin{cases} \{(0, t, \pm t): t\in\Z\}\cup \{(\pm t, 0, t): t\in\Z\}\cup \{(t, \pm t, 0): t\in \Z\} & (n\equiv 0\Mod{2}) \\ \{(0, t, t): t\in\Z\}\cup \{(t, 0, t): t\in\Z\}\cup \{(t, -t, 0): t\in \Z\} & (n\equiv 1\Mod{2}) \\ \end{cases}$$
と言い換えることができる。

$V_1=V(S/K), V_2=V(T/L)\in \A^n(\K)$ が代数的集合ならば、その共通部分 $V_1\cap V_2$ も代数的集合で、
$$V_1\cap V_2=V((S\cup T)/(K\cap L))$$
とあらわされる。

$V_1=V(S/K), V_2=V(T/L)$ となる集合 $S, T, K, L$ をとると、
$$P\in V_1\cap V_2\Longleftrightarrow P\in (K\cap L)^n, \forall(F\in S\cup T)[F(P)=0]$$
より
$$V_1\cap V_2=V((S\cup T)/(K\cap L))$$
となる。

参考文献

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