整数と多項式に共通する「足して掛けられる」構造として環を定義し、単元・零因子・整域・体、環準同型とイデアル、商環と同型定理、素イデアルと極大イデアルを順に学ぶ。後半では、体上の多項式環、Euclid 整域から主イデアル整域(PID)、一意分解整域(UFD)への道筋、Gauss の補題による整数係数多項式の既約性、中国剰余定理を扱う。各章で「整数で成り立つ性質がどこまで一般の環で成り立つか」を確かめる。前提は、集合と写像、整数の割り算、および線形代数の初歩である。
整数と多項式に共通する演算の規則から環を定義し、単元・零因子・整域・体を具体例で区別する章である。剰余類の演算が代表元に依らないことから始め、環の基本恒等式、部分環、単元と零因子、整域の消去律、有限整域が体になることを示す。「どこまで割り算ができるか」という見方で、整数環 $\mathbb Z$、剰余環 $\mathbb Z/n\mathbb Z$、多項式環、体を並べて比べる。
環準同型の核を一般化した部分集合としてイデアルを定義し、整数環のイデアルをすべて求める章である。環準同型と核・像、イデアルの定義、生成イデアルの最小性、整数環のイデアルが $n\mathbb Z$ に限ることを示す。後半ではイデアルの和・共通部分・積と、根基・nilradical を導入し、方程式の条件をイデアルで表す見方を学ぶ。
イデアルで割って新しい環を作る章である。商環の演算が代表元に依らないこと、標準射影の核がもとのイデアルであること、環の第一同型定理、商の普遍性を順に示す。群の商と同じ構造が環で成り立つことと、イデアルを使うと「割り切れない部分を無視した計算」ができることを、剰余環の例で確かめる。
商環が整域になるイデアルを素イデアル、体になるイデアルを極大イデアルとして特徴づける章である。体のイデアルは自明なものだけであることから出発し、素・極大イデアルの商による特徴づけ、極大イデアルは素イデアルであること、整数環と多項式環での例を示す。「割り算がどこまでできる環が商として現れるか」という問いに、イデアルの言葉で答える。
体上の一変数多項式環のイデアルを調べる章である。多項式の割り算(除法)が使えることから、イデアルがすべて一つの多項式で生成されること、最大公約多項式と最小公倍多項式、多項式環の商環の基底、素・極大イデアルの分類を示す。整数環での議論が多項式環でもそのまま成り立つことを確かめ、次の Euclid 整域の一般論の見本にする。
整数や多項式で使った「割り算の繰り返し」を一般の整域へ広げる章である。整除と同伴、既約元と素元、Euclid 整域、PID、UFD を定義し、Euclid 整域は PID であること、PID では Bézout の恒等式が成り立つこと、PID の既約元は素元であることを示す。整域の種類(Euclid 整域 ⊂ PID ⊂ UFD)の包含関係を見通す。
主イデアル整域(PID)の基本性質を示す章である。PID では最大公約元が Bézout の等式で表せること、既約元は素元であること、イデアルの昇鎖が止まることから、分解が有限回で止まる理由を示す。Euclid 整域でなくても使える議論を確かめる。
既約元への分解が順序と単元倍を除いて一意に決まる環を調べる章である。PID が UFD になることを示し、逆向きが成り立たない例として、多項式環 $K[x,y]$ が UFD だが PID でないことを確かめる。
整数係数の多項式が有理数上で既約であることと整数上で既約であることを結ぶ Gauss の補題を扱う章である。多項式の内容と原始多項式、内容の乗法性、Gauss の補題、有理根定理、多項式環が UFD になること、後半では二次・三次の既約性、mod $p$ での判定、Eisenstein の判定法を示す。
互いに素なイデアルによる商環の積分解を示す章である。二つのイデアルの場合と有限個の場合の中国剰余定理、冪等元による環の分解を扱う。整数の合同式の連立を環の言葉で一般化する。
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