4-1 面積・体積と交代性

$$\newcommand{AA}[0]{\mathscr{A}} \newcommand{abs}[1]{\left\lvert#1\right\rvert} \newcommand{angleb}[1]{\left\langle #1 \right\rangle} \newcommand{Arg}[0]{\operatorname{Arg}} \newcommand{Ba}[0]{\mathbf{a}} \newcommand{BB}[0]{\mathscr{B}} \newcommand{Bb}[0]{\mathbf{b}} \newcommand{Be}[0]{\mathbf{e}} \newcommand{Bu}[0]{\mathbf{u}} \newcommand{Bv}[0]{\mathbf{v}} \newcommand{Bw}[0]{\mathbf{w}} \newcommand{Bx}[0]{\mathbf{x}} \newcommand{By}[0]{\mathbf{y}} \newcommand{Bzr}[0]{\mathbf{0}} \newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{CC}[0]{\mathscr{C}} \newcommand{F}[0]{\mathbb{F}} \newcommand{floor}[1]{\left\lfloor#1\right\rfloor} \newcommand{im}[0]{\operatorname{Im}} \newcommand{ind}[0]{\mathrm{ind}} \newcommand{K}[0]{\mathbb{K}} \newcommand{Ker}[0]{\operatorname{Ker}} \newcommand{L}[0]{\mathbb{L}} \newcommand{mmod}[1]{\ \left(\mathrm{mod}\ #1\right)} \newcommand{Mod}[1]{\ \left(\mathrm{mod}\ #1\right)} \newcommand{N}[0]{\mathbf{N}} \newcommand{ord}[0]{\mathrm{ord}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{rank}[0]{\operatorname{rank}} \newcommand{span}[0]{\operatorname{span}} \newcommand{SS}[0]{\mathscr{S}} \newcommand{TT}[0]{\mathscr{T}} \newcommand{UU}[0]{\mathscr{U}} \newcommand{wenvert}[1]{\left\lvert\left\lvert#1\right\rvert\right\rvert} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

読み始める前の問い

平行四辺形の面積を、座標軸に平行でない場合にも一貫して測る式を公理から作れるだろうか。
このページでできるようになること
多重線形性・交代性・正規化から $2\times2$ 行列式を再発明できるようになる。

この章を貫く問い

正方行列が可逆か、面積や体積を何倍にするか、向きを反転するかを、一つの数で同時に判定できるだろうか。行列式を公式として与えるのでなく、体積倍率が満たすべき性質から組み立てる。
二本の平面ベクトル $u,v$ が作る平行四辺形の面積は、片方を二倍すれば二倍になり、同じ方向に重なれば零になります。向きも記録する符号付き面積を高次元へ一般化したものが行列式です。

二次元で必要な性質

列ベクトルを $u,v$ とする量 $D(u,v)$ に次を要求します。

  1. 各変数について線形である。
  2. $D(u,u)=0$。
  3. 標準基底 $e_1,e_2$ について $D(e_1,e_2)=1$。
    第二条件を交代性、第三条件を正規化と呼びます。

証明を読む前の見取り図

列を標準基底で展開し、同じ方向を二度選ぶ項を交代性で消す。

交代性から符号反転

双線形で $D(u,u)=0$ を満たすなら
$$ D(v,u)=-D(u,v). $$

交代性から $D(u+v,u+v)=0$。双線形性で展開すると
$$ D(u,u)+D(u,v)+D(v,u)+D(v,v)=0. $$
最初と最後は零なので $D(u,v)+D(v,u)=0$。

2×2公式を導く

$u=ae_1+ce_2$、$v=be_1+de_2$ とすると
$$ \begin{aligned} D(u,v) &=abD(e_1,e_1)+adD(e_1,e_2)\\ &\quad+cbD(e_2,e_1)+cdD(e_2,e_2)\\ &=ad-bc. \end{aligned} $$
したがって
$$ \det\begin{pmatrix}a&b\\c&d\end{pmatrix}=ad-bc $$
は暗記すべき偶然の公式ではなく、三条件から強制されます。

幾何的な読み方

$$ A=\begin{pmatrix}2&1\\1&3\end{pmatrix} $$
の列が作る平行四辺形の符号付き面積は $2\cdot3-1\cdot1=5$。列を交換すると $-5$ になり、向きが反転します。列が比例すれば面積は零です。

絶対値との違い

通常の面積は $|\det A|$ である。絶対値を最初から取ると列交換の符号情報が失われ、多重線形性も壊れるため、代数では符号付き量を先に扱う。

二次元の面積

$(1,2),(3,1)$ が張る平行四辺形の面積と向きを求めよ。

解答

$$ \det\begin{pmatrix}1&3\\2&1\end{pmatrix}=1-6=-5. $$
符号は標準の向きと逆、通常の面積は5。

高次元では展開項を整理するため、列の選び方を置換で記述します。

このページで回収したもの

公式の暗記ではなく、面積倍率に必要な性質から行列式を導けた。
次へ持ち越す問い
この見方を、次のページではより広い対象またはより計算しやすい形へ移す。

参考文献

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