Brunの最初の篩(素数による篩)

対称式の値に関する次の評価は、Brunの篩にあらわれる和の評価に有用である。

sk(x1,,xr)k 次基本対称式とおくと
x1,,xr0 ならば
sk(x1,,xr)(x1++xr)kk!
が成り立つ。

(x1++xr)k=1i1,i2,,ikrxi1xi2xik1i1,i2,,ikr,ip=iqp=qxi1xi2xik
となる。

1j1<j2<<jkr となる (j1,j2,,jk) をひとつとる。右辺の和のなかにある項で、xi1xi2xik=xj1xj2xjk となるのは、(i1,i2,,ik)(j1,j2,,jk) の置換であるものであり、そのようなものに限られるから、
(x1++xr)k=1i1,i2,,ikrxi1xi2xik(k!)1j1<j2<<jkrxj1xj2xjk=(k!)sk(x1,,xr)
となる。

Brun's pure sieveから、ひとつの素数を法とする複数の剰余類を取り除くとき、つぎの評価が得られる。

z>0 を正の実数とする。ρ(n) は乗法的関数で、
(1)p<zρ(p)pκloglogz+B0
が成り立つとする。
A=Z(M,M+X]={nZ:M<nM+X}
とおく。さらに、各素数 p について、ρ(p) 個の剰余類 a(p,1),,a(p,ρ(p)) (mod p) が対応するとし、
Ap={nA:na(p,1),a(p,2),,a(p,ρ(p)) (mod p)}
とおく。

このとき、
S(A,z)=A(p<zAp)
を、どの p<z となる素数についても Ap に属さない A の要素の全体の集合とすると、
m>2e(κloglogz+B0) となるよう偶数 m に対して、
#S(A,z)=Xp<z(1ρ(p)p)+O(X2m+(1+p<zρ(p))m)
となる。

相異なる素数の積 d について、
Ad=pdAp
とおくと、
Ad=#{n:M<nM+X,pd(1u(p)ρ(p))[na(p,u(p)) (mod p)]}
となる。

中国式剰余定理 から、相異なる素数の積 d=p1p2pk について、
nri (mod pi) (i=1,2,,k)nU(r1,r2,,rk) (mod d)
となる剰余類 U(r1,r2,,rk) (mod d) が一意的に定まる。1diρ(pi) (1ik) となる (d1,d2,,dk) について
U(a(p1,d1),a(p2,d2),,a(pk,dk)) (mod d)
は相異なる剰余類で、
Ad=#{n:M<nM+X,nU(a(p1,d1),a(p2,d2),,a(pk,dk)) (mod d)}
となる(ただし、各 di1diρ(pi) となる整数)ので、
#Adρ(d)((M+X)dMd)<ρ(d)Xd+ρ(d)
かつ
#Adρ(d)((M+X)dMd)>ρ(d)Xdρ(d)
となる。つまり
(2)|#AdXd|<ρ(d)
が成立する。

μk(d)={μ(d)=(1)ω(d)(ω(d)k),0(ω(d)>k)
とおくと、m が偶数のときBrunの最初の篩より
#S(A,z)dP(z)μm(d)#Ad
となる。

そこで、m>2e(κloglogz+B0) となるように偶数 m をとると、 (2)より
(3)#S(A,z)dP(z),ω(d)mμ(d)#Ad=dP(z),ω(d)m(μ(d)ρ(d)Xd+O(ρ(d)))=XdP(z)μ(d)ρ(d)d+O(XdP(z),ω(d)m+1μ(d)ρ(d)d+dP(z),ω(d)mρ(d))
が成り立つ。以下、この右辺の各項について考察する。

まず、μ(d)ρ(d)/d は乗法的関数だから
(4)dP(z)μ(d)ρ(d)d=p<z(1ρ(p)p)
となる。

z 以下の素数を p1,,pr とおくと
dP(z),ω(d)m+1ρ(d)d=k=m+1rdP(z),ω(d)=kρ(d)d=k=m+1r{i1,,ik}{1,,r}(ρ(pi1)pi1)(ρ(pik)pik)=k=m+1rsk(ρ(p1)p1,ρ(pr)pr)
となるので、 補題1 およびStirlingの公式より
dP(z),ω(d)m+1ρ(d)dk=m+1r1k!(p<zρ(p)p)k<k=m+1r(ek)k(p<zρ(p)p)k<k=m+1r(em)k(p<zρ(p)p)k
となるが、仮定より
dP(z),ω(d)m+1ρ(d)d<k=m+1r(e(κloglogz+B0)m)k
となる。
m>2e(κloglogz+B0) となるように m をとっているので、
(5)dP(z),ω(d)m+1ρ(d)d<k=m+1r12k=12m
となる。

さらに、仮定より
(6)dP(z),ω(d)mρ(d)=k=1m{i1,,ik}{1,,r}ρ(pi1)ρ(pik)k=1m(p<zρ(p))k(1+p<zρ(p))m
となる。

(4), (5), (6)(3)に適用して
#S(A,z)=Xp<z(1ρ(p)p)+O(X2m+(1+p<zρ(p))m)
となって、定理が証明される。

参考文献

[1]
George Greaves, Sieves in Number Theory, Spriner-Verlag, 2001
[2]
Heini Halberstam and Hans Egon-Richert, Sieve Methods, 2nd Edition, Dover publications, 2011
[3]
Melvyn B. Nathanson, Additive Number Theory: The Classical Bases, Graduate Texts in Mathematics, 164, Springer-Verlag, 1996
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